【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、本年5月、政府が新型コロナウイルスにかかる感染症法上の位置づけを従来の「2類」から季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げたことから、厚生労働省による全国新規感染者数の発表も実施されなくなる等、経済活動、生活様式がウイズコロナからアフターコロナへ変化する中で推移してまいりました。
国内景気は、5類に移行した新型コロナウイルス感染症に対して、各種規制が撤廃され、感染予防対策として個人判断に委ねられたマスク着用も猛暑日が続く夏季を迎えて減少する中、コロナ禍前の経済状況、生活状況を取り戻す各種経済活動が開始される等、明るい兆しが見え始めております。特にここ数年にわたり新型コロナウイルス感染症の影響を最も大きく受けてきた旅行、娯楽、外食といった個人消費がアフターコロナへの生活環境変化とともに顕著な改善が図られております。しかしながら、家計の平均消費性向としては、依然としてコロナ禍前の水準を下回る状況にあることから、さらなる個人消費の拡大余地を残しており、アフターコロナとしての本格的な経済活動が求められております。また、輸出においては、半導体市場の調整等により減少傾向にある半導体、電子、デバイス関連の製造業が依然弱含む一方、供給制約の緩和を受けた自動車、輸送機械が持ち直しつつあります。そうした中で迎えた本年の春闘においては、1993年以来30年ぶりとなる高い賃上げ率が達成された見込みであり、経営者の意識もインフレを前提として賃上げを容認する状況に至っており、特に旅行業、飲食業等のサービス産業においては、新規求人数が増加傾向にあります。
こうした状況下、内閣府が発表した2023年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値(物価変動の影響を除いた実質の季節調整値)は、コロナ禍からアフターコロナへ向かう中で堅調な個人消費が全体を押し上げたこと等により、前期比1.5%増(年率換算6.0%増)と2四半期連続のプラス成長となり、金額ベースでは560.7兆円と過去最高に至りました。当該GDP速報値に大きく寄与したのは、インバウンド(訪日外国人)消費であり、6月の訪日外国人数が2019年対比で7割以上の水準まで回復し、円安により日本の物価が外国人観光客にとって割安になったことも手伝い、旅行費、宿泊費等への支出が増加し、その結果、4~6月の訪日外国人一人当たり消費額は、2019年同期比較で1.3倍程度まで増加したとの統計も確認されております。今後、足元の円安の為替環境によって、訪日外国人の更なる増加、旅行単価の上昇や滞在日数の長期化から旅行費、宿泊費等への支出が大きく増加する見込みであり、それに伴う経済効果に期待が寄せられております。特に2019年に訪日外国人の3割以上を占めていた訪日中国人においては、本年8月の中国側の出国規制解除に伴い、団体観光客の増加が見込まれる状況にあります。
一方、海外においては、昨年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻が1年半経過した現在もなお、解決の糸口が見つからず、欧米各国はロシアに対する経済制裁措置としてロシア産原油の原則輸入禁止を打ち出したことから、エネルギー資源価格の高止まりは依然継続しております。そうした状況下、先進各国においてはインフレが進行しており、これに対して欧米の中央銀行による金利引き上げが行われておりますが、景気はなんとか維持される中で推移しております。
米国においては、米商務省が発表した2023年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比2.4%増と4四半期連続でプラス成長となりました。GDPの7割を占める個人消費が減速傾向にあるものの、前期比1.6%増と相変わらず堅調であり、特に飲食を中心としたサービス消費がコロナ禍前の水準に戻りつつありますが、一方で金利上昇の影響が拡大する中、経済活動の一段の鈍化も予想されております。FRBは、歴史的な高水準にあるインフレに対して依然として警戒感を示しており、地方銀行3行が相次いで破綻する等、金融市場への不安が広がった中、本年7月に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)にてフェデラルファンド(FF)金利を0.25%の利上げに留め、誘導目標を5.25~5.50%に設定しました。このようにインフレ抑制のために積極的に行ってきた政策金利のコントロールもインフレ率が低下傾向にあること等により、金利引き上げピッチも徐々に減速しつつあります。
また、中国においては、中国国家統計局が発表した2023年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価の変動を調整した実質年率換算ベースで前年同期比3.2%増となりました。2023年1~3月期においては新型コロナウイルス感染症を封じ込めるために講じてきたゼロコロナ政策に終止符を打ったことにより、外食、娯楽、観光等のサービス消費が持ち直し、前年同期比9.1%増(実質年率換算ベース)となりましたが、2023年4~6月期においては大幅に低下することとなりました。景気が急減速した背景として、個人消費の停滞と、不動産市場の悪化が上げられておりますが、中国政府が中央・地方政府債務残高の膨張回避を重視していることから、大規模な財政拡張には消極的な姿勢を示す中で経済成長が鈍化することとなりました。
こうした経済環境下、当社グループの属する外食産業は、新型コロナウイルス感染症によって3年以上にわたり大きな打撃を受けてまいりましたが、国民生活の環境がウイズコロナ、さらにはアフターコロナに変化していく中、旅行、宿泊、飲食といったサービス消費は堅調な回復を図りつつあります。特に新型コロナウイルス感染症の拡大局面で蓄積されてきた過剰貯蓄は、旅行業、飲食業を始め対面型サービス業への消費に向かう傾向があります。また、政府がコロナ禍で継続してきた入国管理規制を撤廃させたことにより、訪日外国人数が急回復しております。しかしながら、こうした状況においても未だコロナ禍前の水準までには至らず、今後のインバウンド需要の更なる拡大が期待されており、足元の円安傾向も継続していることから、絶好のビジネスチャンスが到来しつつある状況にあります。一方で現下の雇用情勢は、労働逼迫の厳しい状況をもたらしており、対面型サービス産業、とりわけ外食産業においては、人手不足解消に向けての賃上げが不可避な状況に至っております。
こうした外食産業を取り巻く経営環境において当社グループは、3年以上にわたるコロナ禍の制約的な事業環境の中にあっても利益を追求し続けるという経営スタンスを貫き、昨年3月のまん延防止等重点措置解除後は、速やかに全店舗を通常営業に移行させ、その後も直営店の営業は勿論のこと、プロデュース店向けビジネスにおいても2019年以前と変わらぬ事業拡大を図ってまいりました。当社グループ並びに食材供給先となるプロデュース店でのラーメン事業が店内滞在時間も短く「ハレ消費」を前提とする飲食事業モデルとは性格を異にすることから、「日常食」という強みを生かし、新型コロナウイルス感染症が拡大する環境においても積極的な事業展開を進めることができました。コロナ禍において、新たにお客様ニーズに対応すべく創出したテイクアウトサービス、宅配(フードデリバリー)サービス、ECサイト事業は、現在においても堅調であり、店舗外でのお召し上がり需要にお応えできる供給体制を構築するに至りました。このようにコロナ禍においても安定的な事業拡大を図ってきた当社グループは、現在のウイズコロナからアフターコロナに変化している経営環境においては更なる成長軌道を維持することを叶えております。
さらに、当社グループ並びにプロデュース店への供給体制についてもBCPの観点から、昨年より立地、生産品目等、生産体制の戦略的見直しを図り、製麺工場、チャーシュー工場、スープ工場を供給先の直営店舗、プロデュース店舗に合わせて適正配置してまいりました。当社グループでは、SCMの視点をもって物流効率、物流コスト、物流時間の大幅改善を進めており、前年までに関東、中京・関西に物流倉庫を配備してまいりました。さらに本年4月には、北関東・東北物流センターを新規開設する等、生産体制、物流体制の絶え間ない見直しを進めてきたことにより、直営店舗、プロデュース店舗に対して効率的な後方支援体制を整えるに至りました。
以上のように新型コロナウイルス感染症対応ノウハウをしっかりと蓄積しつつ、生産体制、物流体制を含めたグループ力強化を図ってまいりました当社グループは、行動制限が解消されたウイズコロナから現在のアフターコロナの経営環境においても従業員の雇用確保、積極的な新規出店等、他の飲食業者と一線を画した事業活動を展開することができ、堅調な業績を確保することとなりました。当第3四半期連結累計期間におきましては、国内の直営店、プロデュース店ともに店舗数を増加させることにより、売上拡大を図ることができました。
以上の結果、財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,924,349千円増加し、11,829,483千円となりました。
当第3四半期連結会計期間末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,087,751千円増加し、5,560,823千円となりました。
当第3四半期連結会計期間末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ836,597千円増加し、6,268,659千円となりました。
b.経営成績
当第3四半期連結累計期間の経営成績は、売上高16,632,546千円(前年同期比36.1%増)、営業利益1,598,972千円(前年同期比42.5%増)、経常利益1,652,052千円(前年同期比8.5%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,129,718千円(前年同期比8.5%減)となりました。
セグメントごとの経営成績については、当社グループの事業が単一セグメントであることから、以下のとおり事業部門別に示します。
直営店事業部門の売上高は13,890,852千円(前年同期比37.1%増)となりました。
プロデュース事業部門の売上高は2,741,694千円(前年同期比31.3%増)となりました。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
a.セグメント別の業績の概況
当第3四半期連結累計期間におけるセグメント別の概況については、当社グループの事業が単一セグメントであることから、事業の概況については以下のとおり事業部門別に示します。
(直営店事業部門)
国内直営店事業部門においては、当第3四半期連結累計期間を通じて積極的な出店を続け、直営店23店舗の新規出店により22店舗の純増を図りました。当該期間における直営店の新規出店は、主力である横浜家系ラーメン業態の「町田商店」で11店舗、「町田商店」以外のブランドで12店舗とバランスよく行うことができました。
特に当第3四半期連結累計期間におきましては、横浜家系ラーメン業態である「町田商店」の中部地区への出店を加速させ、5店舗(ロードサイド店4店舗、駅近店1店舗)の新規出店を果たしました。ロードサイド店4店舗の出店エリアは、名古屋市守山区、愛知県長久手市、岐阜県多治見市、三重県四日市市であり、駅近店1店舗の出店エリアは、名古屋市中区栄となりました。また、首都圏地区への新規出店も中部地区同様5店舗(ロードサイド店2店舗、駅近店3店舗)となり、ロードサイド店は、ドミナント出店を進める東京北部の練馬区西大泉や埼玉県川越市への出店を図りました。また、駅近店3店舗は、これまで当社があまり出店できていなかった千葉県への新規出店先として行徳駅に出店したのを始め、大森駅、大崎駅にも出店いたしました。さらには、岩手県盛岡市に当社グループ国内最北端となるロードサイド店の新規出店を図りました。
一方、「町田商店」に次ぐ第2ブランドであるガッツリ系ラーメン業態の「豚山」では、当第3四半期連結累計期間において、6店舗の出店を図りました。当該6店舗は、首都圏地区、中部地区が2店舗ずつ、関西地区、東北地区が各1店舗とバランスの良い出店となり、これまで「豚山」が得意としてきた首都圏地区は勿論のこと、それ以外の新たなエリアへの出店も積極的に行うことができ、「町田商店」に次ぐブランドとして「豚山」の潜在成長力を測る意味でも重要な試金石となりました。特に中部地区においては、「町田商店」でも出店した名古屋の繁華街である栄、さらにはその近隣にある大須と立て続けに2店舗を出店しました。関西地区においては、南船場に次ぐ関西2店舗目として神戸本線、宝塚本線、京都本線の3本線が集結するターミナル駅である十三駅に出店いたしました。また、東北地区では、東北最大乗降客数を誇る仙台駅の駅近エリアに新規出店いたしました。出店間もない現在において、早くも繁盛店の賑わいを呈しており、当該地区へのさらなる増店に対して、十分に期待を抱かせる状況に至っております。
さらに、当第3四半期連結累計期間では、新規出店時に店舗のインフラ上の制約を比較的受けにくいブランドである油そば業態の「元祖油堂」の業態力測定を行うべく、立地的な性格の異なるエリアに4店舗の新規出店を図りました。繁華街である赤坂駅、住宅街である綱島駅、都心近接のベッドタウンである川口駅、昨今都市開発が進んだ北千住駅と立地特性の異なる駅近エリアにそれぞれ出店することにより、業態特性等、マーケティングデータのさらなる蓄積を図り、当社グループにおける「町田商店」、「豚山」に続く第3のブランドとして業態力を磨き上げてまいりました。
当社グループでは、新商品、新業態の開発に対しても商品開発部を中心に各種テーマへ積極的に取り組んでまいりました。前期においては、「いと井」を開発し、東京ラーメン横丁でオープンを迎えることとなりました。ここ数年で当社グループが開発、ローンチしたブランドは、前述の「豚山」、「元祖油堂」に加え、「長岡食堂」「いと井」とどれも一定程度のご評価をいただくものとなっており、当社グループのブランド開発力も十分備わってきたと自負しております。今後も引き続き可能性を秘めた新ブランドの開発に注力してまいります。
海外直営店事業部門においては、米国ニューヨーク州にこれまで2店舗の路面店を展開してまいりましたが、2022年11月、ペンシルベニア駅施設内のフードコートにおいて、ニューヨーク3号店をオープンさせることになりました。当該施設は、全米1位の乗降客数を誇るペンシルベニア駅施設内であり、2万人収容のスポーツアリーナと、5千人収容のシアターなどで構成され、プロバスケットボール、プロアイスホッケーの試合が開催されるマディソンスクエアガーデンに近接する集客力の高いエリアでもあることから、フードコートでの営業にも関わらず、既に当社ニューヨーク路面店2店舗を凌ぐ売上が確保できる状況に至っております。
以上の結果、当第3四半期連結会計期間末の当社グループの店舗数は、直営店184店舗(国内181店舗、海外3店舗)、業務委託店9店舗、合計193店舗となりました。また、直営店事業部門の売上高は13,890,852千円となりました。
(プロデュース事業部門)
国内プロデュース事業部門においては、既出店地域においてこれまで通り、商圏における潜在需要試算に基づく出店ルールに従ってプロデュース店と直営店との間できめ細かく調整を行いながら、出店を進めてまいりました。未出店地域においては、当社グループとして直営店を出店させる予定のない地域については、新規オーナーの開拓を精力的に行ってまいりました。既存プロデュース店は、新型コロナウイルス感染症拡大の状況の中でここ数年、来客数の減少、売上減少が続いてまいりましたが、当第3四半期連結累計期間においては復調の兆しを見せており、これまで直営店同様にテイクアウトニーズへの対応、宅配ニーズの掘り起こし等、販売促進活動における直営店の成功ノウハウをもとに積極的に支援してきた成果が現れることとなりました。また、当社が開発した新業態を既存プロデュース店オーナーが自ら展開することを検討する場面も増えてきており、これまでの家系ラーメン業態を中心としたプロデュース事業に加え、新業態では当社グループの展開するブランド名(同一の屋号)でのFC事業も開始いたしました。このようにプロデュース事業部門においては、事業ラインナップの充実化を進め、より付加価値の高い提案活動を展開できるよう各種準備を進めてまいりました。
海外プロデュース事業部門においては既存オーナーの出店意思を確認しながら新規出店地域の検討を行い、新型コロナウイルス感染症拡大の状況下においても出店支援を進め、昨年11月、ベトナムでのプロデュース店の新規出店を図りました。一方で台湾の既存オーナーにおいて、親会社倒産に伴う連鎖倒産が発生したことから、プロデュース店5店舗の閉店が生じてしまいました。また、当期より「Machida Shoten(町田商店)」の店舗名でのFC事業を本格的に展開しており、本年1月のタイでのFC店の初出店に続き、7月にはベトナムにてFC店の初出店を図る等、東南アジア地区にて着実に事業拡大を図ってまいりました。FC事業は、このように順調にスタートすることができ、各国のフランチャイジーとのFC契約も締結が進んでいることから、今後はアメリカ、東南アジア等において「町田商店」「豚山」等のブランドをFC事業として展開すべく、精力的な営業活動を展開してまいります。
以上の結果、当社グループがプロデュースする店舗数は、当第3四半期連結累計期間に37店舗の純増となり、結果、国内533店舗、海外15店舗、合計548店舗となりました。また、プロデュース事業部門の売上高は2,741,694千円となりました。
b.財政状態
(資産)
当第3四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,924,349千円増加し11,829,483千円となりました。これは主に、商品及び製品が168,677千円、建物及び構築物等の有形固定資産が1,017,450千円、敷金及び保証金が328,577千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末の負債は、前連結会計年度末に比べ1,087,751千円増加し5,560,823千円となりました。これは主に、未払法人税等が311,076千円減少した一方、短期借入金が257,906千円、長期借入金(1年以内返済予定分を含む)が742,094千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末の純資産は、前連結会計年度末に比べ836,597千円増加し6,268,659千円となり、自己資本比率は53.0%となりました。これは主に、配当の支払に伴い利益剰余金が299,018千円減少した一方、親会社株主に帰属する四半期純利益1,129,718千円の計上により利益剰余金が増加したこと等によるものであります。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
特に記載すべき事項はありません。