【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の状況新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が順調に進むにつれて経済活動が徐々に緩和され、観光目的での入国受け入れが開始されるなど、経済活動の持ち直しが見られました。一方で、ウクライナ情勢の深刻化に伴う原材料価格の上昇や世界的なインフレの加速、米国での政策金利引き上げによる急激な為替変動及び消費者物価指数の上昇等、景気の先行きの不透明感はますます高まっています。このような状況下、従来型の振り込め詐欺に加えて、新型コロナウイルス感染症に便乗した還付金詐欺や、ウクライナ支援を装った義援金詐欺等、世相を反映した特殊詐欺等の事案が発生しております。また、スマートフォンや携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)を悪用しクレジットカード等の個人情報を盗み取るフィッシング詐欺、いわゆる「スミッシング」も増加傾向にあり、手口も巧妙化しております。こうした多数かつ多額の被害をもたらす特殊詐欺やフィッシング詐欺等から、自分だけではなく大切な家族や友人を守りたいというニーズは高まっており、当社は犯罪抑止に効果的な迷惑情報フィルタ事業に注力してまいりました。固定電話向けフィルタサービスにおいては、KDDI株式会社と共同で、国内初、専用機器不要で固定電話への迷惑電話を自動遮断する「迷惑電話自動ブロック」の提供を開始いたしました。当サービスは、KDDI株式会社のネットワーク上で迷惑電話の着信を自動遮断するため、専用機器が不要となるものです。具体的な事例としては、KDDI株式会社のグループ会社であるJCOM株式会社の「迷惑電話自動ブロックサービス」に活用されており、同社は当サービスを活かした各地元警察署との連携を推進し、安全で安心して暮らせる地域社会の実現に貢献しています。2022年10月には、株式会社NTTドコモが提供している「あんしんセキュリティ」のメニューに、当社のデータベースを活用した「迷惑メッセージ対策」サービスの提供が開始されました。これにより、国内の三大通信キャリア全てに当社の「迷惑電話対策機能」及び「迷惑メッセージ対策機能」が提供されることとなりました。迷惑電話対策アプリ「トビラフォンモバイル」は、アプリとして初めて公益財団法人全国防犯協会連合会推奨の「優良迷惑電話防止機器」に認定され、詐欺の被害防止への有効性がより一層認められました。また、迷惑広告コンテンツをブロックするアプリ「280blocker」は、認知拡大に努めるとともに、今までサービス提供を行っていたiOS版だけでなく、新たにAndroid版をリリースするための検討を行いました。従来から注力しているクラウド型ビジネスフォンサービス「トビラフォン Cloud」は、回線敷設や機器を設置することなく、内線・外線・転送・グループ着信・IVR(自動音声応答)等の機能が利用できる利便性の高いサービスです。本サービスはユーザーから高く評価されており、製品利用者の評価(レビュー)をもとに顧客満足度の高い製品を選定する「ITreview Grid Award 2022 Fall」のPBX部門、IVR(自動音声応答)部門、IP電話部門の3部門で、最高位の「Leader」を受賞し、3期連続での「Leader」受賞となりました。法人向けに「トビラフォン」の機能を強化した「トビラフォンBiz」は東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)のセレクトアイテムに登録されたことにより、受注件数が前期と比較し大幅に増加しました。これらの他、営業トークを可視化し、データドリブンセールスを実現するAI搭載型営業ツール「Talk Book(トークブック)」を提供しております。このような各種施策により、月間利用者数(※)の増加を図り、2022年10月末現在では1,500万人を超える多くのユーザーにご利用いただいております。2022年9月30日には、当社の技術力強化の一環として、SIP/VoIP技術をベースとした製品の開発等を行っている株式会社ageetの株式追加取得を行い、同社を当社の関連会社といたしました。
当社の事業及びビジネスモデルは外部からも高い評価を受けており、2021年12月には、経済産業省 中小企業庁が様々な分野で活躍する中小企業・小規模事業者を表彰する「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選定されました。また、2022年6月には、電波利用及び情報通信の発展に貢献した団体として、「電波の日・情報通信月間」記念式典で「東海情報通信懇談会会長表彰」を受賞しました。以上の結果、当事業年度における売上高は1,681,715千円(前期比18.0%増)、営業利益は540,839千円(前期比6.7%減)、経常利益は532,225千円(前期比7.9%減)、当期純利益は322,027千円(前期比16.6%減)となりました。
※ 月間利用者数は、当社製品・サービスを利用しているユーザーのうち、電話番号リストの自動更新またはアプリの起動等により、当月に1回以上、当社サーバへアクセスが行われたユーザー数です。なお、1ユーザーが複数の携帯端末を所有しそれぞれで当社サービスの利用契約を行い、各端末等から当社サーバへのアクセスがなされた場合には、複数ユーザーとして重複カウントしております。 また、月間利用者数は、当社が事業を通じて特殊詐欺被害の撲滅に貢献するうえで重要なKPIの1つとしておりますが、主要な取引先である通信キャリアとの契約条件は様々であり、必ずしも月間利用者数の増減が直接的に収益に影響を与えるものではありません。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
(迷惑情報フィルタ事業)迷惑情報フィルタ事業におきましては、主力サービスであるモバイル向けフィルタサービス、固定電話向けフィルタサービス及び「トビラフォン Cloud」を含むビジネスフォン向けフィルタサービスにおいて、引き続きサービス基盤の強化・拡大に注力してまいりました。その結果、当事業年度における迷惑情報フィルタ事業の売上高は1,621,094千円(前期比20.4%増)となり、セグメント利益は926,287千円(前期比3.2%増)となりました。
(その他)ホームページの制作運営支援システム「HP4U」や受託開発事業等を「その他」に含めております。これらの事業については、積極的には展開しない方針であり、当事業年度におけるその他の売上高は60,621千円(前期比22.5%減)となり、セグメント利益は40,295千円(前期比14.3%減)となりました。
なお、全社営業利益は、各セグメント利益の合計から、報告セグメントに配賦していない全社費用を差し引いた数値となっております。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない販売費及び一般管理費であり、管理部門の人員増強や企業規模の拡大に伴う管理コストの増加等により、425,743千円(前期比16.8%増)となりました。
(2) 財政状態の状況(資産)当事業年度末における総資産は2,667,177千円となり、前事業年度末に比べ497,161千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が290,032千円増加したこと、売掛金が30,567千円増加したこと、商品及び製品が62,212千円増加したこと、前払費用が25,728千円増加したこと、工具、器具及び備品が14,716千円増加したこと、のれんが67,093千円減少したこと、ソフトウエアが25,175千円増加したこと、長期前払費用が61,899千円増加したこと及び繰延税金資産が16,084千円増加したこと等によるものであります。
(負債)当事業年度末における負債合計は956,385千円となり、前事業年度末に比べ275,377千円増加いたしました。これは主に、契約負債(前事業年度末は前受金)が367,329千円増加したこと、未払金が19,161千円減少したこと、未払消費税等が12,917千円減少したこと及び長期借入金(1年以内返済予定含む)が61,924千円減少したこと等によるものであります。
(純資産)当事業年度末における純資産は1,710,792千円となり、前事業年度末に比べ221,783千円増加いたしました。これは、配当金の支払いによる利益剰余金134,040千円の減少に対し、新株予約権の権利行使により資本金及び資本準備金がそれぞれ16,525千円増加したこと及び当期純利益を322,027千円計上したことによるものであります。なお、自己資本比率は64.1%(前事業年度末は68.6%)となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べて290,032千円増加し、1,435,764千円となりました。各キャッシュ・フローの主な状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果獲得した資金は641,680千円(前年同期は491,922千円の獲得)となりました。これは主に、法人税等の支払額が192,950千円、売上債権及び契約資産の増加が68,749千円、棚卸資産の増加が62,084千円、長期前払費用の増加が66,811千円及び未払消費税等の増加が13,025千円あったものの、税引前当期純利益を491,635千円、減価償却費を86,867千円、のれん償却額を65,884千円、投資有価証券評価損を44,467千円計上したこと及び契約負債の増加が367,536千円あったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果使用した資金は188,738千円(前年同期は652,300千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産32,409千円の取得、無形固定資産111,106千円の取得及び関係会社株式42,750千円の取得等による支出であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果使用した資金は162,910千円(前年同期は45,801千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入金の返済61,924千円及び配当金133,715千円の支払があったものの、新株予約権の権利行使による収入32,729千円があったことによるものであります。
(4) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
② 受注実績当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。
③ 販売実績当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前期比(%)
迷惑情報フィルタ事業
1,621,094
120.4
その他
60,621
77.5
合計
1,681,715
118.0
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度(自 2020年11月1日
至 2021年10月31日)
当事業年度(自 2021年11月1日
至 2022年10月31日)
販売高(千円)
割合(%)
販売高(千円)
割合(%)
KDDI株式会社
448,972
31.5
550,813
32.8
ソフトバンク株式会社
461,557
32.4
428,668
25.5
株式会社NTTドコモ
248,366
17.4
278,069
16.5
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 重要な会計方針及び見積り当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に見積り、計上しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 資本の財源及び資金の流動性についての分析当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、通信費等の費用であります。投資を目的とした資金需要はサーバ等インフラ設備、機器や本社移転に伴う敷金の差入等によるものであります。運転資金は自己資金を基本としており、投資資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当事業年度末における借入金残高は295,790千円となっております。また、当事業年度末の現金及び現金同等物は1,435,764千円であり、流動性を確保しております。
③ 経営者の問題認識と今後の方針について「第2 事業の状況 1(経営方針、経営環境及び対処すべき課題等)」をご参照ください。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について「第2 事業の状況 2(事業等のリスク)」をご参照ください。
⑤ 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当事業年度の経営成績については、主力事業である迷惑情報フィルタ事業のモバイル向けフィルタサービスの安定的な成長や、金融機関へのフィッシングSMSに関する情報提供を開始したこと等により、売上高は1,681,715千円(前期比18.0%増)、営業利益は540,839千円(前期比6.7%減)、経常利益は532,225千円(前期比7.9%減)、当期純利益は322,027千円(前期比16.6%減)となりました。一方で、「第2 事業の状況 1(経営方針、経営環境及び対処すべき課題等)」に記載のとおり、当社の迷惑情報フィルタ事業は、通信キャリアのオプション契約に組み込まれるサービス運営を中心とするビジネスモデルに依存している状況にあり、新規・周辺ビジネスの立ち上げが課題であると認識しております。そのため、中長期的な経営戦略において、通信キャリアに販路を依存しない、ビジネスフォン向けフィルタサービスの拡大を目指し、クラウド型ビジネスフォンサービスの「トビラフォン Cloud」や、データドリブンセールスを実現するAI搭載型営業ツール「Talk Book(トークブック)」の販売を開始しました。また、合同会社280blocker吸収合併することにより、広告コンテンツをブロックするアプリ「280blocker」を当社が提供するサービスに追加いたしました。当社は、新たな顧客層への販売を通じた収益の源泉を獲得することで、一層の収益力強化を図ってまいります。
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