【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度(2022年3月1日から2023年2月28日まで)の世界経済は、世界的なモノ不足が続いていたなか、ロシアのウクライナ侵攻に対する大規模な経済制裁によって、部品・資材・エネルギー不足と物価高に拍車がかかりました。歴史的なインフレと物価安定を企図した欧米各国での急速な利上げは、企業活動にも消費活動にもマイナスの影響を与えるとともに、為替相場の急変を招いており、引き続き予断を許さない状況が続いております。
このような環境下にあっても、衣食住の「住」に深く関わり、社会インフラを支えるエッセンシャル事業に必要不可欠な当社製品の需要は、今後も安定拡大が見込めると考えており、当社グループでは生産能力の増強に取り組んでおります。2022年4月に取得した米国サウスカロライナ州の工場におきまして、2022年9月からクローラーローダーの生産を開始しました。同製品の9割以上が米国で販売されており、今後は世界最大の市場である米国で生産することにより、リードタイムを短縮し、より機動的な供給体制を構築することで、販売台数と市場シェアの拡大を図ります。販売面では、2022年9月にミニショベルの新製品「TB335R」を市場投入しました。
また、当社グループの製品需要は欧米ともに好調を維持しており、当連結会計年度の受注高は2,358億6千4百万円(前連結会計年度比2.6%増)となりました。一方、新型コロナウイルス感染拡大の影響長期化、慢性的な部品不足、及び不安定な海外情勢等の複合的な要因により、部品入荷の遅延が依然続いております。これに伴い、当社グループの生産台数は前連結会計年度をやや下回り、当連結会計年度の受注残高は1,907億4千7百万円(同42.5%増)となりました。
以上により、当連結会計年度の売上高は過去最高の1,789億6千6百万円(前連結会計年度比27.0%増)となり、利益面におきましても、各段階利益はそれぞれ過去最高となりました。原材料価格の上昇及び運搬費の増加等の減益要因はあったものの、販売台数の増加に伴う売上高の増加、製品価格の値上げ、及び円安影響等により、営業利益は212億2千1百万円(同19.5%増)となり、経常利益は213億7千9百万円(同18.2%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用を53億9千9百万円計上したため、159億7千9百万円(同19.7%増)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(日本)
売上高は606億5千8百万円(前連結会計年度比23.8%増)となり、セグメント利益は132億9百万円(同6.1%増)となりました。
(米国)
売上高は985億6百万円(前連結会計年度比43.4%増)となり、セグメント利益は98億9千5百万円(同56.0%増)となりました。
(英国)
売上高は121億3千万円(前連結会計年度比12.9%減)となり、セグメント利益は11億1百万円(同12.3%減)となりました。
(フランス)
売上高は75億2千3百万円(前連結会計年度比18.3%減)となり、セグメント利益は6億8千2百万円(同9.6%増)となりました。
(中国)
売上高は1億4千7百万円(前連結会計年度比122.7%増)となり、セグメント利益は2千万円(同76.1%減)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ215億8千4百万円増加し、1,587億8千5百万円となりました。負債合計は前連結会計年度末に比べ38億6千5百万円増加し、369億8千3百万円となりました。純資産合計は前連結会計年度末に比べ177億1千8百万円増加し、1,218億2百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ31億2千8百万円減少し、435億1千9百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は85億3千7百万円(前連結会計年度比52億4千2百万円の減少)となりました。これは主に、売上債権の増加額81億3千2百万円、法人税等の支払額70億9千8百万円、棚卸資産の増加額32億5百万円等の支出がありましたが、税金等調整前当期純利益213億7千9百万円の収入があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は88億6千3百万円(前連結会計年度比45億6千万円の増加)となりました。これは主に、投資有価証券の償還による収入3億円がありましたが、有形固定資産の取得による支出87億6千6百万円、及び無形固定資産の取得による支出2億3千5百万円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は33億2千万円(前連結会計年度比7億8千7百万円の増加)となりました。これは主に、配当金の支払額32億4千6百万円等の支出があったことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年3月1日
至 2023年2月28日)
前年同期比(%)
日本(百万円)
150,918
10.2
米国(百万円)
332
-
中国(百万円)
3,420
4.4
合計(百万円)
154,671
10.3
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。
2.米国は、当連結会計年度より生産を開始したため、前年同期比は記載しておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
日本
64,730
25.4
25,323
19.2
米国
152,107
2.5
154,286
53.2
英国
11,687
△27.0
3,068
△12.6
フランス
7,191
△47.6
8,069
△4.0
中国
147
122.7
-
-
合計
235,864
2.6
190,747
42.5
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引は相殺消去しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 2022年3月1日
至 2023年2月28日)
前年同期比(%)
日本(百万円)
60,658
23.8
米国(百万円)
98,506
43.4
英国(百万円)
12,130
△12.9
フランス(百万円)
7,523
△18.3
中国(百万円)
147
122.7
合計(百万円)
178,966
27.0
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前連結会計年度
(自 2021年3月1日
至 2022年2月28日)
当連結会計年度
(自 2022年3月1日
至 2023年2月28日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
United Rentals, Inc.
20,371
14.5
30,509
17.0
HUPPENKOTHEN GmbH & Co KG
17,690
12.6
24,147
13.5
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績の分析
当社グループの主力市場は米国及び欧州であり、欧米各国における住宅関連工事、生活インフラ整備工事、官民の建設投資に当社製品は使用されております。金利の引き上げ等により住宅市場は減速しましたが、インフラ工事や建設投資が引き続き活況で、当連結会計年度の売上高は過去最高の1,789億6千6百万円(前連結会計年度比27.0%増)となりました。利益面につきましては、原材料価格の上昇及び運搬費の増加等の減益要因はあったものの、販売台数の増加に伴う売上高の増加、製品価格の値上げ、及び円安影響等により、営業利益は212億2千1百万円(同19.5%増)、経常利益は213億7千9百万円(同18.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は159億7千9百万円(同19.7%増)と各段階利益も過去最高となりました。
前連結会計年度と比較した当社グループの販売台数は、上期は2.7%、下期は16.6%、通期は9.1%の増加となりました。上期においては、部品調達難や物流混乱の影響により欧州で伸び悩みましたが、通期では欧米ともにミニショベル、油圧ショベル及びクローラーローダーの主力製品すべての販売台数が増加いたしました。また、当社グループの当連結会計年度の受注高は2,358億6千4百万円(同2.6%増)となり、現有の生産能力を上回る受注状況により、当連結会計年度末の受注残高は1,907億4千7百万円(同42.5%増)となりました。
このような状況下、当社グループでは生産能力の増強に取り組んでおります。2022年9月には米国サウスカロライナ州で米国工場が稼働開始し、セミノックダウン方式(日本の本社工場で製品が自走できる状態にまで組み立てて、残りの工程を米国工場で行う生産方式)により、クローラーローダーを生産しております。当工場は当社グループとして初めての米国生産拠点であり、従業員の安全と製造スキルの向上、そして製品の品質を最優先にスロースタートし、徐々に稼働ペースを上げていく計画のため、当連結会計年度の経営成績への影響は軽微でした。なお、2023年9月には長野県小県郡青木村でも新工場の稼働開始を予定しており、4トン~9トンのミドルクラスのショベル生産を本社工場から移管する予定です。
ロシアによるウクライナ侵攻、部品・資材・エネルギー不足と物価高、欧米各国での利上げや不安定な為替相場など、世界情勢は依然として予断を許さない状況が継続しております。このような先行き不透明な状況にあっても、社会インフラを支える企業として、当社グループがなすべきことを着実に推し進め、持続的な成長発展を果たしてまいります。
b. 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ215億8千4百万円増加し、1,587億8千5百万円となりました。これは主に、現金及び預金が32億6千3百万円減少しましたが、売上高の増加により受取手形及び売掛金が100億2百万円、棚卸資産が63億6千9百万円、米国工場の取得及び青木工場の建設等により有形固定資産が73億3千8百万円増加したこと等によるものです。棚卸資産のうち、仕掛品は92億3千8百万円増加し、153億4千6百万円となりました。これは主に、電子部品の入荷状況が流動的であり、その対策として現地で電子部品を後付けすべく、未装着の仕掛品を先行出荷したことにより現地在庫が増加したこと、及び米国工場が稼働したことにより、米国工場で完成品となるクローラーローダーが本社工場から仕掛品として出荷開始されたこと等によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ38億6千5百万円増加し、369億8千3百万円となりました。これは主に、未払法人税等が9億9千3百万円減少しましたが、買掛金が22億6千3百万円、流動負債のその他が19億9千7百万円、製品保証引当金が3億5千7百万円増加したこと等によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ177億1千8百万円増加し、1,218億2百万円となりました。これは主に、利益剰余金が配当金の支払により32億4千6百万円減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益により159億7千9百万円増加したこと、及び為替換算調整勘定が50億6千万円増加したこと等によるものです。
c. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための材料の購入、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、設備投資のほか、人的資本への投資及び新製品や要素技術の研究開発投資です。なお、設備投資の大型案件としまして、2022年1月より長野県小県郡青木村で新工場建設(約110億円)に着手するとともに、2022年4月には米国サウスカロライナ州で建設機械工場(約47億円)を取得いたしました。
運転資金需要及び投資資金需要の財源につきましては、現在保有する現預金に加え、営業キャッシュ・フローを源泉として資金を充当することを基本としております。なお、当連結会計年度末時点において有利子負債はありません。
資金の流動性に関しましては、当連結会計年度末時点の流動比率は358.6%であります。
d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、3年間(2023年2月期~2025年2月期)の第三次中期経営計画を策定しました。売上高、営業利益、1株当たり当期純利益、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、主に以下の施策に取り組んでおります。
○人的資本への投資
○製品開発のスピードアップ
○生産能力の増強
○販売網の拡充とアフターパーツの拡販
○サステナビリティ経営の推進
なお、2022年4月に公表した第三次中期経営計画の最終年度(2025年2月期)の数値目標を以下のとおり定めています。
2023年2月期
実績
2025年2月期
数値目標
売上高
1,789
億円
2,400
億円
営業利益
212
億円
240
億円
1株当たり当期純利益
335.19
円
377.00
円
自己資本利益率(ROE)
14.1%
14.0%
為替レート
米ドル
133.12
円
115.00
円
英ポンド
162.58
円
152.00
円
ユーロ
139.81
円
127.00
円
人民元
19.49
円
18.00
円
※2023年2月期の為替レートは、12ヶ月間の期中平均レートを表示しております。
※以下のCAPM算定式を基準として、当社は株主資本コストを8%と認識しております。
リスクフリーレート(1%)+ベータ値(1.2)×マーケットリスクプレミアム(6%)
e. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(日本)
日本セグメントは、売上高のほとんどが欧州ディストリビューター向けの販売で占められております。欧州では、ウクライナ侵攻や世界的な原材料価格の高騰等を背景とした物価上昇から、政策金利が引き上げられるなど先行きは引き続き不透明な状況にありましたが、製品販売は引き続き好調に推移しました。欧州ディストリビューター向けのミニショベル及び油圧ショベルの販売台数は大きく増加し、売上高は606億5千8百万円(前連結会計年度比23.8%増)となりました。セグメント利益は、原材料価格及び運搬費の増加等の減益要因はあったものの、売上高の増加、製品価格の値上げ、及び円安影響等により、132億9百万円(同6.1%増)となりました。セグメント資産は、販売台数の増加に伴い売掛金が増加したこと、青木工場建設等にかかる建設仮勘定が増加したこと等により、前連結会計年度末から114億3百万円増加の787億9千4百万円となりました。
(米国)
米国セグメントでは、住宅市場において金利上昇と木材等の材料不足が懸案事項ではあるものの、製品販売は引き続き好調に推移しました。米国ではミニショベル、油圧ショベル及びクローラーローダーの販売台数が大きく増加し、製品価格の値上げ、及び円安影響等により、売上高は985億6百万円(前連結会計年度比43.4%増)となり、セグメント利益は98億9千5百万円(同56.0%増)となりました。セグメント資産は、現金預金が減少したものの、棚卸資産が増加したこと、販売台数の増加に伴い売掛金が増加したこと、及び工場の取得により有形固定資産が増加したこと等により、前連結会計年度末から135億6千万円増加の548億9千8百万円となりました。なお、棚卸資産の増加は主に、米国工場が稼働したことに伴い、本社工場から出荷され現地で完成品となるクローラーローダーの仕掛品が増加したことによるものです。
(英国)
英国セグメントでは、製品需要は好調を維持したものの、現地での製品在庫の不足により、販売台数は前連結会計年度に比べて減少しました。製品価格の値上げや円安影響はあったものの、売上高は121億3千万円(前連結会計年度比12.9%減)となり、セグメント利益は11億1百万円(同12.3%減)となりました。セグメント資産は、棚卸資産が増加したこと、現金預金及び売掛金が増加したこと等により、前連結会計年度末から17億9千9百万円増加の89億6千3百万円となりました。
(フランス)
フランスセグメントでは、製品需要は好調を維持したものの、現地での製品在庫の不足により、販売台数は前連結会計年度に比べて減少しました。製品価格の値上げや円安影響はあったものの、売上高は75億2千3百万円(前連結会計年度比18.3%減)となり、セグメント利益は6億8千2百万円(同9.6%増)となりました。セグメント資産は、棚卸資産が増加したこと等により、前連結会計年度末から10億8千9百万円増加の56億3千7百万円となりました。
(中国)
中国セグメントでは、東南アジア向けに製品を販売したこと等により、売上高は1億4千7百万円(前連結会計年度比122.7%増)となりましたが、原材料価格の高騰により、セグメント利益は2千万円(同76.1%減)となりました。セグメント資産は、棚卸資産が減少したこと等により、前連結会計年度末から2億1千3百万円減少の31億1千4百万円となりました。
(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。