【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間(2023年3月1日から2023年5月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の位置づけが季節性インフルエンザと同等の5類へ移行したことや半導体を中心とした供給体制が次第に整ってきたことなどを受け社会経済活動の正常化が進み、個人消費・企業業績ともに緩やかな回復傾向が見られました。一方で、資源・エネルギー・原材料価格の高騰は一服したものの、金融市場における日米欧の金融政策の方向性の違いから再び円安が進行し、高水準の物価高が継続するなど、景気の先行きは極めて不透明な状況のまま推移いたしました。
当社グループの主要な事業領域である食品スーパーマーケット業界におきましても、広範囲にわたる商品・サービスの値上げと共に実質賃金の低下傾向が続く中、お客様の節約志向・低価格志向が一段と強まっており、電気料金の高騰を始めとする事業運営コストが軒並み増加するなど、極めて厳しい経営環境が続いてまいりました。
このような状況の下、当社は「価値変容の時 インフレに挑戦 新価格体系の移行で幸福な生活を創出す。」を年頭方針として掲げ、昨年から続く商品・サービスの値上げによる物価上昇や卵などの一部商品が供給不足となる中、お客様の日常消費に対する意識やニーズの変容に加え、事業運営に係る各種コストの増加にも対応するため、様々な施策を実施してまいりました。
営業面につきましては、特に物価高対策として、当社グループのプライベートブランド商品と位置付けている「CGC商品」の販売を強化すると共に、従来以上に㈱シジシージャパンと連携し、新商品の開発や産地開発における原材料調達まで踏み込んだアプローチのほか、積載率向上による物流効率化や容器・包装資材の削減などにも取り組んでまいりました。また、カテゴリーマネジメント(※1)による商品構成の見直しを従来の取り扱い品目に加え、米菓・農産乾物に拡大し、取り組みを更に強化しております。加えて、商品調達プロジェクトが中心となり、販売・仕入・在庫に係る新基幹システムの利活用を一段階引き上げグループ全体の業務効率改善に取り組んだほか、ひなまつりやホワイトデーなどの季節催事の売れ筋商品に関するグループ横断の比較分析を実施し、グループシナジーの追求によるMD(※2)強化も進めてまいりました。更に、新日本スーパーマーケット同盟(※3)における取り組みとして、同盟各社における展開エリアのご当地食材を使用した「塩こうじレモンぽん酢」等の商品開発や消耗資材の共同調達等も引き続き実施してまいりました。
㈱ラルズが運営する「アークスオンラインショップ」につきましては、配送拠点を4店舗から6店舗に増強し配送地域を拡大するとともに、介護施設・幼稚園等の法人取引も拡大してまいりました。本年6月からは会員ステージ制度(※4)を取り入れるなど、更なるサービスの拡充にも取り組んでおります。また、㈱ベルジョイスにおいて本年6月より「アークスオンラインショップ」を開始し、お客様からご好評をいただいております。今後、当社グループ各社へ「アークスオンラインショップ」の更なる横展開を検討してまいります。
販売費及び一般管理費(以下、販管費)につきましては、エネルギー価格の高騰に対応するため、引き続きエネルギー監視システムの利活用や、冷凍ケースのリーチイン化を進めたほか、グループ横断の取り組みとして店舗運営情報共有会において飲料の常温販売や適切な照度での照明管理といった好事例の共有・横展開を進めております。また、給与明細の電子化や、DX推進委員会におけるRPA(※5)プロジェクトの推進による作業時間の削減等、生産性向上及びコスト削減に資する業務改善を実現してまいりました。
サステナビリティ推進活動につきましては、本年4月に「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示」として、気候変動関連リスク及び機会等の各項目について対外公表いたしました。また、当社グループの持続的な成長及び中長期的な経済価値、社会価値の創造に向けた取り組みなどを記載した「アークス統合報告書~地域のライフラインとして」を本年6月に発行いたしました。そのほか、人的資本形成に向けた当社の考え方・ビジョンを明示すべく人材育成方針及び社内環境整備方針を公表したほか、㈱ラルズ、㈱ベルジョイス、㈱福原、㈱東光ストア、㈱道南ラルズ、㈱伊藤チェーンにおけるフードドライブ(※6)の取り組みを推進するなど、サステナビリティ活動の充実を図っております。
店舗展開につきましては、新規出店として、本年4月に北海道歌志内市に「Da*marche歌志内店」(㈱道北アークス)を開店いたしました。歌志内市は人口減少・少子高齢化の進行が全国トップレベルで著しい地域ではありますが、歌志内市とも連携した中でオープンいたしました。加えて、盛岡市の「ジョイス盛岡西バイパス店」(㈱ベルジョイス)を改装し、東北地域で5店舗目のスーパーアークス業態となる「スーパーアークス盛岡西バイパス店」として改装オープンいたしました。
また、当社及び㈱ベルジョイスは、岩手県内陸及び沿岸部でスーパーマーケット4店舗を展開する㈱みずかみと、同社が創業以来築き上げてきた営業基盤と企業体質を強化し、地域経済に更に貢献していくことを目的に、経営統合へ向けた検討・協議を進めていくことについて本年5月に基本合意書を締結いたしました。現在、最終確定契約締結に向けた作業・手続きを進めております。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間における売上高は1,429億円(対前年同期比3.3%増)、営業利益39億82百万円(対前年同期比3.5%増)、経常利益44億55百万円(対前年同期比5.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は30億8百万円(対前年同期比4.7%増)となりました。物価上昇に伴い既存店の1点単価は対前年同期比6.1%の上昇となった一方、1人当り買上点数が同3.8%減少した結果、客単価は対前年同期比2.0%増となりました。買い控え傾向の中でも既存店客数は対前年同期比で0.8%の増加となり、既存店売上高は同2.8%増と堅調に推移いたしました。電気料金を中心とした販管費額の増加により売上高販管費率は対前年同期比0.4ポイント上昇して22.5%となりましたが、売上高の堅調な推移や商品構成及び特売内容の見直し等により売上総利益率が対前年同期比0.4ポイント上昇の25.3%となったことから、増収増益での着地となりました。
なお、対予算比においては、売上高は予算比99.9%、売上総利益は同99.8%とほぼ予算線上の水準を確保した一方、省エネ関連投資や節電の推進に加え、生産性向上の取り組み等により販管費の上昇を抑制したことから、経常利益は予算比117.3%、親会社株主に帰属する四半期純利益は予算比117.5%と予算を上回る利益水準を確保しております。
(※1)自社の戦略や目標に基づいて商品カテゴリーを設定し、同カテゴリーを管理単位として、利益の最大化を図る手法のことです。カテゴリーの定義や役割を決め、商品構成・販売計画・価格・販促などの計画を立て、結果を検証します。
(※2)マーチャンダイジングの略で、自社の商品やサービスをお客様に販売するにあたり、その販売方法や価格を戦略的に設定するための活動や計画、管理のことです。
(※3)㈱バローホールディングス(本社:岐阜県)、㈱リテールパートナーズ(本社:山口県)、当社の3社により、2018年12月に資本業務提携契約を締結した地域密着型の独立系食品流通企業の連合体です。
(※4)㈱ラルズが運営するアークスオンラインショップにおいて、毎月の購入金額に応じて「ゴールド」「ダイヤモンド」「プラチナ」の会員ランクを付与し、ランクに応じてクーポンや抽選券の発行を行う制度です。
(※5)ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略で、作成したシナリオに基づいて動作するロボットにより、主にルーチン業務を自動化する仕組みです。
(※6)賞味期限内でまだ食べられるにもかかわらず、ご家庭で眠っている・買い過ぎてしまった食料品などを、食品を必要としている地域のフードバンク等の生活困窮者支援団体、子ども食堂、福祉施設等に寄付する活動のことです。
(2) 財政状態の状況
(資産)
当第1四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して、34億11百万円増加し、2,695億66百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金が8億26百万円、棚卸資産が7億62百万円、土地が20億74百万円及び投資有価証券が7億34百万円増加した一方で、未収入金が10億89百万円減少したことなどによるものです。
(負債)
当第1四半期連結会計期間末の負債合計は、前連結会計年度末と比較して、22億48百万円増加し、967億17百万円となりました。この主な要因は、買掛金が38億73百万円、未払費用が8億28百万円、未払消費税等が7億23百万円及び賞与引当金が7億45百万円増加した一方で、短期借入金が8億85百万円、未払金が8億69百万円、未払法人税等が14億91百万円及び長期借入金が9億1百万円減少したことなどによるものです。
(純資産)
当第1四半期連結会計期間末の純資産合計は、前連結会計年度末と比較して、11億63百万円増加し、1,728億49百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が13億29百万円、その他有価証券評価差額金が4億90百万円増加した一方で、自己株式が6億86百万円増加したことなどによるものです。
この結果、当第1四半期連結会計期間末の自己資本比率は、前連結会計年度末より0.4ポイント減少し64.1%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比較して、8億26百万円増加し、734億20百万円(対前年同期末比24億15百万円の増加)となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、86億34百万円(対前年同期比11.9%減)となりました。これは主に、税金等調整前四半期純利益44億53百万円、減価償却費23億61百万円、賞与引当金の増加額7億45百万円、売上債権の増加額6億20百万円、棚卸資産の増加額7億62百万円、仕入債務の増加額38億73百万円、未払消費税等の増加額7億23百万円及び法人税等の支払額27億12百万円などによるものです。また、得られた資金が減少した要因は、法人税等の支払額が増加したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、33億5百万円(対前年同期比109.3%増)となりました。これは主に、新規出店や店舗改装等に伴う有形固定資産の取得による支出32億円などによるものです。また、使用した資金が増加した要因は、新規出店や店舗改装の他、借地の自社所有化及び賃貸用不動産の取得に伴う有形固定資産の取得による支出が増加したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、45億2百万円(対前年同期比32.9%増)となりました。これは主に、短期借入金の純減少額5億円、長期借入金の返済による支出12億86百万円、自己株式の取得による支出6億87百万円及び配当金の支払額16億23百万円などによるものです。また、使用した資金が増加した要因は、短期借入金の純減少額が増加したこと及び前年同期において長期借入れによる収入があったことなどによるものです。
(4) 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(5) 経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(7) 財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第1四半期連結累計期間において、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について重要な変更はありません。
(8) 研究開発活動
該当事項はありません。