【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に対する行動制限の緩和や外国人観光客の受入れ再開等により、景気は緩やかに持ち直しの動きがみられたものの、ロシアのウクライナへの侵攻の長期化や、円安の進行に伴う物価上昇等により、景気の先行きは不透明な状況で推移いたしました。 情報サービス産業界においては、デジタルトランスフォーメーション(DX)(注1)の進展とともに、人工知能(AI)やチャットボット(注2)等の技術革新によってコミュニケーションの未来像が描かれ、当社の事業領域である公共システムの分野、とりわけ防災や市民の安全にかかわる社会課題を解決するテクノロジーに対して官民の共創の取り組みが推進され、新たな市場形成の動きが広がっております。このような環境において、当社は、2022年度中期経営計画の最重点施策である「Gov-tech(注3)市場の深耕」を推進する一方で、ストレッチ目標の達成に向けて「社会課題解決サービスの創出」や「M&A・事業提携によるシナジー創出」に取り組むとともに、これらの達成を支える人材基盤の強化に注力しております。当事業年度においては、警察・消防・自治体防災・社会インフラ保全の課題解決を実現するシステムの導入拡大が進みました。なかでも、主力の「NET119緊急通報システム」は株式会社両備システムズからの顧客の引き継ぎが進み、導入消防の管轄人口カバー率(導入消防の管轄人口の合計が日本の総人口に占める割合)が7割を超え、「Live119(映像通報システム)」は東京消防庁や福岡市等の主要都市で本運用が始まるなど、今後の導入拡大に弾みがついております。そのほか、映像通報の技術を応用した「Live-X(映像通話システム)」や災害対策本部での情報収集を支援する「DMaCS(災害情報共有サービス)」、自治体や警察が防災・防犯情報を配信するスマートフォンアプリ等は、防災やライフラインの安定供給といった分野の課題の解決に有用なサービスとして紹介され、新規案件の受託に繋がりました。以上の結果、当事業年度の売上高につきましては、各種クラウドサービス・アプリの契約数が積み上がり、ストック型の利用料収入が順調に増加するとともに、クラウドサービスの初期構築やオンプレミス(注4)環境でのシステム開発等に係る受託開発も順調に推移したことにより、1,368,390千円(前事業年度比12.0%増)となりました。利益面では、売上高の増加が人件費等の売上原価・販売費及び一般管理費の増加を上回ったことにより、営業利益443,258千円(前事業年度比10.7%増)、経常利益451,049千円(前事業年度比11.6%増)、当期純利益321,058千円(前事業年度比13.2%増)となりました。(注1)デジタルトランスフォーメーション(DX):データとデジタル技術を活用し、ユーザーや社会のニーズをもとに、製品・サービス、ビジネスモデルや業務プロセス等を変革すること(注2)チャットボット(chatbot):チャット(インターネット上での双方向での文字のやり取りによりリアルタイムなコミュニケーションを行う仕組み)とボット(ロボット)を組み合わせた言葉で、人工知能を活用した自動会話プログラムのこと(注3)Gov-tech(ガブテック):既存の産業とテクノロジーを組み合わせることでイノベーションを起こす動きをさすxTech(クロステック)のひとつであり、政府(Government)が積極的に新しい技術(Technology)をとりいれ、公的サービスをテクノロジーの力でより良いものにする取り組み(注4)オンプレミス:情報システムの利用に必要となるサーバー等の機器をユーザーの管理下に設置する運用形態
なお、当社は情報サービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しておりますが、品目別の売上構成比は、クラウド利用料が52.2%(前事業年度は50.3%)、受託開発が41.3%(前事業年度は42.4%)、ライセンス販売が5.0%(前事業年度は6.1%)、商品売上が1.5%(前事業年度は1.2%)となっており、品目別の実績は次のとおりであります。
(クラウド利用料)「NET119緊急通報システム」・「Live119(映像通報システム)」・「DMaCS(災害情報共有サービス)」のほか、行政・警察向けスマートフォンアプリ等の顧客獲得が順調に進み、既存契約の継続に加えて、新規顧客の獲得により契約数が積み上がったため、713,721千円(前事業年度比16.1%増)となりました。
(受託開発)地理情報関連システムの受託開発の売上及びクラウドサービスの初期構築や機能追加に係る売上がともに増加したため、売上高は565,358千円(前事業年度比9.1%増)となりました。
(ライセンス販売)既存顧客から継続して防災関連等のシステム用のライセンスの受注がありましたが、新規受注が減少傾向にあり、売上高は68,436千円(前事業年度比8.9%減)となりました。
(商品売上)受託開発に伴うデジタル地図等の納品を行うとともに、新規自治体案件の販売があったため、20,873千円(前事業年度比48.6%増)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)当事業年度末の総資産は2,495,562千円となり、前事業年度末と比較して127,551千円増加いたしました。これは主に、売掛金が9,718千円、投資有価証券が401,690千円それぞれ増加した一方で、現金及び預金が212,634千円、有価証券が72,602千円それぞれ減少したことによるものであります。
(負債)当事業年度末の負債は269,316千円となり、前事業年度末と比較して40,050千円増加いたしました。これは主に、前受収益が18,807千円、長期前受収益が34,304千円それぞれ増加した一方で、買掛金が9,308千円減少したことによるものであります。
(純資産)当事業年度末の純資産は2,226,246千円となり、前事業年度末と比較して87,501千円増加いたしました。これは主に、譲渡制限付株式の付与等により資本剰余金が8,749千円、当期純利益の計上により利益剰余金が321,058千円それぞれ増加した一方で、配当金の支払いにより利益剰余金が44,856千円減少し、自己株式の取得等により自己株式が199,358千円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、投資活動によるキャッシュ・フローが58,831千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが244,497千円の支出となったものの、営業活動によるキャッシュ・フローが365,694千円の獲得となったため、前事業年度に比べ62,365千円増加し、当事業年度末には793,011千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)当事業年度において営業活動の結果獲得した資金は、365,694千円(前事業年度比108,623千円増)となりました。これは主に、税引前当期純利益が451,049千円、前受収益の増加額が53,111千円あった一方で、法人税等の支払額が130,645千円あったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)当事業年度において投資活動の結果支出した資金は、58,831千円(前事業年度比43,836千円減)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入が1,110,000千円、有価証券の償還による収入が72,500千円あった一方で、定期預金の預入による支出が835,000千円、投資有価証券の取得による支出が399,381千円、無形固定資産の取得による支出が4,704千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)当事業年度において財務活動の結果支出した資金は、244,497千円(前事業年度比206,126千円増)となりました。これは、自己株式の取得による支出が199,913千円、配当金の支払による支出が44,583千円あったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の状況当社は、情報サービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。
(生産実績)当事業年度の生産実績は次のとおりであります。
品目
当事業年度(自 2022年6月1日至 2023年5月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
受託開発
548,716
101.9
合計
548,716
101.9
(注) 金額は、販売価格によっております。
(受注状況)当事業年度の受注状況は次のとおりであります。
品目
当事業年度(自 2022年6月1日至 2023年5月31日)
受注高
受注残高
金額(千円)
前年同期比(%)
金額(千円)
前年同期比(%)
受託開発
606,893
103.5
233,858
121.6
合計
606,893
103.5
233,858
121.6
(注) 金額は、販売価格によっております。
(販売実績)当事業年度の販売実績を品目別に示すと次のとおりであります。
品目
当事業年度(自 2022年6月1日至 2023年5月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
クラウド利用料
713,721
116.1
受託開発
565,358
109.1
ライセンス販売
68,436
91.1
商品売上
20,873
148.6
合計
1,368,390
112.0
(注) 前事業年度及び当事業年度の主な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。当社経営陣は、財務諸表の作成に際して、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積り及び仮定設定を行う必要があります。経営陣は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
② 当事業年度の経営成績の分析
(売上高)当事業年度の売上高につきましては、各種クラウドサービス・アプリの契約数が積み上がり、ストック型の利用料収入が順調に増加するとともに、クラウドサービスの初期構築やオンプレミス環境でのシステム開発等に係る受託開発も順調に推移したことにより、1,368,390千円(前事業年度比12.0%増)となりました。各品目の実績は次のとおりであります。
a.クラウド利用料「NET119緊急通報システム」・「Live119(映像通報システム)」・「DMaCS(災害情報共有サービス)」のほか、行政・警察向けスマートフォンアプリ等の顧客獲得が順調に進み、既存契約の継続に加えて、新規顧客の獲得により契約数が積み上がったため、713,721千円(前事業年度比16.1%増)となりました。
b.受託開発地理情報関連システムの受託開発の売上及びクラウドサービスの初期構築や機能追加に係る売上がともに増加したため、売上高は565,358千円(前事業年度比9.1%増)となりました。
c.ライセンス販売既存顧客から継続して防災関連等のシステム用のライセンスの受注がありましたが、新規受注が減少傾向にあり、売上高は68,436千円(前事業年度比8.9%減)となりました。
d.商品売上受託開発に伴うデジタル地図等の納品を行うとともに、新規自治体案件の販売があったため、20,873千円(前事業年度比48.6%増)となりました。
(売上原価、販売費及び一般管理費)売上原価は、地図等の仕入や外注費等の増加の他、人件費の増加及び新型コロナウイルス感染症に伴う一時的な支払手数料の増加により、479,754千円(前事業年度比76,479千円増)となりました。 売上総利益は、売上高が増加したものの、売上原価が増加したことに伴い、売上高総利益率が2.1ポイント減少し、888,636千円(前事業年度比69,833千円増)となりました。販売費及び一般管理費は、主に人件費の増加及びNET119の移行に伴う支払手数料の増加により、445,377千円(前事業年度比27,169千円増)となりました。
(営業利益)営業利益は、売上高が増加したものの、売上原価及び販売費及び一般管理費が増加したことに伴い、営業利益率が0.4ポイント減少し、443,258千円(前事業年度比42,663千円増)となりました。
(営業外収益)営業外収益は、有価証券利息、補助金収入及び助成金収入等により7,790千円(前事業年度比4,311千円増)となりました。
(経常利益)経常利益は451,049千円(前事業年度比46,975千円増)となりました。
(当期純利益)当期純利益は、321,058千円(前事業年度比37,557千円増)となりました。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について当社は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、市場動向による影響等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しており、これらのリスクの発生を抑え、影響を最小限に抑えるよう適切に対応する所存であります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
(流動性と資金の源泉)当社の所要資金は、主にソフトウエアの製造・販売を行うための投資及び経常の運転資金であり、これらについてはすべて自己資金により対応しております。当社の当事業年度末の自己資本比率は89.2%であり、充分な流動性を確保しております。翌事業年度においては、特記すべき設備投資計画は無く、経常の運転資金については自己資金で賄う予定であります。
(財政状態の分析)当事業年度における財政状態の状況につきましては、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」をご参照ください。
(キャッシュ・フローの分析)資金需要を満たすための資金は、原則として、営業活動によるキャッシュ・フローを財源としております。なお、当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑤ 経営者の経営状況に関する認識及び分析・検討内容当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するように努めております。当社が属する情報サービス産業においては、デジタル庁創設が後押しとなり、デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む自治体や企業が増加し、需要が拡大するものと思われます。また、技術面では、AI、5G等の技術革新により既存の事業環境が激変する可能性があり、ビジネスチャンスが生じる一方で、収益構造の変化や顧客要望の多様化・高度化への対応が求められております。また、デジタル化推進の高まりを受け、IT技術者は慢性的に不足しており、人材の確保と育成が課題となっております。このような環境下において、当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載した各課題への対応を実施することにより、さらなる売上の増大と収益力の向上を目指します。
#C2303JP #ドーン #情報通信業セクター