【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産合計は、3,329,424千円となり、前事業年度末から737,826千円の増加となりました。
当事業年度末における流動資産は、3,039,400千円となり、前事業年度末から711,408千円の増加となりました。これは主に、売掛金の回収により現金及び預金が142,437千円、売上の増加により売掛金が264,879千円、契約資産が255,429千円、AWSのリザーブドインスタンス(契約期間1年間、3年間)及びSavings Plans(契約期間1年間)の購入等に伴い前払費用が74,356千円増加したこと等によるものであります。
当事業年度末における固定資産は、290,024千円となり、前事業年度末から26,417千円の増加となりました。これは主に、繰延税金資産が10,993千円、自社開発のクラウド運用サービスツール「BSC:BeeX Service Console」の追加機能開発等により無形固定資産が17,378千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債合計は、1,680,324千円となり、前事業年度末から361,949千円の増加となりました。
当事業年度末における流動負債は、1,680,324千円となり、前事業年度末から362,140千円の増加となりました。これは主にクラウドライセンスリセール売上が増加したことに伴うライセンスの仕入高が増加したことにより買掛金が319,581千円及びクラウドライセンスリセール売上に対する契約負債が93,736千円増加したこと、未払金が36,272千円、未払法人税等が90,517千円増加した一方で、取引先の銀行へ借入金を返済したことに伴い短期借入金が200,000千円減少したこと等によるものであります。
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末から191千円の減少となりました。これは、本社オフィスの賃貸契約にフリーレントが含まれており、当該フリーレント分を取崩したことにより長期未払金が191千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、1,649,099千円となり、前事業年度末から375,876千円の増加となりました。これは、第三者割当増資の実施により資本金及び資本準備金がそれぞれ34,739千円、当期純利益の計上による繰越利益剰余金が299,527千円増加したこと等によるものであります。
②経営成績の状況
当事業年度(2022年3月1日~2023年2月28日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進み、緩やかな景気回復を背景に投資再開の動きが広がるなか、足元では新たな変異株による感染症の再拡大や米中貿易摩擦の長期化、世界的な半導体不足や原材料価格の高騰、さらには原油価格や為替相場の急激な変動など、今後の動向や影響についての予測は困難な状況が続いております。
情報サービス産業においては、昨年からのテレワーク環境の整備・強化に向けた需要が一巡した一方、業績悪化を理由に抑制が続いていた企業のICT投資が再開され、特に事業の強化や変革を推進するDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の需要が増加しております。
当社を取り巻くクラウド市場においては、Gartnerの調査(世界のIaaSパブリッククラウドサービスの市場シェア2020年-2021年)によると、パブリッククラウドの市場シェアは2021年に41.4%成長し、当社が取扱いをしている「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」(Azure)及び「Google Cloud」も成長しております。
IDC Japanの調査(国内クラウド需要調査2022年10月実施)によると、複数のクラウドを統合管理したいというニーズは、現状は21.9%でありますが、2年後に目指す姿としては44.7%となっており、企業におけるマルチクラウド(複数のパブリッククラウド)の利用は進んでいくものと見ております。
また、ERP市場においては、ITRの調査(ITR Market View:ERP市場2022)によると、ERPパッケージのIaaSでの稼働は、2019年度から2021年度にかけて20%程度成長しており、今後もこの傾向が続くと予測され、ERPのクラウド化が進んでいくものと見ております。
SAPシステムにおいては、2027年にオンプレ環境を含むSAP ERP6.0の保守終了が予定されており、自社のSAPシステムの環境をどのように遷移させていくかというアップグレード・クラウド移行戦略は、大変重要なポイントとなっております。
このような状況下、当社では「デジタルトランスフォーメンション」及び「マルチクラウド」という2つの領域を軸にクラウドソリューション事業を展開しており、SAP社が提供する基幹システムを中心に、顧客企業毎に使用している基幹システムに最適なパブリッククラウドの選定、基幹システムをパブリッククラウド上で最適な状態で利用するためのコンサルティング、クラウド環境の設計・構築、クラウド環境への移行、及びクラウド環境での運用業務の提供を行ってまいりました。また、クラウドソリューション事業においては、テレワーク環境下での働き方が推進されている状況が追い風となっており、クラウドに関する顧客企業からの引合いは増加基調にあります。
以上の結果、当事業年度における売上高は5,759,268千円(前期比32.2%増)、営業利益は403,090千円(前期比46.9%増)、経常利益は409,288千円(前期比57.2%増)、当期純利益は299,527千円(前期比56.9%増)となりました。
なお、当社の事業はクラウドソリューション事業の単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりません。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前事業年度末に比べ142,437千円増加し、1,163,141千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は335,766千円となりました(前事業年度は237,980千円の獲得)。これは主に、増加要因として、税引前当期純利益の計上409,025千円(前年同期は260,318千円)、AWSのリザーブドインスタンス(契約期間1年間、3年間)及びSavings Plans(契約期間1年間)の契約数が増加したことによる契約負債の増加額93,736千円(前年同期は前受金の増加額127,125千円)、クラウドライセンスリセールに係る仕入高が増加したことによる仕入債務の増加額319,473千円(前年同期は仕入債務の増加額119,532千円)等があった一方で、減少要因として、クラウドソリューション事業の売上高が増加したことによる売上債権及び契約資産の増加額481,165千円(前年同期は売上債権の増加額37,634千円)、AWSのリザーブドインスタンス(契約期間1年間、3年間)及びSavings Plans(契約期間1年間)の購入等に伴う前払費用の増加額74,342千円(前年同期は前払費用の増加額123,965千円)、法人税等の支払額37,676千円(前年同期は法人税等の支払額123,087千円)等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は56,724千円となりました(前事業年度は68,744千円の支出)。これは主に従業員の増加に伴うPC等の購入により有形固定資産の取得による支出7,872千円(前年同期は有形固定資産の取得による支出9,815千円)、自社開発のクラウド運用サービスツール「BSC:BeeX Service Console」の追加機能開発等により無形固定資産の取得による支出48,851千円(前年同期は無形固定資産の取得による支出58,928千円)があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は136,605千円となりました(前事業年度は348,912千円の獲得)。これは、株式の発行による収入69,478千円(前年同期は新株式の発行による収入353,280千円)があった一方、取引先の銀行へ借入金を返済による支出200,000千円(前年同期は取引先の銀行へ借入金を返済による支出はありませんでした)があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しておりま す。
b.受注実績
当事業年度のクラウドソリューション事業における受注実績をサービス別に示すと、次のとおりであります。
サービス区分の名称
受注高
(千円)
前年同期比
(%)
受注残高
(千円)
前年同期比
(%)
クラウドインテグレーション
1,753,729
33.3
221,373
91.9
(注)クラウドインテグレーションに係る受注の状況を記載しております。
c.販売実績
当社は「クラウドソリューション事業」の単一セグメントとしておりますが、当事業年度の販売実績をサービス区分ごとに示すと次のとおりであります。
サービス区分の名称
当事業年度
(自2022年3月1日
至2023年2月28日)
前年同期比(%)
クラウドインテグレーション(千円)
1,647,704
16.9
MSP(千円)
655,629
18.5
クラウドライセンスリセール(千円)
3,455,935
44.5
合計(千円)
5,759,268
32.2
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自2021年3月1日
至2022年2月28日)
当事業年度
(自2022年3月1日
至2023年2月28日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
AGC株式会社
893,085
20.5
1,123,907
19.5
株式会社テラスカイ
661,700
15.2
707,954
12.3
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績の分析
(売上高)
当事業年度における売上高は、前事業年度に比べ1,404,422千円増加し、5,759,268千円(前期比32.2%増)となりました。当社は、クラウドソリューション事業の単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりませんが、サービス区分別の売上高は次のとおりであります。
クラウドインテグレーション売上については、既存顧客からの追加案件の受注及び新規顧客の獲得もあってプロジェクト数が順調に積み上がり、1,647,704千円(前期比16.9%増)となりました。
MSP売上及びクラウドライセンスリセール売上については、新規顧客の獲得により取引社数が堅調に推移し、加えて、複数の既存顧客のアップセルがあったことにより、MSP売上高は655,629千円(前期比18.5%増)、クラウドライセンスリセール売上高は3,455,935千円(前期比44.5%増)となりました。
サービス区分別売上高
サービス名称
前事業年度
(自 2021年3月1日
至 2022年2月28日)
当事業年度
(自 2022年3月1日
至 2023年2月28日)
前事業年度比
売上高(千円)
構成比(%)
売上高(千円)
構成比(%)
差額(千円)
増減率(%)
クラウドインテグレーション
1,409,336
32.4
1,647,704
28.6
238,367
16.9
MSP
553,140
12.7
655,629
11.4
102,488
18.5
クラウドライセンスリセール
2,392,368
54.9
3,455,935
60.0
1,063,566
44.5
合計
4,354,845
100.0
5,759,268
100.0
1,404,422
32.2
(売上原価、売上総利益)
当事業年度における売上原価は、前事業年度に比べ1,174,463千円増加し、4,707,404千円(前期比33.2%増)となりました。
クラウドインテグレーション売上およびMSP売上の増加に伴い業務委託費が296,869千円増加した一方で、クラウドライセンスリセール売上が増加したことによりライセンスの仕入高が818,145千円増加、自社開発のクラウド運用サービスツール「BeeX Service Console」(ソフトウエア)の追加機能をリリースしたことに伴う減価償却費が11,415千円増加しました。
以上の結果、売上総利益は1,051,864千円(前期比28.0%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ101,329千円増加し、648,773千円(前期比18.5%増)となりました。
これは主に、営業・管理部門の採用が順調に進捗したこと及びエンジニア数名がプリセールスに異動したこと等により給料及び手当が34,595千円増加し、社外の専門家の利用により業務委託費が5,119千円増加し、採用活動において紹介会社による紹介手数料が増加した等もあり採用費が21,052千円増加したこと等によるものであります。
以上の結果、営業利益は前事業年度に比べ128,630千円増加し403,090千円(前期比46.9%増)となりました。
(営業外損益、経常利益)
当事業年度における営業外収益は11,731千円(前期比1,184.7%増)となりました。これは主に、受取手数料収入10,651千円を計上したこと等によるものであります。また、営業外費用は5,534千円(前期比63.2%減)となりました。これは主に、為替差損4,635千円を計上したこと等によるものであります。
以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ148,969千円増加し409,288千円(前期比57.2%増)となりました。
(特別損益、当期純利益)
当事業年度における特別損失は、262千円(前期は計上無し)となりました。これは固定資産売却損を計上したことによるものであります。
当事業年度における法人税等合計は、前事業年度に比べ40,067千円増加し109,498千円(前期比57.7%増)となりました。
以上の結果、当期純利益は前事業年度に比べ108,639千円増加し、299,527千円(前期比56.9%増)となりました。
c.キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しておりますが、特に下記の会計方針が財務諸表作成における重要な見積りの判断等に影響を及ぼすと考えております。
(履行義務の充足に係る進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益)
当社は、請負契約など成果物の引渡し義務を伴う受注制作ソフトウエア開発において、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合を除き、履行義務の充足に係る進捗度に基づき、一定の期間にわたり収益を認識しております。履行義務の充足に係る進捗度の見積りは、各報告期間の期末日までに発生した原価または工数実績の見積総原価または見積総工数に対する割合として算定しております。
履行義務の充足に係る進捗度に基づき一定の期間にわたり認識する収益の計上にあたっては、履行義務の充足に係る進捗度について、受注総額、総製造原価及び総工数の見積りに大きく依存しており、契約及び見積りの管理や計画管理の正確性が求められております。受注総額、総製造原価及び総工数の見積りについて、実績との乖離が発生した場合は見直しを行い収益計上の精度を確保しておりますが、適切な対応が遅れた場合には当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、AWS及びAzureのクラウドライセンスリセールにおける仕入のほか、クラウドインテグレーションに係る外注費及び社内人件費(製造原価)及び販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
なお、当社の資金の源泉は主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入による資金調達でありますが、今後、急激に資金繰りが悪化した場合においても、追加で資金調達が迅速に行える当座貸越契約を金融機関と締結しております。
④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、まだ成長途上の段階にあり、事業規模の速やかな拡大と利益創出基盤の拡大が急務であると考えており、当面の指標としては売上高及び経常利益を重視しております。また、持続的な成長のためには財務基盤の強化を図る必要があると考えており、財務的安定性の指標として、自己資本比率についても着目しております。
いずれの指標も継続的に増加させていくことを目指しております。
2023年2月期については、売上高、経常利益及び自己資本比率はいずれも前事業年度を上回りました。
各指標についての推移は以下のとおりであります。
2022年2月期
2023年2月期
売上高
4,354,845千円
5,759,268千円
経常利益
260,318千円
409,288千円
自己資本比率
49.1%
49.5%
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
当社は「2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業内容や外部環境、事業体制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は常に業界動向に留意しつつ、優秀な人材を確保し市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
⑥経営者の問題認識と今後の方針について
当社が属する業界においては、今後一層、デジタルトランスフォーメーションの考えが浸透し、クラウド化が進んでいくことに伴い、顧客企業のITに対する理解も急速に高度化されていく事が予想され、クラウド化の波は、ますます加速化するものと見ております。クラウドの加速化は、当社にとっては追い風である一方で、オンプレミスベースの既存顧客企業を保有する大手システムインテグレーター企業等が相次いで市場に参入し、技術力競争及び価格競争等が激化することが予測されます。また、当社が提供するサービスも、単なる工数提供の対価を得るということではなく、顧客企業にとっての価値を実現するという価値実現の対価を得る、という付加価値を提供するというサービスにシフトしていく必要があると考えております。
このような状況下において、当社が更なる成長を実現し、持続的に成長していくために、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の内容について重点的に取り組んでいく方針であります。
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