【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産合計は9,808,555千円となり、前事業年度末に比較して563,507千円減少いたしました。
これは主に、流動資産において、短期借入金の返済等に伴い現金及び預金が558,435千円減少したこと、また固定資産において、減価償却等に伴う有形固定資産の減少148,994千円、ソフトウエアの新規投資等に伴う無形固定資産の増加68,273千円、繰延税金資産の計上に伴う増加147,282千円によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は4,852,465千円となり、前事業年度末と比較して246,919千円増加いたしました。
これは主に、QR・バーコード決済の取扱いが増加したことにより預り金が1,022,973千円増加、未払金が360,557千円増加した一方、収益認識に伴う売上高への振替により契約負債が519,354千円減少、返済により短期借入金が500,000千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は4,956,089千円となり、前事業年度末と比較して810,427千円減少いたしました。
これは主に、欠損填補による取崩し及び自己株式の取得及び消却により資本剰余金が2,845,272千円減少した一方、繰越利益剰余金の欠損填補ならびに当期純利益の計上により利益剰余金が2,017,792千円増加したことによるものであります。
②経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、コロナ禍からの緩やかな持ち直しが続く一方で、世界的なエネルギー・食料価格の高騰や世界経済減速の影響を受け、先行きは不透明な状況が続いております。
このような状況の中でも、政府はキャッシュレス決済の推進を国策として、2025年には同決済比率を40%、将来的に世界最高水準となる80%を目指しております(注1)。これを追い風に、キャッシュレス決済業界においては、生活様式の変化を踏まえつつ、無人店舗やモバイルを起点とした新たなサービスやソリューションが出現しました。
当社においても、当事業年度は、当社データセンターに17万台を超える新規端末が接続され、稼働端末台数は83万台となりました(2023年3月末)。これによりセンター利用料が継続して増加しており、キャッシュレス決済サービスは堅調に推移しております。また、情報プロセシングサービスにおいては、当事業年度から高い拡張性、高セキュリティを備えたクラウドPOSの商用展開を開始いたしました。クラウドPOSから取得したデータを活用するための「データレイク」の基盤構築にも着手し、当社データセンターの競争優位性をさらに高めるための取り組みを鋭意進めております。
これらの結果、当事業年度における売上高は7,831,435千円(前期比9.7%増)、売上総利益2,562,183千円(前期比12.4%増)、営業利益560,038千円(前期比21.2%減)、経常利益535,357千円(前期比24.8%減)となりました。また繰延税金資産の計上に伴う法人税等調整額△147,282千円の計上により当期純利益672,519千円(前期は当期純損失385,789千円)となりました。
なお、当社の事業セグメントはキャッシュレス決済サービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(注1)「キャッシュレス・ビジョン」経済産業省(2018年4月)
(参考情報)
当社は、投資家が会計基準の差異にとらわれることなく、当社の業績評価を行い、当社の企業価値についての純粋な成長を把握するうえで有用な情報を提供することを目的として、財務諸表に記載された売上高以外に、当社の主要なサービスごとに外部顧客への売上高の推移を下表のとおり把握しています。またEBITDAを経営成績に関する参考指標としており、当該EBITDA及び算出方法は以下のとおりであります。
日本基準に基づくEBITDA=経常利益+減価償却費+支払利息
(単位:千円)
会計期間
第12期
第13期
第14期
第15期
第16期
売上高
4,977,125
8,169,935
6,451,089
7,139,159
7,831,435
(売上内訳)
センター利用料
1,608,390
2,367,075
3,133,165
3,496,550
3,822,014
決済端末販売売上
1,574,154
3,266,140
1,459,692
1,364,468
1,360,886
QR・バーコード
精算料
-
22,400
188,890
486,812
1,147,778
登録設定料等
473,975
1,209,290
631,720
728,445
647,724
開発売上
1,235,591
1,116,732
820,645
897,052
636,416
その他
85,013
188,296
216,973
165,829
216,615
経常利益
294,711
1,648,730
158,690
712,345
535,357
調整額:
+減価償却費
+支払利息
781,419
2,624
1,016,526
1,735
1,206,470
1,981
1,463,926
4,624
1,601,425
255
調整額小計
784,044
1,018,262
1,208,452
1,468,550
1,601,681
EBITDA
1,078,756
2,666,992
1,367,143
2,180,896
2,137,039
(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第15期の期首から適用しており、第15期以降は当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、2,861,304千円となり、前事業年度末に比べて558,435千円減少いたしました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、2,803,902千円となりました。これは主に、減価償却費1,601,425千円、預り金の増加1,022,973千円、および税引前当期純利益540,461千円を計上する一方、契約負債が519,354千円減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、1,377,459千円となりました。これは、無形固定資産の取得による支出1,276,584千円、有形固定資産の取得による支出100,874千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、1,984,877千円となりました。これは主に、自己株式の取得による支出1,500,000千円、短期借入金の返済による支出500,000千円の一方で、新株予約権の発行による収入22,156千円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社は、受注から役務提供の開始までの期間が短いため受注実績に関する記載は省略しております。
c.販売実績
当社は、提供するサービスについて、サービス内容に従って「センター利用料」、「決済端末販売売上」、「開発売上」、「登録設定料等」、「QR・バーコード精算料」、「その他」の6つに売上を区分しております。
センター利用料
電子決済処理の月額利用料
決済端末販売売上
非接触リーダー・ライター等の販売
開発売上
決済処理サービスに関連する開発売上
登録設定料等
決済処理センターへの登録料
QR・バーコード精算料
QR決済処理の利用料
その他
上記以外の売上
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はキャッシュレス決済サービス事業の単一セグメントであるため、上記のサービス別に記載しております。
(単位:千円)
サービスの名称
当事業年度
(自2022年4月1日
至2023年3月31日)
前年同期比(%)
センター利用料
3,822,014
109.3
決済端末販売売上
1,360,886
99.7
QR・バーコード精算料
1,147,778
235.8
登録設定料等
647,724
88.9
開発売上
636,416
70.9
その他
216,615
130.6
合計
7,831,435
109.7
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自2021年4月1日
至2022年3月31日)
当事業年度
(自2022年4月1日
至2023年3月31日)
金額
(千円)
割合
(%)
金額
(千円)
割合
(%)
株式会社日本カードネットワーク
1,352,078
18.9
1,431,164
18.3
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
809,782
11.3
778,205
9.9
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、見積りの不確実性により、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
②財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(売上高、売上原価、売上総利益)
売上高については、主にセンター利用料及びQR・バーコード精算料が増加したことにより、7,831,435千円(前期比9.7%増)となりました。
売上原価については、主に社内開発の決済システム等リリースによる減価償却費の増加により、5,269,251千円(前期比8.4%増)となりました。
その結果、売上総利益は、2,562,183千円(前期比12.4%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費については、賞与支給増や時間外勤務手当の支給等に伴う人件費増加、QR・コード決済の取扱増による支払手数料の増加などにより2,002,144千円(前期比27.6%増)となりました。
その結果、営業利益は560,038千円(前期比21.2%減)となりました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益については、主に前期に発生した助成金収入の減少により2,945千円(前期比54.5%減)となりました。
営業外費用については、主に株式公開費用の発生により27,626千円(前期比430.4%増)となりました。
その結果、経常利益は535,357千円(前期比24.8%減)となりました。
(特別損益、当期純利益)
特別利益については、新株予約権戻入益の発生により5,103千円(前期はなし)となりました。
特別損失の計上はありません。
法人税等合計については、主に繰延税金資産の計上による、法人税等調整額△147,282千円を計上したことによるものです。
その結果、当期純利益は、672,519千円(前期385,789千円の当期純損失)となりました。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社は、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、運転資金や設備投資等の調達につきましては、自己資金、金融機関からの借入及びリースを基本としております。
必要な運転資金は、金融機関との当座貸越契約を締結し十分な借入枠を有しております。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。
⑤経営者の問題意識と今後の方針に関して
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。
⑥重要な会計上の見積り及び当該見積もりに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されています。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社は、新型コロナウイルス感染症による事業への影響も含め、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
繰延税金資産の回収可能性
期末に税務上の繰越欠損金を有する場合の繰延税金資産の回収可能性の判断については、税務上の繰越欠損金が将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額及び将来加算一時差異の解消見込額と相殺され、税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上するものとされています。当社は、事業計画の算定においては、過年度実績、受注見込み及び市場動向を考慮して売上収益の成長を見積り、また、当社の設備投資計画等に基づいて営業費用の増加を見積っております。
将来の事業計画の算定に基づき一時差異等加減算前課税所得の金額を算出しております。繰延税金資産の金額は、今後の事業年度における一時差異等加減算前課税所得が見積りと異なった場合や、見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産が異なる可能性があります。
⑦経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、主な財務指標としては売上高、当期純損益を特に重視しておりますが、KPIとしては、①全社の売上高、②「情報プロセシング」分野の売上高、③定常的収益源であるセンター利用料売上、④加盟店に対する物理的な「ラストワンマイル」であり非財務指標における当社の事業規模を示す当社センターへの接続端末台数、⑤将来の利益源泉となる開発投資を経常的に実施していることから過年度の投資の影響の少ないEBITDAの5点を事業計画上定めております。また、9つのマテリアリティで構成されるサステナビリティ・ステートメントを定め、持続的な成長と企業価値の向上を目指し、目標達成に向け注力してまいる所存であります。各指標の推移は以下のとおりであります。
前事業年度
(自2021年4月1日
至2022年3月31日)
当事業年度
(自2022年4月1日
至2023年3月31日)
全社の売上高(千円)
7,139,159
7,831,435
情報プロセシング分野の売上高(千円)
71,036
117,553
センター利用料売上(千円)
3,496,550
3,822,014
接続端末台数(台)
696,000
833,000
EBITDA(千円)
2,180,896
2,137,039
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