【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第1四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第1四半期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」という。)の社会的制限が緩和され、正常化に向けて引き続き回復傾向にあります。インバウンド需要が増加したほか、人手不足や物価高を背景とした賃金上昇にも支えられ、国内の個人消費も増加しております。また、堅調な企業業績を背景に投資意欲が高まり、設備投資も緩やかに増加しております。一方、地政学リスクに伴う資源価格の高騰や物価の上昇に加え、海外主要各国の景気減速や金利上昇の影響がリスク要因となり、引き続き注視が必要な状況です。
当社が属する不動産業界においては、宿泊需要が引き続き力強く回復しており、ホテル売上が好調に推移しております。当第1四半期の当社保有ホテルのRevPAR(販売可能な客室1室あたりの売上)については、当社の事業活動においてコロナの影響をほぼ受けていない2020年2月期比で+28.5%となり、ストック収益の回復を牽引しております。今後も、国内およびインバウンド需要は力強い回復が継続する見通しであり、一層の収益回復が期待されます。オフィスビルにおいては、東京都心部の空室率、賃料ともにほぼ横ばいで推移しており、当社が保有する中規模オフィスにおいては、引き続き底堅い需要が継続しております。コロナで加速した働き方の変化に合わせ、選ばれるオフィスビルの提供に向けて、引き続き、テナント様のニーズを捉えてまいります。なお、安定性が高い賃貸住宅の需要は引き続き堅調さを維持しており、投資需要も底堅い状況が続いております。物流施設においても、コロナ拡大により需要が一層高まり、経済活動の再開後も安定性の高いアセットとして、引き続き底堅い投資ニーズが見込まれます。
また、世界的に環境課題への取り組みが急務であるなか、わが国でもカーボンニュートラルに向けたエネルギー政策の整備が進んでおり、さらなる政策の強化が期待されます。こうした環境下において、クリーンエネルギー事業の重要性は増しており、当社では、地域および地球に優しい再生可能エネルギーのさらなる創出と、太陽光や風力に加えて、計画中のバイオマス発電など、電源の多様化に注力しております。
主な取り組み
当社では急激な環境の変化に対応し、より信頼性の高い財務基盤の確保と徹底的なキャッシュ・フロー経営を実行しております。創出した資金は、将来の成長投資として、不動産の取得、新規事業への投資に加え、当第1四半期においては、当社が運用するいちごオフィスリート投資法人(証券コード8975、以下「いちごオフィス」という。)の投資口の取得を実施しております。なお、第2四半期には、いちごホテルリート投資法人(証券コード3463、以下「いちごホテル」という。)の投資口の取得も進めており、両投資法人の投資主価値向上に向けたスポンサーのコミットメント強化を図っております。
また、当社は、長期VISION「いちご2030」に沿い、サステナブル(持続可能)な社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」として、将来を見据えた戦略的な事業展開を通じて、事業優位性のさらなる強化を図っております。具体的には、不動産の保有・運営や心築(しんちく)(注)ノウハウといった強みを軸とし、ノンアセット事業によるストック収益の獲得機会を拡大しております。既存事業の深化とともに、新規事業の創出と成長により、今後とも、株主価値の最大化に向け、株主重視経営をさらに向上し具現化すべく、全力を尽くしてまいります。
(注)心築(しんちく)について
心築とは、いちごの不動産技術とノウハウを活用し、一つ一つの不動産に心を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造することをいい、日本における「100年不動産」の実現を目指しております。
「既存事業の成長と深化」
・ 「心築事業」
コロナの影響により大きく落ち込んでいた宿泊需要が力強く回復しております。当社でも保有するホテルのRevPARが、当社の事業活動においてコロナの影響をほぼ受けていない2020年2月期比で+28.5%となり、今後もさらなる回復が期待されます。需要の取り込みに際して、宿泊業界では人手不足が深刻化しておりますが、当社では、当社開発のAIレベニューマネジメント(売上管理)システム「PROPERA」の導入により、コロナの影響を受けた期間中においても高稼働を維持し、従業員の確保とスキルアップを実施してまいりました。また、「PROPERA」の導入により、最適な室料の自動設定による収益最大化および運営の高効率化を進めており、今後の需要増に十分に対応が可能な体制を備えております。
新規事業である「いちご オーナーズ ビルシェア」および「いちご・レジデンス・トークン」においては、当社が長年培ってきた不動産運用力や心築ノウハウを基盤に、個人および事業主の方でもプロの目利きと簡素な手続きで優良なレジデンス(住宅)へ投資いただける新たな商品を展開しており、顧客層の拡大と運用受託によるストック収益の拡大を図っております。さらに、不動産の販売チャネルが拡充したことで積極的な取得を実現しており、不動産の取得と売却の好循環が、いちごオーナーズの成長に繋がっております。「いちご オーナーズ ビルシェア」は第3号案件が短期間で完売し、本年6月1日より運用を開始しております。また、「いちご・レジデンス・トークン」についても、第2四半期に第2号案件が組成され、いちごオーナーズより投資対象レジデンスの売却を予定しております。売却後のアセットマネージャーは第1号案件に続き、いちご投資顧問が受託いたします。
なお、当第1四半期の不動産売買については、取得額177億円、売却額は32億円となりました。
・ 「アセットマネジメント事業」
いちごオフィス、いちごホテル、いちごグリーンインフラ投資法人(証券コード9282)および、私募ファンド事業への業務支援に注力いたしました。
いちごホテルにおいても当社同様、宿泊需要の力強い回復を受け、コロナの影響がなかった2019年同月比で売上高が上回る結果となっており、完全成果報酬制度を採用している当社の運用報酬も、これに伴い回復しております。
また、当社では、運用する投資法人のさらなる成長ならびに投資主価値の向上に対し、スポンサーとしてのコミットメント強化の一環として、いちごオフィスの投資口(総額30億円)を取得しております。
当社は今後もスポンサーとして、優良物件の提供やブリッジファンドの活用、心築による投資法人の保有資産の価値向上といった施策により積極的に運用投資法人をサポートし、投資主目線による運用を行うことで、投資主価値のさらなる向上を図ってまいります。
・ 「クリーンエネルギー事業」
当期は、当社として2番目に大きな太陽光発電所(13.99MW)である「いちごえびの末永ECO発電所(FIT価格40円)」の発電開始を予定しております。この発電所の発電開始を期末に予定している一方、当期は設備の大型メンテナンスを予定しており、収益は通期予想で前年を下回る見通しですが、来期以降は、「いちごえびの末永ECO発電所」の収益が貢献し、市況の変化に左右されない、より安定性の高い事業として成長が見込まれます。
当社が開発・運用する発電開始済み発電所の合計は、63発電所(発電出力174.2MW)まで成長しております。今後さらなる太陽光発電所への投資を行うとともに、電力供給の安定性向上に寄与する第3のエネルギーとして、森林の高齢化等の課題に対応し、治山対策、地域経済の活性化に貢献する、地方自治体や地域と一体となった「地域資源グリーンバイオマス発電」を計画しております。世界的な環境課題の解決に対応する本事業は、今後も社会的意義が一層高まっていくものと考えております。
「急激な環境変化に対応した成長戦略」
・ 信頼性の高い財務基盤の確保
当社は、リーマンショック以降、借入期間の長期化と借入コスト削減、包括的な金利ヘッジによる金利上昇リスクの低減、無担保資金の調達等の幅広い財務施策の推進により、収益基盤と財務基盤を強化してまいりました。また、当社のESGへの取り組みや貢献等に対する評価を受け、その活動を支援するESGローンを拡充させており、当第1四半期においては133億円をESGローンにより調達しております。今後もこの方針を継続し、当社の事業をよりサステナブルな事業へ進展させてまいります。
・ 徹底的なキャッシュ・フロー経営
当社は、これまでも高いキャッシュの創出力を維持してまいりましたが、この急激な環境の変化に対応し、さらなるキャッシュの創出を図っております。具体的には、当社の心築事業に属する不動産を固定資産化することで、減価償却の税効果によりキャッシュを創出し、将来の成長投資に備えております。なお、当第1四半期末における固定資産比率は82.9%(注)です。
(注)当社の心築事業に属する不動産のうち、いちごオーナーズ、セントロ、ストレージプラスの資産を除く不動産を対象としております。
「サステナビリティへの取り組み」
当社は、企業の存在意義は社会貢献であると考えており、サステナブルな社会を実現するための「サステナブルインフラ企業」として大きな成長を図るとともに、事業活動を通じて社会的責任を果たすことを最大の目標としております。
具体的な取り組みとして、現存不動産に新たな価値を創造する「心築(しんちく)」を軸とした事業モデルをさらに進化させ「100年不動産」にチャレンジしております。また、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際的なイニシアティブである「RE100」の目標達成年限を2025年とし、当社に加え、当社グループが運用するいちごオフィス、いちごホテルが保有する不動産も対象とし、クライメート(気候)・ポジティブに向けて、環境循環型社会を目指す取り組みを加速しております。当第1四半期末時点において、71%まで再生可能エネルギーへの切り替えが進んでおります。
加えて、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言にも賛同し、気候変動におけるリスクの認識とそのリスクの適切な管理を行うとともに、環境課題への取り組みを事業機会と捉え、豊かさと環境が共存する未来のために取り組んでおります。
さらに、当社は、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みである「国連グローバル・コンパクト」に署名しております。署名する企業および団体は、10の原則に賛同し、企業トップ自らのコミットメントのもと、その実現に向けて努力を継続することが求められます。
当社は、社会をより良い状態で次世代へ継承するための一員として、独自の心築技術を軸とした新しい価値創造・社会課題の解決と環境保全活動によって、社会に貢献してまいります。
業績の詳細
当第1四半期の業績は、売上高10,152百万円(前年同四半期比39.0%減)、営業利益2,445百万円(同10.2%減)、ALL-IN営業利益(注)2,691百万円(同1.2%減)、経常利益1,469百万円(同37.9%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,455百万円(同5.2%減)となりました。
(注)ALL-IN営業利益=営業利益+特別損益に計上される心築資産(*)の売却損益
(*) 心築資産:心築事業に属する不動産及びそれらを裏付資産とする投資持分等
セグメントごとの内容および業績は、次のとおりであります。
①アセットマネジメント
当該セグメントの業績につきましては、いちごオフィスにおける物件取得および稼働率上昇によるNOIの増加や、いちごホテルの業績回復に伴う運用報酬の増加により、セグメント売上高722百万円(前年同四半期比25.0%増)、セグメント利益386百万円(同19.7%増)となりました。
②心築(しんちく)
当期においては、第1四半期の物件売却が前年同四半期比で少なかったことから、当該セグメントの売上高は8,004百万円(前年同四半期比45.1%減)となりましたが、ホテルの売上回復により変動賃料が大きく伸びたことから、前年同四半期比で利益率が向上し、セグメント利益は1,726百万円(同1.4%減)となりました。
③クリーンエネルギー
当該セグメントの業績につきましては、設備のメンテナンスによる一時的な稼働停止があったこと等から、セグメント売上高は1,528百万円(前年同四半期比2.9%減)、セグメント利益は576百万円(同12.5%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当第1四半期における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、37,642百万円となり、前連結会計年度末の40,313百万円と比較して2,671百万円の減少となりました。各キャッシュ・フローとそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期において、税金等調整前四半期純利益2,175百万円、減価償却費1,267百万円等の資金の増加があった一方、売上債権の増加947百万円等による資金の減少があった結果、1,959百万円の資金が増加しました。また、先行投資である物件の仕入れに伴う販売用不動産等の増加額は16,323百万円であり、これらに伴い、利息の支払額462百万円、法人税等の支払額665百万円があったこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは△15,490百万円(前年同四半期は1,017百万円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期において、投資活動によるキャッシュ・フローは△3,404百万円(前年同四半期は△4,214百万円)となりました。これは主に、有形固定資産の売却による収入1,030百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出2,031百万円、投資有価証券の取得による支出2,094百万円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期において、財務活動によるキャッシュ・フローは16,223百万円(前年同四半期は△380百万円)となりました。これは主に、短期借入金の純増減額2,537百万円、長期借入れによる収入21,264百万円があった一方、長期借入金の返済による支出3,888百万円、配当金の支払額3,499百万円があったことによるものです。
(3)財政状態及び経営成績の分析
①財政状態の分析
(資産)
資産合計は355,198百万円となり、前連結会計年度末と比較して16,578百万円増加(前連結会計年度末比4.9%増加)いたしました。
レジデンスを中心とした物件取得により販売用不動産が16,189百万円増加したことが主な要因であります。
(負債)
負債合計は243,115百万円となり、前連結会計年度末と比較して18,888百万円増加(前連結会計年度末比8.4%増加)いたしました。
これは主に、不動産の取得等に伴う借入金の増加19,765百万円があった一方、未払金等その他の流動負債の減少952百万円があったことによるものであります。
(純資産)
純資産合計は112,083百万円となり、前連結会計年度末と比較して2,309百万円減少(前連結会計年度末比2.0%減少)いたしました。
これは主に、親会社株主に帰属する四半期純利益1,455百万円の計上に対し、剰余金の配当3,627百万円があったことによるものであります。なお、自己資本比率は28.3%(前連結会計年度末比2.1ポイント減少)となりました。
②経営成績の分析
(売上高)
連結売上高は、不動産賃貸収入および運用する投資法人の物件取得に伴う報酬等が前年同四半期比で増加した一方、前期は、期初より大型物件の売却があり、当第1四半期に比して売却による収入が大きかったことから、10,152百万円(前年同四半期比39.0%減)となりました。
売上高の主な内訳は、不動産販売収入2,226百万円、不動産賃貸収入5,659百万円、不動産フィー収入598百万円、売電収入1,517百万円であります。
(営業利益)
営業利益は、ホテルの売上回復により変動賃料が大きく伸びたことから、前年同四半期比で利益率が向上し、2,445百万円(前年同四半期比10.2%減)となりました。
(営業外損益)
営業外収益は、前年同四半期と比較してデリバティブ評価益が減少したことから、48百万円(前年同四半期比79.9%減)となりました。
主な内訳は、補助金収入16百万円、受取配当金14百万円であります。
なお、当社では将来の金利上昇リスクに備え、金利スワップ取引(デリバティブ取引)を行っております。
営業外費用は、デリバティブ評価損が増加したため、1,024百万円(前年同四半期比70.9%増)となりました。
主な内訳は、支払利息551百万円、デリバティブ評価損393百万円であります。
(特別損益)
特別利益は、705百万円となりました。
主な内訳は、再開発による権利変換に伴う受取補償金327百万円、心築事業に属する不動産の固定資産売却益246百万円であります。
(親会社株主に帰属する四半期純利益)
法人税等は663百万円、非支配株主に帰属する四半期純利益は56百万円となりました。
これらの結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,455百万円(前年同四半期比5.2%減)となりました。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社が優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当社は、新規事業の創出として、次世代に向けたグリーンビジネス、持続可能な環境ソリューションの提供として、事業活動を通じた社会貢献という目標の実現のため、様々な分野にて活用が期待されている植物性シリカSiO2(二酸化ケイ素)の生成、応用、提供による収益化を目指した研究開発を進めております。
また、研究開発費については、全て心築セグメントに係る費用であり、当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は8百万円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
(6)資本の財源及び資金の流動性についての分析
上記「(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
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