【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度(2022年1月1日~2022年12月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響は残るものの行動制限が緩和され、経済活動が正常化に向かいました。また、米国の金融引き締めによるドル高の進行は、国内製造業にとっては輸出採算の改善につながり、国内生産拡大の要因となりました。一方、半導体の供給不足の継続と、ウクライナ紛争による資源高やサプライチェーンの混乱は、国内製造業の生産抑制要因となり、輸入インフレによる物価高は、国内最終需要の押し下げ要因となりました。
このような複雑な経済状況の下、当社の主力事業分野の一つである工具、消耗品、修繕部品、文具等の間接材の市場では、製造業における堅調な工場稼働とオフィスや商業施設への人の回帰などにより、安定した成長を持続することができました。もう一つの主力事業分野である国内商業施設向けサービス市場では、行動制限の解除を受けた小型店舗の改装や新規開店が活発となり、年間を通じて活況が続きました。
以上のような環境の下、当社グループの業況は前連結会計年度(以下「前期」)からの好調を持続し、売上高は44,383百万円(前期比17.0%増)、売上総利益は4,346百万円(前期比11.2%増)、販売費及び一般管理費は3,303百万円(前期比8.6%増)、営業利益は1,042百万円(前期比20.6%増)となりました。経常利益は、当社が2022年12月26日付で東京証券取引所スタンダード市場に上場した事に関わる一時費用や、急速なドル高による為替差損により、営業利益を48百万円下回る994百万円(前期比20.1%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は704百万円(前期比37.8%増)となり、無形固定資産の廃棄による特別損失があった前期に比べて大幅な増益となりました。
各セグメントの業績は、次のとおりであります。
<MRO事業>
間接材購買のためのシステム提供と物品販売を行うMRO(Maintenance, Repair & Operations)事業においては、主要顧客である製造業向けでは、輸出採算の改善による工場稼働増要因と、部材不足による稼働抑制要因が拮抗し、例年並みの成長を持続できました。サービス業の事業所向けでは、前期までの売れ筋であった消毒液等の新型コロナ対策商品に代わり、通常の事業所用消耗品の売上が増加しました。親会社を経由する中小事業所向けの卸販売に関しては、年後半より市場での価格競争が激化し、伸長率が下落しましたが、年間合計では堅調な伸びを維持しました。これらの結果、MRO事業の売上高は31,904百万円(前期比12.9%増)、セグメント利益は572百万円(前期比8.7%増)となりました。
<FM事業>
商業施設向けにサービスの提供を行うFM(Facility Management)事業においては、多店舗展開のコンビニエンスストアやファストフード店舗の改装および新規開店が活況でした。この活況には、新型コロナウイルス感染症の影響により変化した消費者の行動パターンに対応した売り場への再構築や、テイクアウト需要の高まりに対応したドライブスルー型店舗の出店増等、一過性の需要増にとどまる可能性がある案件が含まれていますが、年後半からは、新型コロナウイルス感染症収束後の本格的な人の屋外活動増を期待したホテルの改装案件などの需要回復も始まりました。この結果、FM事業の売上高は12,434百万円(前期比29.7%増)、セグメント利益は411百万円(前期比55.8%増)と急増しました。
<その他>
その他事業は、当社の子会社であるATC株式会社のソフトウエア事業が中心であり、同社が高度なノウハウを持つMDM(Master Data Management)関連の外販事業の成約案件が少なかったことから、売上高は43百万円(前期比55.5%減)、セグメント利益は58百万円(前期比20.8%減)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は12,911百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,844百万円増加いたしました。現金及び預金が1,031百万円、棚卸資産が595百万円、売掛金及び契約資産が262百万円増加し、電子記録債権が125百万円減少したことが主な要因です。現金及び預金の増加は主に公募増資によるものであります。固定資産は2,373百万円となり、前連結会計年度末に比べ195百万円増加しました。有形固定資産が25百万円、無形固定資産が159百万円増加したことが主な要因です。これらの結果、総資産は、15,284百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,039百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は10,578百万円となり、前連結会計年度末に比べ634百万円増加しました。これは1年内返済予定の長期借入金が362百万円、未払消費税等が80百万円減少しましたが、買掛金が1,000百万円、賞与引当金が42百万円増加したことなどによるものです。固定負債は112百万円となり、前連結会計年度末に比べ142百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が137百万円減少したことによるものです。
これらの結果、負債合計は、10,690百万円となり、前連結会計年度末に比べ491百万円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は4,594百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,547百万円増加しました。公募増資による資本金473百万円、資本剰余金473百万円の増加、また親会社株主に帰属する当期純利益704百万円の計上による増加、剰余金の配当102百万円による減少が主な要因です。これらの結果、自己資本比率は30.1%(前連結会計年度末は23.0%)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は3,896百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,031百万円増加いたしました。なお、当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,377百万円の収入超過となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純利益994百万円、仕入債務の増加1,000百万円、減価償却費532百万円の収入要因があった一方、棚卸資産の増加額595百万円、法人税等の支払額349百万円、売上債権の増加額137百万円、未払消費税等の減少額80百万円の支出要因があったこと等によるものであります。棚卸資産の増加は、輸入商品の品種の増加と、調達リードタイム長期化に対応した在庫水準の積み増しが要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、679百万円の支出超過となりました。その主な要因は、当社グループの内製ソフトウエア開発増加に伴う無形固定資産の取得による支出667百万円の支出要因があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、333百万円の収入超過となりました。その主な要因は、株式の発行による収入946百万円の収入要因があった一方、長期借入金の返済による支出500百万円、配当金の支払額102百万円の支出要因があったこと等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。
b 受注実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。
c 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
販売高(百万円)
前年同期比(%)
MRO事業
31,904
112.9
FM事業
12,434
129.7
報告セグメント計
44,339
117.1
その他
43
44.5
合計
44,383
117.0
(注)1.その他セグメントはITシステム開発運用部門であり、MRO事業、FM事業とセグメント間の取引があります
が、全額内部消去されるため、ITシステムの外販事業のみの金額を表示しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年1月1日
至 2021年12月31日)
当連結会計年度
(自 2022年1月1日
至 2022年12月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
アスクル株式会社
6,630
17.5
7,293
16.4
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりでありま
す。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 「経営成績等」及び「財政状態」並びに「セグメントごとの経営成績の状況」に関する分析・検討内容
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、44,383百万円(前年同期比17.0%増)となりました。
売上高の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、売上の増加に伴い40,037百万円(前年同期比17.6%増)となりました。
この結果、売上総利益は、4,346百万円(前年同期比11.2%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、3,303百万円(前年同期比8.6%増)となりました。
主な要因は、稼働ソフトウエアの増加に伴う無形固定資産の償却費及びシステム保守・運用費用、人件費、売上増加に伴う物流費の増加によります。
この結果、営業利益は、1,042百万円(前年同期比20.6%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当連結会計年度において、営業外収益は2百万円(前年同期比28.2%減)、営業外費用は50百万円(前年同期比24.6%増)発生しました。
主な要因は、上場関連費用25百万円、為替差損21百万円が発生したことによるものです。
この結果、経常利益は、994百万円(前年同期比20.1%増)となりました。
(法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)
上記の結果、税金等調整前当期純利益は、前年同期に比べ269百万円増加し994百万円(前年同期比37.2%増)となり、税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を290百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、704百万円(前年同期比37.8%増)となりました。
なお、財政状態の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b 資本の財源及び資金の流動性
当社グループでは、休前日を除く通常月においては、近年、売掛金と買掛・未払金の残高が、ほぼ拮抗していることから、運転資金需要のうち主なものは、人件費や賃借料といった営業固定費と業務委託費からなるITシステムに係る保守運用費用であり、費目としては販売費及び一般管理費となります。一方、投資を目的とした資金需要は、事業基盤を形成するITシステム、ソフトウエアへの投資であり、費目としては無形固定資産の取得となります。運転資金は、主として自己資金で調達することとしておりますが、ソフトウエアへの投資額が足元で増加していることから、投資については、銀行等からの長期借入金により、投資額の一部を賄っております。
前連結会計年度末における有利子負債残高は715百万円であり、全額が長期借入金ですが、借入期間は平均3年であるため、常に1/3以上の借入額が1年以内に返済予定の借入金となっています。当連結会計年度末の有利子負債残高は214百万円で、1年以内の返済予定額が137百万円と過半を占めており、返済間近の借入額が増加しております。当連結会計年度末における現金及び預金の残高は3,896百万円と余裕がありますが、今後も資金残高および各キャッシュ・フローの状況を常時もモニタリングし、資本の財源および資金の流動性の確保に努めてまいります。
③ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載の通り、当社グループのサービスの普及度を測れる連結売上高と連結営業利益額となります。
連結売上高に関しては、基盤事業であるMRO事業において、中核分野である製造業の大企業向けが順調に伸長している一方、もう一つの基盤事業であるファシリティ・マネジメント事業でも、テイクアウトに強い外食業態の新店・改装需要の取り込みが進み、順調に伸長し前年比117.0%となりました。
また、連結営業利益額に関しては、当社創業以来初の1,000百万円を突破し、前年比120.6%と連結売上高以上の伸びとなっています。当社グループでは、人件費やIT関係費等の営業固定費の増加率以上の伸長率で、連結売上高を伸長させることにより、連結営業利益額を増加させることができると考えており、その達成状況を判断するために連結営業利益額を経営指標としています。
連結売上高と連結営業利益の推移及び前年比伸長率
2020年12月期
通期
2021年12月期
通期
2022年12月期通期
連結売上高(百万円)
32,447
37,948
44,383
前年比(%)
※91.8
117.0
117.0
連結営業利益(百万円)
741
864
1,042
前年比(%)
102.3
116.6
120.6
※2020年12月期より収益認識に関する会計基準の早期適用を行ったことにより前年比で減少となっておりますが、
2019年12月期に同基準を適用した場合における前年比は101.7%となります。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産および負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しておりますが、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは繰延税金資産については、将来減算一時差異に対して、将来の収益力に基づく課税所得等に基づき、繰延税金資産の回収可能性を判断しておりますが、回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて決定した将来事業年度の課税所得の見積りを前提としております。課税所得の見積りの基礎となる翌期以降の事業計画における主要な仮定は、事業セグメントごとかつ得意先別に集計した売上高と売上総利益率の予測であります。売上高の予測は、過去の売上実績や新規顧客との商談状況、顧客の出店・改装計画などを基とし算出しております。また、売上総利益率の予測は、売上高の予測と過去の仕入実績などに基づいて売上原価を予測し算出しております。なお、課税所得が生じる時期及び金額は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期及び金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度以降において認識する繰延税金資産の金額に重要な変動を与えるリスクがあります。
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