【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症拡大における第7波・第8波を経ながらもマスク制限の緩和、感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる決定をし、人流は回復傾向にあり、景気についても緩やかな持ち直しの動きがみられました。しかしながら、世界情勢の不安定化や金融引き締め等により、原材料・エネルギー価格の高騰、世界的なサプライチェーンの混乱による部品・半導体不足に加え、各国の高インフレ対策による景気減速の懸念もあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。
こうした状況のもと、当社グループの業績につきましては、以下の通りとなりました。(セグメント別の経営成績)
セグメント
売上高
営業損益
金額(千円)
前年同期比
金額(千円)
前年同期比
増減額(千円)
増減率(%)
増減額(千円)
増減率(%)
抗体関連事業
790,600
156,376
+24.7
152,132
+167,090
─
診断試薬サービス
678,780
174,966
+34.7
216,190
+157,741
+269.9
検査サービス
64,265
△21,818
△25.3
△3,497
+5,210
─
TGカイコサービス
47,554
3,228
+7.3
△60,560
+4,138
─
遺伝子組換えカイコ開発事業
─
─
─
△80,414
+14,841
─
化粧品関連事業
4,021
△9,331
△69.9
△13,344
△779
─
※遺伝子組換えカイコ開発事業は、研究開発のコスト管理を行っている事業のため、売上高はありません。
<抗体関連事業>
当事業の売上高は、以下のとおりです。・診断試薬サービス
主力製品である、ELISAキット及び抗体は、海外販売におけるeマーケティング(SNS等)を活用した情報戦略の成果により、海外大手CRO企業や製薬企業および大学等の研究者からの引き合いが増加したことにより、大幅に販売数量が増加し、さらに円安の影響により、売上高は、前年に比べ大幅に増加いたしました。また、国内外において、アルツハイマー関連抗体のまとまった売上を計上したことや受託サービス、動物用体外診断用医薬品についても、前年に比べ売上高は大幅に増加いたしました。その結果、当サービスの売上高は、678,780千円(前年同期比34.7%増)となりました。・検査サービス
臨床検査センターでの自社ELISAキットを使用した受託測定サービスの売上高は増加いたしましたが、血中リポタンパク質プロファイリングサービス 「LipoSEARCH」に関連する検査が停滞し、まとまった案件が減少したことにより、当サービスの売上高は、64,265千円(前年同期比25.3%減)となりました。・TGカイコサービス
国内で販売している受託製品等の売上は、前年を下回りましたが、一方、欧州の医療用品メーカーが製造販売している、医療用品の原料であるヒト型コラーゲンの販売は増加傾向となっております。その結果、当サービスの売上高は、47,554千円(前年同期比7.3%増)となりました。
以上により、当事業の売上高は、790,600千円(前年同期比24.7%増)となりました。
営業利益につきましては、利益率の高い自社製品であるELISAキット及び抗体の売上高が大幅に増加したことや、コロナ禍における事業活動の最適化をはかり、諸経費を抑制したこともあり、前年に比べ大幅に増加することができました。その結果、当事業の営業利益は、152,132千円(前年同期は14,958千円の営業損失)となりました。
<遺伝子組換えカイコ開発事業>
当事業の研究開発費は、コストを抑制しつつ、有用なタンパク質の開発や当該タンパク質の繭中産生量の改良における基礎研究に徹しており、前年に比べ減少いたしました。なお、研究開発につきましては、ヒト型コラーゲンの繭中産生量の増量については目途が立ちましたが、そのほかの研究開発においては、大きな進展はありませんでした。その結果、当事業の営業損失は、80,414千円(前年同期は95,255千円の営業損失)となりました。
なお、当事業は、医薬品原料生産に向けた、遺伝子組換えカイコによる組換えタンパク質の収量を飛躍的に増加させる研究開発をおこなってまいりましたが、目標達成時期に目途が立たないことや、当社グループが所有する、限りある資金を抗体関連事業における体外診断用医薬品原料等の開発に集中するため、遺伝子組換えカイコによる医薬品原料生産に向けた新規開発を中止することといたしました。なお、すでに遺伝子組換えカイコにより製造をおこなっている組換えフィブロネクチン等の試薬製品や体外診断用医薬品原料、ヒト型コラーゲン等については、今後も「抗体関連事業」において、製造・販売および製造方法の改良を継続してまいります(2023年4月27日公表「報告セグメントの変更に関するお知らせ」を参照)。
<化粧品関連事業>
当事業は、国内通信販売において、直接個人ユーザーへの販売から代理店販売に切り替えたため、販売単価の低下により、売上高は減少しておりますが、国内通信販売に関わる経費につきましては減少いたしました。また、中国への越境ECの構築をおこない、販売を開始しておりますが、現時点においては、中国本土の反応は限定的であり、売上高への影響は軽微となっております。その結果、売上高は、4,021千円(前年同期比69.9%減)、営業損失は、13,344千円(前年同期は12,565千円の営業損失)となりました。
以上の結果、売上高は、794,621千円(前年同期比22.7%増)、営業利益は58,373千円(前年同期は122,219千円の営業損失)となり、目標としていた営業利益の黒字を達成することができました。また、経常損失については、関係会社における投資損失や棚卸資産評価損等(2023年4月27日公表の「営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失の計上に関するお知らせ」を参照)を計上し、149,503千円(前年同期は243,472千円の経常損失)となりました。親会社株主に帰属する当期純損失については、関係会社における特別損失や特別利益等(2023年4月27日公表の「営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失の計上に関するお知らせ」を参照)を計上し、289,731千円(前年同期は258,767千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
② 財政状態
・ 流動資産
当連結会計年度における流動資産の残高は、前連結会計年度と比較して3.1%増の1,165,293千円となりました。この主な要因は、現金及び預金が105,813千円増加したこと、期末にかけて売上が非常に好調に計上できたこと等により売掛金等の売上債権が49,145千円増加したこと等によるものであります。
・ 固定資産
当連結会計年度における固定資産の残高は、前連結会計年度と比較して53.3%減の269,044千円となりました。この主な要因は、持分法による投資損失等の計上により投資有価証券が304,592千円減少したこと等によるものであります。
・ 流動負債
当連結会計年度における流動負債の残高は、前連結会計年度と比較して10.5%増の252,005千円となりました。この主な要因は、新規借入により短期借入金が5,000千円増加したこと、賞与引当金が7,981千円増加したこと等によるものであります。
・ 固定負債
当連結会計年度における固定負債の残高は、前連結会計年度と比較して4.8%減の103,715千円となりました。この主な要因は、約定弁済等により長期借入金が5,889千円減少したこと等によるものであります。
・ 純資産
当連結会計年度における純資産の残高は、前連結会計年度と比較して21.2%減の1,078,616千円となりました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純損失289,731千円の計上等により減少となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度に比べ112,813千円増加し、561,997千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は26,458千円(前年は93,204千円の支出)となりました。
この主な要因は、税金等調整前当期純損失を280,611千円計上しましたが、その内容は資金支出項目ではない費用の計上が多く、持分法による投資損失203,844千円、関係会社株式評価損174,468千円といった費用の計上によるものが多かったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により獲得した資金は30,036千円(前年は155,629千円の支出)となりました。 この主な要因は、関係会社への貸付による支出55,000千円があったものの、関係会社株式の売却による収入77,787千円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は991千円(前年は143,998千円の獲得)となりました。 この主な要因は、短期借入金の純増減額5,000千円によるもの等であります。
(注) 用語解説については、「第4提出会社の状況
4コーポレート・ガバナンスの状況等」の末尾に記載しております。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(千円)
前年同期比(%)
抗体関連事業
246,810
△1.4
遺伝子組換えカイコ開発事業
─
─
化粧品関連事業
─
─
合計
246,810
△1.4
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。2.金額は、製造原価によっております。
b. 商品仕入実績当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
仕入高(千円)
前年同期比(%)
抗体関連事業
17,327
△4.2
遺伝子組換えカイコ開発事業
─
─
化粧品関連事業
─
△100.0
合計
17,327
△37.4
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。2.金額は、仕入価格によっております。
c. 受注実績当社グループは、主として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
d. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
抗体関連事業
790,600
24.7
遺伝子組換えカイコ開発事業
─
─
化粧品関連事業
4,021
△69.9
合計
794,621
22.7
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
(自
2021年4月1日
(自
2022年4月1日
至
2022年3月31日)
至
2023年3月31日)
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
Immuno-Biological Laboratories, Inc.
49,798
7.7
85,388
10.7
㈱ニッピ
60,659
9.4
84,177
10.6
岩井化学薬品㈱
69,959
10.89.4
79,513
10.0
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討の内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ① 経営成績の分析
当社グループは抗体関連事業、遺伝子組換えカイコ開発事業及び化粧品関連事業により構成されており、当連結会計年度の当社グループの業績の分析につきましては、次のとおりであります。・売上高
抗体関連事業は、主力製品であるELISAキット及び抗体において、特に海外での売上の伸びが大きかったことが主な要因となり前年比24.7%増の790,600千円と大幅に増加しております。この主な要因としては、取り組んできたeマーケティングを活用した情報戦略の効果が現れたことや、当期期央以降の円安、新型コロナウイルス感染症の影響の低下等によるものと考えられます。化粧品関連事業については、国内通信販売における直接販売から代理店販売に切り替えたことによる販売単価の低下等の影響により売上高は前年比69.9%減の4,021千円となっております。・売上原価、売上総利益
原価面につきましては、諸物価高騰及び円安影響を受け、原材料、経費等にかなり影響を受けておりますが、作業効率の改善や仕入価格低減に向けた活動を絶えず行うこと等、原価低減活動を行っております。その結果、売上原価は前期比1%の微減となり、売上総利益は売上高増加、原価低減と相まって、前年比39.8%増の526,712千円となりました。・販売費及び一般管理費、営業利益
円安や海外情勢の不安定化をはじめとしたさまざまな要因により物価高が進行しており、製造費用はもとより販売費及び一般管理費においても光熱水道費をはじめとして費用高騰圧力となっておりますが、その中にあって、遺伝子組換えカイコ開発事業において研究項目を基礎研究にシフトしたこと等により販売費及び一般管理費は前年比6.1%減の468,338千円となりました。その結果、売上高増、売上総利益増と相まって営業利益は前年度122,219千円の営業損失から58,373千円の営業利益となり、黒字に転換することができました。・営業外損益、経常利益 当連結会計年度においては為替相場の動向が期初から期末にかけて円安傾向で推移したことにより外貨建売掛債権等において為替差益が4,559千円発生しております。一方、関係会社の持分法投資損失を203,844千円計上したこと等により経常損失は前期は243,472千円のところ93,968千円改善し、当期は149,503千円の経常損失となりました。・特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益 当連結会計年度において、持分法適用会社の株式の一部売却をしたことにより当該持分法適用会社は持分法の適用から除外され45,799千円の関係会社株式売却益を特別利益に計上、及び関係会社株式評価損を174,468千円特別損失に計上しております。これにより親会社株主に帰属する当期純損失は289,731千円(前期は258,767千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源、資金の流動性に係る情報当連結会計年度においては、営業活動が好調で抗体関連事業においては営業収支で利益を計上することができました。遺伝子組換えカイコ開発事業においても研究項目の選択と集中等により営業収支が改善しております。親会社株主に帰属する当期純損失は前連結会計年度に比較して悪化しておりますが、この悪化の要因は資金支出を伴わない持分法による投資損失や関係会社株式評価損の計上による影響が大きかったことから、営業活動によるキャッシュ・フローはプラス(資金の獲得)となっております。また、投資活動によるキャッシュ・フローにおいては関連会社への運転資金の供与のため貸付金の支出が55,000千円ありましたが、関係会社株式の売却による収入が77,787千円あったこと等により、こちらもプラス(資金の獲得)となっております。資金の財源については、自己資金で賄うことを基本としておりますが、状況に応じて金融機関からの借入や新株発行による増資等によるものも考慮に入れております。資金の流動性については、前述のとおり当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローが26,458千円の資金の獲得、投資活動によるキャッシュ・フローが30,036千円の資金の獲得、財務活動によるキャッシュ・フローが991千円の資金の獲得、現金及び現金同等物の期末残高は561,997千円であり、各キャッシュ・フローの規模等を勘案し、十分な手元流動性を確保しているものと考えております。翌連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、運転資金での支出が主なものであり、重要な設備投資は予定しておりませんので、先に述べましたとおり、現金及び現金同等物で十分賄える見込みであります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。