【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当事業年度(2022年3月1日~2023年2月28日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした行動制限が緩和され、経済活動の正常化が進む一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を背景とした資源価格及びエネルギー価格の高騰、円安の進行等による物価上昇により、景気の先行きが不透明な状況が続いております。このような状況の下、当社は従来にないメカニズムに基づく独自の医薬品を開発して上市につなげることを目指し、以下のとおりに事業活動を進めてまいりました。
a.TMS-007関連の活動
2021年5月にBiogen MA Inc.(以下「バイオジェン社」という。)へ導出した急性期脳梗塞を適応症とするTMS-007(BIIB131)は、バイオジェン社において2023年上半期に後期第Ⅱ相臨床試験を開始する計画にて開発が進められ、当社は側面的支援を継続いたしました。なお、2023年3月10日付にて米国の臨床試験データベースclinicaltrials.govへ試験の詳細が登録及び公開されましたが、バイオジェン社は、2023年4月25日の2023年第1四半期決算発表において、TMS-007(BIIB131)の後期第Ⅱ相臨床試験の開始を一時停止し、当該臨床試験を開始すべきかどうかを再評価すると発表しました(Q1 2023 Biogen Earnings Presentation)。また、2023年4月26日には、ClinicalTrials.govの登録情報が更新され、当該試験の予想開始時期は、2023年8月21日とされております。
b.TMS-008関連の活動
急性腎障害及びがん悪液質を適応症と想定し開発を進めているTMS-008については、第Ⅰ相臨床試験に向けたCMC(Chemistry, Manufacturing, and Control)面における検討を進めました。当事業年度において、製剤の最適化に関する予備検討を含む、GLP(Good Laboratory Practice)毒性試験を開始いたしました。並行して、臨床試験の開始に向けた実施計画の策定や体制の整備に着手しました。また、新たな適応症候補についても継続的に検討を行いました。
TMS-009はTMS-008のバックアップとしての位置づけであり、当事業年度における特段の活動はございません。
c.パイプラインの拡充に関する活動
当事業年度において、当社はパイプラインの拡充を図るための活動を積極的に推進いたしました。
当社がこれまでSMTP化合物(TMS-007及びTMS-008)の研究開発によって培った可溶性エポキシドハイドロラーゼ(sEH)阻害に関する知識と経験を活かし、AIを活用した化合物生成による創薬の最適化や天然物ライブラリーのスクリーニングを含む複数のアプローチを活用し、新たなsEH阻害剤の候補となる化合物の探索を進めました。加えて、アカデミアや研究機関、創薬企業等の早期研究段階のシーズから広範な探索を行い、複数の候補について絞り込んだ評価を行いました。
以上の活動の結果、当事業年度における営業費用は、TMS-008の開発費を主とする研究開発費として297,895千円、その他販売費及び一般管理費として222,254千円となったことから、合計で520,149千円となりました。これらの結果、当事業年度における営業損失は520,149千円(前事業年度は1,135,635千円の営業利益)、経常損失は株式公開費用として328,186千円を計上したこと等により861,471千円(前事業年度は1,079,304千円の経常利益)、当期純損失は860,925千円(前事業年度は1,076,859千円の当期純利益)となりました。
なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績については記載を省
略しております。
② 財政状態の概況
(資産)
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ1,050,433千円増加し、3,790,215千円となりました。
これは主に、営業費用及び株式公開費用等の支出の一方で新株発行に伴う払込があったことにより、現金及び預金が986,664千円増加したこと、及び各種試験実施のための前渡金が80,644千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ210,618千円減少し、76,161千円となりました。
これは主に、支払ロイヤリティ等の支出により未払金が140,264千円、株式公開費用の支出により未払費用が91,575千円それぞれ減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ1,261,052千円増加し、3,714,053千円となりました。
これは、当期純損失860,925千円を計上したことに伴い利益剰余金が減少する一方で、新株発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ1,060,988千円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度におきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、TMS-008の開発をはじめとする研究開発投資を積極的に行ったことで、税引前当期純損失を861,471千円計上したこと等により688,423千円の支出(前期は1,261,786千円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、重要な設備投資は行っておりませんが、有形固定資産等の取得による支出により13,721千円の支出(前期は16,958千円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、株式の発行による収入2,103,379千円があった一方、株式公開費用の支出が420,569千円あったことにより1,688,809千円の収入(前期は246,482千円の収入)となりました。
これらの結果、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ986,664千円増加し、3,584,667千円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c.販売実績
当事業年度の販売実績はありません。
なお、最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自
2021年3月1日
至
2022年2月28日)
当事業年度
(自
2022年3月1日
至
2023年2月28日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
バイオジェン社
1,946,520
100.0
-
-
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態に関する認識及び分析
当事業年度末における資産合計は3,790,215千円(前事業年度末比38.3%増)となりました。前事業年度末からの主な変動要因は、営業費用及び株式公開費用等の支出の一方で新株発行に伴う払込があったことにより、現金及び預金が986,664千円増加したこと、及び各種試験実施のための前渡金が80,644千円増加したことによるものであります。
また、負債合計は76,161千円(同73.4%減)、純資産合計は3,714,053千円(同51.4%増)となりました。前事業年度末からの主な変動要因は、支払ロイヤリティ等及び株式公開費用の支出による未払金及び未払費用の減少、当期純損失を計上したことに伴い利益剰余金が減少する一方で、新株発行による資本金及び資本準備金の増加による純資産の増加であります。
b.経営成績に関する認識及び分析
・営業収益、営業費用、営業損益
当事業年度の営業費用は、TMS-008の開発費用をはじめとする研究開発費として297,895千円、その他販売費及び一般管理費として222,254千円となったことから、合計で520,149千円(前事業年度比35.9%減)となりました。その結果、営業損失は520,149千円(前事業年度は営業利益1,135,635千円)となりました。
・営業外収益、営業外費用、経常損益
営業外損益は、主に、株式公開費用の計上により、営業外費用は341,413千円(同258.8%増)となりました。その結果、経常損失は861,471千円(前事業年度は経常利益1,079,304千円)となりました。
・特別損益、法人税等、当期純損益
当期純損失は860,925千円(前事業年度は当期純利益1,076,859千円)となりました。
c.財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因
当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は増資により資金調達しております。
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、創薬等のコンセプトやシーズの研究費及びパイプラインの製品化に向けた開発費及び会社運営のための管理費用について資金需要を有しております。当社は、第三者割当増資により調達を行った手許資金により事業用費用に充当してまいりましたが、2021年5月にバイオジェン社のオプション権行使による営業収益、及び2022年11月の株式上場にあたり実施した資金調達により、現状の現金水準は、当面の事業に問題のない水準となっており、流動性に支障はないものと考えております。
③ 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に見積り、計上しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
④ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。