【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループでは、事業セグメントを「IoT関連事業」「環境エネルギー事業」「インダストリー4.0推進事業」に分けて活動を行っており、各事業セグメントの事業環境は下記のとおりであります。
IoT関連事業セグメントでは、イメージセンサの生産工程における品質検査で使用する検査用光源装置及び瞳モジュールを、主にハイエンドなイメージセンサを生産しているメーカー向けに製造・販売しております。
現在、イメージセンサ市場におけるイメージセンサメーカーは十数社程であり、その内日本と韓国のメーカーが6割以上のシェアを占めております。各イメージセンサメーカーの動向から、今後もイメージセンサ市場は引き続き拡大していくものと予測しております。
また、現状ではイメージセンサの用途の約6割~7割がスマートフォン向けであることから、イメージセンサの市況はスマートフォンの製造、販売状況に左右される傾向があります。現在、スマートフォンの市況については、新型コロナウイルス感染症拡大による買い替えサイクルの鈍化に伴い、スマートフォンの需要が停滞傾向にあります。更には一部地域のロックダウン等によって発生した、半導体を含む部材不足の状況も完全には回復していないため、スマートフォンの生産台数及び出荷台数に影響が出ております。サプライチェーンの状況が正常化することによって市況は回復すると推測しているため、スマートフォンの需要の停滞は一時的であると予測しておりますが、今後の市場動向を引き続き注視していく必要があると考えております。
近年では、スマートフォン1台に搭載されるイメージセンサ(カメラ)の数が増加しており、その様な複数個のイメージセンサ(カメラ)を搭載したスマートフォンが普及していること等から、イメージセンサメーカーによる設備投資は今後も必要になると予測しております。また、スマートフォンに搭載されるイメージセンサ(カメラ)の高付加価値化が進んでおり、大判化等のハイエンドなイメージセンサが使用される割合も増加傾向にあります。それに伴い、技術トレンドに合わせた新たな検査用光源装置及び瞳モジュールの需要も発生しております。
現在、イメージセンサの短期的な需要は写真や動画を撮影するために可視光を捉える従来型のイメージング向けデバイスがメインとなっております。
中期的な需要としては、イメージングからセンシングにトレンドが変わると予測しており、特に自動車の自動運転に不可欠な3次元情報測定用の車載向けイメージセンサ等の需要が高まっていくと予測しております。
具体的なデバイスとしては、物体との距離等の3次元情報を取得することを目的としたToF(Time of Flight)センサやLiDAR(Light Detection And Ranging)センサ用イメージセンサを想定しております。これらのデバイスは、スマートフォンへの採用も本格化しており、今後様々なアプリケーションが開発されることで需要が更に増加すると予測しております。
長期的には、イメージセンサの技術向上やセンシング分野の発展及び5G関連のインフラ構築等に伴い更なる用途の拡大を想定しており、産業分野(マシンビジョン、監視カメラ、ドローン等)への応用や、イメージセンサが搭載されたIoTデバイスの普及等によって、従来とは異なる新たな需要が発生すると推測しております。
環境エネルギー事業セグメントでは、大量印刷を行うための輪転機(業務用印刷機)と一緒に使用する乾燥脱臭装置や、工場向けの排ガス処理装置を製造・販売しております。
印刷機業界は、ITの普及により新規の設備投資は縮小しているものの、輪転機の経年劣化による買換えが毎年一定数発生するほか、定期的なメンテナンス需要が存在しております。また、競合他社がほぼ存在しないため、当社グループではこれらの需要を安定的に取込んでおります。現在、新規案件及び大型案件における顧客の設備投資意欲は徐々に回復傾向にあります。
インダストリー4.0推進事業セグメントでは、主にディスプレイの生産工程で支障となる振動を取り除くための除振装置を、ディスプレイメーカー向けに製造・販売しているほか、歯車が設計図どおりの形状となっているかを検査する歯車試験機を、歯車メーカー向けに製造・販売しております。その他、当社グループの新規事業として、振動ソリューション関連事業、AI画像処理関連事業、レーザー加工機関連事業についても積極的に活動を行っております。
精密除振装置の市況について、現在フラットパネル・有機ELディスプレイ業界では、海外を中心に顧客の設備投資意欲は徐々に回復の兆しがありますが、新型コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナ情勢の影響もあることから、引き続き不確定要素が存在しております。
精密除振装置分野における新規事業への取り組みについては、振動を見える化できる振動モニタリングアプリを開発し、製品化しております。また、除振だけではなく顧客の振動環境を精密に再現する加振装置についても製品化しており、除振・加振による振動のトータルソリューションによって顧客へ新たな価値を提供してまいります。
また、歯車試験機の市況については基本的に工作機械市場の状況に準じており、景気変動に左右される傾向があります。現在はアフターコロナによる設備投資の活発化に伴い、ロボット産業、自動車産業及び海外(新興国)産業を中心に事業環境は回復基調へ向かっております。
歯車試験機分野で新規事業として取り組んでいるAI画像処理関連事業については、金属製歯車の製造工程において生じた細かな傷等を画像に撮り、その画像を元に自動で不良品を判別するFA画像処理装置(歯車欠陥検査装置)を開発・製品化し、拡販活動を推進しております。歯車検査の完全自動化に向けて、AI機能の強化や歯車を検査装置までピックアップするロボットの導入も実施し、システムとして提供することで顧客から高い評価をいただいております。今後は歯車分野以外での応用を実現し、AIを活用した新たな検査装置の開発・販売を目指してまいります。
その他の新規事業であるレーザー加工機関連事業については、レーザーを用いた微細加工の分野において、半導体の製造工程に関する様々な加工への応用を視野に入れ、2021年8月より長崎大学との共同研究を開始いたしました。近年では、電力損失が発生しにくく、かつ高電圧で高速制御が可能なSiC(シリコンカーバイド)等の素材を用いた次世代パワー半導体が注目を集めております。本共同研究では、SiC等の様々な高脆性材料の効率的な加工方法について研究を行い、新たな加工装置の開発を行うことを目的としており、試作機の完成は2024年5月期までを予定しております。(なお、当該レーザー加工機関連事業は、持分法を適用していない非連結子会社である株式会社ラステックを中心に推進しております。)
1)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,076百万円増加し、12,610百万円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ285百万円増加し、2,477百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ791百万円増加し、10,132百万円となりました。
詳細につきましては、「(2) ① 2)財政状態」に記載のとおりであります。
2)経営成績
当連結会計年度の当社グループの業績は、売上高は6,856百万円(前期の売上高6,017百万円に比し、14.0%の増加)、売上高の増加等により売上総利益は3,326百万円(前期の売上総利益2,736百万円に比し、21.6%の増加)となりました。また、営業利益は1,448百万円(前期の営業利益1,130百万円に比し、28.2%の増加)、経常利益は1,503百万円(前期の経常利益1,196百万円に比し、25.6%の増加)、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は981百万円(前期の親会社株主に帰属する当期純利益761百万円に比し、28.9%の増加)となりました。
セグメント別の概況は以下のとおりであります。
(IoT関連事業)
通期における当セグメントの外部顧客に対する売上高は4,300百万円(前期の売上高3,904百万円に比し、10.1%
の増加)、セグメント利益は2,167百万円(前期のセグメント利益1,865百万円に比し、16.2%の増加)となりまし
た。これは、海外顧客向け検査用光源装置の販売が好調に推移したためであります。
(環境エネルギー事業)
通期における当セグメントの外部顧客に対する売上高は760百万円(前期の売上高665百万円に比し、14.2%の増
加)、セグメント損失は17百万円(前期のセグメント損失は0百万円)となりました。これは、製品単価の高い乾
燥脱臭装置本体及び排ガス処理装置本体の販売が好調に推移したものの、部材価格の高騰やスポット的に収益性の
低い案件が発生した影響等により、収益性が低調に推移したためであります。
(インダストリー4.0推進事業)
通期における当セグメントの外部顧客に対する売上高は1,796百万円(前期の売上高1,447百万円に比し、24.1%
の増加)、セグメント利益は135百万円(前期のセグメント損失は1百万円)となりました。これは、精密除振装置
及び歯車試験機の販売が好調に推移したためであります。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末残高に比べ112百万円増加し、6,852百万円と
なりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは438百万円の収入(前期は423百万円の収入)となりました。これは、棚卸資産の増加832百万円や法人税等の支払額378百万円があったものの、税金等調整前当期純利益1,503百万円や減価償却費131百万円の計上があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは140百万円の支出(前期は124百万円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出127百万円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは234百万円の支出(前期は832百万円の支出)となりました。これは、配当金の支払額221百万円があったこと等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年6月1日
至 2022年5月31日)
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
増減
金額(千円)
金額(千円)
金額(千円)
増減率(%)
IoT関連事業
3,942,636
3,470,801
△471,835
△12.0
環境エネルギー事業
761,801
805,981
44,180
5.8
インダストリー4.0推進事業
1,630,294
1,829,015
198,720
12.2
合計
6,334,732
6,105,798
△228,933
△3.6
(注)1.上記の金額は、販売金額によっております。
2.生産実績には、外注仕入実績を含んでおります。
2)受注実績
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年6月1日
至 2022年5月31日)
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
増減
受注高(千円)
受注残高(千円)
受注高(千円)
受注残高(千円)
受注高(千円)
受注残高(千円)
IoT関連事業
5,599,238
3,394,193
2,537,213
1,635,670
△3,062,025
△1,758,522
環境エネルギー事業
1,058,229
678,617
849,213
774,113
△209,016
95,496
インダストリー4.0推進事業
1,433,738
277,133
1,355,783
236,058
△77,954
△41,074
合計
8,091,205
4,349,943
4,742,209
2,645,842
△3,348,995
△1,704,101
(注)上記の金額には、見込み生産を行っている事業は含まれておりません。
3)販売実績
セグメントの名称
前連結会計年度
(自 2021年6月1日
至 2022年5月31日)
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
増減
金額(千円)
金額(千円)
金額(千円)
増減率(%)
IoT関連事業
3,904,770
4,300,755
395,984
10.1
環境エネルギー事業
665,403
760,109
94,706
14.2
インダストリー4.0推進事業
1,447,046
1,796,123
349,077
24.1
合計
6,017,220
6,856,988
839,768
14.0
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
なお、販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先については「-」表記にしております。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年6月1日
至 2022年5月31日)
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
TESNA Inc.(韓国)
1,046,500
17.4
1,382,000
20.2
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社
1,743,918
29.0
1,249,857
18.2
LB Semicon Inc.(韓国)
-
-
776,000
11.3
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績
当連結会計年度における当社グループの業績は、前連結会計年度比で増収増益となりました。
売上高が増加した理由は、全セグメントにおいて製品の販売が好調に推移したためであります。
営業利益が増加した理由は、主にIoT関連事業セグメント及びインダストリー4.0推進事業セグメントにおいて、収益性の高い製品の販売が好調に推移したためであります。
一方、新型コロナウイルス感染症拡大による一部地域のロックダウン等を背景とした、半導体を含む様々な部材が不足している状況は完全には回復していないため、顧客側における設備投資タイミングの調整や、納期の長期化、部材コストの高騰等が発生しております。当社グループ製品では現在のところ大規模な納期遅延及び大幅な部材コストの増加は発生しておりませんが、今後も部材の流通状況及びコスト状況については細心の注意を払ってまいります。
ロシア・ウクライナ情勢の悪化による影響については、現時点では当社グループへの影響は軽微でありますが、今後も引き続き原材料価格やエネルギー価格の高騰によるコスト高への影響を注視する必要があると考えております。
また、当社グループではROE(自己資本利益率)の向上を重要な指標の一つとしておりますが、当連結会計年度では10.1%(前期ROE8.3%)となり、前期より1.8ポイント増加いたしました。ROEが増加した主な要因として、前述のIoT関連事業セグメント及びインダストリー4.0推進事業セグメントの増収増益により、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益が増加したためであると分析しております。結果として、ES(エクイティスプレッド:ROE-株主資本コスト)は4.1%(前期ES2.0%)となりました。
来期は、主にIoT関連事業及びインダストリー4.0推進事業において収益性の高い製品の販売構成比が減少する見通しであるため減益を見込んでおります。引き続き優先的に対処すべき課題としても挙げている技術開発体制の強化、クライアントニーズへの迅速な対応、原価低減と生産効率の向上等に努め、自己資本の活用を進めてまいります。また、株主資本コストの低下に資する活動(適切な情報開示や積極的な対話等)を通して、ESの向上に努めてまいります。
2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,076百万円増加し、12,610百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,080百万円増加し、11,296百万円となりました。これは、現金及び預金
が111百万円、仕掛品が648百万円、原材料及び貯蔵品が133百万円それぞれ増加したこと等によるものでありま
す。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ3百万円減少し、1,313百万円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ285百万円増加し、2,477百万円となりました。これは、
未払法人税等が162百万円、1年内を含む社債及び借入金が60百万円それぞれ増加したこと等によるものでありま
す。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ791百万円増加し、10,132百万円となりました。これ
は、前事業年度の期末配当金221百万円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益981百万円が計上され
たこと等によるものであります。
②資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金及び設備資金につきましては、内部資金、銀行借入又は社債発行により資金調達しております。このうち、運転資金については短期借入金で、設備又は企業買収等の長期資金については長期借入金・社債等で調達しております。
2023年5月31日現在の有利子負債残高は、短期借入金340百万円、1年内を含む長期借入金523百万円となっております。
その他、積極的な事業展開に必要な資金需要に対して、安定的かつ機動的な資金調達体制を構築するため、複数の金融機関との間で合計4,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております(借入未実行残高4,000百万円)。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日現在における資産、負債並びに報告期間における収益、費用に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っております。また、その設定にあたっては、過去の実績や状況を鑑み、合理的であると考えられる種々の要因に基づいて、見積り及び判断したものであります。しかしながら、これらは当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、当連結会計年度における、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症及びロシア・ウクライナ情勢の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
当社グループで重要であると考えられる会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、以下のとおりであります。
1)固定資産の減損処理(のれんを含む)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産またはのれんを含む資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化等により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ、割引前将来キャッシュ・フローや回収可能価額の見積額が減少した場合、追加の減損処理が必要となる可能性があります。
なお、のれんについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
2)繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について繰延税金資産を計上しております。
繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ、課税所得の見積額が変動した場合、繰延税金資産が増額又は減額され、税金費用に影響を及ぼす可能性があります。
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