【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況近年における国内のBtoB卸売市場は300兆円規模と推定(※1)されており、非常に大きな市場にも関わらずEC化率は未だ32.3%(EDI(※2)による取引を含む)と、オンライン化されていないBtoB市場は200兆円以上あり、電話・FAX・展示会等による受発注取引が大半であるのが現状です。また、SDGs(※3)に始まり、世界中で廃棄ロス問題が大きくクローズアップされており、廃棄ロスは国内でも年間約22兆円規模(※4)に達すると試算しております。この課題に対して、オークファングループは真正面から向き合い解決すべく、「RE-INFRA COMPANY」をコーポレートアイデンティティと定義しました。社会の様々な「RE」を統合した唯一無二のインフラを構築し、卸売市場におけるSMB(中小企業・個人事業主)を中心としたDX化・廃棄ロスの削減に取り組んでおります。
具体的には、創業来培った700億件を超える売買データとAI技術により商品の時価を可視化、価格と販路を最適化する在庫価値ソリューション、SMB(中小企業・個人事業主)を中心とした小売・流通業向けに流通を支援する商品流通プラットフォームを用いて、在庫流動化支援ソリューションを展開しております。
当連結会計年度では、商品流通プラットフォーム事業の中核であるNETSEA、NETSEオークションがコロナ特需後もGMV(流通額)の高成長を続け、今後も成長が見込まれることを考え、事業の選択と集中並びに注力事業への先行投資を実施いたしました。
「在庫価値ソリューション事業」は、データを基にAI技術を活用し在庫の価値を可視化することにより、企業が保有する在庫価値の可視化・最適化等を推進するソリューションを提供しております。主なサービスとしては当社が保有する流通相場データを活用した『aucfan.com(オークファンドットコム)』となり、主たる収益源は有料課金収入及びネット広告収入となります。その他、ネットショップ一元管理サービス『タテンポガイド』の提供、専門知識がなくても直感的に操作できるRPAツール『オークファンロボ』、副業・複業として物販ビジネスを行なう事業主を対象とするスクール形式の副業支援サービス『good sellers(グッドセラーズ)』を提供しています。また、2022年8月からはAmazonセラー専用アプリ『Amacode(アマコード)』を事業譲受によりサービス提供を開始しています。
これらの結果、売上高2,370,400千円(前年同期比2.5%増)、営業利益494,828千円(前年同期比33.9%増)となりました。
「商品流通プラットフォーム事業」は、企業の在庫・滞留商品等の流通を支援しており、オンライン及びオフラインにて複数のマーケットプレイスを運営しております。主なサービスとしては、BtoB卸モール『NETSEA(ネッシー)』、滞留在庫・返品・型落ち品などの流動化支援を行う『NETSEAオークション(旧 ReValueBtoBモール)』がございます。主たる収益源は、NETSEAでは流通手数料収入及び有料課金収入、NETSEAオークションでは商品販売収入となります。また、2022年4月より、大阪・船場を拠点とするオフラインの展示・商談会事業『OSR(オーエスアール)展示商談会』をM&Aにより提供を開始しています。OSR(オーエスアール)展示商談会の主たる収益源は、決済手数料収入及び出店料収入となります。『NETSEA(ネッシー)』及び『NETSEAオークション(旧 ReValueBtoBモール)』を中心として、流通量・利用者の増加が好調に推移しており、さらなる流通額最大化を狙った営業・開発体制の強化及びプロモーションを継続的に実施しております。また、非注力事業である法人向け卸販売取引における債権を保守的に再評価し、回収見込みが不確定な債権を貸倒引当金として繰入計上しております。これらの結果、売上高2,953,220千円(前年同期比35.2%減)、営業損失521,320千円(前年同期は287,423千円の営業損失)となりました。
「インキュベーション事業」は、事業投資及び投資先企業の支援を通じて、当社が中長期にわたり競合優位性を構築・維持していくための知見とネットワークを得ることを目的とした事業セグメントであります。主たる収益源は、営業投資有価証券の売却益、投資先企業へのコンサルティング収益となります。なお、当セグメントでは将来成長の基盤となる新規事業の開発等も実施しております。営業投資有価証券の売却及び投資先企業へのコンサルティング等を実施した結果、売上高1,101,150千円(前年同期比35.1%減)、営業利益796,189千円(前年同期比8.7%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は6,256,378千円(前年同期比25.4%減)、営業利益は322,236千円(前年同期比44.3%減)、経常利益は312,394千円(前年同期比49.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は56,501千円(前年同期比68.2%減)となりました。当連結会計年度の自己資本当期純利益率に関しましては1.1%(前年同期比1.5ポイント減)となりました。
※1 経済産業省 2022年8月12日発表 電子商取引に関する市場調査、BtoB-EC市場規模の業種別内訳より推察※2 電子的データ交換(Electronic Data Interchange)の略称。受注や発注、出荷や納品などの流通に関わる一連の取引を電子データでやりとりする仕組み※3 Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。2015年に国連で採択された2030年までに達成すべき目標※4 平成28年度法人企業統計(財務省)などを基に当社試算※5 当連結会計年度において、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等) セグメント情報」をご参照ください。
② 財政状態の状況資産の部(流動資産)当連結会計年度末における流動資産は、6,443,928千円(前連結会計年度末は7,638,182千円)となりました。主な要因といたしましては、現金及び預金が736,179千円増加、未収入金が322,588千円増加、貸倒引当金が238,845千円減少、売掛金が358,012千円減少、商品が201,108千円減少、投資先株式の時価評価等により営業投資有価証券が1,595,651千円減少、その他(流動資産)が337,381千円減少した結果であります。(固定資産)当連結会計年度末における固定資産は、906,094千円(前連結会計年度末は849,102千円)となりました。主な要因といたしましては、ソフトウエアが40,395千円増加、ソフトウエア仮勘定が130,709千円増加、破産更生債権等が298,303千円増加、長期未収入金が378,647千円増加、貸倒引当金が657,942千円増加、のれんが101,168千円減少、繰延税金資産が33,315千円減少した結果であります。
負債の部(流動負債)当連結会計年度末における流動負債は、2,595,197千円(前連結会計年度末は2,241,972千円)となりました。主な要因といたしましては、未払金が214,930千円増加、未払法人税等が139,226千円増加、買掛金が41,720千円増加、短期借入金が100,000千円増加、1年内返済長期借入金が108,223千円減少した結果であります。(固定負債)当連結会計年度末における固定負債は、197,739千円(前連結会計年度末は787,270千円)となりました。主な要因といたしましては、投資先株式の時価評価により繰延税金負債が404,657千円減少、長期借入金が211,753千円減少した結果であります。
純資産の部当連結会計年度末における純資産は、4,557,085千円(前連結会計年度末は5,458,041千円)となりました。主な要因といたしましては、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金が89,600千円増加、利益剰余金が56,501千円増加、投資先株式の時価評価によりその他有価証券評価差額金が1,132,600千円減少した結果であります。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より736,179千円増加し、3,833,053千円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)税金等調整前当期純利益401,908千円、減価償却費161,080千円、売上債権の減少額360,614千円、棚卸資産の減少額201,881千円、貸倒引当金の増加額418,631千円などの計上に対し、負ののれん発生益85,910千円、長期未収入金の増加額378,647千円、未払金の減少額88,952千円により営業活動の結果獲得した資金は1,079,054千円(前年同期は1,125,821千円の獲得)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)貸付金の回収による収入9,965千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入21,213千円などの計上に対し、無形固定資産の取得による支出303,033千円、関係会社出資金の払込による支出13,400千円などにより、投資活動の結果使用した資金は263,404千円(前年同期は276,757千円の使用)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)短期借入金の返済による支出300,000千円、長期借入金の返済による支出319,976千円などの計上に対し、短期借入金による収入360,000千円、新株予約権の行使による株式発行による収入178,818千円などにより、財務活動の結果使用した資金は82,975千円(前年同期は456,389千円の使用)となりました。
なお、当社グループの運転資金及び設備投資資金は自己資金並びに借入金等により充当しております。当連結会計年度末の有利子負債残高は1,482,612千円となり、前連結会計年度末に比べ221,793千円減少しており、自己資本比率は62.0%と依然として高い水準を維持しております。資金の流動性に関しましては、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は3,833,053千円と十分な流動性を確保しております。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績当社グループの主たる事業は、インターネットを利用したサービスの提供であり、提供するサービスには生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。
b.受注実績当社グループでは概ね受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載を省略しております。
c.販売実績当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度(自
2021年10月1日至
2022年9月30日)
前年同期比(%)
在庫価値ソリューション(千円)
2,283,838
104.3
商品流通プラットフォーム(千円)
2,871,389
63.8
インキュベーション(千円)
1,101,150
64.9
合計(千円)
6,256,378
74.6
(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度(自 2020年10月1日至 2021年9月30日)
当連結会計年度(自 2021年10月1日至 2022年9月30日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
野村證券株式会社 (注)1.2
986,400
11.8
-
-
みずほ証券株式会社 (注)1.2
-
-
828,146
13.2
(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。2.営業投資有価証券の売却による売上金額を記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の分析当連結会計年度における売上高は6,256,378千円(前年同期比25.4%減)、営業利益は322,236千円(前年同期比44.3%減)、経常利益は312,394千円(前年同期比49.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は56,501千円(前年同期比68.2%減)となりました。なお、詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性について当社グループにおける運転資金需要の主なものは、仕入費用、販売費及び一般管理費の営業費用による営業資金及び設備投資資金であります。当社グループの資金の源泉は主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入による資金調達となります。
③ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループの事業に関連するEC市場規模については、好調な拡大が今後も継続的に見込まれるものと思われます。近年における国内のBtoB卸売市場は300兆円規模と推定(※1)されており、非常に大きな市場にも関わらずEC化率は未だ32.3%(EDI(※2)による取引を含む)と、オンライン化されていないBtoB市場は200兆円以上あり、電話・FAX・展示会等による受発注取引が大半であるのが現状です。また、SDGs(※3)に始まり、世界中で廃棄ロス問題が大きくクローズアップされており、廃棄ロスは国内でも年間約22兆円規模(※4)に達すると試算しております。
2022年9月期においては、巨大な卸売市場において圧倒的な地位を確立するため、SMB(中小企業/個人事業主)をターゲットとする「NETSEA」、「NETSEAオークション」「aucfan」を注力事業とし、商品流通プラットフォーム事業ではGMV(流通額)及び売上総利益、在庫価値ソリューション事業ではARR(課金額)及び売上総利益を重要指標として定め、事業を推進してまいりました。重要指標のさらなる成長に向け、商品流通プラットフォームでは2022年4月より新たに大阪・船場を拠点とするオフラインの展示・商談会事業『OSR(オーエスアール)展示商談会』、在庫価値ソリューション事業では2022年8月よりはAmazonセラー専用アプリ『Amacode(アマコード)』を事業譲受によりサービスの提供を開始しています。
今後もサプライヤー成長コンサルティング、海外バイヤーとの連携による新市場の開拓、物流や決済関連業務の提供、グループ間シナジーの強化及び在庫流動化ソリューションサービスの提供により、更なる成長を図ります。また、創業来オークファンが蓄積し続けてきた膨大な商品実売データも活用し、企業のもつ滞留在庫・余剰在庫の価値を可視化し、より積極的に市場再流通を促すことで、当社グループ経由の流通額の拡大を図ってまいります。
商品流通プラットフォームにおきましては各サービスにおける流通高の増加をKPIとしており、掲載商品数の増加(サプライヤーの開拓)を図るべく各種プロモーション強化施策を展開することにより、更なる成長を図ります。在庫価値ソリューション領域におけるメディア『aucfan.com』においてはUV(ユニーク・ビジター)及び会員数がKPIであります。今後も引き続きプロモーション強化施策、SEO対策、ECサイト各社とのアライアンス強化などによるユーザー(オークファンプロPlus会員数含む)の拡大、運営ノウハウの提供により更なる成長を図ります。各種商品関連データ蓄積においては、取得件数と対応マーケットプレイス数がKPIであります。今後も引き続きクローリング/スクレイピング技術、データマイニング技術、機械学習などを活かした分析ツールの提供により、更なる成長を図ります。インキュベーション領域では投資利回り及び情報収集がKPIであります。今後もベンチャー企業を中心とした投資を進めるとともに、当社グループを取り巻く市場環境の最新テクノロジー等の情報を収集してまいります。
④ 経営者の問題認識と今後の方針について当社グループは「RE-INFRA COMPANY」をコーポレートアイデンティティとし、社会の様々な「RE」を統合した唯一無二のインフラを構築していくという考えのもと、事業を推進しております。「RE」とは、すでにあるものを捉え直し、より良く組み替え、再構成するという意味を含んでおり、当社グループは「RE」に関する様々な機能を繋げ統合することで、モノとそれに関わるヒトの価値を、再配分・最適配分し、廃棄ロスという深刻な社会問題を解決することにより、当社グループのサービス利用者及び顧客の満足度向上を図り、企業価値・株主価値の向上を目指しております。
※1 経済産業省 2022年8月12日発表 電子商取引に関する市場調査、BtoB-EC市場規模の業種別内訳より推察※2 電子的データ交換(Electronic Data Interchange)の略称。受注や発注、出荷や納品などの流通に関わる一連の取引を電子データでやりとりする仕組み※3 Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)。2015年に国連で採択された2030年までに達成すべき目標※4 平成28年度法人企業統計(財務省)などを基に当社試算
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