【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され経済活動の正常化が進む中、世界的な金利の上昇や円安、ウクライナ情勢の長期化に起因する原油・原材料の高騰に加え、国際的な紛争などの不安要素を常に抱え、依然として景気の先行きが見通せない状況が続いております。
不動産業界におきましては、戸建住宅に対する需要は弱含む傾向となっている一方で、土地価格や建築資材の高騰により販売価格が上昇する中、販売競争が激化し、大変厳しい状況が続いております。また、ウッドショックによる木材価格の上昇は落ち着きつつあるものの、各種資材価格の上昇による建築コストや人件費の増加に加え、工期などへの影響も払拭されず、事業環境は厳しさが増す状況となっております。
このような経営環境の中、当社グループでは、企業理念「1.住宅作りにおいて、社会へ貢献する。2.より良いものを、より安く、より早く、より安全に提供することで社会へ貢献する。3.人を育て、健全経営を行い、社会へ貢献する。」の下、お客様に心から喜んで頂ける魅力的な住宅を、適切な価格で供給することにこだわり、当社グループ一丸となり、業績の向上と企業価値の向上に取り組んでおります。
戸建事業におきまして、主力の戸建分譲では、土地価格の上昇と各種建築資材の高騰などで、原価が高くならざるを得ない状況の中、厳選した分譲用地の仕入や積極的なバリューエンジニアリングの推進、各種キャンペーン等の取組を実施し、前連結会計年度に比べて平均販売単価が若干上昇したものの、消費者マインドの低下により値引きする物件も増加した結果、収益性は悪化いたしました。販売棟数は1,303棟(前連結会計年度比 8.8%増)と、前連結会計年度に比べて販売用不動産在庫を確保していたこと、販売面を強化したことにより、販売棟数を伸ばすことができました。販売棟数を拡大するためには販売用不動産在庫の拡充が必要であるため、分譲用地の仕入を厳選しつつ仕入業務の活性化により仕入棟数の増加に取り組むとともに、工程管理を強化し、用地仕入から建物完成までの事業サイクルの短縮に注力し、商品力の強化に引き続き取り組んでまいります。請負工事につきましては、多様な顧客ニーズに適切に対応できるプランを取り入れることで顧客への提案力の強化等に取り組んでまいりましたが、急激に建築コストが上昇する状況の中、受注は伸び悩み、引渡棟数は33棟(同 37.7%減)にとどまる結果となりました。当連結会計年度において、新たにモデルハウスを3棟完成させ、新たなニーズの掘起こしと提案力を強化し、魅力ある住宅作りにつなげていく所存です。
マンション事業では、賃貸による安定的な収益を着実に拡大するべく、賃貸用不動産の新規取得を進めており、また区分所有単位で取得した中古マンションのリノベーション販売では、当連結会計年度の販売実績は17戸(同 34.6%減)となりました。特建事業につきましては、前連結会計年度に受注した3物件が完成し引渡しを行いました。
これらの結果、当連結会計年度における経営成績は、売上高433億73百万円(前連結会計年度比 8.5%増)、営業利益27億23百万円(同 15.4%減)、経常利益26億61百万円(同 15.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益17億51百万円(同 14.6%減)となりました。
なお、当社は令和5年4月1日施行の株式会社東京証券取引所の規則改正に伴い、スタンダード市場への選択申請を行い、令和5年10月20日より、プライム市場からスタンダード市場に移行しております。本件の詳細につきましては、令和5年9月4日付で公表いたしました「プライム市場の上場維持基準への適合に向けた計画に基づく進捗状況(変更)及びスタンダード市場への選択申請及び適合状況について」をご参照ください。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(戸建事業)
戸建事業のうち主力の戸建分譲について、当連結会計年度における販売棟数は1,303棟(うち、戸建分譲 1,219棟、土地分譲 84区画)(前連結会計年度比 8.8%増)となり、売上高は412億17百万円(同 10.1%増)となりました。前連結会計年度には完成在庫棟数が少なく販売棟数が伸び悩んだものの、比較的利益率の高い物件が多かったのに対し、当連結会計年度においては、分譲用地仕入と工程管理の強化により供給棟数の増加に取り組んだことで完成在庫棟数を確保した結果、売上高は伸長いたしました。しかしながら、収益性については、土地価格や建築資材価格の高騰などの影響から消費者マインドが冷え込む中、値下げを行って販売する物件が増加したことにより、利益率が前連結会計年度に比べて低下いたしました。請負工事におきまして、引渡棟数は33棟(同 37.7%減)、売上高は7億81百万円(同 23.8%減)となりました。戸建事業に関するその他の売上高は1億33百万円(同 11.8%減)となりました。これらの結果、戸建事業全体の売上高は421億32百万円(同 9.1%増)となり、セグメント利益は33億23百万円(同 16.0%減)となりました。
(その他)
その他の事業セグメントのうち、マンション事業について、賃貸収益による売上高は6億72百万円(前連結会計年度比 5.9%増)となりました。前連結会計年度中に取得した賃貸用不動産などが賃貸収益の増加に寄与いたしております。マンション分譲については、当連結会計年度にはリノベーションマンション17戸(同 34.6%減)を販売し、売上高は3億95百万円(同 38.5%減)となりました。特建事業では、売上高1億65百万円(同 214.8%増)を計上しております。
これらにマンション事業に関するその他の売上高1百万円(同 34.7%減)を加え、その他の事業セグメント全体の売上高は12億34百万円(同 7.4%減)となり、セグメント利益は3億52百万円(同 9.8%増)となりました。
b.財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は526億74百万円(前連結会計年度末比 0.6%減)となり、前連結会計年度末に比べて3億25百万円減少いたしました。主な減少要因は、棚卸資産の減少11億40百万円であり、一方、主な増加要因は、有形固定資産の増加12億5百万円であります。当連結会計年度におきましては、主力である戸建事業において、販売棟数の拡大に取組み、販売用不動産は33億21百万円増加したものの仕掛販売用不動産は40億34百万円減少しました。また、有形固定資産の増加につきましては、主にマンション事業における賃貸用不動産の取得によるものであります。
負債合計は136億36百万円(同 10.2%減)となり、前連結会計年度末に比べて15億55百万円減少しております。主な減少要因は、支払手形・工事未払金の減少20億84百万円及び短期有利子負債の減少6億88百万円であり、主な増加要因は、電子記録債務の増加13億17百万円であります。支払手形・工事未払金及び短期有利子負債の減少につきましては、主に棚卸資産の減少に伴うものであり、電子記録債務の増加は支払手形より切替えを進めていることによるものであります。また、純資産は390億37百万円(同 3.3%増)となり、前連結会計年度末に比べて12億30百万円増加いたしました。主な増減の要因は、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益17億51百万円に対して配当金の支払5億97百万円を行ったこと等により、利益剰余金が11億54百万円増加したことであります。
これらの結果、自己資本比率は71.7%となり、前連結会計年度末よりも2.6ポイント上昇しております。当社グループでは、今後も健全な財務体質の維持、向上に努めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、173億95百万円(前連結会計年度末比1.1%減)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは25億47百万円の収入(前連結会計年度は53億73百万円の支出)となりました。主な収入の要因は、税金等調整前当期純利益26億61百万円及び棚卸資産の減少額11億12百万円であり、主な支出の要因は、法人税等の支払額9億46百万円及び仕入債務の減少額8億17百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは13億32百万円の支出(前連結会計年度比 82.9%増)となりました。主な支出の要因は、有形固定資産の取得による支出13億41百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは14億12百万円の支出(前連結会計年度比 704.4%増)となりました。主な支出の要因は、短期借入金の純減少額6億97百万円及び配当金の支払額5億96百万円であります。
③ 生産・受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 令和4年11月1日
至 令和5年10月31日)
前年同期比(%)
件数
金額(千円)
1.戸建事業
(1)戸建分譲
1,379
44,806,008
+5.8
(2)請負工事
33
781,797
△23.7
戸建事業 計
1,412
45,587,805
+5.1
2.その他
(1)マンション分譲
20
389,228
△51.1
(2)特建事業
3
165,104
+214.8
その他 計
23
554,333
△34.7
合計
1,435
46,142,138
+4.3
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.件数欄については、戸建分譲は棟数又は区画数、請負工事は棟数又は契約数、マンション分譲は戸数、特建事業は棟数を表示しております。
b.受注実績
当社グループは主に見込み生産を行っており、請負工事等、一部には受注生産も行っておりますが、その多くが短期間で販売するものであるため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 令和4年11月1日
至 令和5年10月31日)
前年同期比(%)
件数
金額(千円)
1.戸建事業
(1)戸建分譲
1,303
41,217,734
+10.1
(2)請負工事
33
781,015
△23.8
(3)その他
-
133,404
△11.8
戸建事業 計
-
42,132,154
+9.1
2.その他
(1)マンション分譲
17
395,844
△38.5
(2)不動産賃貸
-
672,206
+5.9
(3)特建事業
3
165,104
+214.8
(4)その他
-
1,546
△34.7
その他 計
-
1,234,702
△7.4
セグメント計
-
43,366,856
+8.5
事業セグメントに帰属しない売上高
-
6,563
+4.1
合計
-
43,373,420
+8.5
(注)1.件数欄については、戸建分譲は引渡棟数又は引渡区画数、請負工事は引渡棟数又は完成契約数、マンション分譲は引渡戸数、特建事業は引渡棟数を表示しております。
2.戸建分譲における地域別の販売実績は、次のとおりであります。なお、地域別の分類は、物件の属する地域によって分類しております。
地域
件数
金額(千円)
前年同期比(%)
埼玉県
36
1,332,907
+14.6
千葉県
43
1,456,324
+51.2
東京都
58
2,648,029
+42.5
神奈川県
124
4,250,909
+1.0
愛知県
221
6,577,872
+2.0
滋賀県
55
1,474,463
+32.1
京都府
64
1,936,947
+7.9
大阪府
293
9,248,084
+29.8
兵庫県
199
6,063,960
△12.5
奈良県
114
3,265,633
+13.0
広島県
68
2,130,571
+27.6
福岡県
27
812,384
△33.9
佐賀県
1
19,645
△59.2
合計
1,303
41,217,734
+10.1
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」及び「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。これらの指標に関して、当連結会計年度における実績は、売上高経常利益率 6.1%(前連結会計年度は7.9%)、賃貸等不動産に関する資産、負債及び利益を除いた自己資本当期純利益率 5.3%(同 6.3%)、棚卸資産回転率 年1.8回転(同 年1.5回転)となっております。各利益率につきまして、厳選した分譲用地の仕入に注力してきましたが、土地価格や各種建築資材の高騰により、需給バランスが悪化し値下げする物件が増加した結果、売上総利益率は前連結会計年度より低下し、売上高営業利益率、売上高経常利益率は低下いたしました。販管費比率は売上高が増加したこともあり低下いたしました。翌連結会計年度においては、より厳選した仕入れの徹底を行い、魅力的な住宅作りに取り組むとともに、各種経費の削減やVE等により、収益性の改善に取り組んでまいります。また、棚卸資産回転率につきましては、前連結会計年度より売上原価が11.8%増加し、棚卸資産が前連結会計年度末に比べて5.2%減少しており、その結果、当連結会計年度における棚卸資産回転率は前連結会計年度より改善いたしました。分譲用地の仕入から販売までの事業サイクルの短縮に向け、工程管理の強化、業務効率の向上及び販売活動の強化を図り、引き続き年3回転を目標として、回転率の向上に努めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきまして、当社グループの資金需要のうち主なものは、分譲用地の仕入資金及び収益物件の購入資金等であり、主に内部留保資金又は当座貸越契約を含む金融機関からの借入により調達しております。なお、当連結会計年度末における社債、借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は75億80百万円(前連結会計年度末比 9.3%減)となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は173億95百万円(同 1.1%減)となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。