【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、コロナ禍が収束して社会経済活動が平常に向かう中、政府による政策効果等により景況感は緩やかに回復しておりますが、世界的な金融引き締め政策の長期化による海外景気の下振れリスクや中国経済の先行き懸念、為替相場の見通し、今後の日銀による金融政策の動向など、国内景気の先行きは不透明な状態が続いております。
食品流通業界におきましては、消費者の食生活や購買行動の多様化が進むとともに、小売業の業種・業態を超えた競争が激しくなっております。さらに、コロナ禍からの経済活動の正常化の中で、原材料価格も含めた仕入価格や人件費・エネルギー価格等のコストアップに、円安の影響も加わり、商品の値上げが断続的に実施される状況が続いております。また、商品の値上げ等により家計への負担感がさらに増すことで、日常の生活関連消費については生活防衛意識が一層強くなると予想されます。そして、コロナ禍からの行動制限解除により外食関連需要に回復が見られる一方、家庭内消費に関連する需要は堅調ではあるものの、物価上昇に伴う節約志向の進行による消費マインドの冷え込みが顕在化してまいりました。
このような状況に対して当社グループは、グループミッションである『豊かな食生活を提供して人々の幸せを実現すること』を目指して、デジタル技術の活用も含めた取引先との取組み強化、業務の見える化・見直し及び生産性向上に取り組み、付加価値を高める営業活動・業務活動を進めてまいりました。そして、2023年10月には、当社のジャム類等の製造事業を株式会社グリーンウッドファクトリー(兵庫興農株式会社より商号変更)へ承継し、グループ内で卸売事業と製造事業に特化する体制へ変更することにより、製造機能の充実と事業の成長を目指してまいります。また、菓子卸売事業の中間持株会社である加藤菓子ホールディングス株式会社を設立し、管理業務の集約化・一元化等を通してさらなる生産性の向上と営業力の強化を進め、今後の菓子卸売事業拡大の基盤を構築してまいります。
海外事業におきましては、今後の当社グループの成長戦略の一つとして位置づけ、マレーシア・ベトナム・シンガポール・中国国内での食品卸売事業の展開を図っており、日本を含めたアジア地域における食品流通事業の強化を進めてまいりました。そして、2023年4月にはベトナムの食品卸売会社であるNam Khai Phu Service Trading Production Joint Stock Companyの株式を取得、2023年10月にはシンガポールの食品卸売会社であるTeo Soon Seng Pte.Ltd.の株式を取得して、両社を連結子会社として両国での確固たる卸売業グループとなることを目指し、今後も東南アジアを中心に海外事業全体のさらなる拡大を図ってまいります。
以上の結果、当連結会計年度における営業収益は、既存得意先を中心とした取引の増大に加えて、外食関連需要の回復による取引の増加もあり、前期に比べて6.2%増加して1兆993億91百万円となり、営業利益は167億31百万円(前期比24.7%増)、経常利益は185億1百万円(前期比20.2%増)となりました。そして、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に固定資産売却益等を計上したこともあり、前期に比べて6.4%増加の120億2百万円となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、各セグメントの業績数値につきましては、セグメント間の内部取引高を含めて表示しております。
<常温流通事業>
当社グループの主力事業であります常温流通事業につきましては、家庭内消費に関連する需要は堅調であるものの、原材料価格も含めた仕入価格や人件費・エネルギー価格等のコストアップに、円安の影響も加わり、商品の値上げが断続的に実施される状況が続いております。また、商品の値上げ等により家計への負担感がさらに増すことで、日常の生活関連消費については生活防衛意識が一層強くなることが予想され、厳しい経営環境で推移いたしました。
このような状況に対して、価格だけに頼らない価値の提供に向けて、提案型営業の一層の推進や卸売業としての役割・機能の進化を通して、仕入先との取組み強化及び得意先との関係強化を図るとともに、自社ブランド商品の開発・販売においても、新ブランド「カンピー ザ・プレミアム」の販売を開始し、ブランド価値・商品価値の訴求を進めてまいりました。加えて、業務の見える化と見直し及び生産性向上に努めてまいりました。
以上の結果、営業収益は6,815億37百万円(前期比3.8%増)となり、営業利益は130億44百万円(前期比14.4%増)となりました。
<低温流通事業>
低温流通事業につきましては、行動制限の撤廃など経済活動の正常化に向けた動きが加速するものの、エネルギー価格の高止まりや円安・物価上昇等の不安から、消費者の生活防衛意識はより高まっており、今後も先行きは不透明な状況が続いております。
このような状況に対して、取引先のニーズに応じた付加価値商品を積極的に提案することで関係強化を図るとともに、さらなるローコストオペレーションに取り組んでまいりました。
以上の結果、営業収益は1,125億67百万円(前期比3.6%増)となり、営業利益は10億1百万円(前期比92.3%増)となりました。
<酒類流通事業>
酒類流通事業につきましては、飲酒人口の減少や若年層のアルコール離れ等により消費の規模は縮小傾向が続いている中、原材料やエネルギー価格の上昇、物流面におけるコストアップもあり、今後の消費者の購買動向によっては企業間の競争が一層激しさを増す厳しい経営環境で推移いたしました。家庭内需要は2022年10月から値上げとなったビールの駆け込み需要の反動により減少いたしましたが、外食関連需要やインバウンド需要の回復もあり、酒類市場全体としては回復基調にあります。市場の傾向としては、健康志向に対応した機能性商品の需要拡大や価格と価値が伴った商品への消費移行が見られ、低価格志向との消費の二極化がより一層鮮明になっております。
このような状況に対して、主要取引先との取組み強化及び自販力・提案型営業の強化を進めるとともに、商品毎の利益管理を徹底し、さらに業務の効率化や生産性の向上を図ることでローコストオペレーションに取り組んでまいりました。
以上の結果、営業収益は、既存得意先との取引増大に加えて外食需要の回復も寄与し、2,270億72百万円(前期比9.4%増)となり、営業利益は17億84百万円(前期比98.7%増)となりました。
<海外事業>
海外事業につきましては、マレーシア・ベトナム・シンガポール・中国国内での食品卸売事業の展開を図っており、既存の海外卸売業としてのベースに加え、日本国内で培ってきた営業力の浸透及び経営管理の定着と、各国でのプロモーションの強化、現地企業間でのシナジーの創出を図ってまいりました。
以上の結果、営業収益は、コロナ禍からの経済活動及び市場の回復や、2023年4月に株式を取得したNam Khai Phu Service Trading Production Joint Stock Companyの連結化に加えて、為替変動の影響もあり、747億14百万円(前期比25.4%増)となり、営業利益は、2億94百万円(前期比659.9%増)となりました。
<その他>
その他の事業につきましては、物流関連事業がその主な内容であり、営業収益は、物量の増加等により109億82百万円(前期比6.5%増)となりましたが、営業利益は物流関連事業以外における諸経費の増加により4億98百万円(前期比1.6%減)となりました。
② 財政状態の状況
流動資産の残高は、3,113億77百万円となり前期に比べて397億55百万円増加いたしました。
その主な要因は、現金及び預金、売上債権及び棚卸資産が増加したことによるものであります。(なお、現金及び預金に係る内容の詳細につきましては、連結キャッシュ・フロー計算書をご参照下さい。)
固定資産の残高は、1,414億89百万円となり前期に比べて123億19百万円増加いたしました。その主な要因は、工場の新設工事による建物及び構築物の取得及び投資有価証券の時価評価額の上昇等によるものであります。
これにより、資産合計は、4,528億67百万円となり前期に比べて520億75百万円増加いたしました。
流動負債の残高は、2,722億52百万円となり前期に比べて350億13百万円増加いたしました。その主な要因は、未払消費税等が減少した一方で、仕入債務及び短期借入金が増加したことによるものであります。
固定負債の残高は、249億5百万円となり前期に比べて15億41百万円増加いたしました。その主な要因は、投資有価証券の時価評価額の増加等により繰延税金負債が増加したことによるものであります。
これにより、負債合計は、2,971億58百万円となり前期に比べて365億54百万円増加いたしました。
純資産の部については、親会社株主に帰属する当期純利益120億2百万円を計上し、かつ、その他有価証券評価差額金が前期に比べて50億81百万円増加したこと等により、純資産合計は、1,557億9百万円となり前期に比べて155億21百万円増加いたしました。
なお、1株当たり純資産額は、4,452円56銭となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて12億82百万円増加し、834億91百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは146億79百万円の資金の増加となり、前連結会計年度に比べて収入が4億4百万円減少いたしました。当連結会計年度においては、税金等調整前当期純利益188億9百万円、仕入債務の増加340億26百万円、減価償却費45億99百万円等により資金が増加した一方で、売上債権の増加338億57百万円、法人税等の支払額61億30百万円、棚卸資産の増加35億96百万円等により資金が減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは90億5百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べて支出が27億37百万円増加いたしました。その主な要因は、投資有価証券の償還により資金が増加した一方で、投資有価証券、有形固定資産及び無形固定資産を取得したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは44億58百万円の資金の減少となり、前連結会計年度に比べて支出が37億56百万円減少いたしました。その主な要因は、前連結会計年度に比べて自己株式の取得による支出が減少したことによるものであります。
④ 仕入及び販売の実績
a.仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年10月1日
至 2023年9月30日)
前年同期比(%)
常温流通事業 (百万円)
628,922
103.5
低温流通事業 (百万円)
103,438
102.9
酒類流通事業 (百万円)
217,777
109.4
海外事業 (百万円)
69,941
127.9
報告セグメント計 (百万円)
1,020,079
106.0
その他 (百万円)
5,290
138.6
合計 (百万円)
1,025,370
106.2
(注)1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 金額は仕入価格及びその他の原価によっております。
3 海外事業セグメントの仕入実績に著しい変動がありますが、これは主にマレーシアにおける販路拡大及び為替変動の影響によるものであります。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年10月1日
至 2023年9月30日)
前年同期比(%)
常温流通事業 (百万円)
681,160
103.8
低温流通事業 (百万円)
112,304
103.6
酒類流通事業 (百万円)
227,028
109.4
海外事業 (百万円)
74,714
125.4
報告セグメント計 (百万円)
1,095,206
106.2
その他 (百万円)
4,184
101.2
合計 (百万円)
1,099,391
106.2
(注)1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 金額は営業収益によっております。
3 海外事業セグメントの販売実績に著しい変動がありますが、これは主にマレーシアにおける販路拡大及び為替変動の影響によるものであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品仕入費用及び物流センター運営費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は物流機能の充実、情報システムの高度化及び新規事業投資等によるものであります。
また、当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することとしております。
なお、運転資金及び設備投資資金については、原則内部資金、借入及びリースにより資金調達することとしております。借入及びリースによる資金調達に関しては、運転資金として短期借入金を一部の連結子会社が、運転資金又は設備投資資金として当社及び一部の連結子会社が長期借入金又はリースにより調達しております。その一部はグループ内資金の効率化を目的としグループ会社間で融資を行っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。