【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態の状況
(資産)当事業年度末における総資産は1,576,114千円となり、前事業年度末と比較して273,177千円増加いたしました。流動資産は1,277,296千円となり、258,862千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が53,346千円、売掛金及び契約資産が197,881千円増加したことによるものであります。固定資産は298,818千円となり、14,315千円増加いたしました。これは主にソフトウエア及びソフトウエア仮勘定が11,987千円減少した一方で、繰延税金資産が28,722千円増加したことによるものであります。
(負債)当事業年度末における負債は409,737千円となり、前事業年度末と比較して44,645千円増加いたしました。これは主に長期借入金が60,100千円減少した一方で、契約負債が64,685千円、未払費用が27,213千円、その他に含まれる未払消費税等が16,874千円増加したことによるものであります。
(純資産)当事業年度末における純資産は1,166,377千円となり、前事業年度末と比較して228,532千円増加いたしました。これは当期純利益の計上により利益剰余金が228,532千円増加したことによるものであります。
② 経営成績の状況当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス対策の緩和と終了による社会経済活動の再開に伴い、コロナ前の水準へと回復が見られました。しかしながら、ロシア・ウクライナ危機の長期化や世界的な金融引き締めによる経済への悪影響が懸念されるなど、先行きの不透明な状況が続いております。その影響はエネルギー価格の変動にも波及し、地政学リスクを踏まえた上での安定的かつ経済的なエネルギーの需給体制が求められ、エネルギー消費の効率化が社会全体の重要な課題の一つとして考えられております。一方で、エネルギー関連の課題も含め様々な課題解決に向けて、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、AI技術の実装による変革は多くの企業にとって重要な戦略として位置付けられ、その投資は底堅い成長を続けております。IT専門調査会社IDC Japan株式会社によると、2022年の国内AIシステムの市場規模は3,883億円となり、2022年から2027年までの年間平均成長率は23.2%で推移し、2027年には1兆1,034億円になる予測となっております(出典:2023年4月27日 IDC Japan 2023年国内AIシステム市場予測)。このような状況下、当社は電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3分野に注力し、電力需給計画、プラント制御、配船計画、生産計画、都市計画、空調熱源制御等に対して計画最適化を行うAIエンジン及びプラットフォームの開発、運用・サポートを一貫して提供しております。これまでの計画業務は、オペレーションを熟知した熟練人材による多大な労力により成立しておりましたが、AI技術や数理最適手法を用いた当社の計画最適化サービスは、複雑かつ不確実性の高いビジネス環境下でも短時間で最適な計画を提供し、属人性を排することを可能としております。加えて、電力や物流等の事業会社を中心にエネルギー消費量の削減を可能とし、投資効果を明示できるサービスでもあることから、当社の事業に対する期待は一層高まっております。当事業年度は、引き続き電力・エネルギー、物流・サプライチェーン、都市交通・スマートシティの3分野に注力いたしましたが、電力・エネルギー及び物流・サプライチェーンを中心に既存顧客の本番導入に向けた開発が加速いたしました。加えて、大型の運用・サポート案件が開始されたこともあり、顧客平均売上が増加するとともに、ストック型売上比率も大幅に上昇いたしました。一方で取引先数については全体として減少したものの、これは前事業年度においてAI開発、プラットフォーム開発、運用・サポートの3区分に属さない販売単価の小さいその他の売上が複数計上された影響であり、当該3区分においては増加いたしました。当社は、AIエンジン及びプラットフォーム開発をフロー型売上、運用・サポートをストック型売上として定義しておりますが、2023年6月期の電力・エネルギー分野の合計売上高は398百万円(前期比80.7%増)、うちフロー型売上は285百万円(前期比31.5%増)でストック型売上は112百万円(前期比3,241.8%増)、物流・サプライチェーン分野の合計売上高は625百万円(前期比90.9%増)、うちフロー型売上は503百万円(54.4%増)でストック型売上は121百万円(8,026.1%増)、都市交通・スマートシティ分野の合計売上高は286百万円(前期比8.8%減)、うちフロー型売上は273百万円(前期比13.0%減)でストック型売上は13百万円(前期は計上なし)、社会インフラ3分野に分類されないその他の合計売上高は43百万円(前期比9.8%減)となりました。また、当社は開発体制の強化に向けて優秀なエンジニアの積極採用を行うことで今後の事業拡大に向けた取り組みを進めており、当事業年度末におけるエンジニアは60名(前期比25.0%増)となりました。加えて、管理体制の強化も進めており、営業・管理部門は25名(前期比13.6%増)となりました。このことから、製造費用におけるエンジニアの人件費は489百万円(前期比33.7%増)、販管費における営業・管理部門の人件費は327百万円(前期比8.2%増)となりました。以上より、2023年6月期について、売上高は1,353百万円(前期比48.7%増)となり、営業利益208百万円(前期比193.4%増)、経常利益204百万円(前期比201.7%増)、当期純利益228百万円(前期比148.5%増)となりました。また、ストック型売上比率は18.3%(前期比17.8ポイント増)、顧客平均売上は46.7百万円(前期比64.1%増)、取引先数は29社(前期比9.4%減)、うちAI開発、プラットフォーム開発、運用・サポートの3区分では27社(前期比12.5%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は671,809千円となり、前事業年度末と比較して53,346千円増加いたしました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果獲得した資金は150,321千円(前年同期は55,735千円の資金の使用)となりました。主な収入要因は、税引前当期純利益202,099千円、契約負債の増加64,685千円、減価償却費37,179千円、未払費用の増加27,213千円、主な支出要因は、売掛金及び契約資産の増加197,881千円によるものであります。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は36,874千円(前年同期は103,371千円の資金の使用)となりました。主な支出要因は、無形固定資産の取得32,814千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果使用した資金は60,100千円(前年同期は5,400千円の資金の使用)となりました。これは長期借入金の返済によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
b 受注実績当事業年度の受注実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(千円)
前期比(%)
受注残高(千円)
前期比(%)
AI開発事業
1,355,279
△1.8
972,260
0.1
c 販売実績当事業年度の販売実績は次のとおりであります。
セグメントの名称
売上高(千円)
前期比(%)
AI開発事業
1,353,869
48.7
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
当事業年度(自 2022年7月1日
至 2023年6月30日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
北海道電力株式会社
39,500
4.3
202,811
15.0
ソフトバンク株式会社
139,745
15.3
19,213
1.4
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。当社はAI開発事業の単一セグメントであるため、セグメントの記載を省略しております。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)当事業年度における売上高は1,353,869千円(前年同期比48.7%増)となり、前事業年度と比較して443,469千円の増収となりました。これは主に本番システム導入に向けた既存顧客からの継続的な受注によるものであり、既存顧客への売上は1,240,885千円と全体の91.7%を占めることとなりました。
(売上原価、売上総利益)当事業年度における売上原価は397,287千円(前年同期比59.1%増)となりました。主な内訳は、エンジニアの人件費及びソフトウエア関連費用であります。この結果、売上総利益は956,581千円(前年同期比44.8%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)当事業年度における販売費及び一般管理費は747,942千円(前年同期比26.9%増)となりました。主な内訳は、人件費、研究開発費、技術販管費であります。この結果、営業利益は208,639千円(前年同期比193.4%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)当事業年度において、営業外収益は1,691千円、営業外費用は6,195千円発生しました。これは主に受取利息499千円、受取保険料844千円、物品売却益258千円、上場関連費用6,016千円が発生したことによるものであります。この結果、経常利益は204,135千円(前年同期比201.7%増)となりました。
(特別損益、当期純利益)当事業年度において、特別損失は固定資産除却損2,035千円が発生しました。税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を△26,432千円を計上した結果、当期純利益は228,532千円(前年同期比148.5%増)となりました。
② 資本の財源及び資金の流動性当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の給与手当、プロジェクトに必要なソフトウエア関連費用、地代家賃等の販売費及び一般管理費の営業費用であり、営業活動によるキャッシュ・フローでまかなうことを基本としております。また、事業運営上必要な資金を安定的に確保するとともに、事業を拡大していく中で最適な資本構成を構築するため、自己資金だけではなく金融機関からの借入も積極的に行っていくことを考えております。当社は3行の金融機関との間で合計500,000千円の当座貸越契約を締結(当事業年度末現在で借入実行残高はありません)しており、手許資金の流動性が不足すると想定される場合には、当座貸越契約を活用し金融機関からの短期借入金を通じて、必要な資金残高を確保することを考えております。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化、優秀な人材の確保、市場のニーズに合った製品やサービスの展開等により、当社の経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応してまいります。
④ 経営者の問題意識と今後の方針に関して経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するために、経営者は常に外部環境の変化に関する情報を入手・分析し、現在及び将来における事業環境を認識した上で、当社の経営資源を最適に配分し、有効な解決策を実施していく方針であります。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、売上高成長率及び営業利益率を基本的な経営指標としております。過年度における当社の各指標等の進捗は次のとおりであります。
2019年6月期
2020年6月期
2021年6月期
2022年6月期
2023年6月期
売上高成長率
(全社)
△21.8%
△48.5%
2.0%
28.8%
48.7%
(事業別)AI開発事業
61.1%
△11.4%
99.4%
33.8%
48.7%
(事業別)エネルギーソリューション事業
△34.7%
△63.5%
△92.6%
△100.0%
―
営業利益率
△6.8%
△93.1%
△31.5%
7.8%
15.4%
エンジニア数
28名
44名
43名
48名
60名
当社は2016年6月期よりAI開発事業を開始し、エネルギーソリューション事業からAI開発事業への事業転換に向け、2019年6月期よりエンジニア及び営業人員の人的資源をAI開発事業へ拡大集中させ、2021年6月期にエネルギーソリューション事業から撤退いたしました。結果、エネルギーソリューション事業の縮小に伴い全体の売上高は減少し、一方でエンジニア等の人件費は増加し、2020年6月期には直近5年間で最大となる営業損失644百万円を計上するとともに営業利益率は△93.1%まで低下いたしました。そのような状況下、2021年6月期以降のAI開発事業の売上高は堅調に推移しており、2023年6月期は1,353百万円へと売上が拡大し、営業利益率は15.4%、売上高成長率は48.7%となりました。また、2019年6月期から2023年6月期にかけての売上高年平均成長率(CAGR)も41.4%となっており、AIの実装が今後も進んでいくと見込まれる中、売上高の成長を目指してまいります。また、当社はAIエンジンや業務システムの開発について、顧客間で横展開するとともに標準化やモジュール化を進めており、継続して開発のリードタイムを短縮していることから、今後も生産効率の向上とともに売上高の成長を目指しております。このことから売上高の成長が営業利益率の成長に直接的に寄与するものと考えております。
⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されておりますが、この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、当社の実態等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、当社が行っております会計上の見積りのうち特に重要なものは次のとおりであります。(進捗度に基づく収益認識)財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しており、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合には、進捗度に基づき収益を認識しております。進捗度の測定は、各報告期間の期末日までに発生した工数が、総工数の見積りに占める割合に基づいて行っております。進捗度に基づく収益計上の基礎となる総工数の見積りはプロジェクトごとに行っております。各プロジェクトは顧客の重要な業務システムの構築を請け負うことになり、特に顧客のニーズの多様化に応えるため、総工数の見積りの基礎となる作業内容に不確実性を伴っております。総工数の見積りはプロジェクトの進行に応じて適宜見直しが行われ、総工数の見積り時点では予見できなかった仕様変更や納期変更等により、総工数の変更が発生し、その結果進捗度が変動する可能性があり、翌事業年度の財務諸表において認識する金額に重要な影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産の計上)当社は繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることに加え、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提となる条件や仮説に変更が生じた場合、繰延税金資産の計上額が変動し、当期純利益に影響を与える可能性があり、重要と考えております。
#C5582JP #グリッド #情報通信業セクター