【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の概要
①経営成績の状況
当社グループの当連結会計年度(2022年6月1日から2023年5月31日まで)における業績は、為替相場が前期比大幅な円安になったこともあり、売上高は772億63百万円(前期比42億13百万円、5.8%増)となりました。
売上総利益は、利益率の向上と売上高の増加を受けて増益となりましたが、円安の影響に加え、実質ベースにおいても人件費、旅費交通費、研究開発費などを中心に販売費及び一般管理費が増加し、営業利益は109億18百万円(前期比2億63百万円、2.4%減)となりました。経常利益は、受取利息や為替差益の増加により、123億4百万円(前期比1億89百万円、1.6%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前期計上した米国での固定資産売却による特別利益が剥落したことなどにより、94億89百万円(前期比27億66百万円、22.6%減)となりました。
②財政状態の状況
(資産)
総資産は、1,607億15百万円(前連結会計年度末比132億91百万円増加)となりました。
・流動資産:現金及び預金、商品及び製品の増加などにより69億8百万円増加
・固定資産:建物及び構築物(純額)、投資有価証券の増加などにより63億83百万円増加
(負債)
負債合計は226億34百万円(前連結会計年度末比6億78百万円増加)となりました。
・流動負債:未払法人税等の減少などにより6億70百万円減少
・固定負債:繰延税金負債の増加などにより13億49百万円増加
(純資産)
純資産合計は、1,380億80百万円(前連結会計年度末比126億13百万円増加)となりました。
・株主資本:親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより72億48百万円増加
・その他の包括利益累計額:為替換算調整勘定の増加などにより53億円増加
以上の結果、自己資本比率は85.7%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前期比14億13百万円減少し、203億34百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、83億51百万円(前期比16億87百万円の収入の減少)となりました。
・主な収入:税金等調整前当期純利益124億87百万円の計上、減価償却費38億10百万円の計上、利息及び配当金の受取額9億7百万円の計上
・主な支出:法人税等の支払額50億24百万円の計上、棚卸資産の増加額27億42百万円の計上
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、△81億7百万円(前期比85億76百万円の支出の増加)となりました。
・主な収入:有形固定資産の売却による収入5億92百万円の計上
・主な支出:有形固定資産の取得による支出56億21百万円の計上、定期預金の預入による支出26億48百万円の計上
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、△28億28百万円(前期比17億52百万円の支出の減少)となりました。
・主な収入:長期借入れによる収入30百万円の計上
・主な支出:配当金の支払額20億84百万円の計上、リース債務の返済による支出5億99百万円の計上
④仕入および販売の実績
a. 仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比(%)
国内卸売事業(百万円)
7,219
△4.6
海外卸売事業(百万円)
19,095
21.8
小売事業(百万円)
3,468
△2.0
報告セグメント計(百万円)
29,782
11.2
その他事業(百万円)
2,961
7.9
合計(百万円)
32,744
10.9
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
b. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比(%)
国内卸売事業(百万円)
12,272
△4.0
海外卸売事業(百万円)
56,264
8.1
小売事業(百万円)
5,343
3.7
報告セグメント計(百万円)
73,880
5.6
その他事業(百万円)
3,383
10.3
合計(百万円)
77,263
5.8
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度(2022年6月1日から2023年5月31日まで)における世界経済およびわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による経済活動への制約の緩和が進んだ一方、ウクライナ情勢の長期化などにより、インフレの進行、金利の上昇、為替相場の大幅な変動など、先行きの不透明感が強まりました。
このような状況のなか当社グループでは、ウェブ会議やプロモーション動画の活用などの新しい様式での活動は継続しつつ、感染防止策を講じた上で、展示会の開催や国内外への出張などリアルベースの活動も段階的に再開いたしました。
成長戦略の取組みとしては、生産者が安心して栽培を実現し、高い収益の確保につなげられるよう、高品質でオリジナル性の高い種苗を継続的に創出する研究体制の構築と、安定供給と効率化を実現するサプライチェーンの整備を行っております。また、新たにトップシェアを狙う戦略品目の開発・拡販に努め、経営資源の重点戦略品目への集中とアジアを中心とした新興国市場における成長機会の取り込みによる高収益体制を目指しております。
このような取組みのもと、品目別では、野菜種子は、ペッパー、カボチャ、レタスなど、シェアの拡大を目指し研究開発に注力してきた商品が前期に引き続き好調に推移し、新興国における外貨規制や一部地域における天候不順などのマイナス要因はありましたが、野菜種子全体で増収となりました。花種子は、ヒマワリが前期の反動から減少したほか、主力品種のトルコギキョウも、欧州・中近東においてエネルギー価格高騰によるマイナス影響を受けたものの、そのほかの地域で好調に推移し、花種子全体では微増となりました。地域別では、国内は青果市況の低迷などによりほぼ横ばいとなりましたが、海外では、円貨では全地域、現地通貨では欧州・中近東を除く全ての地域で増収となりました。
2022年7月に公表した業績予想に対しては、売上高は7億36百万円、営業利益は3億81百万円、下回りましたが、経常利益は5億4百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は9億89百万円、それぞれ上回りました。
セグメントごとの財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
a.国内卸売事業
国内卸売事業は、青果市況の低迷や生産コストの上昇などにより作付面積が減少傾向にあり、全般的に低調に推移いたしました。このような中、SNSにおける商品情報発信やWEB上の顧客限定交流サイトの機能強化など、新しい営業活動の取組みを進めております。
商品別では、野菜種子では、トマト、レタスが産地への導入が進み増加しましたが、ホウレンソウ、ニンジン、ネギが減少しました。また、家庭園芸向け需要の落ち着きなどもあり、花種子と苗木も減少しました。資材は、農園芸肥料は増加しましたが、値上がり前の特需からの反動により、全体では若干の減収となりました。
営業活動の再開などによる経費増はありましたが、効率的な業務体制の構築により、営業費用の抑制に努めました。
これらの結果、売上高は122億72百万円(前期比5億11百万円、4.0%減)、営業利益は49億7百万円(前期比21百万円、0.4%減)となりました。
また、国内卸売事業の総資産は前期比6億86百万円増(3.5%増)の204億12百万円となりました。
b.海外卸売事業
海外卸売事業は、為替レートが全般的に円安になったことなどから、前期比、増収となりました。
野菜種子は、北中米では、ブロッコリーが米国西部の干ばつの影響から減少したものの、ペッパー、ホウレンソウ、スイカ、メロン、ビートが好調に推移し、増収となりました。欧州・中近東では、カボチャ、ブロッコリー、ハクサイが増加しましたが、トマトがエジプトの外貨規制の影響で出荷を一時見合わせたことから大きく減少し、現地通貨ベースでは減収となりました。南米では、メロンが減少しましたが、カボチャ、ペッパー、ブロッコリー、レタスが大きく伸び、増収となりました。アジアでは、商流変更による販売時期の変更などからニンジンが減少しましたが、ネギ、ブロッコリー、オクラが好調に推移し、増収となりました。
花種子は、ヒマワリは減少しましたが、トルコギキョウが欧州・中近東を除く地域で大きく増加したほか、北中米ではカンパニュラ、南米ではパンジー、アジアではマリーゴールドなどが好調に推移しました。
これらの結果、売上高は562億64百万円(前期比42億19百万円、8.1%増)、営業利益は168億21百万円(前期比5億45百万円、3.4%増)となりました。
また、海外卸売事業の総資産は前期比76億37百万円増(9.0%増)の929億52百万円となりました。
c.小売事業
小売事業は、ガーデンセンター横浜と通信販売分野では、巣ごもり需要の落ち着きなどから、前期比減収となりました。量販店向けのホームガーデン分野では、一部帳合替えもあり資材の売上が増加したほか、野菜種子も好調に推移し、前期比増収となりました。
効率的な業務運営による経費削減に努めておりますが、販売運賃の高騰などの影響を受け、営業費用は増加いたしました。
これらの結果、売上高は53億43百万円(前期比1億91百万円、3.7%増)、営業利益は92百万円悪化し、61百万円の損失(前期は31百万円の営業利益)となりました。
また、小売事業の総資産は前期比4億94百万円減(25.7%減)の14億32百万円となりました。
d.その他事業
造園緑花分野は、新型コロナウイルス感染症の影響継続に加え、資材や燃料費などの原価上昇による厳しい状況下にありましたが、民間および公共工事の安定した受注や、緑花関係の育成維持管理業務を着実に実施することができました。
これらの結果、売上高は33億83百万円(前期比3億14百万円、10.3%増)、営業利益は84百万円(前期比3百万円、4.0%増)となりました。
また、その他事業の総資産は前期比95百万円増(5.1%増)の19億72百万円となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」にて記載したとおりです。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は次のとおりであります。
2019年5月期
2020年5月期
2021年5月期
2022年5月期
2023年5月期
自己資本比率(%)
82.3
82.2
83.9
84.9
85.7
時価ベースの自己資本比率(%)
120.2
133.5
124.5
133.3
107.6
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)
93.0
137.1
24.5
14.8
17.6
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
46.2
16.3
94.6
94.3
106.8
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(リース債務は除く)/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 1. 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※ 2. 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
※ 3. キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
※ 4. 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、リース債務を除く利子を支払っている負債を対象としております。
※ 5. 利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
b.資金需要の主な内容
当社グループの資金需要のうち主なものは、種子および資材の購入費用のほか、生産経費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。営業費用の主なものは、給与、賞与等の人件費、運搬費、販売荷造費、広告宣伝費等であります。
また、当社グループは、生産設備の拡充、合理化および研究開発力の強化等を目的として、継続的に設備投資を実施しております。
当社グループの当連結会計年度末における有利子負債に対する金利負担は、支出に占める割合としては十分低く、金利上昇による影響が限定的な範囲にとどまる有利子負債残高水準にあります。
c.資金調達の可能性
資金の流動性については、手元流動性の確保により不測の事態に対応できるようにしております。資金の調達については、本社、国内各子会社および海外各子会社とも、取引金融機関との良好な関係を維持しており、適切な対応が可能な体制をとっております。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、予測不能な天候変動等によって業績が左右される可能性があることや研究開発に長期間要する事業特性があることなどから、中長期の経営計画数値は公表しておらず、単年度の計画を公表し着実に達成していく方針でおります。2022年7月に公表した業績予想と比較した当連結会計年度の実績は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりです。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、当連結会計年度における財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループが連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.棚卸資産の評価見積りによる影響
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりです。
b.固定資産の減損判定による影響
当社グループは、主に研究開発や生産、販売などの事業を行うため、土地や建物、機械などの固定資産を多く保有しております。原則として、管理会計上の単位を資産グループの基礎として、独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位でグルーピングしており、また、賃貸資産および遊休資産については、個別の資産ごとにグルーピングを行っております。収益性が低下した資産グループについては固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少分を減損損失として計上しております。回収可能価額は、将来の利益計画に基づく将来キャッシュ・フローや不動産の時価を前提に作成されるため、経営環境の悪化や不動産の価格変動などにより回収可能価額が下がり、減損損失を計上するなどの影響が生じる可能性があります。
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