【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
① 経営成績の状況
当第3四半期連結会計期間における経営環境は、海外景気の下振れによる影響や、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意が必要であるものの、雇用・所得環境が改善する下で各種政策の効果もあり、緩やかに回復しつつあります。
このような状況の中、旅行業界においては、新型コロナウイルスによる出入国時の水際対策終了と感染症法上で「5類」に移行されたことから、訪日旅行と海外旅行といった国際的な往来による需要の回復がみられたほか、国内旅行でも引き続き観光支援策が実施され、堅調な回復をみせています。
当社グループにおいては、店舗の統合をはじめ、各国でのコスト削減を継続し、生産性と収益性の向上を図るとともに、基幹事業である海外旅行の需要拡大を図るため、売上の最大化にむけた人員配置や広告展開など、夏の繁忙期に向けた取り組み強化を推し進めました。
また、旅行を中心に幅広い事業の展開を通じて、グループ全体の持続的成長を実現するため、HIS Group Purpose 〝「心躍る」を解き放つ″の旗印のもと、これからもあらゆる出会いと繋がりを創出し、豊かでかけがえのない時間の創造、相互理解を促進することで、世界を近づけ、新たな価値の提供に努めていきます。
セグメント別の当第3四半期連結累計期間の業績は以下のとおりです。
なお、第1四半期連結会計期間より、セグメントを従来の「旅行事業」「テーマパーク事業」「ホテル事業」「九州産交グループ」「エネルギー事業」の5セグメントから、「旅行事業」「テーマパーク事業」「ホテル事業」「九州産交グループ」の4セグメントに変更しております。このため、前第3四半期連結累計期間との比較については、セグメント変更後の数値に組み替えて比較を行っております。詳細は、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。
また、各セグメントの金額は、セグメント間取引を相殺消去する前の金額であります。
(旅行事業)
当第3四半期連結累計期間における旅行市場は、アフターコロナを迎え通常時に戻りつつある中、海外においては、欧米を中心に活況に推移しました。また、日本においても、政府の需要喚起策である「全国旅行支援」の駆け込み需要があり、国内旅行のマインドの高まりが継続し、高水準で推移しました。また、海外旅行・訪日旅行市場においては、日本では新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行するとともに、各国の入国制限解除を含む水際対策の終了や国際航空便の復便の動きを受けて、旅行需要が回復し始めております。また、当第3四半期連結累計期間における日本人出国者数は、前期比528.6%(2019年比36.7%)の531万人、訪日外客数は前期比2,239.2%(2019年比62.1%)の1,533万人となりました。ピーク時であったコロナ禍以前と比較し、回復の動きが表れております。(出典:日本政府観光局 (JNTO))
当社の海外旅行事業においては、夏のレジャー需要を後押しするキャンペーン「SUPER SUMMER SALE!」を例年より日程を繰り上げて実施し、パスポート申請代金の全額負担をはじめ、出発の30日・40日前から発生する取消料を15日前まで無料とするなどの施策を通じて、夏の繁忙期にむけた集客強化を図りました。また、コロナ禍により縮小した日本発の海外旅行市場を再び活性化させるべく、台湾交通部観光局・シンガポール政府観光局と業務提携を締結しました。各渡航先への持続可能な観光の構築に向けて、HIS社員への研修プログラムの確立や観光誘致へのプロモーションの実施など、相互における協力体制を構築しました。送客実績においては、国際航空便の復便が早い韓国が、2019年度と同水準まで回復をみせており、ヨーロッパ方面(フランス・イタリア・スイス)では添乗員同行ツアー、アメリカ西海岸では野球観戦ツアーの人気が顕著に表れており、市場回復の動きがみられました。
国内旅行事業においては、「全国旅行支援」の継続もあり対象商品の販売強化に加え、お子さまの急病によるキャンセル料を無料にする施策を展開するなど、家族旅行を中心としてパッケージツアーの販売強化を図りました。強化方面である沖縄では、ゴールデンウィーク出発の成田発チャーター便で行く宮古島ツアーが好調に推移するなど、沖縄人気の底上げを図りました。北海道では、新千歳空港国内線ターミナルビルに7月~9月の繁忙期に設置した「北海道コンシェルジュ カウンターデスク」のオープンや東北海道へのパッケージツアーにフォーカスした「大自然満喫 ひがし北海道」を通じて、他社との差別化を図るなど商品造成を強化しました。また、旬のフルーツ狩りを中心に、各地域の魅力を組み込んだバスツアーや国内航空券とホテルを組み合わせた「ダイナミックパッケージ」が引き続き好調に推移しており、コロナ禍以前の水準へ回復し業績に寄与しました。
訪日旅行事業においては、連携を強化している自治体のブランド力向上を目的に、国内外でのプロモーションを展開しました。タイや韓国などのOTA・現地旅行会社にむけた視察ツアーを実施するなど、訪日旅行者向けの商品開発に努めました。HISの海外現地法人や北米の旅行会社をはじめとするB2Bチャネルを通じ、欧米からの団体の受客が取扱高を牽引しました。また「HIS原宿ツーリストインフォメーションセンター」では、ムスリムの旅行者にむけた礼拝室の提供が口コミで広がり、インドネシア・マレーシアからの訪日旅行者に多数ご来店いただくなど、好評を得ました。グループ会社であるジャパンホリデートラベルでは、大半を占めていた中国からの受客が、一部渡航制限の影響を受け、本格的な回復には至っていないものの、バンコクと那覇を結ぶ定期チャーター便を利用した団体の受客が好調に推移しました。
法人事業では、団体旅行・業務渡航の需要回復が顕著に表れており、全国で大型案件や周年行事が活発化するなど、国内旅行・海外旅行ともに受注案件数が増加しました。また新たに、企業が駐在員の健康と安全に配慮する義務への対応策として、海外駐在員とそのご家族にむけて、24時間365日いつでも世界中どこからでも日本人専門医500人以上が全科に対応できるリモート診療サービスの提供を開始しました。また、法人営業本部に属する「サステナビリティ推進デスク」では、様々な社会課題を現場で学ぶスタディーツアーの企画・運営や企業の人材育成のためのソリューションの提案を行っており、一般社団法人日本旅行業協会が主催する「第1回 JATA SDGsアワード」において、『サステナブルな取り組みの現場でSDGsを体感する「旅」※SDGs研修プログラムの開発実施』が評価され、共創部門奨励賞を受賞しました。
海外における旅行事業では、カナダに拠点を置く海外グループ会社が、引き続きアウトバウンド事業を中心に業績を牽引しました。また、トルコのほか、インドネシア・タイ・ベトナム・マレーシア・フィリピンといった東南アジアの現地法人は、業務渡航を中心としたB2Bマーケットを強化し、アウトバウンド事業が回復をみせました。現地法人におけるインバウンド事業では、卒業旅行シーズンの学生にとっての人気渡航先であるヨーロッパ方面(イギリス・イタリア・スペイン・フランス)は、日本からの受客が好調に推移したことにより、業績回復の動きが顕著に表れました。一方で、北米ではCanadian Collegeグループが総合医療と福祉サービスのプログラムに特化した専門学校「Stenberg College International」をグループ傘下にするなど、事業領域の拡大に努めました。
なお、当社グループの営業拠点数は、国内134拠点、海外59カ国111都市157拠点となりました。(2023年7月末日時点)
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は1,288億20百万円(前年同期比326.4%)、営業損失は41億7百万円(前年同期は営業損失225億55百万円)となりました。
(テーマパーク事業)
ラグーナテンボスでは、例年より約1か月早い6月から夏期プール営業をスタートしたほか、機関士になってトーマスたちと一緒に遊びながら学べる「きかんしゃトーマス」の体験型イベントの開催により、入園者数は前年比112.5%となりました。また、ショッピングモール「フェスティバルマーケット」では、魚市場から直送の鮮魚を提供する「岡崎魚市場食堂 平の屋」、食べ応え抜群のハンバーガーショップ「AMBER’S」、遊びながら学べる室内型大型キッズパーク「ハピピランド」の3店舗を新規オープンすることで、顧客層の拡大に努めました。
なお、これまでテーマパーク事業として展開していたハウステンボスは、2022年9月30日をもって全株式の譲渡を完了しております。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は18億69百万円(前年同期比12.3%)、営業損失は3億17百万円(前年同期は営業損失1億58百万円)、EBITDAベースでは83百万円の損失(前年同期は13億67百万円の利益)となりました。
(ホテル事業)
ホテル事業では、国内のホテルにおいて、「全国旅行支援」の効果を受け人流回復がみられたことで、宿泊需要は全国的に回復基調となりました。春先から初夏の行楽シーズンを迎えたこともあり、観光需要が増えたほか、出張や研修などビジネス需要も引き続き回復がみられました。また、「変なホテル大阪 なんば」にて恐竜で装飾した〝恐竜ルーム″や、「変なホテル鹿児島 天文館」にて「いおワールドかごしま水族館」とコラボレーションした年間パスポート付の「マリンルーム」を発売するなど、地域特性や各施設の強みを活かしたコンセプトルームの造成・販売にも注力しました。海外のホテルにおいては、リゾート・都市部ともに各国旅行需要の回復がさらに強まり、各ホテルの業績回復がみられました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は128億95百万円(前年同期比211.0%)、営業利益は2億57百万円(前年同期は営業損失34億54百万円)、EBITDAベースでは33億18百万円の利益(前年同期は5億57百万円の損失)となりました。
(九州産交グループ)
九州産交グループでは、コロナ禍の影響により減少を受けた国内の人流回復と、海外からの入国者増加による復調がみられ、特に中核事業であるバス事業において、路線バスで輸送人員が2019年比95.8%、貸切バスでは稼働台数が2019年比114.2%と回復がみられました。商業施設「サクラマチクマモト」においても、熊本観光のシンボルである熊本城の復興に向け、熊本に縁あるアニメアイドルグループとのコラボレーション企画「熊本城復興応援プロジェクト」の開催など、様々なイベント実施により順調に来館者数が回復しました。加えて、併設する熊本城ホールと連携し、店舗の利用促進による売上回復により、収益の改善がみられました。また、旅行業として2回の台湾チャーター便(3月及び5月)を実施するなど、収益改善に取り組みました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間における売上高は160億81百万円(前年同期比121.5%)、営業利益は51百万円(前年同期は営業損失10億83百万円)となりました。
これらのセグメントごとの経営成績の結果、当社グループの当第3四半期連結累計期間における経営成績は、売上高は1,639億81百万円(前年同期比164.1%)、営業損失は41億90百万円(前年同期は営業損失391億42百万円)となりました。また、経常損失は39億39百万円(前年同期は経常損失391億18百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失は56億35百万円(前年同期は親会社株主に帰属する四半期純損失332億63百万円)となりました。
② 財政状態の分析
当第3四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末に比べ219億66百万円増加し、4,369億51百万円となりました。これは主に、現金及び預金の減少(前期末比42億9百万円減)、有形固定資産の減少(同27億74百万円減)がある一方で、長期預金の増加(同189億35百万円増)、旅行前払金の増加(同59億87百万円増)、受取手形、売掛金及び契約資産の増加(同42億19百万円増)によるものです。
また、当第3四半期連結会計期間末における負債は、前連結会計年度末に比べ285億66百万円増加し、3,869億15百万円となりました。これは主に、借入金の減少(前期末比107億57百万円減)、未払金の減少(同22億49百万円減)がある一方で、旅行前受金の増加(同247億87百万円増)、その他の流動負債の増加(同121億32百万円増)、営業未払金の増加(同30億74百万円増)によるものです。
当第3四半期連結会計期間末における純資産は、前連結会計年度末に比べ65億99百万円減少し、500億36百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する四半期純損失の計上等による利益剰余金の減少(前期末比55億88百万円減)、為替換算調整勘定の減少(同6億66百万円減)によるものです。
(2)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間におきまして、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第3四半期連結累計期間におきまして、当社グループが対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
該当事項はありません。
#C9603JP #エイチアイエス #サービス業セクター