【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の概要
①経営成績
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されるなど、持ち直しの動きがみられた一方、ウクライナ侵攻の長期化等に伴う資源価格の高止まりや、内外金利差の拡大等を受けての急激な為替変動など、先行き不透明な状況が継続いたしました。
当社の主要業務である賃貸住宅分野においては、貸家の住宅着工戸数は2021年3月以降前年同月比増加に転じましたが、当社が主に取り扱う単身世帯向けの居住用賃貸住宅については、総務省の発表によれば、人口減少のなか世帯数は増加が継続し、なかでも単独世帯は2000年以降一貫して増加、2010年対比で一般世帯に占める割合は25.5%から32.9%に上昇しており、当社の賃貸住宅についても堅調な需要が継続しました。
コロナ禍の賃料収入への影響も、当社が主力とする居住用賃貸住宅については現時点では僅少であり、今後の状況推移によるリスクの増大の可能性は認められるものの、当面の入居需要は引き続き堅調に推移するものと見込まれます。
一方、マンションの不動産価格指数は、国土交通省の発表によれば、124ヶ月連続で前年同期比上昇し、2023年6月時点では190.7と高水準にあり、新規物件仕入れに伴うリスク増加傾向が継続しております。
このような事業環境のもと、当社は、新規賃貸物件の仕入れについては引き続き慎重対応を基本とし、既存賃貸物件の入居率の維持向上と、入居率等へのコロナ禍の影響を注視し、可能な対策を講じることによるリスク管理のもとでの安定的な賃料収入の維持確保に努めるとともに、手持ち不動産の選別的な売却による利益の確定と新規物件の選別的取得を実施いたしました。
<不動産賃貸サービス>
当事業年度における不動産賃貸サービスにおいては、利回り及び不動産市況リスクの状況を踏まえて、保有物件、サブリース物件及び受託物件の入居率の維持向上に注力することにより、安定収益の確保につとめました。
この結果、不動産賃貸サービスの売上高として1,208百万円(前事業年度比4.1%減)を計上いたしました。
<不動産証券化サービス>
当事業年度における不動産証券化サービスにおいては、既存証券化サービス物件の入居率の維持向上につとめることにより、安定収益の確保につとめました。
この結果、不動産証券化サービスの売上高として272百万円(前事業年度比1.6%減)を計上いたしました。
<不動産売買>
当事業年度における不動産売買においては、岡山県岡山市に保有する共同住宅1棟、福岡県福岡市に保有する共同住宅1棟、新潟県阿賀野市に保有する土地22筆、新潟県柏崎市に保有する土地9筆、栃木県足利市に保有する区分所有建物1室、静岡県賀茂郡東伊豆町に保有する古家付土地1筆及び北海道白老郡白老町に保有する土地31筆を売却するとともに、東京都新宿区所在の区分所有建物2室、東京都文京区所在の共同住宅1棟、岩手県盛岡市所在の遊技場1棟、東京都豊島区所在の共同住宅1棟を取得いたしました。この結果、不動産売買の売上高として1,324百万円(前年同期比123.2%増)を計上いたしました。
以上の結果、当事業年度の経営成績は、売上高2,808百万円(前事業年度比30.0%増)、営業利益382百万円(前事業年度比68.9%増)、経常利益160百万円(前事業年度比76.2%増)、当期純利益142百万円(前事業年度比135.9%増)となりました。
当社事業は、不動産賃貸関連サービスの単一セグメントであるため、セグメント別の記載は行っておりません。
②キャッシュ・フロー
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、有形固定資産の取得等により投資活動によるキャッシュ・フローが3,875百万円の支出を計上する一方、短期及び長期借入並びに匿名組合預り金の増加により財務のキャッシュ・フローが3,168百万円の収入を計上した他、販売用不動産の売却により棚卸資産が1,049百万円減少するとともに、税引前当期純利益157百万円の計上等により営業活動によるキャッシュ・フローが1,348百万円の収入を計上したことにより、前事業年度末に比べ642百万円増加し、当事業年度末には1,470百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は1,348百万円(前事業年度は969百万円の獲得)となりました。
収入の主な内訳は、税引前当期純利益157百万円、減価償却費234百万円、棚卸資産の減少額1,049百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は3,875百万円(前事業年度は54百万円の支出)となりました。
支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出3,950百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は3,168百万円(前事業年度は776百万円の支出)となりました。
収入の主な内訳は、短期借入れによる収入3,174百万円、長期借入れによる収入3,728百万円及び匿名組合預り金の預りによる収入1,709百万円であり、支出の主な内訳は、短期借入金の返済による支出2,669百万円、長期借入金の返済による支出1,311百万円及び匿名組合預り金の償還による支出1,350百万円であります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社で行う事業は、提供する商品・サービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社は受注に基づく生産もしくは商品・サービスの提供を行っておりませんので、当該記載を省略しております。
c. 販売実績
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。
不動産賃貸関連サービスの単一セグメントであるため、事業内容別に区分した記載としております。
事業内容
当事業年度
(自 2022年10月1日
至 2023年9月30日)
前事業年度比(%)
不動産賃貸サービス(千円)
1,208,914
95.9
不動産証券化サービス(千円)
272,402
98.4
不動産売買(千円)
1,324,230
223.2
小計(千円)
2,805,547
131.7
その他(千円)
2,539
8.4
合計(千円)
2,808,087
130.0
(注)1.不動産証券化サービスの販売実績は、証券化商品の販売等に係わる手数料の他、証券化対象賃貸不動産に係わる賃料収入等の売上実績を記載しております。
2.不動産売買の販売実績は、不動産の売却によるものを別記したものであり、当事業年度については、全て不動産賃貸サービス対象不動産にかかるものであります。
3. 主な相手先別の販売実績は、前事業年度及び当事業年度は居住用物件の販売であります。
4.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自 2021年10月1日
至 2022年9月30日)
当事業年度
(自 2022年10月1日
至 2023年9月30日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
東京建物不動産販売株式会社
–
–
950,895
33.9
株式会社マリモ
593,200
27.5
–
–
株式会社フルネス
–
–
318,401
11.3
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①当事業年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当事業年度の財政状態及び経営成績は、以下のとおりであります。
a. 財政状態の分析
(a) 流動資産
当事業年度末における流動資産は2,496百万円となり、前事業年度末に比べ332百万円増加いたしました。
これは主に、販売用不動産が378百万円減少した一方、現金及び預金が622百万円増加したことによるものであります。
(b) 固定資産
当事業年度末における固定資産は16,244百万円となり、前事業年度末に比べ3,029百万円増加いたしました。
これは主に、土地が1,740百万円、建物が1,311百万円増加したことによるものであります。
(c) 流動負債
当事業年度末における流動負債は1,769百万円となり、前事業年度末に比べ399百万円増加いたしました。
これは主に、1年内償還予定の匿名組合預り金が133百万円減少した一方、短期借入金が504百万円増加、1年以内返済予定の長期借入金が106百万円増加したことによるものであります。
(d) 固定負債
当事業年度末における固定負債は12,967百万円となり、前事業年度末に比べ2,836百万円増加いたしました。
これは主に、長期借入金が2,309百万円、匿名組合預り金が525百万円増加したことによるものであります。
(e) 純資産
当事業年度末における純資産は4,003百万円となり、前事業年度末に比べ125百万円増加いたしました。
これは主に、当期純利益の計上142百万円等により利益剰余金が126百万円増加したことによるものであります。
b. 経営成績の分析
(売上高)
当事業年度における売上高は2,808百万円となり、前事業年度に対し648百万円の増加(前事業年度比30.0%増)となりました。これは、主に当事業年度の販売用不動産の売却による売上高が前事業年度と比較して増加しているためです。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度における売上原価は1,901百万円となり、前事業年度に対し561百万円の増加(前事業年度比41.9%増)となりました。これは、主に販売用不動産関連原価が増加したことによるものであります。
その結果、当事業年度の売上総利益は906百万円(前事業年度比86百万円増、10.6%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度における販売費及び一般管理費は523百万円となり、前事業年度に対し69百万円の減少となりました。これは主に、給料手当27百万円、業務委託費25百万円及び広告宣伝費が10百万円減少したことによるものであります。
その結果、当事業年度の営業利益は382百万円(前事業年度比156百万円増、68.9%増)となりました。
(営業外損益、経常利益)
当事業年度における営業外収益は42百万円となり、前事業年度に対し23百万円の増加となりました。これは主に、保険解約益が24百万円増加したことによるものであります。
当事業年度における営業外費用は264百万円となり、前事業年度に対し109百万円の増加となりました。これは主に、支払手数料46百万円及びシンジケートローン手数料53百万円が増加したことによるものであります。
その結果、当事業年度の経常利益は160百万円(前事業年度比69百万円増、76.2%増)となりました。
また、売上高経常利益率は5.7%(前事業年度比1.5ポイント増)となりました。
(当期純利益)
その結果、法人税等14百万円を控除し、当事業年度の当期純利益は142百万円(前事業年度比82百万円増加、135.9%増)となりました。
当社の経営成績に重要な影響を与える要因といたしましては、法的規制、景気や金利の変動などの経済状況の影響など様々な要因が挙げられます。詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
当社事業は、不動産賃貸関連サービスの単一セグメントであるため、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は行っておりません。
②資本の財源及び資金の流動性
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載のとおりです。
当社の資金需要の主なものは、賃貸不動産の取得費用であり、その調達手段は主として、金融機関からの借入金及び不特法許可に基づく匿名組合預り金によっております。賃貸不動産取得費用以外の運転資金につきましては、自己資金で対応することを原則とし、一定程度の手元流動性を維持し、金融費用を低減するよう努めております。
③重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたりまして、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。
当該見積りにつきましては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に関して適切な仮定設
定、情報収集を行い、見積り金額を計算しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、こ
れらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 販売用不動産の評価
販売用不動産について、正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を正味売却価額まで減額し、当該減少額を評価損として計上しております。そのため、販売計画や市場環境の変化により、その見積額の前提とした条件や仮定に変更が生じ正味売却価額が帳簿価額を下回る場合には評価損が必要となる可能性があります。
② 固定資産の評価
固定資産について、土地と建物を一体として物件単位でグルーピングしており、減損の兆候があり、かつ資
産の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合は、回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。
減損の兆候の判定及び回収可能性の見積りは、不動産鑑定士による鑑定評価額及び将来キャッシュ・フロー
の見積り等であります。不動産市況、経済情勢等の著しい変化や収益状況の悪化等により、見積額の前提と
した条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損損失の発生する可能性があります。