【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,344,877千円となり、前事業年度末に比べ284,579千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が312,712千円増加したことによるものであります。固定資産は106,819千円となり、前事業年度末に比べ78,056千円増加いたしました。これは主に、当事業年度より計上することとなった自社開発のソフトウエアやコンテンツの無形固定資産が43,825千円増加し、繰延税金資産の計上により50,955千円増加した一方で、敷金及び保証金が本社移転に伴い15,525千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は、1,451,696千円となり、前事業年度末に比べ362,635千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は547,601千円となり、前事業年度末に比べ72,373千円増加いたしました。これは主に、売上代金を事前に回収する事業を主としていることから受注の増加に伴い前受金が38,287千円増加、人員の増加による給与等の人件費の増加により未払費用が21,653千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は、547,601千円となり、前事業年度末に比べ72,373千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は904,095千円となり、前事業年度末に比べ290,261千円増加いたしました。これは、当期純利益290,261千円の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。
b.経営成績の状況
当社は「先端技術を、経済実装する。」をミッションに掲げ、AIをはじめとした新たなソフトウエア技術を、いち早くビジネスの現場にインストールし、次世代の産業創出を加速させることを目的として事業を展開しております。
当社は、主にAI/DXに関するプロダクト・ソリューション事業を展開しており、法人向けのAI/DXプロダクト、AI/DXソリューション、個人向けのAI/DXリスキリングから成り立っております。
AI/DXプロダクトでは、主にエンタープライズ企業(従業員1,000名以上の企業約4,000社、当社定義)のデジタル変革を行う土台づくりやデジタル技術内製化のために、デジタル人材の育成支援を行うオンラインDXラーニング「Aidemy Business(アイデミービジネス)」及び講師を派遣し研修を実施する講師派遣型デジタル人材育成研修「Aidemy Practice(アイデミープラクティス)」を提供しております。
AI/DXソリューションでは、主にエンタープライズ企業向けに様々な現場のデジタル変革に必要なテーマ選定、PoC開発、システム開発、運用までの全ての領域を顧客企業に伴走しながら支援する「Modeloy(モデロイ)」のサービスを提供しております。
AI/DXリスキリングでは、個人領域におけるデジタル人材育成支援プログラム「Aidemy Premium(アイデミープレミアム)」のサービスを提供し、個人のリスキリングを支援しております。
当事業年度(2022年6月1日から2023年5月31日)におけるわが国の経済状況は、新型コロナウイルス感染症の影響や、ウクライナ問題をはじめとした世界情勢の悪化、世界的なインフレの進行により、依然として先行きが不透明な状況にあります。一方でデジタル市場においては、働き方改革に伴う生産性向上や業務効率化の需要拡大、ソフトウエアを活用した新規ビジネス展開が求められる中、企業は既存のビジネスモデルや組織の変革に迫られ、社会におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まっており、当社にとって追い風とも言える事業環境が継続しています。また、最近ではChatGPTを始めとした生成AIのビジネス活用ニーズが高まっており、当社においても社内の業務効率改善や新規ビジネスへの応用など、追い風となっております。
当事業年度につきまして、法人向けAI/DXプロダクトの「Aidemy Business」においては、前事業年度に引き続き新規コンテンツの作成や既存コンテンツの改善、アップデート、カスタマーサクセスの充実に注力いたしました。ユーザー数も順調に拡大しており、2023年5月には累計14万人(個人向けと合わせると累計22万人)を突破しました。コンテンツはエンジニア向け講座だけでなく、近年顧客ニーズの強いいわゆる文系人材向けのDXリテラシー向上を目的とした講座を多数リリースしました。また新たな取り組みでは、カーボンニュートラル(炭素中立のための活動)やグリーン・トランスフォーメーション(企業における温室効果ガスの排出源である化石燃料や電力の使用を、再生可能エネルギーや脱炭素ガスに転換することで、社会経済を変革させること)などのコンテンツや生成AI関連のコンテンツもリリースしており、提供可能なコンテンツの領域を拡大しています。また、カスタマーサクセスによる手厚いサポートは顧客企業から好評を得ています。
「Aidemy Practice」ではデジタル時代に必要なAI/DXスキルを実践形式の研修で提供しており、「DX事業立案ワークショップ」「AI活用企画ワークショップ」「現場で活きる!新入社員向けDXプログラム」「Power BIローコードデータ可視化研修」等を顧客ニーズに応じて研修内容を柔軟にカスタマイズして提供いたしました。
法人向けAI/DXソリューションの「Modeloy」においては、当社のプロフェッショナル人材が、「Aidemy Business」によって育成された顧客企業側のデジタル人材とともにプロジェクトを立ち上げ、デジタル変革を推進し、顧客企業内にノウハウが蓄積する形でデジタル技術内製化の支援を行っています。提供可能なサービス領域の拡張や既存顧客からの受注に注力した結果、既存顧客からの受注も順調に拡大し、1社あたりの受注額も増加しております。
「Modeloy」による新たな取り組みとして、デジタル変革伴走型支援を通じて、大手材料メーカーとともに新たなデジタルプロダクトを共同開発しております。具体的には、顧客企業側のデジタル人材と当社のプロフェッショナル人材が協力して、材料開発を効率化するための新しいプロダクト「Lab Bank」を開発しております。このプロダクトは、ビッグデータやAIを使って、材料の製造方法を予測することができます。顧客企業側のデジタル人材はペアプログラミング(初心者と上級者又は上級者同士でペアを組み行う開発)などの方法で、スキルを向上させることも可能であります。顧客企業が保有する材料開発や研究に関する実験データをもとに、データを構造化するためのデータベースやアプリケーション等の管理システムを構築し、蓄積したデータを利活用することができます。そして、原材料や配合割合から素材加工メーカーでの製造結果を予測するマテリアルズ・インフォマティクス(ビッグデータ、AIなどのデジタル技術の活用により、材料の製造方法を予測するなど、材料開発の効率化を図る取り組み)の基礎モデルの開発を顧客企業と共同で進める体制を構築しております。
以上の結果、当事業年度末時点の長期継続顧客数は118社(前期比+34社)となり、順調に拡大しました。法人向け売上高は1,385,008千円となりました。
個人向けAI/DXリスキリングの「Aidemy Premium」においても、前事業年度に引き続きチューターによるサポート体制の充実、既存コンテンツのアップデート、Webマーケティングの強化などに注力いたしました。2020年10月から一部の講座が厚生労働省の教育訓練給付制度の対象となっており、利用者も増加しています。
以上の結果、個人向け売上高は281,610千円となりました。
このような状況の中、当事業年度の経営成績は売上高1,666,618千円(前期比44.1%増)となりましたが、今後の成長を見据えたシステムやコンテンツの開発、新規事業の開発、人材採用への先行投資等により、営業利益は
238,207千円(前期は12,069千円の損失)、経常利益は240,070千円(前期は8,425千円の損失)、当期純利益は
290,261千円(前期は8,957千円の損失)となりました。
なお 、当社はAI/DXに関するプロダクト・ソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末より312,712千円増加し、1,247,670千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果増加した資金は、350,877千円(前事業年度は42,507千円の増加)となりました。これは主に、税引前当期純利益の計上239,838千円、代金を事前に収受して開始される事業形態であることから受注増による前受金の増加額38,287千円、人員の増加による給与等の人件費の未払費用の増加額19,302千円や減価償却費の計上15,956千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果減少した資金は、38,164千円(前事業年度は6,512千円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出10,498千円、当事業年度より計上することとなった自社開発のソフトウエアやコンテンツの無形固定資産の取得による支出45,332千円があった一方で、敷金及び保証金が本社移転に伴い返還された20,122千円の収入があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自2022年6月1日
至2023年5月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
AI/DXに関するプロダクト・ソリューション事業
1,666,618
144.1
(注)1.当社は、AI/DXに関するプロダクト・ソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。(増加理由については、下記事業領域の注記をご確認下さい。)
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
販売先
前事業年度
当事業年度
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
日本ゼオン株式会社
39,744
3.4
182,257
10.9
当社は、AI/DXに関するプロダクト・ソリューション事業の単一セグメントであり、主要な顧客との契約から生じる収益を分解した情報は、以下のとおりであります。
事業領域
当事業年度
(自2022年6月1日
至2023年5月31日)
販売高(千円)
前年同期比(%)
AI/DXプロダクト
1,160,787
135.7
AI/DXソリューション
224,220
369.8
AI/DXリスキリング
281,610
117.3
(注)各事業領域の増加理由について
・AI/DXプロダクト
AI/DX推進の流れやDX/AI人材の不足といった外部環境が非常に良好であること及びコンテンツの拡充、カスタマ
ーサクセスによるアップセルが寄与したことによります。
・AI/DXソリューション
法人向けにテーマ選定、PoC開発、システム開発、運用までの全ての領域を「顧客伴走型」で支援する
「Modeloy」においては、提供可能なサービス領域の拡張や既存顧客からの受注に注力したことによります。
・AI/DXリスキリング
チューターによるサポート体制の充実、既存コンテンツのアップデート、Webマーケティングの強化などに注力
しました。また、2020年10月から一部の講座が厚生労働省の教育訓練給付金の対象講座に認定されており、利用
者が増加したことも要因であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
1 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
この財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 「注記事項」(重要な会計方針)」に記載のとおりであります。また、財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、当社の実態等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
2 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析
当事業年度の業績は売上高1,666,618千円(前期比44.1%増)となりました。これは、デジタル市場において
は、働き方改革に伴う生産性向上や業務効率化の需要拡大、テレワークの導入拡大等が求められる中、企業はビ
ジネスモデルや組織の変革に迫られ、社会におけるDXの必要性が高まっており、当社にとって追い風とも言える
事業環境が継続していることが要因と考えております。
今後の成長を見据えたシステムやコンテンツの開発、及び来期以降の売上増の基盤となる顧客を獲得するため
の広告宣伝費の先行投資等により、営業利益は238,207千円(前期は12,069千円の損失)、経常利益は240,070千
円(前期は8,425千円の損失)、当期純利益は290,261千円(前期は8,957千円の損失)となりました。
b.財政状態の分析
前述の「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a財政状態の状況」をご参照ください。
c.キャッシュ・フローの分析
前述の「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
3 資本の財源及び資金の流動性
資金需要
資金については、現金及び預金が当事業年度末は1,247,670千円と前事業年度末に比べ312,712千円増加してお
り、営業活動から得る現金及び現金同等物の水準については、当面事業を継続していく上で十分な流動性を確
保しているものと考えております。
当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の給与及び手当の他、販売費及び一般管理費の営業費用であり
ます。また、今後の成長を見据えたシステムやコンテンツの開発、人材採用及び売上増の基盤となる顧客を獲得
するための広告宣伝費の先行投資等で活用してまいります。
財務政策
当社は、事業運営上必要な資金を安定的に確保するために、必要な資金は自己資金、エクイティファイナンス
等でバランスよく調達していくことを基本方針としております。
4 経営成績に重要な要因を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、今後の経営成績に影響を与える課題につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
5 経営者の問題意識と今後の方針に関して
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
6 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、主な経営指標として売上高・売上高成長率、売上総利益・売上総利益率、営業利益・営業利益率を経営上重要な指標と位置付けております。また、事業運営上重視する経営指標は、長期継続顧客数をKPI(Key Performance Indicators)としております。
当事業年度については、長期継続顧客が118社(前期末は84社)、法人向け売上高の増加率が51.2%となりました。これらの結果、売上高510,559千円増加(前期比44.1%増)、売上総利益388,801千円増加(前期比45.6%増)、営業利益238,207千円(前期は△12,069千円)となりました。
顧客企業が「Aidemy Business」を最初に導入することで、強固で長期的な顧客基盤を構築できるため、ドアノックツールとして機能しております。これにより、顧客企業のニーズやデジタル人材育成のノウハウが当社に蓄積されております。デジタル人材育成に対する顧客企業の期待は、育成された人材が社内で活躍し、新たな価値を創出することであります。当社は「Modeloy」を通じて顧客企業の新規事業創出のニーズに対応し、ビジネスの共創を実現しております。当社のプロフェッショナル人材と共同開発することで、業界特有の課題を把握し、顧客との長期的な信頼関係を築くことができます。共同プロジェクトを通じて得られたノウハウやナレッジは、当社のプロダクトに還元され、新規プロダクト開発に活用されております。
AI/DXプロダクトとAI/DXソリューションが相互にシナジーを発揮することで、当社の好循環なビジネスモデルが実現しており、長期継続顧客がその基盤になっております。
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