【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度の我が国経済につきましては、新型コロナウイルス感染症への対応が第5類へ移行し、収束の兆しが見える中、経済社会活動の正常化が進み景気は緩やかに持ち直して参りました。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻長期化による原材料・エネルギー価格の高騰が輸入物価や消費者物価に影響を与え、世界的にはインフレ抑制のための金融引き締めに舵を切る中での海外景気の動向及び日本経済への影響に対し引き続き注視する必要があります。
当事業年度における当社の属するソフトウエア業界は、ウィズコロナ・アフターコロナを見据えた事業構造の変革や拡大、競争力の強化を狙う製品開発や設備投資のデジタル化(DX)の動きは継続し、顧客企業のSDGsの関心の高まりと合わせて今後も大きく増加する傾向にあり、関連する当社事業分野におけるソフトウエア開発に係る需要は、当事業年度末まで旺盛な状況を維持し当社事業への追い風となってきました。当社は今後も経営を取り巻く環境の変化を注視しながら、国内企業のシステム投資意欲の高まりを商機と捉え事業の拡大を目指して参ります。
当事業年度における各事業分野の事業の状況と取り組みについて、以下に記載します。
1)組込み関連事業につきましては、大手自動車メーカーが掲げるソフトウエアファーストの推進や国際的なカーボンニュートラルの流れを受けて、車載向け組込み関連開発の需要は順調に拡大を続け、自動運転、AUTOSAR、モデルベース等の技術を活用した開発案件に加えCASE(繋がる車・自動運転・カーシェア・電動化)分野の開発案件も増加傾向にあり、売上は引き続き堅調に推移しました。今後もCASE分野を中心に更なるスキル習得と開発体制強化を進め、主要顧客の開発計画や予算の執行状況等に十分な注意を払いながら業績拡大を目指して参ります。民生・産業機器に係る組込み関連開発においては、機器メーカーの新製品開発や製品改良、製品開発の計画に前期以降の慎重な姿勢があったものの、企業の中長期の競争力の要である製品力強化を目的とする製品開発・改良に係る開発需要は回復の兆しが一部で見られるため、車載向け組込み関連開発と同じく、顧客の開発投資の動向に十分な注意を払いながら、開発体制を強化し業績拡大を目指して参ります。
2)製造・流通及び業務システム関連事業につきましては、生産管理パッケージソフトウエア及び製造実行管理パッケージソフトウエアの関連開発の売上を中心に当該関連開発の売上は順調に推移しました。また、国内製造業の競争力強化を目的とした事業のデジタル化のためのシステム投資についても継続して活発な状況にあり、産業系システム関連開発の売上についても堅調に推移しました。今後は、事業のデジタル化とSDGsの関心の高まりによる企業の取り組みは加速し、加えて本事業分野の製品開発においても競争力の強化を目的としたソフトウエアファーストの考え方が浸透すると思われます。当社は現在の事業環境を商機と捉え、DX支援ソリューション「+FORCE」の活用等、提案活動の強化と、当該関連開発の開発体制の強化と集中により、業績の拡大を目指して参ります。
3)金融・公共関連事業につきましては、前期から継続の採算性の低い案件により収益性が一時的に低下したものの、引き続き公共関連開発を一次請けする国内大手SIerと当社の良好な関係を軸に、大型案件の機能強化や改修を積極的に受注したことにより、開発案件の売上は堅調に推移しました。今後は既開発案件の改修・改造に加え、2021年9月に新設されたデジタル庁が推進する「行政のデジタル化(デジタル・ガバメント実行計画等)」の関連案件を視野に、顧客やパートナー企業との信頼関係を築きながら安定的・継続的な受注・売上を確保して参ります。
4)全社的取り組みにつきましては、システム開発が複雑化・大規模化する中で業績拡大や付加価値の向上が期待される反面、トラブル発生時の損失リスクの拡大も懸念されることから、品質管理手法の更なる進化と品質管理体制の強化を行い、トラブルの再発防止・未然防止に努めたことで収益面に対して一定の効果が得られました。引き続き品質管理に注力しながら更なる生産性向上と収益面の改善に努めて参ります。また、ソフトウエア業界の明るい見通しの一方で懸念されているのがIT人材の不足であります。労働集約型の産業であるソフトウエア業にとって人材の確保は不可欠であり、当社では人材を資本と捉え、成長分野への人材シフトや事業環境の変化・新しい技術の流れへの対応を目的とした開発者のリスキリング等、教育投資を強化して参ります。また、教育投資と併せて、人材確保のための新卒・経験者採用やM&Aに対する投資を引き続き強化して参ります。
当社はソフトウエア開発事業の単一セグメントであるため、当社事業区分別の業績について、以下に記載します。
<組込み関連事業>
事業環境は引き続き堅調に推移しておりますが、成長分野への人材シフトや中長期的な業績拡大を目的とした開発者のリスキリング実施の影響により組込み関連事業の売上高は、2,621,875千円(前期比1.8%増)となりました。
<製造・流通及び業務システム関連事業>
国内の製造・流通業における設備投資や関連する製造関連業務システム開発は、引き続きメーカーを中心とした積極投資により堅調な状況を維持し、製造・流通及び業務システム関連事業の売上高は、3,966,773千円(前期比7.8%増)となりました。
<金融・公共関連事業>
公共関連開発に係る受注及び売上はコロナ禍においても堅調を維持し、受注・開発体制も適切に対応できた結果、金融・公共関連事業の売上高は、1,129,844千円(前期比7.9%増)となりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は7,718,492千円(前期比5.7%増)、営業利益は864,292千円(前期比28.4%増)、経常利益は863,169千円(前期比31.1%増)、当期純利益は623,762千円(前期比40.9%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ406,207千円減少し、1,475,549千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果獲得した資金は、12,716千円(前事業年度は1,226,824千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益が863,169千円あった一方で、売上債権及び契約資産の増加額が378,881千円、法人税等の支払額が398,132千円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果使用した資金は、33,534千円(前事業年度は74,050千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が11,931千円、無形固定資産の取得による支出が19,015千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果使用した資金は、385,389千円(前事業年度は564,027千円の支出)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出が335,592千円、配当金の支払額が75,854千円あったことによるものであります。
③生産・受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、ソフトウエア開発事業の単一セグメントでありますので、セグメント別の記載に代えて、当社事業戦略上の事業区分別に記載しております。
事業区分
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比(%)
組込み関連事業(千円)
2,019,964
98.3
製造・流通及び業務システム関連事業(千円)
2,862,176
110.0
金融・公共関連事業(千円)
868,704
94.9
合計(千円)
5,750,844
103.2
(注)上記の金額は製造原価によっております。
b.受注実績
当社は、ソフトウエア開発事業の単一セグメントでありますので、セグメント別の記載に代えて、当社事業戦略上の事業区分別に記載しております。
当事業年度(自 2022年6月1日 至 2023年5月31日)
事業区分
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
組込み関連事業
2,656,388
107.3
424,979
117.8
製造・流通及び
業務システム関連事業
4,308,845
118.2
1,193,667
133.7
金融・公共関連事業
1,154,955
108.2
221,381
106.2
合計
8,120,189
113.0
1,840,028
125.9
(注)上記の金額は、「収益認識に関する会計基準」等によらず、ソフトウエア開発又はソフトウエア開発に係る役務提供が完了した時点での金額を記載しております。
c.販売実績
当社は、ソフトウエア開発事業の単一セグメントでありますので、セグメント別の記載に代えて、当社事業戦略上の事業区分別に記載しております。
事業区分
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比
(%)
組込み関連事業(千円)
2,621,875
101.8
製造・流通及び業務システム関連事業(千円)
3,966,773
107.8
金融・公共関連事業(千円)
1,129,844
107.9
合計(千円)
7,718,492
105.7
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先
前事業年度
(自 2021年6月1日
至 2022年5月31日)
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
株式会社ネクスティエレクトロニクス
857,058
11.7
280,002
3.6
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、経営者により、一定の会計基準の範囲内で、かつ合理的と考えられる見積りが行われている部分があり、資産・負債、収益・費用の金額に反映されております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
なお、財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載の通りであります。
②当事業年度の経営成績の分析
「(1)経営成績等の状況の概況 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載の通りであります。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクにつきましては、「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
a.資金需要
当社の主な資金需要は、運転資金、借入の返済及び利息の支払い、並びに法人税の支払等であります。
b.資金の源泉
当社は、必要な資金を主として営業活動によるキャッシュ・フローである自己資金により充当し、負債と資本のバランスに配慮しつつ必要に応じて金融機関からの借入を実施しております。
c.キャッシュ・フロー
「(1)経営成績等の状況の概況②キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
当社の事業活動により生じた利益につきましては、手元資金、成長投資、株主還元の順に優先順位を置きながら当社の事業環境や成長ステージを考慮しつつバランスよく運用・活用して参ります。当社事業の運営及び維持拡大に必要な運転資金となる手元資金と研究開発や設備に必要な成長投資につきましては、原則的に営業キャッシュ・フローの範囲で賄っておりますが、資金需要の季節性に配慮し金融機関からの借入も併せて対応しております。
なお、事業拠点の取得等の高額な設備投資やM&A等の資金につきましては、内部留保に加え増資や金融機関からの借入等により賄って参ります。
株主還元につきましては、手元資金、成長投資を優先させた上で配当性向の目標を20~30%とし、安定的な株主還元に努めて参ります。
⑤経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社事業におきましては、事業の効率性・収益性が売上高営業利益率と非常に強い関係があることから、売上高営業利益率を重要な経営指標としております。2023年5月期の売上高営業利益率は11.2%であり、2022年5月期の9.2%に比べ2.0ポイント増加しました。また、株主価値の最大化のため強固な財務体質の維持に注力することとし、自己資本当期純利益率(ROE)を重要な経営指標としておりますが、2023年5月期の自己資本当期純利益率は14.2%であり、2022年5月期の11.3%に比べ2.9ポイント増加しました。
主な理由として、国内の製造・流通業における積極投資により、当社の製造・流通及び業務システム関連事業を中心に稼働率が上ったこと、また全社的な取り組みとして進めてきた品質管理手法の進化と品質管理体制の強化の効果として、2023年5月期はトラブルや不採算案件が少ないことが収益性に影響したと考えております。
⑥当事業年度末の財政状態の分析
(資産)
当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べ25,246千円減少の7,786,201千円となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が236,925千円増加、電子記録債権が141,956千円増加した一方、現金及び預金が406,207千円減少したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べ639,737千円減少の3,089,276千円となりました。これは主に、未払法人税等が148,889千円減少、その他に含めて表示している未払消費税等が249,996千円減少、長期借入金が308,743千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ614,491千円増加の4,696,924千円となりました。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が623,762千円増加、その他有価証券評価差額金が49,076千円増加した一方、配当金の支払いにより利益剰余金が75,907千円減少したことによるものであります。
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