【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間におけるわが国経済は、2022年の年末において、2020年から続く新型コロナウイルス感染症のまん延に伴う行動制限が久方ぶりに解かれ、インバウンド需要の増加やサービス消費の回復などによりサービス業が上向く等、新型コロナウイルス感染症への対応と経済活動の両立が図られ、ウイズコロナの生活様式が定着しつつある中で推移してまいりました。
国内景気は、新型コロナウイルス感染症にかかる各種規制が2022年3月以降解除され、感染症法上の位置づけも本年5月より従来の「2類」から季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げられる見込みとなる等、新型コロナウイルス感染症が経済活動に及ぼす影響が軽減されつつある中で旅行業、飲食業等の対面型サービス業に明るい兆しが見え始めてまいりました。一方で石油、天然ガス等のエネルギー資源価格は、依然として高止まりしており、食料品、耐久財の価格値上げが一層進む傾向にありながらも、賃上げ機運は高まるものの本格的な賃上げには至っておらず、コロナ禍で積み上がった家計の貯蓄取り崩し等で均衡が保たれている状況にあります。こうした状況下、内閣府が発表した2022年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値(物価変動の影響を除いた実質の季節調整値)は、「全国旅行支援」等、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限を緩める施策を講じたこともあり、前期比0.2%増(年率換算0.6%増)と2四半期ぶりのプラス成長となりました。政府は昨年10月より入国管理における水際対策を大幅に緩和しており、訪日外国人に対する入国者数上限を撤廃したことから、外国人旅行客の個人旅行での入国も解禁され、昨年12月においては訪日外国人が137万人と2019年対比で5割以上まで回復を見せております。足元の円安の為替環境が1人当たりの旅行消費額を増加させることから、今後も訪日外国人の増加に期待を寄せるものの、2019年に訪日外国人の3割以上を占めていた訪日中国人に対しては、中国でのゼロコロナ政策解除に伴う中国国内での新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、日本入国時に陰性証明書の提示を義務付ける等、他国の訪日外国人とは異なる水際対策を継続していることから、訪日中国人の完全回復にはなお一定程度の期間を要する状況にあり、コロナ禍で経済的影響を受けている飲食、宿泊他の小売、サービス業者は、インバウンド需要から得られる経済効果を今なお完全には取り込めない状況が続いております。
また、海外においては、昨年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵攻は1年が経過した現在もなお、解決の糸口が見つからず、欧米各国はロシアに対する追加制裁措置としてロシア産原油の原則禁止を打ち出したことから、エネルギー資源価格の高止まりは依然継続しております。
米国においては、米国商務省が発表した2022年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値(物価変動の影響を除いた実質の季節調整値)は、前期比年率2.9%増と、2四半期連続のプラスになりました。しかしながら、足下では依然として歴史的な高水準にあるインフレに対して強い警戒感が表れており、住宅需要が急減する等、物価高を嫌気して軟調に推移しております。そうした中、米連邦公開市場委員会(FOMC)は、昨年3月のゼロ金利政策解除後もフェデラルファンド(FF)金利を4会合連続で+0.75%と大幅な引き上げを行ってまいりましたが、12月の会合では+0.5%、1月の会合では+0.25%となり、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標も4.75~5.00%になる等、インフレ抑制のために積極的に行ってきた政策金利のコントロールもインフレ率が低下傾向にあること等により、金利引き上げも減速傾向に転換しております。
一方、中国においては、中国国家統計局が発表した2022年通期の国内総生産(GDP)速報値(物価変動の影響を除いた実質の季節調整値)が前期比3.0%増に留まりました。2022年の成長率が伸び悩んだのは、昨年2月のロシアによるウクライナへの軍事侵略に端を発した世界的なインフレや、それに伴う欧米経済の落ち込みで、輸出鈍化を通じて経済が減速したこと等が原因と考えられ、新型コロナウイルス感染症を巡る政府によるゼロコロナ政策等の感染予防対策も経済活動の足かせになる中で過去のような大幅な経済成長を図ることはできませんでした。
こうした経済環境下、当社グループの属する外食産業は、政府が当第1四半期連結累計期間においても新型コロナウイルスに対する各種感染予防措置等を講じなかったこともあり、新型コロナウイルス感染症による死者数は、本年1月に一日500人を超える等、感染症被害が拡大する局面もありましたが、ウイズコロナのスタンスの下、経済活動との両立を目指し、「全国旅行支援」等のサービス消費のテコ入れ策も奏功し、旅行、宿泊、飲食といったサービス消費は堅調な回復を図りつつあります。また、政府は訪日外国人の入国管理の面においても水際対策を大幅に緩和させる措置を昨年10月より講じておりますが、依然として訪日外国人の入国者数は新型コロナウイルス感染症流行前とは比較にならず、インバウンド需要を完全には取り込めない状況のまま推移しており、円安が進行する為替環境において、絶好のビジネス機会が到来しつつも、十分に事業回復に活かしきれていない状況にて推移しております。
こうした外食産業を取り巻く経営環境において当社グループは、3年に至らんとしているコロナ禍の制約的な事業環境の中であっても利益を追求するという経営スタンスを貫き、昨年3月にまん延防止等重点措置が解除されて以降は全店舗にて通常営業に移行しております。コロナ禍においては、当社グループのラーメン事業が店内滞在時間も短く「ハレ消費」を前提とする飲食事業モデルではないことから、「日常食」という強みを生かし、新型コロナウイルス感染症が拡大する環境においても事業拡大の歩を一切緩めることなく、積極的な事業展開を進めることができました。その結果、コロナ禍からウイズコロナと言われる現在の状況に移行する中でも雇用維持を継続できたことから、当社の事業成長を妨げないような適正雇用数が確保でき、他の飲食企業に対する差別的優位性を保持することとなりました。また、コロナ禍におけるお客様の新たなニーズに対しても、テイクアウトサービス、宅配(フードデリバリー)サービス、ECサイトでの商品販売等のラインナップを取り揃え、店舗外でのお召し上がり需要にお応えできる供給体制を構築することとなりました。さらに、現在BCPの観点から、昨年来、生産体制の見直しを図り、製麺工場、チャーシュー工場、スープ工場を供給先の直営店舗、プロデュース店舗に合わせて適正配置してまいりました。当社グループでは、SCMの視点をもって物流効率、物流コスト、物流時間の大幅改善を進めており、関東、中京・関西に物流倉庫を配備してまいりました。こうした生産体制、物流体制の絶え間ない見直しを戦略的に進めたことにより、直営店舗、プロデュース店舗を後方支援できる体制を整えるに至りました。
このように新型コロナウイルス感染症対応ノウハウをしっかりと蓄積しつつ、生産体制、物流体制を含めたグループ力強化を図ってまいりました当社グループは、コロナ禍におきましても従業員の雇用確保、積極的な新規出店等、他の飲食業者と一線を画した事業活動を展開することができたことから、堅調な業績を確保することができました。当第1四半期連結累計期間におきましては、国内の直営店、プロデュース店ともに店舗数を増加させることにより、売上拡大を図ることができました。
以上の結果、財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ710,501千円増加し、10,615,635千円となりました。
当第1四半期連結会計期間末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ409,355千円増加し、4,882,428千円となりました。
当第1四半期連結会計期間末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ301,145千円増加し、5,733,207千円となりました。
b.経営成績
当第1四半期連結累計期間の経営成績は、売上高5,206,539千円(前年同期比30.5%増)、営業利益533,668千円(前年同期比13.6%増)、経常利益547,449千円(前年同期比32.9%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益379,918千円(前年同期比30.0%減)となりました。
セグメントごとの経営成績については、当社グループの事業が単一セグメントであることから、以下のとおり事業部門別に示します。
直営店事業部門の売上高は4,313,600千円(前年同期比31.3%増)となりました。
プロデュース事業部門の売上高は892,939千円(前年同期比26.7%増)となりました。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
a.セグメント別の業績の概況
当第1四半期連結累計期間におけるセグメント別の概況については、当社グループの事業が単一セグメントであることから、事業の概況については以下のとおり事業部門別に示します。
(直営店事業部門)
国内直営店事業部門においては、当第1四半期連結累計期間を通じて積極的な出店を続け、直営店6店舗の新規出店(純増)を図りました。当該期間における直営店の新規出店は、主力である横浜家系ラーメン業態の「町田商店」で4店舗、「町田商店」以外のブランドで3店舗とバランスよく行うことができました。
特に当第1四半期連結累計期間におきましては、横浜家系ラーメン業態である「町田商店」にて中部地区への出店を加速させてまいりました。名古屋市守山区にロードサイド店、名古屋市中区栄に駅近店舗をそれぞれ1店舗ずつ出店し、岐阜県多治見市にもロードサイド店を1店舗出店いたしました。また、これまで当社があまり出店できていなかった千葉県においても、この度、行徳駅に駅近店舗を出店することができました。
「町田商店」に次ぐ第2ブランドであるガッツリ系ラーメン業態の「豚山」では、当第1四半期連結累計期間において、3店舗の出店を図りました。当該3店舗は、関西地区、中部地区、東北地区への出店となり、これまで「豚山」が得意としてきた首都圏地区とは異なるエリアへの出店となり、「町田商店」に次ぐブランドとして「豚山」の潜在成長力を図る意味でも重要な試金石となりました。関西地区出店においては、南船場に次ぐ関西2店舗目として神戸本線、宝塚本線、京都本線の3本線が集結するターミナル駅である十三駅に駅近店舗として出店いたしました。また、中部地区出店、東北地区出店は、いずれも「豚山」として初の試みであり、名古屋の繁華街である栄、東北最大乗降客数を誇る仙台駅の駅近エリアにそれぞれ新規出店いたしました。出店間もない現在において、早くも繁盛店の賑わいを呈しており、当該地区へのさらなる増店に対して、十分に期待を抱かせる状況に至っております。
さらに、当社グループでは、新商品、新業態の開発に対しても商品開発部を中心に各種テーマへ積極的に取り組んでまいりました。前期においては、「いと井」を開発し、東京ラーメン横丁でオープンを迎えることとなりました。ここ数年で当社グループが開発、ローンチしたブランドは、「豚山」「長岡食堂」「元祖油堂」「いと井」とどれも一定程度のご評価をいただくものとなっており、当社グループのブランド開発力も十分備わってきたと自負しております。今後も引き続き可能性を秘めた新ブランドの開発に注力してまいります。
海外直営店事業部門においては、米国ニューヨーク州にこれまで2店舗の路面店を展開してまいりましたが、2022年11月、ペンシルベニア駅施設内のフードコートにおいて、ニューヨーク3号店をオープンさせることになりました。当該施設は、全米1位の乗降客数を誇るペンシルベニア駅施設内であり、2万人収容のスポーツアリーナと、5千人収容のシアターなどで構成され、プロバスケットボール、プロアイスホッケーの試合が開催されるマディソンスクエアガーデンに近接する集客力の高いエリアでもあることから、フードコート業態であるにも関わらず、既に当社ニューヨーク路面店2店舗を凌ぐ売上が確保できる状況に至っております。但し、当該店舗の連結決算への寄与は、決算期の違いから第2四半期連結会計期間からとなります。
以上の結果、当第1四半期連結会計期間末の当社グループの店舗数は、直営店168店舗(国内165店舗、海外3店舗)、業務委託店9店舗、合計177店舗となりました。また、直営店事業部門の売上高は4,313,600千円となりました。
(プロデュース事業部門)
国内プロデュース事業部門においては、既出店地域においてこれまで通り、商圏における潜在需要試算に基づく出店ルールに従ってプロデュース店と直営店との間できめ細かく調整を行いながら、出店を進めてまいりました。未出店地域においては、当社グループとして直営店を出店させる予定のない地域については、新規オーナーの開拓を精力的に行ってまいりました。また、既存プロデュース店は、新型コロナウイルス感染症拡大の状況の中でここ数年、来客数の減少、売上減少が続いてまいりましたが、本年1月においては2019年との既存店売上が100%を超える等、復調の兆しを見せており、これまで直営店同様にテイクアウトニーズへの対応、宅配ニーズの掘り起こし等、販売促進活動における直営店の成功ノウハウをもとに積極的に支援してきた成果が現れることとなりました。
一方、海外プロデュース事業部門においては既存オーナーの出店意思を確認しながら新規出店地域の検討を行い、新型コロナウイルス感染症拡大の状況下においても出店支援を進め、昨年11月、ベトナムでのプロデュース店の新規出店を図りました。また、本年1月のタイでの「町田商店」フランチャイズ店の初出店等、FC事業を順調にスタートさせることができ、引き続きアメリカ、東南アジアにおいて「町田商店」「豚山」等のブランドをFC事業として展開すべく、精力的な営業活動を展開してまいります。
以上の結果、当社グループがプロデュースする店舗数は、当第1四半期連結累計期間に21店舗の純増となり、結果、国内514店舗、海外18店舗、合計532店舗となりました。また、プロデュース事業部門の売上高は892,939千円となりました。
b.財政状態の分析
(資産)
当第1四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末に比べ710,501千円増加し10,615,635千円となりました。これは主に、配当及び法人税等の支払、借入金の返済、及び固定資産の取得により現金及び預金が75,082千円減少した一方、積極的な出店を行ったこと等により建物及び構築物などの有形固定資産が406,428千円、敷金及び保証金が58,269千円、業容拡大により流動資産のその他が222,513千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当第1四半期連結会計期間末の負債は、前連結会計年度末に比べ409,355千円増加し4,882,428千円となりました。これは主に、未払法人税等が341,034千円減少した一方、長期借入金が248,087千円、流動負債その他が158,579千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当第1四半期連結会計期間末の純資産は、前連結会計年度末に比べ301,145千円増加し5,733,207千円となり、自己資本比率は54.0%となりました。これは主に、配当の支払に伴い利益剰余金が149,437千円減少した一方、親会社株主に帰属する四半期純利益379,918千円の計上により利益剰余金が増加したこと等によるものであります。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
特に記載すべき事項はありません。