【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境や企業収益等の改善を背景に、景気は緩やかな回復基調にあったものの、通商問題の動向や中国経済の減速等に加え、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が国内外の経済活動に深刻な影響を及ぼしており、依然として先行きは不透明な状況で推移いたしました。
香料業界は、国内市場の成熟化、同業者間での競争激化、品質保証に関する要求増加など依然として厳しい状況にありました。
このような環境の中で、当社グループは製品の品質管理と安全性の確保を第一に、研究・技術開発力の一層の向上に努め、当社独自の高品質・高付加価値製品の開発に注力してまいりました。一方、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞に伴い、当社グループでは、2019年11月8日に公表した当初計画に織り込んでいた需要が見込めず、当初計画を下方修正するなど、業績への影響が生じました。
この結果、当連結会計年度におきましては、売上高は50,192百万円(前連結会計年度比0.6%減)と減収となりました。なお、当社単体の売上高は前連結会計年度比2.2%の減収、主要な海外連結子会社の売上高は、中国子会社が前連結会計年度比2.6%の増収(現地通貨ベースでは同6.7%の増収)、米国子会社が前連結会計年度比7.5%の増収(現地通貨ベースでは同9.7%の増収)、マレーシア子会社が前連結会計年度比0.5%の増収(現地通貨ベースでは同4.3%の増収)となりました。
部門別に見ますと、食品部門は、当社単体の売上が減少したものの、米国子会社及び中国子会社の売上が増加したことを主因に前連結会計年度比0.3%増加し、43,159百万円となりました。
フレグランス部門は、当社単体、中国子会社及びインドネシア子会社の売上が減少したことを主因に前連結会計年度比5.9%減少し、7,032百万円となりました。
利益につきましては、営業利益は、売上原価率の改善による売上総利益の増加、並びに販売費及び一般管理費の減少を主因に前連結会計年度に比べ677百万円(14.5%)増加し、5,356百万円となりました。経常利益は前連結会計年度に比べ685百万円(13.2%)増加し、5,861百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加、並びに前連結会計年度において米国子会社に係るのれん等に関して計上した減損損失がなくなったことを主因に、前連結会計年度に比べ969百万円(23.5%)増加し、5,090百万円となりました。
セグメントの経営成績は次のとおりであります。なお、セグメントごとの経営成績については、セグメント間の内部売上高等を含めて表示しております。
(日本)
売上高は、食品部門の売上減少を主因に36,831百万円(前連結会計年度比2.2%減)となりました。セグメント利益は、売上高の減少を主因に3,729百万円(前連結会計年度比3.7%減)となりました。
(アジア)
売上高は、中国子会社などで売上が増加した一方で、円高の影響が円ベースでの売上のマイナス要因となったものの、8,096百万円(前連結会計年度比0.7%増)となりました。セグメント利益は、中国子会社などでの売上構成の変化に伴う売上原価率の改善を主因に1,029百万円(前連結会計年度比90.3%増)となりました。
(米国)
売上高は、米国現地企業向けの売上が増加した一方で、円高の影響が円ベースでの売上のマイナス要因になったものの、6,254百万円(前連結会計年度比7.1%増)となりました。セグメント利益は、販売費及び一般管理費の減少を主因に549百万円(前連結会計年度比266.6%増)となりました。
b.財政状態の状況
資産、負債及び純資産の状況
(流動資産)
前連結会計年度に比べ、現金及び預金が854百万円、有価証券が4,000百万円それぞれ増加した一方で、原材料及び貯蔵品が418百万円、投資有価証券の売却にかかる未収入金を主とした流動資産その他が1,732百万円、それぞれ減少しました。これらを主因に、流動資産は前連結会計年度に比べ2,393百万円増加し、59,013百万円となりました。
(固定資産)
有形固定資産は、前連結会計年度に比べ、建設仮勘定が1,205百万円増加した一方で、建物及び構築物が純額で211百万円、機械装置及び運搬具が純額で239百万円、売却などにより土地が221百万円、それぞれ減少したことを主因として、前連結会計年度に比べ527百万円増加し、29,345百万円となりました。
無形固定資産は、のれん、顧客関連資産の減価償却が進んだことを主因として、前連結会計年度に比べ、338百万円減少し、3,839百万円となりました。
投資その他の資産は、投資有価証券を売却したことを主因として、前連結会計年度に比べ3,001百万円減少し、21,246百万円となりました。
(流動負債)
前連結会計年度に比べ、支払手形及び買掛金が658百万円、未払法人税等が1,017百万円、それぞれ減少したことを主因として、流動負債は前連結会計年度に比べ1,448百万円減少し、10,261百万円となりました。
(固定負債)
前連結会計年度に比べ、投資有価証券を売却したことを主因として繰延税金負債が794百万円減少しました。これにより、固定負債は前連結会計年度に比べ844百万円減少し、10,965百万円となりました。
(純資産の部)
前連結会計年度に比べ、利益剰余金が3,598百万円増加し、その他有価証券評価差額金が1,989百万円減少しました。これらを主因として、純資産合計は前連結会計年度に比べ1,874百万円増加し、92,218百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ4,461百万円増加(前連結会計年度は3,677百万円増加)し、25,360百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は6,387百万円(前連結会計年度は9,230百万円増加)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が7,028百万円、減価償却費が2,868百万円であった一方で、法人税等の支払額が2,712百万円、投資有価証券売却及び評価損益が867百万円であったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は431百万円(前連結会計年度は2,275百万円減少)となりました。これは主に定期預金の預入が2,952百万円、同払戻が2,636百万円であったことと、有形固定資産の取得による支出3,150百万円、投資有価証券の売却による収入2,578百万円が、それぞれあったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は1,511百万円(前連結会計年度は3,035百万円減少)となりました。これは主に配当金の支払が1,491百万円であったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2019年10月1日
至 2020年9月30日)
前年同期比(%)
日本 (百万円)
34,423
97.0
アジア (百万円)
7,904
107.3
米国 (百万円)
5,987
109.6
合計 (百万円)
48,315
100.0
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2019年10月1日
至 2020年9月30日)
前年同期比(%)
日本 (百万円)
2,262
89.4
アジア (百万円)
207
68.7
米国 (百万円)
-
-
合計 (百万円)
2,469
87.2
(注) 金額は仕入価格によっており、セグメント間取引の相殺消去前の数値によっております。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高
(百万円)
前年同期比(%)
受注残高
(百万円)
前年同期比(%)
日本
36,094
97.5
1,735
98.0
アジア
7,968
100.3
463
110.9
米国
6,324
108.9
583
146.6
合計
50,387
99.2
2,782
107.5
(注) 金額は販売価格で表示しております。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2019年10月1日
至 2020年9月30日)
前年同期比(%)
日本 (百万円)
36,130
97.8
アジア (百万円)
7,923
101.0
米国 (百万円)
6,138
107.6
合計 (百万円)
50,192
99.4
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社グループが採用している会計方針において使用されている重要な会計上の見積りおよび前提条件は、以下の事項及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(追加情報)」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたって、当社経営陣は決算日における資産・負債の金額、並びに報告期間における収益・費用の金額のうち、見積りが必要となる事項につきましては、過去の実績・現在の状況を勘案して可能な限り正確な見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これら見積りと異なる場合があります。連結財務諸表に関して、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです。
(a)繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(b)退職給付債務及び退職給付費用の算定
当社グループは、退職給付債務及び退職給付費用について、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(c)固定資産の減損
当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産等について、減損テストを実施しております。減損テストにおける回収可能価額の算定において、将来のキャッシュ・フロー、割引率等について一定の仮定を設定しております。これらの仮定は、経営者の最善の見積りと判断により決定しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表等において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
(売上高)
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(営業利益)
売上原価は前連結会計年度に比べ589百万円減少し、30,783百万円となりました。また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ388百万円減少し、14,052百万円となりました。
これらの結果、営業利益は前連結会計年度に比べ677百万円(14.5%)増加し、5,356百万円となりました。
(経常利益)
経常利益は、営業利益の増加を主因に前連結会計年度に比べ685百万円(13.2%)増加し、5,861百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益は、投資有価証券の売却益が前連結会計年度より少なかったことなどを主因として、1,438百万円減少し、1,227百万円となりました。特別損失は、主として米国子会社FLAVOR INGREDIENT HOLDINGS, LLCに係るのれん等に関する減損損失がなくなったことにより、前連結会計年度に比べ2,317百万円減少し、59百万円となりました。
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,564百万円増加し、7,028百万円となりました。税金費用は、前連結会計年度に比べ595百万円増加し、1,938百万円となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ969百万円(23.5%)増加し、5,090百万円となりました。
b.財政状態
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.財政状態の状況」に記載のとおりであります。
c.キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
d.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループでは、中期3ヵ年経営計画(連結)(毎期見直しを行うローリング方式)を定め、会社として達成すべき目標を明確にしております。2020年9月期は、売上高51,600百万円、営業利益5,100百万円、経常利益5,550百万円、親会社株主に帰属する当期純利益4,250百万円の計画(2019年11月8日公表)を掲げ、その実現に取り組んでまいりました。
しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の停滞に伴い、当社グループが上記計画に織り込んでいた需要が見込めない状況となりました。その結果、2020年5月8日に当初計画を下方修正(売上高50,500百万円、営業利益4,880百万円、経常利益5,320百万円、親会社株主に帰属する当期純利益4,640百万円)するなど、当社グループの業績に影響が生じました。
当連結会計年度は、新型コロナウイルスの影響が想定よりも大きく、当社単体の売上高が修正計画を下回ったことを主因に売上高が計画未達となりました。しかしながら、売上原価並びに販売費及び一般管理費が計画を下回ったことを主因に、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は修正計画を上回る結果となりました。
セグメントごとの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
日本は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う飲食店等の休業要請や外出自粛、在宅勤務の浸透により、飲料の消費低迷、得意先の新商品の発売延期・中止等の影響を受けました。この結果、売上高は、食品部門及びフレグランス部門の売上が減少したことを主因に前連結会計年度比減収となりました。セグメント利益は、売上高の減少を主因に前連結会計年度比減益となりました。
アジアは、中国において、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、経済活動が一時的に低迷したものの、飲料向けの需要回復や巣籠り需要による即席麺向けの需要増加等を背景に中国子会社の業績が回復しました。一方、東南アジアは、マレーシア国内での需要低迷やタイ、インドネシアにおける景気後退の影響等を受けました。この結果、売上高は前連結会計年度比増収となりました。セグメント利益は、中国子会社などでの売上構成の変化に伴い、売上原価率が改善したことを主因に前連結会計年度比増益となりました。
米国は、Essential Businessとして外出禁止令の対象除外となったため、生産体制、原材料調達、物流に大きな影響はありませんでした。この結果、売上高は外食向け新規採用品の寄与、即席麺向けの売上が増加したことを主因に前連結会計年度比増収となりました。セグメント利益は、のれん償却額の減少に伴う販売費及び一般管理費の減少を主因に前連結会計年度比増益となりました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響が長期化しており、今後も先行きが不透明な状況が続くことが見込まれますが、当社グループは、「技術立社」の社是のもと、研究・技術開発力の向上により、特長のある差別化された製品開発を行うとともに、生産性の向上や業務全般の効率化によるコスト削減に努めてまいります。また、少子高齢化に伴う成熟化が進行する国内市場でのシェア拡大に努める一方で、中国、東南アジアを中心としたアジア地域及び米国において、グローバル展開を更に強化し、海外市場での業績拡大を目指してまいります。
e.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、持続的・安定的な発展を通じて中長期的な企業価値の向上を実現していくために、必要かつ可能な範囲を意識して、連結売上高伸長率4.0%以上、2023年9月期に連結売上高営業利益率11.0%、連結売上高経常利益率12.0%を目標としております。
当連結会計年度の連結売上高伸長率は、当社単体の売上が減少したことを主因に△0.6%となりました。しかしながら、売上原価率の改善による売上総利益の増加、並びに販売費及び一般管理費の減少を主因に連結売上高営業利益率は、前連結会計年度比1.4ポイント改善の10.7%、連結売上高経常利益率は、前連結会計年度比1.4ポイント改善の11.7%となりました。当連結会計年度は、連結売上高伸長率が目標未達となりましたが、引き続き、当社グループはこれらの指標を向上させるべく努めてまいります。
なお、当連結会計年度を含む、直近3連結会計年度の代表的な指標の推移は以下のとおりです。
(単位:%)
2018年9月期
2019年9月期
2020年9月期
連結売上高伸長率
3.6
1.5
△0.6
連結売上高営業利益率
10.2
9.3
10.7
連結売上高経常利益率
11.1
10.3
11.7
f.経営成績に重要な影響を与える要因
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
g.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業活動及び設備投資のための適切な資金確保を常に目指しており、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を重視しております。
当連結会計年度末の資金の流動性は十分に確保されていると認識しており、また、金融機関との間にコミットメントラインを設定することで、急な資金需要や不測の事態にも備えております。