【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローならびに財政状態(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。(1) 経営成績等の状況の概要①経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国の経済は、長引く新型コロナウイルス感染症の様相が重症化率の低下に向かうなどにより、経済活動の制限から抜け出しつつあることから、持ち直しを見せております。景気の先行きは、回復基調を維持するものと予測されますが、原材料価格の高騰や急激な為替相場の変動などに加え、中国政府による新型コロナウイルス感染症防止対策の動向やウクライナ情勢の長期化もあり、依然として不透明な状況は続くと考えられます。このような情勢の下、当社グループにおきましては、企業価値の向上に向け、中期経営計画「Create the Future ~新たな可能性へのチャレンジ~」(2021年10月期~2023年10月期)にて策定した重点施策の遂行に全力で取り組んでまいりました。
この結果、売上高は、145,302百万円となり、前連結会計年度と比べて27,127百万円(23.0%)の増加となりました。また、利益面では、次のとおりとなりました。営業利益は、12,673百万円となり、前連結会計年度と比べて4,217百万円(49.9%)の増加となりました。経常利益は、23,570百万円となり、前連結会計年度と比べて10,742百万円(83.7%)の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、16,329百万円となり、前連結会計年度と比べて7,307百万円(81.0%)の増加となりました。
各セグメントの業績は次のとおりであります。 1)農薬及び農業関連事業農薬及び農業関連事業の売上高は112,430百万円となり、前連結会計年度と比べて23,279百万円(26.1%)の増加となりました。営業利益は13,065百万円となり、前連結会計年度と比べて4,716百万円(56.5%)の増加となりました。
2)化成品事業化成品事業の売上高は25,004百万円となり、前連結会計年度と比べて4,344百万円(21.0%)の増加となりました。営業利益は900百万円となり、前連結会計年度と比べて12百万円(1.4%)の増加となりました。
3)その他その他全体の売上高は7,869百万円となり、前連結会計年度と比べて497百万円(5.9%)の減少となりました。営業利益は637百万円となり、前連結会計年度と比べて231百万円(26.6%)の減少となりました。
②財政状態の状況当連結会計年度末の総資産は204,604百万円で、前連結会計年度末と比べ35,433百万円の増加となりました。流動資産が27,633百万円増加し、固定資産が7,800百万円増加しました。流動資産の増加は受取手形、売掛金及び契約資産ならびに商品及び製品の増加等によるもの、固定資産の増加は建設仮勘定ならびに投資有価証券の増加等によるものです。負債は82,609百万円で、前連結会計年度末と比べ23,391百万円の増加となりました。流動負債が27,238百万円増加し、固定負債が3,847百万円減少しました。流動負債の増加は支払手形及び買掛金ならびに短期借入金の増加等によるもので、固定負債の減少は長期借入金の減少等によるものです。純資産は121,995百万円で、前連結会計年度末と比べ12,041百万円の増加となりました。この結果、自己資本比率は56.4%、1株当たり純資産額は960円96銭となりました。
③キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フローは、1,159百万円の減少(前年同期は4,478百万円の増加)となりました。これは、税金等調整前当期純利益23,119百万円等の資金の増加に対し、売上債権の増加13,382百万円、棚卸資産の増加5,636百万円及び為替差益5,382百万円等の資金の減少によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、7,823百万円の減少(前年同期は5,311百万円の減少)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出7,817百万円等の資金の減少によるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは、5,615百万円の増加(前年同期は439百万円の増加)となりました。これは、短期借入金の増加16,553百万円の資金の増加に対し、長期借入金の返済による支出4,307百万円、自己株式の増加4,082百万円及び配当金の支払額2,206百万円等の資金の減少によるものです。以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末残高に比べ2,647百万円増加し、22,071百万円となりました。
④生産、受注及び販売の状況1)生産実績 当連結会計年度における生産実績を各セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
農薬及び農業関連事業
49,830
94.7
化成品事業
20,697
128.8
その他
1,524
92.1
合計
72,051
102.4
(注)
1.生産金額は販売価格をもって算出しております。2.各セグメントの区分に基づき開示しております。
2)受注状況 当連結会計年度におけるその他事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
その他
4,968
186.0
2,416
192.8
3)販売実績 当連結会計年度における販売実績を各セグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
農薬及び農業関連事業
112,430
126.1
化成品事業
25,004
121.0
その他
7,869
94.1
合計
145,302
123.0
(注) 1.各セグメントの区分に基づき開示しております。2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
当連結会計年度
販売高(百万円)
割合(%)
販売高(百万円)
割合(%)
全国農業協同組合連合会
25,500
21.6
24,265
16.7
BASF AGROCHEMICAL PRODUCTS B.V.
-
-
15,542
10.7
3.前連結会計年度のBASF AGROCHEMICAL PRODUCTS B.V.の販売実績については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。当社グループは、連結財務諸表を作成するに当たり、繰延税金資産の回収可能性について、特に重要な見積りを行っております。この連結財務諸表作成にあたって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しており、繰延税金資産の回収可能性につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績(売上高) 売上高は、農薬の海外輸出及び国内販売が好調に推移した結果、145,302百万円(前連結会計年度比23.0%の増加)となりました。(営業利益) 売上総利益も農薬及び農業関連事業が好調に推移したことにより34,201百万円(前連結会計年度比17.8%の増加)となりました。 また、販売費及び一般管理費は、物流コストや減価償却費の増加により21,529百万円(前連結会計年度比4.6%の増加)となりました。 以上の結果、営業利益は12,673百万円(前連結会計年度比49.9%の増加)となり、増益となりました。なお、営業利益率は8.7%で前連結会計年度比1.5ポイントの増加となりました。(経常利益) 経常利益は、為替レートの円安進行に伴う為替差益等により、23,570百万円(前連結会計年度比83.7%の増加)となりました。(親会社株主に帰属する当期純利益) 親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加に伴い、16,329百万円(前連結会計年度比81.0%の増加)となりました。
(セグメント別の状況) (農薬及び農業関連事業)国内向けは、水稲用殺菌剤「ディザルタ剤」や「エフィーダ」を含有する水稲用除草剤の販売が好調に推移しました。海外向けは、畑作用除草剤「アクシーブ剤」が良好な市場環境による需要の増加から、主要販売国である米国、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル向けの出荷が伸長しました。また、植物成長調整剤「プロヘキサジオンカルシウム剤」の欧州向け出荷も順調に推移したことで、前連結会計年度の業績を大幅に上回りました。以上の結果、農薬及び農業関連事業の売上高は112,430百万円、前連結会計年度比23,279百万円(26.1%)の増加となりました。営業利益は13,065百万円、前連結会計年度比4,716百万円(56.5%)の増加となりました。 (化成品事業)コロナ禍の影響で落ち込んでいたアラミド繊維原料であるクロロキシレン系化学品の需要が回復し、販売が大幅に増加しました。また、電子材料需要の増加に伴いビスマレイミド類等の販売が増加しました。産業用薬品や発泡スチロールの販売は前連結会計年度並みに推移しました。以上の結果、化成品事業の売上高は25,004百万円、前連結会計年度比4,344百万円(21.0%)の増加となりました。営業利益は原材料の高騰、物流コストや減価償却費が増加したものの、900百万円、前連結会計年度比12百万円(1.4%)の増加となりました。 (その他)その他の主な事業内容は、賃貸事業、発電及び売電事業、建設業、印刷事業、物流事業、情報サービス事業等であります。建設業において工事進捗の遅れなどが発生したことに加え、印刷事業においては、台風15号による浸水被害のため出荷が滞ったことにより、その他の売上高は、7,869百万円、前連結会計年度比497百万円(5.9%)の減少となりました。営業利益は637百万円、前連結会計年度比231百万円(26.6%)の減少となりました。
2)財政状態当連結会計年度末の総資産は204,604百万円で、前連結会計年度末に比べ35,433百万円の増加となりました。流動資産が27,633百万円増加し、固定資産が7,800百万円増加しました。流動資産の増加は受取手形、売掛金及び契約資産ならびに商品及び製品の増加等によるもの、固定資産の増加は建設仮勘定ならびに投資有価証券の増加等によるものです。負債は82,609百万円で、前連結会計年度末に比べ23,391百万円の増加となりました。流動負債が27,238百万円増加し、固定負債が3,847百万円減少しました。流動負債の増加は支払手形及び買掛金ならびに短期借入金の増加等によるもので、固定負債の減少は長期借入金の減少等によるものです。純資産は121,995百万円で、前連結会計年度末に比べ12,041百万円の増加となりました。この結果、自己資本比率は56.4%、1株当たり純資産額は960円96銭となりました。
3)キャッシュ・フロー営業活動によるキャッシュ・フローは、1,159百万円の減少(前年同期は4,478百万円の増加)となりました。これは、税金等調整前当期純利益23,119百万円等の資金の増加に対し、売上債権の増加13,382百万円、棚卸資産の増加5,636百万円及び為替差益5,382百万円等の資金の減少によるものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、7,823百万円の減少(前年同期は5,311百万円の減少)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出7,817百万円等の資金の減少によるものです。財務活動によるキャッシュ・フローは、5,615百万円の増加(前年同期は439百万円の増加)となりました。これは、短期借入金の増加16,553百万円の資金の増加に対し、長期借入金の返済による支出4,307百万円、自己株式の増加4,082百万円及び配当金の支払額2,206百万円等の資金の減少によるものです。以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末残高に比べ2,647百万円増加し、22,071百万円となりました。
4)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、原燃料調達や価格の動向、市場動向、為替動向、国内外の法令や政治・経済動向、ESG課題への対応、新型コロナウイルス感染症の影響等があります。資材調達につきましては、サプライチェーンの安定化と適正な在庫管理、委託先・調達先との関係強化等、生産と販売のバランスの調整、物流体制の最適化に努め、為替の影響によるリスクヘッジを含めた安定的な調達に取り組んでおります。市場の変化に対しましては、国内販売部門において、市場動向の把握によるマーケティング戦略の最適化を行うとともに、「エフィーダ剤」や「ベンスルフロンメチル剤」等の自社原体含有剤の拡販を進めます。海外販売部門においては、畑作用除草剤「アクシーブ剤」の主要市場でのシェア最大化に取り組んでおります。研究開発部門では、自社開発原体を含有する製品ポートフォリオの拡充、適用地域の拡大に向けた開発に注力し、「エフィーダ剤」の欧州開発、新規高性能殺ダニ剤フルペンチオフェノックス、果樹やバラの根頭がん腫病防除用の微生物農薬エコアークの開発のほか、「バイオスティミュラント」の開発等を推進しております。また、「みどりの食料システム戦略」やスマート農業への対応として、環境や省力化に配慮した新たな製品・パッケージの開発や技術の創出に取り組んでおります。化成品の開発では、化成品事業の高付加価値化と新技術の事業化に取り組んでおります。国内外の法令や政治・経済動向等につきましては、情報入手に努めるとともに、関係会社や開発・販売提携会社と連携し情報共有を図ることで対応を行っております。ESG課題への対応につきましては、気候変動・環境負荷の低減のため、当社グループの温室効果ガス排出量を2030年度に2019年度比30%減とすることを目標に取り組んでおります。当社グループの中核事業である農薬及び農業関連事業は、食料生産の根幹に関わるビジネスであるため、新型コロナウイルス感染症による直接的な影響は限定的と捉えておりますが、今後は原材料や輸送コストの増加等の間接的な影響や農業を取り巻く環境変化を背景に当社グループの事業環境も一層厳しさを増してくるものと想定しております。なお、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える主要なリスクにつきましては、「第2 事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおりであります。
5)資本の財源及び資金の流動性当社グループの資金需要のうち主なものは、新剤開発・登録等に係る研究開発費や開発途中の剤の生産設備の設置及び既存剤の生産効率化に係る設備投資及び新化学研究所の建設に係る投資であります。これらを主に自己資金ならびに金融機関からの借入金により調達しております。金融機関からの借入金については、取引金融機関との間でコミットメントライン契約(シンジケート方式)を締結し、安定的な資金調達の体制を構築しております。なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は、35,678百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は22,071百万円であり、資金の流動性を確保しております。
6)目標とする経営指標の達成状況等当社グループは、2020年12月に2021年10月期を初年度とする中期経営計画「Create the Future ~新たな可能性へのチャレンジ~」(2021年10月期~2023年10月期)を策定し、各事業において「研究領域、事業領域の拡大」「販売ルートの多様性確保」「コスト競争力の確保」「ESGを重視した企業活動」の4つの重要方針に基づく重点施策の遂行に取り組んでまいりました。2年目となる当連結会計年度の売上は、農薬及び農業関連事業が好調に推移した結果、145,302百万円となり、中期経営計画の売上目標118,700百万円を達成することができました。営業利益は、増収に伴う利益増等により12,673百万円となり、中期経営計画の営業利益目標7,700百万円を達成いたしました。自己資本利益率(ROE)は14.9%となり、中期経営計画の目標として設定した6.5%を大きく上回りました。また、売上、営業利益ともに、前連結会計年度及び2022年12月に公表しました業績予想を達成することができました。
2023年10月期は、当社グループの中期経営計画に基づく施策を着実に実行し、「スピード、コスト、イノベーション」「100年企業を目指した飽くなき挑戦」をスローガンとし、連結売上高167,900百万円、営業利益14,500百万円の達成、さらには経営基本方針にある「社会の持続的発展に貢献できる企業集団」の実現を目指してまいります。また、業績や目標達成だけでなく、全てのステークホルダーの幸せを追求し、社会貢献や環境対策なども含めたサステナビリティ経営を推進してまいります。