【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び当社の連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大に対して各種施策により経済活動の正常化が進みました。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化による原材料価格高騰や供給面での影響が懸念されるなど、先行き不透明な状況が続いております。
当社グループが属する広告業界におきましては、2022年の総広告費が7兆1,021億円(前年比104.4%)と前年を上回る結果となり(電通「日本の広告費」2023年2月発表)、景気回復の兆候が見受けられました。
こうした市場環境の中、当社グループでは事業戦略として日宣2030ビジョンを掲げながら、一丸となって積極的な事業活動を行ってまいりました。
放送・通信業界、住まい・暮らし業界、医療・健康業界の既存戦略マーケットにおいては、強固な顧客基盤をベースとした専門性の高い広告戦略やマーケティングメソッド、ソリューションの開発・提供を行ってまいりました。地方に暮らす世帯を「ローカルコミュニティ」と捉えた上でソリューションを生み出していくエリアビジネスの分野においては、全国のケーブルテレビ局向けに加入者向けテレビ番組情報誌「チャンネルガイド」の編集・制作を中心としたプロモーション施策を展開し、底堅い事業運営を進めました。
また、企業とつながる生活者を「ブランドコミュニティ」と捉え企業のマーケティング コミュニケーションや市場開発を支援していくコミュニケーションビジネスの分野においては、大手住宅メーカー向けのニーズを捉え、映像制作やオンラインイベントの開催、カタログ制作等、各種営業活動支援施策の提供を行いました。加えて、大手外食チェーンには、広告・マーケティング戦略の立案から実行までをワンストップで支援し、SNSを中軸とした機動的なマーケティング活動を行うことで、同分野における売上を大きく伸ばしました。
そして、自社メディアでつながる共通の価値観や嗜好性をもった生活者や企業群を「ライフスタイルコミュ ニティ」と捉え、ホームセンター向けのフリーペーパー発行やプロモーション施策を展開しました。また、営業外収益として投資事業組合運用益を26,085千円計上しました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高5,058,495千円(前年同期比4.6%増)、営業利益320,138千円
(同1.1%減)、経常利益345,237千円(同7.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益244,016千円(同3.9%減)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。
イ.広告宣伝事業
当事業においては、全国のケーブルテレビ局に対して加入者向けケーブルテレビ番組情報誌「チャンネルガイド」の編集・制作を行う他、自社メディアとしてホームセンター向けのフリーペーパーの発行や、様々なクライアント企業に対し広告戦略のプランニング、各種販促サービス、デジタルマーケティング等のソリューションを提供しております。
当連結会計年度では、ケーブルテレビ番組情報誌の編集・制作事業について同業他社との間で事業の一部譲受に向けた譲渡契約を締結し、今後の更なる顧客基盤拡大に努めました。また、医療・健康業界においては、これまで新型コロナウイルス感染症の影響もあってイベント等を自粛していた主力クライアントが復調してきております。さらに、その他業界につきましても、大手外食チェーン向けのマーケティング支援を拡大するなど、クライアントの課題に対して幅広いソリューションを提供しました。
業界別の売上高は、放送・通信業界が2,065,797千円(前年同期比2.6%減)、住まい・暮らし業界が1,370,998千円(同1.7%減)、医療・健康業界が366,488千円(同33.8%増)、その他業界が1,103,738千円(同21.6%増)となりました。
以上の結果、当事業の売上高は4,907,021千円(前年同期比4.5%増)、セグメント利益は310,482千円(同1.2%減)となりました。
ロ.その他
その他においては、当社の子会社の株式会社日宣印刷において当社グループの広告宣伝事業の印刷物の他、関西地域の企業に対して商業印刷を行っております。
当事業の売上高は151,473千円(前年同期比7.1%増)、セグメント利益は5,335千円(同4.2%増)となりました。
また、当連結会計年度末における財政状態は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末より215,392千円増加し、4,536,950千円となりました。これは主に、売掛金が91,673千円、現金及び預金が55,234千円、投資有価証券が66,960千円、それぞれ増加したこと等によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末より10,927千円増加し、1,391,938千円となりました。これは主に、退職給付に係る負債が23,033千円、買掛金が69,168千円それぞれ増加した一方で、長期借入金が59,400千円、未払法人税等が18,241千円、それぞれ減少したこと等によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末より204,464千円増加し、3,145,012千円となりました。これは主に、利益剰余金の配当を77,789千円行った一方で、ストック・オプション行使に伴い11,998千円の新株発行を行うとともに、親会社株主に帰属する当期純利益を244,016千円計上したこと等によるものです。
この結果、自己資本比率は69.3%(前連結会計年度末は68.0%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べて55,234千円増加し、1,656,810千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは239,506千円の収入(前連結会計年度は224,999千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を349,742千円、減価償却費を47,642千円計上し、仕入債務の増加が69,168千円あった一方で、投資事業組合運用益26,085千円の計上、売上債権の増加が95,757千円、法人税等の支払額が128,321千円、それぞれあったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは55,326千円の支出(前連結会計年度は24,744千円の収入)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出が31,003千円、有形固定資産の取得による支出が3,773千円、無形固定資産の取得による支出が17,594千円、それぞれあったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは128,945千円の支出(前連結会計年度は313,172千円の支出)となりました。これは主にストック・オプション行使に伴う新株発行による収入が11,998千円、配当金の支払額が81,544千円、長期借入金の返済による支出が59,400千円あったこと等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績及び受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績及び受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年3月1日
至 2023年2月28日)
金額(千円)
前年同期比(%)
広告宣伝事業
4,907,021
104.5
報告セグメント計
4,907,021
104.5
その他
151,473
107.1
合計
5,058,495
104.6
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年3月1日
至 2022年2月28日)
当連結会計年度
(自 2022年3月1日
至 2023年2月28日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
旭化成ホームズ株式会社
1,042,117
21.54
1,061,431
20.98
3.広告宣伝事業における、当社分類による顧客所属業界別の販売実績を示すと、次のとおりであります。
業界
当連結会計年度
(自 2022年3月1日
至 2023年2月28日)
金額(千円)
前年同期比(%)
放送・通信
2,065,797
97.44
住まい・暮らし
1,370,998
98.33
医療・健康
366,488
133.83
その他
1,103,738
121.61
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針は、「第5 経理の状況 1. (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりです。また、会計上の見積りにつきましては、入手可能な情報に基づき合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響については「第5 経理の状況 1. (1) 連結財務諸表 注記事項 追加情報 (会計上の見積りにおける一定の仮定)」に記載のとおりです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、「連結売上高」及び「連結営業利益」を重要な経営指標と捉えております。デジタルマーケティングやブランディング、映像制作等、サービス提供領域の拡大を図るとともに、次の10年に向けたビジョンを策定しており、業容の拡大とともにグループの生産性の向上を図り、連結営業利益率の改善も目指してまいります。連結営業利益率の改善に向け、当社が長年にわたり注力してきた事業領域において収益力を維持・強化していくとともに、新たな領域においても収益基盤の確立を図ってまいります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載の通り、連結売上高では増収を達成することができました。新型コロナウイルス感染症に対して各種施策により経済活動の正常化が進む中、医療・健康業界における案件が復調し、またその他業界においてはマーケティング支援を拡大するなど、当連結会計年度における増収の原動力の一つとなりました。また、当連結会計年度末まで連結子会社であった日産社の顧客の受注が回復したことも業績に寄与しました。
放送・通信業界においては、ケーブルテレビ番組情報誌「チャンネルガイド」を中心に、底堅い事業運営を進めました。加えて、ケーブルテレビ番組情報誌の編集・制作事業について同業他社との間で事業の一部譲受に向けた譲渡契約を締結しました。当連結会計年度の業績に与える影響は軽微でありますが、顧客基盤の強化を通じ、今後の更なる顧客基盤拡大に努めました。また、医療・健康業界においては、これまで新型コロナウイルス感染症の影響もあってイベント等を自粛していた主力クライアントの復調の流れを捉えて売上を拡大させました。
さらに、その他業界につきましても、大手外食チェーン向けのマーケティング支援を拡大するなど、クライアントの課題に対して幅広いソリューションを提供しました。このように売上高についてはクライアントの課題解決という観点から、複数業界にまたがる事業のポートフォリオが機能したものと認識しております。
一方で利益面については、人材への投資が人件費等の増加として反映されたこと、また当連結会計年度に営業外収益として計上した投資事業組合運用益が前連結会計年度対比で減少したことにより、減益となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況」に記載の「成長領域への経営資源の適切な投入」、「優秀な人材の確保と育成」、「提供サービスの高付加価値化」は喫緊の課題と認識しております。それらへの対応策として、以下の取り組みを実施しました。
まず「成長領域への経営資源の適切な投入」については、人々の生活様式の変化や用紙価格の高騰などにより、紙媒体を用いた印刷物長期的には減少傾向が見込まれます。これに対し、当社はデジタル領域に経営資源を投入するべく戦略を策定し、その実行に向けた各種施策を行っております。当連結会計年度には、気象連動型広告配信ツールを展開するデジタルエージェンシーとの資本提携も行いました。 次に「優秀な人材の確保と育成」に関しましては、社員も含め、あらゆるステークホルダーの価値創造パートナーとなることを掲げた経営方針のもと、その経営理念の浸透や社員のエンゲージメント向上のための施策を実施し、組織力の強化を図りました。社員を対象にしたエンゲージメント・サーベイも定期的に実施し、現状の把握とそれに基づく分析と施策の立案という循環による改善を図っています。
また「提供サービスの高付加価値化」については、当社グループは、顧客の課題をワンストップで解決する支援を強みとし、人員の過半数をクリエイティブや編集等の制作スタッフとする体制で、顧客の多種多様なニーズに柔軟に応えてきました。一方で、今後も継続的に付加価値を提供するためには、変化する時代のニーズに適した提案力が必要となります。当社グループでは、戦略に基づいたサービス提供体制を構築し、同時に管理会計上で各部門
の創出する付加価値計測の試みを進めております。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業活動のための適切な資金確保、流動性並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出を優先事項として考えております。当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益を349,742千円、減価償却費を47,642千円それぞれ計上したこと等により、239,506千円となりました。また当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は1,656,810千円と十分な流動性を確保している状況であることから、健全な財務状況であると認識しております。
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