【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症への対策の進展及び行動制限の緩和等により徐々に経済活動の正常化が進み、緩やかな回復基調となりました。一方、ウクライナ情勢の長期化や、円安の進行によるエネルギー資源や原材料価格の上昇等の影響により、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
医薬品業界におきましては、国のジェネリック医薬品使用促進策が進められ、「経済財政運営と改革の基本方針2021」においてジェネリック医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、並びに使用促進を行う方針が示されております。一方で、2021年度から2年に1度の薬価改定に加え、中間年においても改定を行う毎年薬価改定が実施され、医薬品業界の事業環境は厳しいものとなっており、当社としても一層の経営効率化への努力が求められております。
昨今の医薬品における品質に係る問題により、医薬品業界の置かれる環境は厳しい状況が続いておりますが、当社では日々の生産における製造管理・品質管理を徹底するとともに、見直すべき点があれば積極的に改善を進め、より一層の製造管理及び品質管理の強化に取り組んでおります。
このような状況のもと、当社グループは生産基盤の充実を図りながら積極的な営業活動を展開しており、当社は新たな製剤工場である第十製剤棟を2022年9月に着工し、2023年12月に竣工を予定しております。また研究開発活動の強化を図るため、2022年11月に総合研究センターを着工し、2024年2月に竣工を予定しております。
売上高の販売品目ごとの業績は次のとおりであります。
原薬では、一部既存品目の販売減少及び市場における競争激化等により厳しい状況で推移し、降圧剤原薬、抗血小板剤原薬等の一部ジェネリック医薬品向け原薬の販売は堅調に推移したものの、売上高は18,783百万円(前期比3.6%減)となりました。
製剤では、自社開発ジェネリック医薬品の販売増加、一般用医薬品の販売増加があり順調に推移し、売上高は26,097百万円(前期比10.1%増)となりました。
健康食品他につきましては、市場における競争激化等により、厳しい状況で推移し、売上高は220百万円(前期比20.9%減)となりました。
新型コロナウイルス感染症の流行による当連結会計年度への影響は軽微でありました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は45,101百万円(前期比3.8%増)となりました。売上高の増加に伴う利益の増加があったものの、主に円安及びエネルギー資源価格の上昇による原材料費及び電気料金等の増加、並びに減価償却費及び研究開発費の増加等により営業利益は5,207百万円(前期比20.5%減)、経常利益5,169百万円(前期比23.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,600百万円(前期比22.9%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ774百万円の減少となり、3,607百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は4,155百万円(前期比214百万円の減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益5,076百万円、減価償却費3,870百万円等があった一方で、売上債権の増加額1,502百万円、棚卸資産の増加額1,413百万円、法人税等の支払額2,411百万円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は5,566百万円(前期比1,166百万円の増加)となりました。これは主に、生産設備の拡充に伴う有形固定資産の取得による支出5,505百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は616百万円(前期比373百万円の減少)となりました。これは主に長期借入れによる収入3,000百万円等があった一方で、長期借入金の返済による支出1,638百万円、配当金の支払額931百万円等があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
区分
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比(%)
原 薬(百万円)
17,689
97.0
製 剤(百万円)
24,262
109.3
健康食品他(百万円)
-
-
合計(百万円)
41,951
103.7
(注)1.セグメント情報を記載していないため、販売品目ごとの生産実績を記載しております。
2.金額は販売価格によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績は、次のとおりであります。
区分
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比(%)
原 薬(百万円)
953
109.1
製 剤(百万円)
1,795
108.2
健康食品他(百万円)
146
69.4
合計(百万円)
2,895
105.5
(注)1.セグメント情報を記載していないため、販売品目ごとの商品仕入実績を記載しております。
2.金額は実際仕入額によっております。
c.受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
区分
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
受注高
(百万円)
前年同期比
(%)
受注残高
(百万円)
前年同期比
(%)
製 剤
21,900
94.7
5,223
68.9
(注)1.セグメント情報を記載していないため、販売品目ごとの受注実績を記載しております。
また、当社は製剤の一部について受注生産を行っているため、その分の金額を記載しております。
2.金額は販売価格によっております。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
区分
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比(%)
原 薬(百万円)
18,783
96.4
製 剤(百万円)
26,097
110.1
健康食品他(百万円)
220
79.1
合計(百万円)
45,101
103.8
(注)1.セグメント情報を記載していないため、販売品目ごとの販売実績を記載しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、前連結会計年度において特定の顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の10%に満たないため、相手先別の情報の記載を省略しております。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年6月1日
至 2022年5月31日)
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
東和薬品株式会社
-
-
4,517
10.0
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、並びに資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。また、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
なお、当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和が進む中、経済活動が緩やかに正常化してまいりました。当社グループにおいては、従来より生産活動、事業活動については計画どおり活動を継続しており、現時点において新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループの事業活動に及ぼす影響については限定的であることから、重要な会計上の見積りに織り込んでおりません。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
医薬品業界におきましては、2021年6月閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」において「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、新目標についての検証、保険者の適正化の取組にも資する医療機関等の別の使用割合を含む実施状況の見える化を早期に実施し、バイオシミラーの医療費適正化効果を踏まえた目標設定の検討、新目標との関係を踏まえた後発医薬品調剤体制加算等の見直しの検討、フォーミュラリの活用等、更なる使用促進を図る。」と示され、後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、並びに使用促進を行う方針が示されております。
国のジェネリック医薬品使用促進策が進められ、ジェネリック医薬品の普及が拡大する一方、2021年度から2年に1度の薬価改定に加え、中間年においても改定を行う毎年薬価改定が実施されております。今後、医薬品業界の事業環境は厳しいものとなることが予想され、当社としても一層の経営効率化への努力が求められております。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は次のとおりであります。
a.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は自社開発のジェネリック医薬品、一般用医薬品の販売増加があり堅調に推移し、45,101百万円となりました。
(売上原価)
当連結会計年度の売上原価は、円安及びエネルギー資源価格の上昇による原材料費の増加、人件費の増加などもあり、34,770百万円となりました。
この結果、差引売上総利益は10,331百万円となり、前連結会計年度に比べ1,127百万円減少しました。
(販売費及び一般管理費)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は5,123百万円となり、前連結会計年度に比べ218百万円増加しました。これは主に、研究開発費の増加、人件費の増加などがあったことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の営業利益は5,207百万円となり、前連結会計年度に比べ1,345百万円減少しました。
(営業外損益)
当連結会計年度の営業外収益は、前期計上のあった受取保険金の計上がなかったことなどにより86百万円となり、前連結会計年度に比べ118百万円減少しました。営業外費用は為替差損の発生などにより124百万円となり、前連結会計年度に比べ95百万円増加しました。
この結果、当連結会計年度の経常利益は5,169百万円となり、前連結会計年度に比べ1,559百万円減少しました。
(特別損益)
当連結会計年度の特別利益は12百万円となり、前連結会計年度に比べ256百万円減少しました。これは主に、前期計上のあった投資有価証券売却益の計上がなかったことなどによるものであります。特別損失は105百万円となり、前連結会計年度に比べ172百万円減少しました。これは投資有価証券評価損の減少があったことによるものであります。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,600百万円となり、前連結会計年度に比べ1,068百万円の減少となりました。
b.財政状態の分析
<資産、負債及び純資産の状況>
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ5,612百万円増加し、70,552百万円となりました。これは主に、現金及び預金の減少774百万円、機械装置及び運搬具の減少1,362百万円等があった一方で、電子記録債権の増加1,449百万円、商品及び製品の増加751百万円、原材料及び貯蔵品の増加548百万円、その他の流動資産の増加602百万円、建設仮勘定の増加4,194百万円等があったことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末より2,315百万円増加し、19,580百万円となりました。これは主に、未払法人税等の減少842百万円等があった一方で、未払金の増加1,812百万円、長期借入金の増加1,120百万円等があったことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末より3,297百万円増加し、50,971百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加2,667百万円、その他有価証券評価差額金の増加281百万円、退職給付に係る調整累計額の増加208百万円等があったことによるものであります。
これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度より1.0ポイント減少し、71.8%となったほか、自己資本当期純利益率(ROE)は前連結会計年度より3.2ポイント減少し、7.3%となっております。
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
医薬品業界におきましては、2021年6月閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」において「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、新目標についての検証、保険者の適正化の取組にも資する医療機関等の別の使用割合を含む実施状況の見える化を早期に実施し、バイオシミラーの医療費適正化効果を踏まえた目標設定の検討、新目標との関係を踏まえた後発医薬品調剤体制加算等の見直しの検討、フォーミュラリの活用等、更なる使用促進を図る。」と示され、後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性の確保、並びに使用促進を行う方針が示されております。
国のジェネリック医薬品使用促進策が進められ、ジェネリック医薬品の普及が拡大する一方、2021年度から2年に1度の薬価改定に加え、中間年においても改定を行う毎年薬価改定が実施されており、今後、医薬品業界の事業環境は厳しいものとなることが予想されます。
当社グループにおいて、医薬品の製造設備に関する設備投資を実施した際には、原薬及び製剤の本格的な製造に至るまでに試作期間等を含めたバリデーションのための期間が必要となります。バリデーションとは、医薬品の製造、設備及び工程において、品質特性に適合する製品が生産されることを保証し、文章化することを言います。当社グループの場合は本格的な製造を開始するまでには設備の竣工後、半年から1年程度のバリデーション期間を要することが一般的になっております。
なお、減価償却費の計上はバリデーションの開始時期から行うため、売上高の計上よりも減価償却費の計上が先行することとなります。そのため、バリデーションは連結損益計算書において損益の悪化要因として影響することが見込まれます。
d.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの主要な資金需要は、製品製造のための原材料購入費用及び製造費用、商品仕入費用、研究開発費、生産能力強化のための設備投資費用等であります。
これら資金需要への対応は、主に自己資金及び金融機関からの借入による資金調達を基本としております。なお当連結会計年度においては新株予約権の行使による株式の発行による資金調達も行っております。
新型コロナウイルス感染症による財政状態への影響は、現在のところ軽微でありますが、今後の動きについては引き続き注視しつつ、財政状態へ重大な影響を与える可能性のある事象が生じた場合などにおいては、適時に対応の検討を行ってまいります。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移は以下のとおりであります。
第77期
2019年5月期
第78期
2020年5月期
第79期
2021年5月期
第80期
2022年5月期
第81期
2023年5月期
自己資本比率(%)
66.2
67.3
72.1
72.8
71.8
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)
0.7
0.7
0.7
0.8
1.2
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
336.5
374.8
684.0
456.0
316.2
自己資本比率:自己資本/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。