【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 市場状況並びに経営成績の概要及び分析2023年は欧米の物価高や金融引締めにより、経済成長は鈍化しているものの、日本においては新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられ、景気は緩やかな回復傾向にあります。一方、ロシア・ウクライナ情勢や米国の金利及び日本の金利政策に関連した急激な円安の進行、原材料価格やエネルギー価格の上昇により、依然として先行き不透明な状況が続くことが見込まれます。このような状況下であるものの、2022年度のバイオファウンドリ事業においては、バイオファウンドリ研究所の構築にあたって追加的な予算が交付されました。また、国内大手企業とのバイオ樹脂原料にかかる研究開発契約の締結やオイルパーム廃木にかかる調査契約の締結に至っております。
以上の結果、当事業年度は売上高897,422千円(前年同期比53.4%増)、営業損失106,917千円(前期営業損失99,065千円)、経常損失108,156千円(前期経常損失113,873千円)となりました。当期純損失については、112,215千円(前期当期純損失234,324千円)となりました。なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
② 財政状態の分析
a 資産当事業年度末における流動資産は2,637,473千円となり、前事業年度末に比べ746,832千円減少いたしました。これは主に売上高に紐づく研究開発活動にかかる仕掛品が49,187千円増加した一方、バイオファウンドリ事業における設備投資のうちNEDOの所有分による立替金が353,580千円、現金及び預金が339,908千円、売掛金が87,640千円減少したことによるものであります。固定資産は34,624千円となり、前事業年度末に比べ34,624千円増加いたしました。これは主にリース資産が14,385千円増加したことによるものであります。この結果、総資産は2,672,098千円となり、前事業年度末に比べ712,207千円減少いたしました。
b 負債当事業年度末における流動負債は396,223千円となり、前事業年度末に比べ578,623千円減少いたしました。これは主に未払金が34,636千円増加した一方、バイオファウンドリ事業における設備投資等費用の概算額の入金による仮受金が636,829千円、前受金が46,050千円減少したことによるものであります。固定負債は165,385千円となり、前事業年度末に比べ26,301千円減少いたしました。これは主にリース資産の賃貸借により長期リース債務が9,897千円増加した一方、借入金の返済等により長期借入金が44,810千円減少したことによるものであります。この結果、負債合計は561,609千円となり、前事業年度末に比べ604,924千円減少いたしました。
c 純資産当事業年度末における純資産合計は2,110,488千円となり、前事業年度末に比べ107,283千円減少いたしました。これは新株予約権行使により資本金が3,906千円、資本準備金が3,906千円増加した一方、利益剰余金が112,215千円減少したことによるものであります。この結果、自己資本比率は78.9%(前事業年度末は65.5%)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、本項目において「資金」という。)については、前事業年度末より339,908千円減少し、2,401,060千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
a 営業活動によるキャッシュ・フロー営業活動の結果、支出した資金は321,199千円(前事業年度においては337,564千円の獲得)となりました。これは主にバイオファウンドリ事業における設備投資のうちNEDOの所有分による立替金の減少額353,580千円、売掛金の回収に伴う売上債権の減少額87,640千円の増加要因があったものの、主としてバイオファウンドリ事業における設備投資等費用の概算払いによる仮受金の減少額636,829千円、税引前当期純損失108,156千円、売上高に紐づく研究開発活動にかかる仕掛品を含む棚卸資産の増加額48,488千円、前受金の減少額46,050千円の減少要因によるものであります。
b 投資活動によるキャッシュ・フロー投資活動の結果、支出した資金は13,410千円(前事業年度においては36,477千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出12,956千円の減少要因によるものであります。
c 財務活動によるキャッシュ・フロー財務活動の結果、支出した資金は5,299千円(前事業年度においては1,612,812千円の獲得)となりました。これは主に新株予約権行使による株式の発行による収入2,772千円の増加要因があったものの、リース債務の返済による支出4,567千円、及び長期借入金の返済による支出4,070千円の減少要因によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の状況
a 生産実績当社は生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
b 受注実績当社が提供する役務の性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c 販売実績当事業年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社はバイオリファイナリー事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
バイオリファイナリー事業
897,422
153.4
注1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度(自 2021年10月1日 至 2022年9月30日)
当事業年度(自 2022年10月1日 至 2023年9月30日)
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
248,069
42.4
607,111
67.7
Ningxia Eppen BiotechCo., Ltd.
100,404
17.2
6,446
0.7
DIC株式会社
65,511
11.2
1,350
0.2
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次のとおりであります。また、次の文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社の財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項については、過去の実績や市場動向を勘案し、合理的に判断しておりますが、不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる可能性があります。当社の財務諸表にかかる重要な会計方針の詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。特に次の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
(固定資産の減損処理)当社は、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当社の将来の事業計画を基に、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。将来の事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失を計上する可能性があります。
(繰延税金資産)繰延税金資産については、当社の将来の課税所得見込みや想定実効税率等、現状入手可能な将来情報に基づき、合理的に将来の税金負担を軽減する効果を有し、回収可能性があると考えられる範囲内で計上することとしております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額に影響する可能性があります。
② 経営成績の分析
a 売上高当事業年度における売上高については、前事業年度より312,260千円増加し、897,422千円となりました。これは主にバイオリファイナリー事業のインフラ整備を目的として受託しているバイオファウンドリ事業等の国のプロジェクト、並びに石油資源の枯渇、CO2削減又は使い捨てプラスチックにかかる法的及び業界の規制を見据えた企業の、石油由来の化学品からバイオマス由来の化学品への転換の需要の伸長による、研究開発契約の締結によるものであります。
b 売上原価当事業年度における売上原価については、前事業年度より222,666千円増加し、478,080千円となりました。これは主に当事業年度において、バイオファウンドリ事業を始めとする研究開発契約に紐づき発生する外注費及び間接原価が前事業年度と比較して増加したことによるものであります。
c 販売費及び一般管理費及び営業損失当事業年度における販売費及び一般管理費については、事業規模の拡大に伴う増員及び増員に伴う各種経費の増加の結果、前事業年度より97,446千円増加し、526,259千円となりました。以上の結果、営業損失は106,917千円となりました。
d 営業外収益、営業外費用及び経常損失当事業年度における営業外収益については、前事業年度より11,781千円減少し、684千円となりました。また、営業外費用については、前事業年度より25,350千円減少し、1,924千円となりました。これは主に上場関連費用19,569千円の減少等によるものであり、以上の結果、経常損失は108,156千円となりました。
e 特別利益、特別損失及び当期純損失当事業年度においては、特別利益の発生はなく、固定資産除却損0千円の特別損失が発生しました。また、法人税、住民税及び事業税2,025千円、及び法人税等調整額2,032千円を計上した結果、当期純損失は112,215千円となりました。
③ キャッシュ・フローの分析キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性の分析当社は、自らは製品の生産設備を保有せず、研究開発に必要な設備のみを有し、技術を提供する事業形態であることから、資金需要の主なものは、菌体及びバイオプロセスの基礎開発にかかる研究開発費その他人件費等の事業活動費でありますが、2022年9月期より、バイオファウンドリ事業において、インフラ整備のための新たな研究施設の建設、発酵槽や自動化機器等の研究開発設備への大規模な追加投資を行っております。ただし、これらの固定資産は事業期間中においては、NEDOが所有するものとなり、事業終了後に簿価買取となります。運転資金については、2020年9月期においては新型コロナウイルス感染症による経済の低下の可能性を鑑み、融資により60,000千円を調達しており、2021年9月期においても100,000千円の融資及び第三者割当増資による株式発行により550,000千円を調達しております。さらに、2022年9月期においては上場に伴う株式発行の有償一般募集及び有償第三者割当により1,617,875千円を調達しております。上述の大規模投資についてはバイオファウンドリ事業の事業予算及び上場に伴う株式発行による調達資金を充当いたします。なお、それ以降は現時点において大規模な資金需要の計画はなく、基本的に流動性の高い銀行預金により賄う方針であります。
⑤ 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析当社は、新興市場であるバイオリファイナリー業界においては、当面、売上高の拡大が同業界における企業成長を示すものと考えており、目標とする経営指標として売上高を掲げております。売上高実績については、国等のプロジェクトの契約の締結による受託収入、並びに研究開発契約の締結による研究開発収入及びライセンス契約の締結によるライセンス一時金等の計上により、前事業年度は585,161千円(前年同期比16.4%増)、当事業年度は897,422千円(前年同期比53.4%増)であります。売上高は、現時点において上述の方針どおりの進捗となっており、堅調に推移しているものと認識しております。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因当社は、当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、経済動向、世界市場を対象としたライセンス契約による製品の市場展開、特定の第三者の技術を基盤とする事業展開、技術の損失、漏洩及び知的財産権の侵害等によるリスクを認識しております。これらのリスクに対応するため、当社は、製品の市場動向を見据え、ライセンシーとの密な提携により、予算や各種計画の精度を上げるとともに、研究開発活動への投資を拡大して、当社単独による特許権の取得や多様な製品を対象とした研究開発を推進し、併せて情報セキュリティの拡充を含む内部統制の向上により、情報資産の管理、保全に取り組んでまいります。
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