【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における経営環境は、新型コロナウイルス感染症の影響で引き続き景気に一部弱さがみられたものの、日常生活や経済社会活動の継続に向けた各種政策の効果により、持ち直しの動きが見られました。一方、世界的な金融引き締め等が続く中、記録的な円安や資源価格の高騰など、依然として先行きには注視が必要な状況が続いております。
当社事業においては、2022年3月まで発出されていたまん延防止等重点措置の影響で、第1四半期会計期間を中心に旅客需要に弱含みの状況が続きましたが、行動制限の解除や2022年10月に開始された全国旅行支援等に伴う観光需要の喚起により秋以降は回復基調がより顕著になりました。さらに新型コロナウイルス感染症の感染症法上における分類が「5類」へ移行されること、またマスク着用ルール緩和の方針が打ち出されたこと等により旅行需要は一層の高まりを見せ、第4四半期会計期間の平均座席利用率がコロナ禍の影響を大きく受けた前年同四半期比で31.2ポイント増の77.8%となるなど、有償旅客数は新型コロナウイルス感染症流行前と同水準まで力強く回復いたしました。
また、当社は中長期における成長戦略施策の一つとして高品質なサービス提供を目指す中で、継続して運航品質を磨き上げた結果、定時運航率5年連続第1位、2022年度JCSI(日本版顧客満足度指数)国内長距離交通部門顧客満足第1位を獲得、加えて第4回日本サービス大賞国土交通大臣賞を受賞しました。
事業規模の拡大を視野に入れた羽田空港発着枠の獲得についても、羽田発着枠政策コンテストにおいて「羽田=宮古(下地島)線」の運航継続が2025年3月まで認められました。さらに2025年度から省燃費のボーイング737MAXシリーズの導入を決定するなど、着実に中長期戦略の実現に向けて進捗しております。
今後も当社のビジネスモデルをより一層磨き上げ、一人でも多くのお客様に安全で快適な空の旅を提供し、一番に選んでいただけるエアラインを目指して参ります。
当事業年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a.財政状態
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ14,277百万円増加し、107,837百万円となりました。
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ340百万円減少し、83,919百万円となりました。
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ14,618百万円増加し、23,917百万円となりました。
b.経営成績
当事業年度における事業収益は84,661百万円(前事業年度比79.6%増)、営業利益3,453百万円(前事業年度は営業損失16,694百万円)、経常利益3,713百万円(前事業年度は経常損失15,079百万円)、当期純利益5,726百万円(前事業年度は6,729百万円の当期純損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)残高は、前事業年度末に比べて13,236百万円増加し、22,519百万円となりました(前事業年度末は9,282百万円)。
各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果、獲得した資金は5,911百万円(前事業年度は12,459百万円の支出)となりました。これは主に契約負債の増加5,501百万円(前事業年度は2,100百万円の増加)によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果、支出した資金は2,269百万円(前事業年度は380百万円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出1,471百万円(前事業年度は388百万円)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果、獲得した資金は9,608百万円(前事業年度は8,852百万円の獲得)となりました。これは主に株式の発行による収入13,755百万円(前事業年度は2,000百万円)によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.営業実績
当事業年度の営業実績の状況は、次のとおりであります。
科目
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比
金額(百万円)
構成比(%)
(%)
航空運送事業収入
旅客収入
82,044
96.9
179.8
貨物収入
27
0.0
126.8
航空運送事業収入合計
82,072
96.9
179.7
附帯事業収入
附帯事業収入
(航空運送に附帯関連する事業)
2,588
3.1
174.4
合計
84,661
100.0
179.6
(注)1.当社は航空事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため、記載を省略しております。
b.輸送実績
当事業年度の輸送実績の状況は、次のとおりであります。
項目
当事業年度
(自 2022年4月1日
至 2023年3月31日)
前年同期比
(%)
国内線
有償旅客数(人)
7,022,017
168.5
有償旅客キロ(千人・キロ)
7,450,098
171.7
有効座席キロ(千席・キロ)
10,025,049
119.7
有償座席利用率(%)
74.3
143.4
(注)1.有償旅客キロは、各路線各区間の有償旅客数(千人)に各区間距離(キロ)を乗じたものの合計であります。
2.有効座席キロは、各路線各区間の有効座席数(千席)に各区間距離(キロ)を乗じたものの合計であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成しております。この財務諸表の作成に当たり、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要とする項目があります。経営者は、これらの見積りについて旅客需要の過去の動向や将来の機材導入及び整備計画、過去の整備実績等を勘案してその時点で最も合理的と考えられる見積りや仮定を継続的に使用しております。しかしながら見積り特有の不確実性から、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。
また、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りに用いた仮定は、後記「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであり、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の翌事業年度の財務諸表に与える影響は、翌事業年度以降においても同様に影響を及ぼす可能性があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(資産合計)
当事業年度末の資産合計は107,837百万円となり、前事業年度末に比べ14,277百万円増加しました。流動資産合計は10,657百万円増加しましたが、これは主に2022年12月の新規上場時の公募増資により調達した資金並びに、長期預け金の返還に伴う現金及び預金の増加によるものです。また、固定資産合計は3,620百万円増加しましたが、これは主に中期経営計画における課税所得見込みの増加に伴う繰延税金資産の増加6,101百万円によるものです。
(負債合計)
負債合計は83,919百万円となり、前事業年度末に比べ340百万円減少しました。これは主に、旅客需要の回復が進んだことにより契約負債が5,501百万円増加した一方で、短期借入金2,000百万円及び長期借入金2,000百万円の返済による減少、営業未払金の減少2,024百万円によるものです。
(純資産合計)
純資産合計は23,917百万円となり、前事業年度末に比べ14,618百万円増加しました。これは主に、公募増資に係る新株発行に伴うその他資本剰余金の増加7,453百万円、欠損填補及び当期純利益の計上による繰越利益剰余金の増加12,541百万円、為替予約等のデリバティブ取引による繰延ヘッジ損益の減少5,376百万円によるものです。
2)経営成績
当社は、航空事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は行っておりません。
(運航体制等の状況)
前事業年度末までまん延防止重点防止措置が発出されていたこと等により旅客需要の減少が続いた第1四半期会計期間には最大約12%の減便を行いましたが、第3四半期会計期間以降においては、旅客需要の回復が進んだことにより全便運航体制となりました。加えて当社運航機材29機を最大限に活用し、週末や連休などの高需要時には羽田=福岡線、羽田=新千歳線を中心に、追加定期便を運航し収益の拡大に努めました。
その結果、当事業年度の運航便数は54,199便となり、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前年同期と比較して19.5%増加しました。
(事業収益及び営業費用の状況)
当事業年度においては、有償旅客数が前年同期比68.5%増の7,022,017名となった結果、事業収益は84,661百万円(前事業年度比79.6%増)となりました。事業費については、運航便数の増加に伴う航空燃料費や空港使用料等の変動費の増加により75,718百万円と前年同期に比して16,516百万円増加しましたが、事業収益が拡大したことから営業利益は3,453百万円(前事業年度は16,694百万円の営業損失)となりました。経常利益は円安に伴う外貨建資産に係る為替差益の計上により3,713百万円(前事業年度は15,079百万円の経常損失)となりました。
当期純利益はソフトウエア仮勘定の減損損失1,212百万円の計上があった一方で、法人税等調整額の計上3,258百万円により、5,726百万円(前事業年度は6,729百万円の当期純損失)となりました。
3)キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の事業領域である航空業界は、2020年度初頭からの新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により旅客需要の大部分が蒸発するなど業績に大きな打撃を受けましたが、2022年度にはワクチンの普及や各種行動制限が解除されたこと等により人流にも顕著な回復が見られました。2023年度には新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行等を受けて名実ともにポストコロナ時代に入り、旅客需要も新型コロナウイルス感染症拡大以前の状況に戻るものと考えております。一方で、世界的なインフレや円安、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油価格の高騰等、引き続き注視及び対処していかなければならない環境下におかれております。なお、次期の業績予想にあたり、為替レートは1ドル=130円(ヘッジ後121.5円)、ドバイ原油価格は76ドル/BBL(ヘッジ後79.6ドル/BBL)を前提としております。
このような環境のもと、当社は安全運航を大前提に、DX推進による顧客利便、生産性の更なる向上、次世代機材の導入を推進することで、変化する競争環境下においても安定的に利益を確保することができる体制を築いて参ります。
また、定時性や顧客満足といったサービス品質についても引き続き高い水準で探求しつつ、自治体や企業とのコラボレーション・イベント企画等を通じて就航地との共生、更なる発展に資することができるよう貢献して参ります。新規路線の検討においては国内主要空港のみならず地方と地方を結ぶ路線等多角的な検討を行いながら、ビジネス・観光需要だけでなくその地域に根ざした路線就航を検討し、チャーター便などの運航については状況に応じて積極的に取り組む方針であります。
c.資本の財源及び資金の流動性
当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大により毀損した財務基盤強化のため、2022年7月にシンジケートローン300億円の借換(借入期間1年)を行っております。また、2022年12月14日には次世代航空機材の導入費用を確保すること等を目的として東京証券取引所グロース市場に上場し、併せて行った公募増資により約142億円の資金を調達いたしました。
なお、これらの資金調達により一定の資金が確保できたことから、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社りそな銀行をアレンジャーとして締結したコミットメントライン契約を終了し、株式会社日本政策投資銀行を借入先とする資本性劣後ローン20億円の返済を行っております。
なお、当事業年度末において、有利子負債の残高は31,725百万円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は22,519百万円となっております。