【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は5,452,747千円となり、前事業年度末に比べ1,007,778千円増加いたしました。これは主として、保守サービス事業のメディコム保守に係る契約形態の変更に伴い前払費用が41,130千円減少したものの、オンライン資格確認端末の設置、導入案件等大型案件の進捗により売掛金が731,830千円、同案件の翌事業年度計画分に係る必要機材の調達により棚卸資産が291,711千円増加したことによります。固定資産は1,013,982千円となり、前事業年度末に比べ63,048千円減少いたしました。これは主として、社内インフラのリース導入により有形固定資産が10,498千円増加したものの、償却進行により無形固定資産が27,788千円、外形標準課税適用に伴う実効税率の見直しにより繰延税金資産が42,960千円減少したことによります。
この結果、総資産は6,466,730千円となり、前事業年度末に比べ944,730千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は3,397,162千円となり、前事業年度末に比べ275,310千円増加いたしました。これは主として、買掛金が130,399千円減少したものの、運転資金のための短期借入金が300,000千円、未払法人税等が81,508千円増加したことによります。固定負債は1,444,302千円となり、前事業年度末に比べ34,505千円増加いたしました。これは主として、社内インフラのリース導入によりリース債務が9,884千円増加した他、退職給付引当金が24,557千円増加したことによります。
この結果、負債合計は4,841,464千円となり、前事業年度末に比べ309,816千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は1,625,265千円となり、前事業年度末に比べ634,913千円増加いたしました。これは公募増資による資本金80,960千円、資本準備金80,960千円の増加の他、当期純利益481,563千円及び剰余金の配当8,570千円によるものであります。
この結果、自己資本比率は25.1%(前事業年度末は17.9%)となりました。
②経営成績の状況
わが国経済は、ここ数年にわたってプラス成長とマイナス成長を繰り返し、一進一退の状態が続いておりましたが、当事業年度においては2022年10月より外国人観光客の受け入れが再開し、経済活動の正常化が図られ、2023年3月の政府の月例経済報告によると、一部に弱さが見られるものの、緩やかに持ち直しているとあります。
2022年9月には、米国の大幅利上げによる日米金利差拡大を背景に、円安・ドル高が進展し、政府・日銀はおよそ24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施しました。世界経済は、2023年3月にはシリコンバレー銀行の破綻により金融システム不安が高まり、米国経済の先行きは不透明となっております。海外経済の景気後退は、わが国の景気を下押しするリスクとなることから、今後も注視していく必要があります。
そのような中、国内においては製造業を中心に企業収益の改善傾向が続いており、人手不足やテレワーク関連の投資やデジタル化に向けたソフトウェア投資等、設備投資が増加しております。
当社においても、介護業務支援ソフトや薬局DXに伴う薬局経営サポートシステムの需要増加により、機器の販売、設定の依頼が想定以上に増加しました。また、2022年6月には2023年4月よりオンライン資格確認の導入を原則として義務付けることが閣議決定され、保険医療機関・保険薬局においては、顔認証付きカードリーダーの設置等体制整備が必要となりました。当社にも多くの企業から設置作業の依頼があり、当事業年度の業績は計画を大きく上回りました。
この結果、当事業年度の業績は、売上高15,948,715千円(前事業年度比14.9%増)、営業利益752,829千円(同24.3%増)、経常利益762,418千円(同24.5%増)、当期純利益481,563千円(同13.7%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
なお、「セグメント利益」は、本源的な事業の業績を図るために、本社管理部門の販売費及び一般管理費配賦前の営業損益を示しており、各報告セグメントの全社への貢献を明確化した利益指標であります。
保守サービス事業
保守サービス事業では、PHC株式会社の製品である、全国の医院・クリニックに導入されているメディコム(レセプトコンピュータ、電子カルテ)をはじめ、調剤薬局に導入されている薬歴システムや錠剤包装機、病院に導入されている注射薬払出システムや適温配膳車等の保守サービスを提供しております。メディコムの保守は、既存顧客の機器リプレース時に契約形態を当社と顧客がメディコムハード保守契約を直接締結する方式から、顧客とPHC株式会社がハード保守契約を締結し、PHC株式会社から当社が保守を受託するシステムサポート契約方式への切り替えが近年進んでおり(図1)、この契約形態の変更により、利益は確保しつつ売上実績は減少傾向にあります。一方でこの契約方式になることで、これまで未契約であった顧客との契約締結が促進されており、契約件数は増加傾向にあります。
また、PHC株式会社以外では、ソリューション事業において設置展開した機器の保守、運用を引き続き当社で受託するケースが増加傾向にあり、導入、展開から保守運用までワンストップで対応可能という当社の強みが、新規案件獲得に繋がっております。また、全国60超の拠点を生かした既存顧客からの保守エリア拡大要請や、新規顧客からの保守依頼も増加傾向にあり、事業は堅調に成長しております。
この結果、当事業年度の業績は、売上高4,557,688千円(同4.6%増)、セグメント利益705,932千円(同24.2%増)となりました。
(図1)
ソリューション事業
ソリューション事業では、主要取引先である日本電気株式会社、KDDI株式会社をはじめ、その他全国の企業からの依頼により、IT機器の物販、設計・構築、設置展開作業を受注しております。
当事業年度は、介護業務支援ソフトや薬局経営サポートシステムの需要増加に伴い、機器の設定、販売の依頼が増加しました。また、政府による医療DXの基盤となるオンライン資格確認の導入が2023年4月より義務化されるのに伴い、保険医療機関・保険薬局への顔認証付きカードリーダーの設置作業依頼が多くありました。その後、オンライン資格確認原則義務化の期限付き経過措置が設けられ、一部設置作業が次年度に持ち越されましたが、当初想定していた以上の案件受託により、売上高は大幅に増加いたしました。
この結果、当事業年度の業績は、売上高9,212,092千円(同25.6%増)、セグメント利益865,249千円(同25.8%増)となりました。
人材サービス事業
人材サービス事業では、NECフィールディング株式会社へのカスタマエンジニア派遣、KDDI株式会社へのシステムエンジニア派遣、提案書作成等の業務請負、その他企業へもエンジニアを派遣しております。
当事業年度は、近年の転職市場の活性化、IT人材不足の市場におけるエンジニアの求人倍率の増加により、採用活動が想定のとおりには進まず、また退職者が例年と比較して多くおりました。しかしながら、新規取引先への派遣開始や、派遣単価の引き上げ交渉等により、売上高の減少幅は微減に抑えることができました。
この結果、当事業年度の業績は、売上高2,178,933千円(同0.8%減)、セグメント利益318,027千円(同12.1%減)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は929,594千円となり、前事業年度末に比べ8,600千円増加いたしました。
なお、当事業年度における各活動によるキャッシュ・フローは以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、401,526千円の減少(前事業年度は、978,093千円の増加)となりました。これは主として、税引前当期純利益760,103千円の収入があったものの、オンライン資格確認端末の設置、導入案件等大型案件の進捗による売上債権の増加額751,720千円、同案件の翌事業年度計画分に係る必要機材の調達による棚卸資産の増加額291,711千円、仕入債務の減少額130,399千円による支出があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、29,778千円の減少(前事業年度は、35,430千円の減少)となりました。これは主として、事務所レイアウト変更、社内基幹ネットワーク機器の老朽化に伴う入れ替え等に伴う有形固定資産の取得による支出14,330千円、基幹システムの改修、電子申請システムのバージョンアップ等各種社内システムの機能拡充に伴う無形固定資産の取得による支出15,448千円があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動による資金は、439,905千円の増加(前事業年度は、959,404千円の減少)となりました。これは主として、運転資金のための短期借入れによる収入300,000千円、翌事業年度に計画しているテクニカルセンターの拡張及び品質管理システムの更新に係る設備資金調達のための株式発行による収入161,920千円があったことによります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比(%)
保守サービス事業(千円)
4,557,688
104.6
ソリューション事業(千円)
9,212,092
125.6
人材サービス事業(千円)
2,178,933
99.2
合計(千円)
15,948,715
114.9
(注)1.セグメント間の取引については発生しておりません。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自 2021年4月1日
至 2022年3月31日)
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
PHC株式会社
1,942,767
14.0
2,074,030
13.0
KDDI株式会社
1,454,868
10.5
1,356,650
8.5
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりましては、経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りや評価が含まれております。これらの見積りにつきましては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、不確実性を伴うため、実際の結果はこれらとは異なる場合があります。 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等に関する分析
イ.経営成績
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
ロ.財政状態
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
ハ.キャッシュ・フローの状況
当該事項につきましては、本書の「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金、設備資金等の所要資金につきましては、営業活動で得られた資金を財源としております。大規模なシステム・整備への投資に伴い資金の不足が見込まれる場合には金融機関からの借入による手当を想定しております。また、ソリューション事業の拡大に伴い、大型案件の商品調達に係る資金需要が見込まれますが、こちらについても金融機関からの借入により所要資金の確保を行ってまいります。
季節的な変動に伴う資金需要に機動的に対応する為、取引先金融機関2行と当座貸越契約を締結しております。当座貸越枠の合計は1,000,000千円であり、当事業年度において、本契約に基づく当座貸越残高は700,000千円となっております。
また、当社の現金及び現金同等物により、現在必要とされる資金水準を満たす流動性を保持していると考えております。
当社は当事業年度において、東京証券取引所スタンダード市場へ上場いたしました。その際、新株の発行により161,920千円の資金調達を行いました。調達した資金は、翌事業年度に計画しているテクニカルセンター拡張のための設備資金及び品質管理システム更新のための設備資金に充当する予定であります。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析について
経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標としては、売上高、セグメント利益を設定し、経営上の目標としております。
売上高は各事業、毎年順調に伸長してきましたが、当事業年度は転職市場の活性化の影響もあり、エンジニアの退職が例年よりも多くあり、人材サービス事業において前期比99.2%となりました。同様にセグメント利益についても前期比87.9%となりました。また、保守サービス事業において前事業年度はセグメント利益が減少しておりました。これは、中部エリアにおける事業拡大のための支店、営業所の移転と新設に伴い、不動産賃借料等販売費及び一般管理費が増加したことによります。このように保守サービスは新たな体制整備に当たっては、一時的に販売費及び一般管理費が増加するという特徴があります。体制が整った当事業年度は、利益が再び上昇し前期比124.2
%となり、セグメント利益率も回復しております。
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