【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、前連結会計年度に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映させております。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が第5類に分類され、経済社会活動の正常化が進み、企業収益は総じて緩やかに改善の動きが見られました。一方で、ウクライナ情勢の長期化に伴う世界的な資源・エネルギー価格の高騰、世界的な金融引き締めに伴う円安の進行に起因する国内の物価上昇、イスラエルとハマスの武力衝突による地政学リスク等、先行き不透明な状況は継続しております。
当社グループの属する不動産市場におきましては、主力とする投資用不動産の市場は足元において拡大傾向にあると想定しております。また、国家戦略の「貯蓄から投資へ」、「資産所得倍増計画」の転換の受け皿として機能する点や、日本において賃貸比率の増加(厚生労働省 令和2年度版厚生労働白書)や中古住宅流通比率の増加傾向(一般社団法人不動産流通経営協会 「既存住宅流通量の地域別推計について」(令和5年2月))であることを踏まえると、投資用不動産のポテンシャルは高いと判断しております。
このような環境の中、当社グループは、RENOSYマーケットプレイス事業※及びITANDI事業にリソースを集中させ、マーケットシェア拡大による将来の利益最大化のため、成長投資を継続するとともに、不採算事業からの撤退、人材ポートフォリオ最適化による人材配置(異動)やDXによる効率化により人件費を圧縮、グループ会社移転などコーポレート機能を集約し、オペレーションコストを削減する等、収益構造改革も実施してまいりました。
※RENOSYマーケットプレイス事業は、主に投資用不動産の買取再販事業、不動産の売買・賃貸仲介・管理事業
(a)財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末に比べ8,277百万円増加し、31,141百万円となりました。これは主に現金及び現金同等物が5,610百万円増加し17,452百万円となったこと及び、棚卸資産が2,127百万円増加し10,183百万円となったことによるものであります。また、非流動資産は前連結会計年度末に比べ2,137百万円減少し、30,210百万円となりました。これは主に投資不動産が3,303百万円減少し11,303百万円となったこと、のれんが488百万円増加し7,773百万円となったこと、無形資産が462百万円増加し4,464百万円となったこと、使用権資産が563百万円減少し1,862百万円となったこと及び、繰延税金資産が467百万円増加し1,463百万円となったことによるものであります。
この結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ6,140百万円増加し、61,352百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末に比べ7,568百万円増加し、23,820百万円となりました。これは主に営業債務及びその他の債務が1,442百万円増加し3,516百万円となったこと、社債及び借入金が4,528百万円増加し10,447百万円となったこと及び、その他の金融負債が655百万円増加し2,550百万円になったことによるものであります。また、非流動負債は前連結会計年度末に比べ2,707百万円減少し、16,947百万円となりました。これは主に社債及び借入金が1,559百万円増加し4,496百万円となったこと及び、リース負債が4,261百万円減少し10,819百万円となったことによるものであります。
この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ4,861百万円増加し、40,767百万円となりました。
(資本)
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末に比べ1,279百万円増加し、20,584百万円となりました。これは主に利益剰余金が1,022百万円増加し989百万円となったことによるものであります。
(b)経営成績
当連結会計年度の業績は、売上収益146,647百万円(前年同期比29.1%増)、EBITDA※1 7,431百万円(前年同期比30.2%増)、事業利益※2 2,173百万円(前年同期比113.0%増)、営業利益2,211百万円(前年同期比117.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益1,010百万円(前年同期比162.7%増)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
①RENOSYマーケットプレイス事業
オーナーからの直接調達や新築コンパクトマンション等の商品ラインアップの拡充等による手数料率の改善施策の実施、サブスクリプションにおいて、スケールメリットを最大限活かすべくDX活用による業務効率化等を行ってまいりました。また、デジタルマーケティングを活用した効率的な集客によりRENOSY会員数も増加しております。その結果、主なKPIはRENOSY会員数※3 39.8万人(前年同期比約23%増)、ARPA※4 1,061百万円(前年同期比約20%増)、購入DX成約件数※5 5,621件(前年同期比約25%増)、売却DX成約件数※6 2,165件(前年同期比約61%増)、サブスクリプション契約件数※7 17,879戸(前年同期比約33%増)となり、売上収益、売上総利益、セグメント利益とも過去最高となっています。この結果、RENOSYマーケットプレイス事業の業績は、売上収益143,048百万円(前年同期比29.1%増)、セグメント利益6,564百万円(前年同期比32.7%増)となっております。
②ITANDI事業
改正宅建業法施行による市場ニーズの高まりの中、SaaS事業に対する費用対効果の高い投資を行ってまいりました。電子入居申込及び電子契約は業界シェアNo.1となるなど、仲介業者から高い評価を獲得しております。また、バーティカルSaaSの強みを生かして、導入社数増加に伴い、クロスセルでのプロダクト導入も伸長しております。その結果、主なKPIはARR※8 25.2億円(前年同期比約32%増)、累計顧客数2,681社(前年同期比約42%増)、導入プロダクト数8,487プロダクト(前年同期比約56%増)、チャーンレート※9 0.59%(前年同期0.47%)、ユニットエコノミクス※10 26.2倍(前年同期25.5倍)、ITANDI BB PV数956万PV(前年同期比約32%増)の達成など、黒字を確保しながら、高い成長率を実現しました。この結果、ITANDI事業の業績は、売上収益3,202百万円(前年同期比56.5%増)、セグメント利益702百万円(前年同期比149.5%増)となっております。
※1 EBITDA=事業利益+減価償却費(営業費用)
※2 事業利益=売上収益-売上原価-販売費及び一般管理費
※3 RENOSY会員数は2023年10月末時点での会員ストック数(会員登録した累計の人数)
※4 ARPAは、中古コンパクトマンションの通期売上収益を、当該年度の各月末時点のセールス人員数の平均値で除して算出
※5 購入DX成約件数はRENOSYマーケットプレイス内の投資、実需の購入成約件数の2023年10月期累計
※6 売却DX成約件数はRENOSYマーケットプレイス内の売却成約件数の2023年10月期累計
※7 2020年10月期第1四半期までは成約件数、それ以降は管理戸数で集計
※8 Annual Recurring Revenue。2023年10月末時点でのITANDI BB+の月額利用料金、従量課金、ライフラインサービスの収益の月末MRRに12を乗じて算出
※9 ITANDI BB+の2023年10月末時点での直近12ヶ月の平均月次チャーンレート
※10 1顧客当たり経済性。LTVをCACで除して算定した倍率、2023年10月末時点での直近12ヶ月の平均値
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,610百万円増加し17,452百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主な増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、6,798百万円(前年同期は2,238百万円の獲得)となりました。これは主に、減価償却費及び償却費5,257百万円、棚卸資産の増加額2,127百万円、税引前利益1,585百万円及び、営業債務及びその他の債務の増加額1,376百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、2,052百万円(前年同期は3,012百万円の使用)となりました。これは主に、無形資産の取得による支出1,335百万円、企業結合による支出449百万円及び、有形固定資産の取得による支出322百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は、808百万円(前年同期は2,686百万円の使用)となりました。これは主に、リース負債の返済による支出4,882百万円、長期借入れによる収入4,197百万円及び、短期借入金の純増額3,041百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
(b)契約実績
当社グループは、契約実績と販売実績が概ね同じであるため、記載を省略しております。
(c)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年11月1日
至 2023年10月31日)
金額(百万円)
前年同期比(%)
RENOSYマーケットプレイス事業
143,009
129.0
ITANDI事業
3,188
156.9
その他事業
449
64.8
合計
146,647
129.1
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)財政状態
当連結会計年度の財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 (a)財政状態」に記載のとおりであります。
(b)経営成績
(売上収益及び売上総利益)
売上収益は、RENOSYの認知度向上やデジタルマーケティングを活用した効率的な集客により RENOSY会員数が順調に伸びたことで、RENOSYマーケットプレイスの販売件数が増加した結果、146,647百万円(前年同期比29.1%増)となりました。また、売上総利益率が高いイタンジの収益が伸長したことに加えて、従前より実施しているRENOSYマーケットプレイスの各種手数料改善施策の奏功及びサブスクリプションにおいてのスケールメリット効果、DX活用による業務効率化等により、売上総利益は22,622百万円(前年同期比36.9%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、EBITDA及び営業利益)
販売費及び一般管理費は認知度向上(利用意向向上)を目的とした広告宣伝費の積み増し及び主に人件費の増加により、20,448百万円(前年同期比31.9%増)となりました。
この結果、EBITDA※7,431百万円(前年同期比30.2%増)、営業利益2,211百万円(前年同期比117.9%増)となりました。
※EBITDA=事業利益+減価償却費(営業費用)
(金融収益、金融費用及び税引前利益)
金融収益が11百万円(前年同期比136.0%増)であったのに対して、金融費用が主に資金調達関係の支払利息や手数料により637百万円(前年同期比17.6%増)となりました。
この結果、税引前利益は1,585百万円(前年同期比232.0%増)となりました。
(法人所得税費用及び当期利益)
法人所得税費用は、主に税引前利益の増加により、566百万円(前年同期比512.4%増)となりました。
この結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,010百万円(前年同期比162.7%増)となりました。
(c)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は投資用不動産の取得、販売費及び一般管理費の広告宣伝費及び人件費、ソフトウエアの開発投資及びM&A等であります。これらの資金需要に対しては、営業活動から獲得する自己資金及び金融機関からの借入や社債による調達を基本としており、経済・金融環境の変化に備えた十分な手許流動性の確保により、安定した財務基盤の維持に努めております。また、資金調達の機動性及び流動性確保の補完機能を高めるため、取引銀行と当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を有しております。
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