【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)業績等の概要
① 業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症への各種政策の効果もあり景気の持ち直しの動きが見られ、社会経済活動の正常化とともに緩やかな回復基調で推移しました。しかし、ウクライナ情勢の長期化による資源・原材料価格の高騰など、依然として不透明な状況が続いております。
当建設業界においては、公共投資は関連予算の執行により底堅く推移しており、民間設備投資は徐々に持ち直しの傾向にあります。しかしながらインフレ等による建設資材の高騰や品薄が長期化してきており、当社グループを取り巻く経営環境の先行きは依然として楽観できない状況にあります。
このような中、当社グループは社会資本整備の一翼を担う企業集団として、自然災害の復旧支援、医療施設の改修事業等、国民の安全と豊かな暮らしの土台形成のための事業活動を行ってまいりました。
この結果、受注高においては前年度の災害復旧工事による受注高の減少により前期比36.5%減の4,974百万円、売上高につきましては前期比33.0%減の5,480百万円、営業利益につきましては、前期比57.8%減の414百万円、経常利益につきましては前期比50.0%減の517百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比29.5%減の329百万円となりました。
当社グループの前期繰越受注高、受注高、売上高、次期繰越高は次のとおりであります。
(単位:千円)
年度別
前期繰越受注高
受注高
売上高
次期繰越高
前連結会計年度
3,252,503
7,828,652
8,179,512
2,901,643
当連結会計年度
2,901,643
4,974,792
5,480,028
2,396,407
増減
△350,859
△2,853,860
△2,699,483
△505,236
当連結会計年度のセグメント別の業績等の概要は次のとおりであります。
[土木関連事業]
法面保護工事が主体の当事業は、土木事業部の従業員数が減少しており、年間予定案件の発注が遅れていることや、なくなっている結果、受注高につきましては前年同期比64.7%減の988百万円、売上高につきましては前年同期比58.3%減の1,320百万円、営業利益につきましては、前年同期比62.7%減の229百万円となりました。
なお、当セグメントの前期繰越受注高、受注高、売上高、次期繰越高は次のとおりであり、損益については、「第5 経理の状況」の「セグメント情報等」の項を参照ください。
(単位:千円)
年度別
前期繰越受注高
受注高
売上高
次期繰越高
前連結会計年度
955,978
2,796,247
3,165,055
587,171
当連結会計年度
587,171
988,440
1,320,344
255,267
増減
△368,807
△1,807,806
△1,844,710
△331,903
[建築関連事業]
医療施設向けの放射線防護・電磁波シールド工事等が主体の当事業は、新築物件・改修工事等の物件数が減少しており、元請建設業者の激しい価格競争の結果、受注高につきましては前年同期比20%減の2,666百万円、売上高につきましては前年同期比14.3%減の2,775百万円、営業利益につきましては、前年同期比25.7%減の323百万円となりました。
なお、当セグメントの前期繰越受注高、受注高、売上高、次期繰越高は次のとおりであり、損益については、「第5 経理の状況」の「セグメント情報等」の項を参照ください。
(単位:千円)
年度別
前期繰越受注高
受注高
売上高
次期繰越高
前連結会計年度
1,965,895
3,332,964
3,240,177
2,058,682
当連結会計年度
2,058,682
2,666,601
2,775,318
1,949,965
増減
92,787
△666,363
△464,858
△108,717
[型枠貸与関連事業]
消波根固ブロック製造用型枠の賃貸及びコンクリート二次製品の販売が主体の当事業は、近年大きな災害が起きていないこともあり、災害復旧事業が急速に減少していることや、建設物価の高騰からブロック使用量の減少や発注時期の遅延等が起こっている結果、受注高につきましては前年同期比23.7%減の1,265百万円、売上高につきましては前年同期比23.9%減の1,303百万円となり、営業利益につきましては、前年同期比38.3%減の177百万円となりました。
なお、当セグメントの前期繰越受注高、受注高、売上高、次期繰越高は次のとおりであり、損益については、「第5 経理の状況」の「セグメント情報等」の項を参照ください。
(単位:千円)
年度別
前期繰越受注高
受注高
売上高
次期繰越高
前連結会計年度
203,105
1,658,022
1,712,997
148,129
当連結会計年度
148,129
1,265,257
1,303,303
110,084
増減
△54,975
△392,764
△409,694
△38,045
[その他]
その他の分野には、不動産賃貸事業、海外での事業等をまとめてその他としております。受注高につきましては前年同期比31.6%増の54百万円、売上高につきましては前年同期比32.3%増の81百万円、営業利益につきましては前年同期比12.6%増の22百万円となりました。
なお、当セグメントの前期繰越受注高、受注高、売上高、次期繰越高は次のとおりであり、損益については、「第5 経理の状況」の「セグメント情報等」の項を参照ください。
(単位:千円)
年度別
前期繰越受注高
受注高
売上高
次期繰越高
前連結会計年度
127,523
41,418
61,282
107,659
当連結会計年度
107,659
54,492
81,061
81,090
増減
△19,863
13,073
19,779
△26,569
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益516百万円および、仕入債務の減少383百万円等により、668百万円の収入(前連結会計年度は98百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券等の取得、固定資産の取得による支出等により、2,373百万円の支出(前連結会計年度は1,061百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に長期借入れによる収入等があり、935百万円の収入(前連結会計年度は13百万円の支出)となりました。これらの結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ712百万円減少し、2,087百万円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める土木関連事業、建築関連事業及び型枠貸与関連事業では生産実績を定義することが困難であり、上記の事業のうち工事業は請負形態によっているため販売実績という定義は実態にそぐわないことから、受注及び販売の実績については「(1)業績等の概要 ①業績」における各セグメントの業績に関連付けて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析したものであります。
また、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末日(2023年3月31日)現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討
a.経営成績
「(1)事業等の概要 ①業績」に記載したとおり、わが国経済は先行き不透明な状況にあり、当社グループが属する建設関連業界におきましても楽観できない状況が続いております。
このような中、当社グループは、社会資本整備の一翼を担う企業集団として、列島各地で頻発する自然災害の復旧支援に尽力していくとともに、企業価値向上のため量から質への営業活動を展開し、各事業の効率化の向上と聖域なきコスト削減を目指して取り組んでまいりました。
その結果、当連結会計年度の経営成績は次のとおりとなりました。
売上高におきましては、公共投資、大型案件の施行が減少したことにより、前期比33.0%減の5,480百万円と計画を下回る結果となりました。
また利益面におきましては、前年度の災害復旧工事が一巡したことにより、売上総利益は前期比35.2%減の1,214百万円となり、営業利益は前期比57.8%減の414百万円となりました。経常利益は前期比50.0%減の517百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比29.5%減の329百万円となりました。
なおセグメント別の売上高につきましては、「(1)業績等の概要 ①業績」を、損益につきましては、「第5 経理の状況」の「セグメント情報等」の項をご参照ください。
b.財政状態
当連結会計年度末の流動資産につきましては、売上債権が減少したことに加え、現金預金が減少したこと等から前連結会計年度末に比べ1,751百万円減少し、5,672百万円となりました。また、固定資産につきましては、不動産の取得および投資有価証券が増加したことから前連結会計年度末に比べ1,501百万円増加し、10,053百万円となりました。その結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ249百万円減少し、15,725百万円となりました。
流動負債につきましては、仕入債務が減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ724百万円減少し、2,484百万円となりました。また固定負債につきましては、借入金が増加したこと等により前連結会計年度末に比べ823百万円増加し、3,705百万円となりました。その結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ99百万円増加し、6,190百万円となりました。
純資産につきましては、剰余金の配当が16百万円でありましたが、その他有価証券評価差額金マイナス122百万円の計上、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益が329百万円となったこと等により、前連結会計年度末に比べ349百万円減少し、9,535百万円となりました。
以上から、連結ベースの自己資本比率は、前連結会計年度末の61.9%から1.3ポイント減少し、60.6%となりました。
c.キャッシュ・フローの状況
当社グループの資金状態は、営業活動によるキャッシュ・フローにおいて668百万円の資金の収入、投資活動において2,373百万円の資金の支出、財務活動において935百万円の資金の収入となりました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの詳細状況につきましては、「(1)業績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。
当社グループの連結財務諸表の作成において、経営成績及び財政状態に影響を与える見積りは、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき合理的と考えられるさまざまな要因を考慮したものでありますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおいては、特に次に掲げるものが重要な影響を及ぼす事項であると考えております。
a.貸倒引当金の見積り
当社グループが保有する債権又は投資に係る損失が見込まれる場合、その損失に充当する必要額を見積り、貸倒引当金を計上しておりますが、将来債務者及び被出資者の財務状況が悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。
b.投資有価証券の減損
当社グループの保有する有価証券については、合理的な判断基準を設定のうえ、減損処理の要否を検討しておりますが、将来保有する有価証券の時価や投資先の財務状況が悪化した場合には有価証券等の評価損を計上する可能性があります。
c.固定資産の減損
当社グループでは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。現時点では減損処理の必要な固定資産については、減損損失の計上を行っておりますが、将来の事業環境の変化、業績の動向等により減損の兆候が生じた場合には、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。
d.繰延税金資産の見積り
当社グループでは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存することから、課税所得がその見積り額と乖離する場合には繰延税金資産及び法人税等調整額が増減する可能性があります。
e.工事損失引当金
工事原価総額の見積りが工事収益総額を上回る可能性が高く、かつ、その損失見込額を合理的に算定できる場合、当該損失見込額を損失が見込まれた期に工事損失引当金として計上しております。
f.完成工事高及び完成工事原価の計上
完成工事高及び完成工事原価の計上は、工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度を信頼性をもって見積もることのできる工事について工事進行基準を適用しております。なお工事原価総額には、過去の工事の施行実績を基礎として、個々の案件に特有の状況を織り込んでおり、決算日ごとに見直しておりますが、外注価格及び資機材価格の高騰、手直し等による施行中の追加原価の発生など想定外の事象により工事原価総額が増加した場合は、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要の主なものは、土木・建築関連事業においては材料・外注費、型枠関連事業においては賃貸用鋼製型枠の設備投資費、販売費及び一般管理費等の経費であります。
当社グループでは、キャッシュ・フローの増加が企業の安定運営及び企業価値向上につながるものと認識しており、当社が中心となり当社グループ全体のキャッシュマネージメントを綿密に調査・検証することにより、流動性の確保に努めております。また、金融機関には資金運用方針の適時・適切な報告を行い、機動的な資金調達を行っていく方針であります。
当面の方針としては、事業運営に必要な短期資金を主に金融機関からの借入により賄うとともに、手許流動性の確保・拡大に努め、安定的な資金運営を目指していく方針であります。
なお、当連結会計年度における有利子負債の残高は4,132百万円、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は2,087百万円となっております。
当社グループの資金の状況については「(1)業績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
⑤ 経営上の目標の達成状況
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における売上高総利益率は22.2%(前年比0.8ポイント減)、売上高営業利益率は7.6%(前年比4.5ポイント減)、ROE(自己資本利益率)は3.4%(前年比1.4ポイント減)となりました。当社グループは、今後も、安定的な収益確保及び収益力強化と株主資本の有効活用に努めてまいります。