【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第1四半期連結累計期間の末日現在において判断したものです。当社は、日本工営の単独親会社として2023年7月3日付で単独株式移転により設立され、新たに当第1四半期連結累計期間より要約四半期連結財務諸表を作成していますが、従前の日本工営の連結グループの範囲から実質的な変更がないため、日本工営の2023年6月期第1四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2022年9月30日)および同連結会計年度末(2023年6月30日)を比較情報として用いています。なお、比較に際して当社子会社である株式会社エル・コーエイをコンサルティング事業セグメントからその他とする調整を行っています。
(1) 財政状態及び経営成績の状況① 経営成績の状況当第1四半期連結累計期間(2023年7月1日から2023年9月30日まで)におけるわが国経済は、緩やかに回復しています。今後も、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり緩やかに回復が続く見込みである一方、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、中東地域を巡る情勢や金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。 当社グループを取り巻く経営環境は、日本を含む各国にて社会経済活動が正常化する一方、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とする世界的なエネルギー危機と食料危機、またインフレの進行や為替変動等、国際情勢における不確実性が高まっています。コンサルティング事業では、国内市場は引き続き国土強靭化に向けた公共事業予算が確保され、特に大規模災害対策や予防保全型インフラメンテナンス等の市場拡大と防衛関連インフラ事業の拡大が期待されます。また、海外市場は日本政府による「インフラシステム海外展開戦略2025」を軸にODA予算が強化され、紛争・被災地域における復興支援が必要となっています。そしてPPP(Public Private Partnership)、民間資本によるインフラ開発も増加傾向にあります。一方、インフレや為替変動、国際情勢の不安定な状況は継続すると見ています。都市空間事業では、国内および欧米諸国においてESG投資を呼び込むサステナブルな都市構造の再構築のニーズが高まる一方、開発途上国においては交通関連施設や周辺基盤の整備を含む都市開発事業のニーズが旺盛です。エネルギー事業では、国内における老朽化した既設設備の更新需要は堅調と見込まれます。2050年カーボンニュートラル目標に向け、再生可能エネルギーへのシフトという流れは変わらないものの、世界的なエネルギーコストの上昇による政策変更に対しても機敏に対応する必要があります。こうした市場環境のもと、当社グループは「ID&E グローバル戦略 2030」の第1ステップとなる2021年7月から2024年6月までをグループ強靭化に取り組む変革期と位置付け、中期経営計画「Building Resilience 2024」に基づく3つの強靭化策を実行しています。1つ目の強靭化策としては、これまでの5事業を3つのドメイン(コンサルティング、都市空間、エネルギー)に再編し、事業軸を強化します。2つ目の強靭化策では、純粋持株会社体制への移行によるガバナンスの強化と地域統括体制の整備によるマトリクス経営(各事業が地域ごとに相互に連携を図る経営)の実現を目指します。3つ目の強靭化策としては、ID&Eグループとしてのブランドと品質の確立に向け、技術開発および人財育成を強化します。また、そのための基盤として「Well-being経営」を推進しています。以上の結果、当社グループの当第1四半期連結累計期間の業績は、受注高は主に都市空間事業が好調に推移し前年同期比19.8%増の38,152百万円、売上収益は主にエネルギー事業が順調に進捗し前年同期比16.9%増の31,306百万円となりました。営業利益は、前年同期はエネルギー事業における関連会社株式売却益および有価証券運用益等が約25億円計上されたため1,405百万円の利益であった一方、今期は562百万円の損失となりました。それに伴い親会社の所有者に帰属する四半期損失は335百万円(前年同期は584百万円の利益)となりました。また、当第1四半期連結累計期間の売上収益31,306百万円は、通期予想売上収益156,000百万円に対して20.1%(前年同期は18.5%)の達成率となりました。これは当社グループの営業形態として、下期に進捗する業務の割合が大きく、売上収益計上に季節変動が生じるためです。一方で、販売費及び一般管理費などの費用は年間を通じほぼ均等に発生するため、当第1四半期連結累計期間の営業利益、親会社の所有者に帰属する四半期利益ともに損失計上となりました。当社グループのセグメント別の業績は次のとおりです。
[コンサルティング事業]コンサルティング事業では、日本工営を中心に、各事業分野でのシェア向上に加えて、流域治水・気候変動・SDGs・再生可能エネルギー・マルチハザードといった分野横断的な共創事業の推進、マネジメント事業の展開や民間セクターの拡大等に取り組みました。以上の結果、受注高は国内・海外ともに好調で前年同期比17.7%増の19,734百万円、売上収益は前年同期比5.6%増の15,594百万円、営業損失は分社化に伴う管理費用計上方法の変更および関連費用の増加により前年同期比35.0%増の504百万円となりました。
[都市空間事業]都市空間事業では、日本工営都市空間株式会社(以下「日本工営都市空間」という。)が要員確保や品質管理の徹底による生産体制の強化に、BDP HOLDINGS LIMITEDおよびその子会社(以下「BDP社」という。)が英国国内およびグループ間協業によるアジア市場開拓と北米市場における業務拡大に取り組みました。以上の結果、受注高はBDP社が好調で前年同期比29.4%増の15,267百万円となりました。売上収益は前年同期比18.0%増の9,111百万円となりました。営業損失は売上増に伴い前年同期比74.2%減の40百万円となりました。
[エネルギー事業]エネルギー事業では、日本工営(2023年10月以降は、分社化により新たに発足した日本工営エナジーソリューションズ株式会社)を中心に、蓄電池やアグリゲーション事業といったエネルギーマネジメント事業を本格展開させるとともに、既存の機電コンサルティング・エンジニアリング事業の体制強化と製造事業の安定化に取り組みました。以上の結果、受注高は変電制御システム関連事業において受注が減少し前年同期比3.3%減の3,026百万円、売上収益は大型蓄電池事業や変電所緊急対策工事等の電力設備関連事業が好調で前年同期比58.3%増の6,317百万円、営業利益は、前年同期に当社関連会社であったPT.ARKORA HYDRO株式の売却益および有価証券運用益の計上等があった反動で前年同期比94.9%減の117百万円となりました。
② 財政状態の状況当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、197,474百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,083百万円の増加となりました。これは、契約資産6,380百万円の増加等があったことが主な要因です。 負債合計は、115,694百万円となり、前連結会計年度末と比較して4,087百万円の増加となりました。これは、借入金10,405百万円の増加等があったことが主な要因です。 資本合計は、81,780百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,003百万円の減少となりました。これは、利益剰余金2,218百万円の減少等があったことが主な要因です。 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は40.0%となり前連結会計年度末と比較して1.4ポイント低下しました。
(2) キャッシュ・フローの状況当第1四半期連結累計期間末の現金及び現金同等物は、27,312百万円となり、前連結会計年度末に比べて4,366百万円減少しました。当第1四半期連結累計期間のキャッシュ・フローの状況と、前年同期に対するキャッシュ・フローの増減は、次のとおりです。営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期損失265百万円に減価償却費等の非資金項目や営業活動に係る債権・債務の加減を行った結果、9,881百万円の支出となり、前年同期に比べ1,603百万円の減少となりました。これは主に、営業債務や未払消費税の支払増加等の要因によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形資産の取得等を行った結果、2,219百万円の支出となり、前年同期に比べ1,310百万円の支出の増加となりました。これは主に、有形固定資産及び投資不動産の取得による支出が前年同期並みであったこと、前期発生した関係会社株式の売却による収入が当期は発生していないことによるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の借入れや返済等を行った結果、7,537百万円の収入となり、前年同期に比べ7,865百万円の減少となりました。これは主に、短期借入金の返済が進んだことによるものです。
(3) 中長期的な経営戦略
① 経営の基本方針当社グループは、「誠意をもってことにあたり、技術を軸に社会に貢献する。」を経営理念としています。「世界をすみよくする」ことをMission(私たちの使命)、「誠意をもってことにあたれば、必ず途(みち)は拓(ひら)ける」をValues(共通の価値観)とし、結束したグローバル企業集団へと進化することで「唯一無二の価値を提供する会社」をVision(なりたい姿)として掲げています。
② 目標とする経営指標当社グループは、中長期の視点から以下のとおり目標とする経営指標を定めています。2024年6月期(中期目標 ※2021年8月公表時):売上収益1,550億円、営業利益115億円、営業利益率7%、ROE9%
2030年6月期(長期目標):売上収益2,500億円、営業利益250億円、営業利益率10%、ROE15%
③ 経営戦略当社グループは、コンセプトを「共創。限界なき未来に挑む」とする長期経営戦略「ID&E グローバル戦略2030」を2021年6月に発表しました。社内および社外の多様なパートナーとの「共創」を通じ、知の探究と技術の革新・統合により新たな価値を提供し、人々が豊かさを実感できる社会の実現に貢献する企業グループを目指します。 その実現に向けて、当社グループは、2023年7月3日に純粋持株会社体制へ移行しました。持株会社体制への移行は、「自律と共創」の推進に加えて、ガバナンスの強化と意思決定の迅速化および多様性の確保が目的です。 また「NKG グローバル戦略2030」のもと、2021年7月から2024年6月までをグループ強靭化に取り組む変革期と位置付け、中期経営計画「Building Resilience 2024」を策定し、推進しています。基本方針は、「3つの強靭化策(3つのドメインによる事業推進、事業と地域のマトリクス経営、技術と人財の質の向上)により、サステナブルな未来の共創に向けた基礎固めをする」とし、100年企業の礎を築くべく取り組みます。 併せて、社会課題に対する取組みとして以下の7つのマテリアリティを設定しました。このうち、事業活動に関わるマテリアリティは、世界が抱える課題に対し、当社グループが自らの強みを活かして優先的に取り組む重要課題であり、これによって持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を目指します。
日本工営グループの7つのマテリアリティ(優先的に取り組む課題)≪事業活動≫ 1) 安心して暮らせるインフラの整備 2) すべての人が自由に交流し活躍できる社会基盤整備 3) 多様な人・産業が集積する魅力ある都市づくり 4) 脱炭素社会の実現による地球環境の保全≪経営基盤≫ 5) ガバナンスの強化 6) 人権が尊重され、働きがいのある職場環境 7) 人財育成と技術開発
(4) 今後の見通しおよび重点課題当社グループを取り巻く経営環境は、「(1) 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。当社は中期経営計画「Building Resilience 2024」(2021年7月から2024年6月まで)に基づく3つの強靭化策を実行しており、各強靭化策、マテリアリティおよび2024年6月期の主要重点施策は以下のとおりです。
マテリアリティ(優先的に取り組む課題)
2024年6月期主要重点施策
強靭化策1
1)安心して暮らせるインフラの整備
事業戦略
・豪雨災害対策技術・耐震解析技術の高度化と形式知化・衛星情報サービス事業の積極展開・AI洪水予測・ビッグデータ解析技術の高度化・インフラメンテナンス技術の高度化、官民連携(PPP)事業の実施
2)すべての人が自由に交流し活躍できる社会基盤整備
・鉄道O&M(運営維持管理)技術の習得、交通結節点整備および周辺面開発関連事業の拡大・MaaSモデルケースの実施、エアモビリティ関連事業創生
3)多様な人・産業が集積する魅力ある都市づくり
・大都市圏・地方都市圏の市街地(再)開発事業におけるワンストップサービスの実現・スマートシティ、官民連携による低未利用地等のまちづくり事業の形成・臨海部の大規模土地利用転換事業
4)脱炭素社会の実現による地球環境の保全
・国内アグリゲーション事業の実施体制の確立(2023年7月より傘下3拠点の使用電力を自社水力発電により100%再生可能エネルギー化したNKRE100実証開始)・蓄電池EPC事業の拡大
強靭化策2
5)ガバナンスの強化
組織戦略
・純粋持株会社体制下での意思決定の迅速化・機動性の向上とリスク管理を含むガバナンスの強化・サステナビリティ経営の推進体制構築と実践
営業戦略
・多様化する地域のニーズに応えるための地域経営体制の構築・ID&Eグループの総合力発揮のための事業会社間・地域間・産官学等における共創の推進
強靭化策3
6)人権が尊重され、働きがいのある 職場環境
人財・技術戦略
・女性管理職割合の向上、障がい者雇用の促進等によるダイバーシティ経営の推進・健康経営、ワークスタイル改革等によるWell-being経営の推進
7)人財育成と技術 開発
・グループ戦略に対応した人財戦略の立案、人財育成・タレントマネジメント・DX施策のスピード感ある推進
これらの取組みを推進することで、中期経営計画「Building Resilience 2024」最終年度となる2024年6月期業績予想は、売上収益1,560億円(前期比110.2%)、営業利益111億円(前期比182.5%)、親会社の所有者に帰属する当期利益71億円(前期比229.5%)、ROE9%としています。
(5) 従業員数
① 連結会社の状況2023年9月30日現在
セグメントの名称
従業員数(人)
コンサルティング事業
3,041
(1,448)
都市空間事業
2,193
(208)
エネルギー事業
730
(98)
その他
437
(131)
合計
6,401
(1,885)
(注) 1.従業員数は、当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む就業人員です。2.従業員数の(外書)は、当第1四半期連結累計期間における臨時従業員の平均雇用人員(パートタイマーは1日7.5時間換算)です。3.臨時従業員には、期間契約社員、パートタイマーおよび非常勤の従業員を含み、派遣社員を除いています。4.その他は、その他の事業および全社運営に係る従業員です。
② 提出会社の状況2023年9月30日現在
セグメントの名称
従業員数(人)
その他
16
(-)
合計
16
(-)
(注) 従業員数は、当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人員です。
(6) 研究開発活動当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は244百万円です。 なお、当第1四半期連結累計期間において当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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