【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当社グループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というビジョンを掲げており、社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果として、より良い社会を実現することを目指しております。
当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「帳票・文書管理ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しております。
当第1四半期連結累計期間(2023年3月1日~5月31日)における我が国の経済環境は、引き続きエネルギーや原材料価格の高騰の影響を受けているものの、コロナ禍から回復しつつあるサービス消費やサプライチェーンの制約緩和による企業活動が底堅く推移し、さらに旺盛なインバウンド需要の影響により、景気は緩やかな回復傾向となりました。欧州でのエネルギー問題や米国での更なる利上げ、さらには地政学リスクによる不確実性の高まりが見込まれることから海外経済に減速リスクはあるものの、国内経済は今後も所得や雇用環境の改善が進み、回復は続く見込みです。
当社グループが属する企業向けIT市場は、クラウド化やサブスクリプションモデルの浸透といった外部環境の影響を受けにくい産業構造へ変化しており、これらに加え、リモートワーク、サプライチェーンの強化、業務のペーパーレス化、電子帳簿保存法やインボイス制度等の法令対応等により、企業の積極的な投資は継続する見込みとなっております。2023年のIT市場は、前年比5.8%増と堅調に成長することが見込まれております(注1)。クラウド市場は、リモートワーク需要による急拡大及び円安による成長率の底上げの反動により成長率は低下が見込まれるものの、オンプレミス型からクラウド型へのマイグレーションの流れは継続するため、2023年は前年比27.0%と高い成長となることが見込まれております(注2)。
(注)1 IDC Japan, 2023年4月「国内IT市場 産業分野別/従業員規模別/年商規模別予測、2023年~2027年」(JPJ49208023)TABLE2 国内IT市場 産業分野別 支出額予測、2021年~2027年、企業分野小計
2 IDC Japan, 2023年5月「国内クラウド市場予測、2023年~2027年」(JPJ49209223)TABLE 1 国内クラウド市場配備モデル別 売上額予測、2022年~2027年、クラウド合計
このような状況の下、当社グループは、企業のDXを推し進めるソリューションの強化を行っており、クラウドサービスを中心に機能強化や新サービスのリリースを行いました。自社だけではなく、様々な企業とのエコシステムを構築することによって、ソリューションの価値を高めてまいります。
2023年4月
「invoiceAgent」と株式会社NTTデータ・ビズインテグラルが提供する大企業向けERPパッケージ「Biz∫(ビズインテグラル)」が「Peppol(ペポル、注1)」をベースとした日本におけるデジタルインボイス標準仕様(JP PINT)へ対応した連携を開始。
2023年4月
「invoiceAgent」が、株式会社エイトレッドが開発提供するクラウド型ワークフロー「X-point Cloud」との連携アダプター「invoiceAgent Adapter for X-point 」の提供を開始。文書のワークフローにおける属性情報と合わせた文書の電子化から保管までを一元管理し、効率化を実現。
2023年4月
入力機能を強化したBIダッシュボード「MotionBoard Ver.6.4」の提供を開始。業務で発生したデータのフォームによるスムーズな入力やノーコードでの設計・運用可能なボタンアクションの強化等現場業務を強力にサポート。
2023年4月
住友電設株式会社、株式会社テクノ経営ウェブソリューションズ及び当社は共同で、工場経営のオンライン家庭教師、中小製造業向け企業成長支援ソリューション「グロサポ」の提供を開始。IoTで生産活動をデジタル化し、工場の状況を可視化することで改善につながるデータ活用を支援。
2023年5月
「Dr.Sum」が世界 100ヶ国以上、38,000 社以上の顧客を持つクリックテック・ジャパン株式会社BIツール「Qlik Sense」およびデータレプリケーションツール「Qlik Replicate」と連携。ユーザーに相互の強みを生かした体験を提供。
2023年5月
スモールデータを簡単に収集する「Dataring SmallData Manager」の提供を開始。既に利用しているシステムや業務の運用を変更せずに、スモールデータを収集のプロセスを簡易化し、バリデーション処理やクレンジング処理の自動実行を実現。
(注)1 Peppol(Pan European Public Procurement Online)は、請求書(インボイス)などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」のグローバルな標準仕様であり、OpenPeppol(ベルギーの国際的非営利組織)がその管理等を行っている。
また、当社グループでは、製造・物流・ヘルスケア・小売・外食・金融・公共等業界ごとのDX企画部門を組織しており、それぞれの分野での最適なソリューションの提供による顧客のDXを推進する活動を行っております。そして、これらの組織がDX推進に関する業界ごとの課題解決のノウハウを蓄積しており、それらをクラウドサービス化し、より広範な顧客に提供することを目的に活動しております。
上記のような取り組みにより、今後もクラウドを中心としたビジネスを成長の柱に企業のDXを推し進めてまいります。
当第1四半期連結累計期間(2023年3月1日~5月31日)における売上収益は6,921百万円(前年同期比20.9%増)、営業費用(その他の営業収益を控除後)は、人員の採用による人件費や販売費の増加などで4,343百万円(前年同期比14.7%増)、営業利益は2,578百万円(前年同期比33.2%増)、税引前四半期利益は2,551百万円(前年同期比33.7%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は1,837百万円(前年同期比27.0%増)となりました。
また、当社グループは、上記のIFRSにより規定された財務指標以外に、以下のEBITDAを重要な経営指標と位置付けております。なお、これまで重要な経営指標として「調整後EBITDA」及び「調整後当期利益」(以下、「調整後指標」)を開示してまいりましたが、2022年2月期以降、投資判断にあたり調整を要すると思われる費用がほぼ発生していないことから、2024年2月期以降は「調整後指標」の開示は行いません。なお、今後「調整後指標」を比較に用いる場合はその旨明記いたします。
(単位:百万円)
決算期
2023年2月期
第1四半期
2024年2月期
第1四半期
増減
増減率
営業利益
1,935
2,578
642
33.2%
減価償却費及び償却費
(注1)
324
305
△ 18
△5.7%
EBITDA(注2)
2,259
2,883
624
27.6%
(注)1.2020年2月期より、IFRS第16号の適用により、オフィスの賃借契約に係る使用権を使用権資産として認識しており、当該資産に係る減価償却費も併せて計上しておりますが、EBITDA算出におきましては、「減価償却費及び償却費」からは当該使用権資産に係る減価償却費を除いております。
2.EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費
EBITDAは、減価償却費及び償却費が若干減少したものの、営業利益の増加により2,883百万円(前年同期比27.6%増)と増加しました。
当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「帳票・文書管理ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しております。
・ソリューション区分別売上収益
(単位:百万円)
ソリューション区分
2023年2月期
第1四半期
2024年2月期
第1四半期
増減
増減率
帳票・文書管理
ソリューション
SVF
3,373
3,813
439
13.0%
invoiceAgent
280
497
216
77.3%
その他
38
74
36
96.2%
小計
3,692
4,385
692
18.8%
データエンパワーメントソリューション
Dr.Sum
769
809
40
5.2%
MotionBoard
785
1,123
338
43.1%
その他
476
603
126
26.5%
小計
2,031
2,536
505
24.9%
合計
5,723
6,921
1,198
20.9%
(帳票・文書管理ソリューション)
当ソリューションは、企業の基幹業務に必須である請求書や納品書等の帳票類を設計・運用を行うソフトウェア及びサービスである「SVF」及び電子データの保管や紙文書の電子化を行う「invoiceAgent」が主な構成要素となっております。
「SVF」は、前年に引き続き大企業を中心とした基幹システムへの投資が継続したことにより、ライセンス/サービスが前年同期比11.3%増と前年を上回りました。保守については、前年の契約獲得が好調に推移したことから、前年同期比12.0%増と前年を上回りました。クラウドサービスについては、様々なアライアンスによりサービス提供範囲が拡大したことから、前年同期比32.3%増と好調な結果となりました。この結果、売上収益は3,813百万円(前年同期比13.0%増)となりました。
「invoiceAgent」は、大企業の全社的な文書管理ニーズの拡大により、ライセンス/サービスが前年同期比111.9%増と前年を大きく上回りました。保守については、契約を順調に伸ばし、前年同期比32.0%増と前年を上回りました。一方、クラウドサービスについては、ペーパーレス化や電子帳簿保存法対応の需要が根強いことから契約社数が増加し、前年同期比63.9%増と大幅に増加しました。この結果、売上収益は497百万円(前年同期比77.3%増)と前年から大きく成長しました。
この結果、当ソリューションの売上収益は4,385百万円(前年同期比18.8%増)となりました。
(データエンパワーメントソリューション)
当ソリューションは、企業が保有するデータを統合・処理・分析・可視化する事により、業務の効率化や生産性の向上を実現するソフトウェア及びサービスである「Dr.Sum」「MotionBoard」が主な構成要素となっております。
「Dr.Sum」は、コロナ禍からの回復が一服したことからライセンス/サービスが前年同期比8.0%減と若干減少しました。保守については、前年同期比4.0%増と堅調に推移しております。クラウドサービスについては、大企業を中心に案件獲得を進めており、前年同期比92.9%増と大きく成長しました。この結果、売上収益は809百万円(前年同期比5.2%増)となりました。
「MotionBoard」は、大型案件の獲得により、ライセンス/サービスが前年同期比93.8%増と大きく成長しました。保守については、前年同期比8.1%増と堅調に推移しております。クラウドサービスについては、着実に契約社数を積み上げた結果、前年同期比28.4%増と大きく成長しました。この結果、売上収益は1,123百万円(前年同期比43.1%増)となりました。
この結果、当ソリューションの売上収益は2,536百万円(前年同期比24.9%増)となりました。
また、当社グループが提供するソフトウェア及びサービスについては、ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引と、ソフトウェアの保守サポート契約、サブスクリプション契約やクラウドサービスの利用契約のような継続的な契約を前提とした取引により構成されています。継続的な契約を前提とした取引は、導入企業が増加するにつれて年々売上収益が積みあがるリカーリングビジネスと呼ばれる収益モデルであり、これらのビジネスから得られる収益(リカーリングレベニュー)は、当社グループの収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。
・契約区分別売上収益
(単位:百万円)
契約区分
2023年2月期
第1四半期
2024年2月期
第1四半期
増減
増減率
ライセンス/サービス
2,518
3,156
637
25.3%
リカーリング
保守
2,322
2,568
246
10.6%
クラウド
722
960
237
32.9%
サブスクリプション
160
236
76
47.6%
小計
3,204
3,765
560
17.5%
合計
5,723
6,921
1,198
20.9%
(注)より詳細な情報につきましては、当社IRサイト(https://ir.wingarc.com/)財務情報ページの最新の「FACT BOOK」をご参照下さい。
(2)財政状態の分析
(資産)
当第1四半期連結会計期間末における資産は、65,210百万円(前期末比2,660百万円増)となりました。流動資産は15,320百万円(前期末比2,081百万円増)、非流動資産は49,889百万円(前期末比578百万円増)となりました。流動資産の増加の主な要因は、売掛金の増加に伴う営業債権及びその他の債権の増加967百万円及び、現金及び現金同等物930百万円の増加によるものです。非流動資産の増加の主な要因は、投資有価証券などその他の金融資産の増加606百万円があったことによるものであります。
(負債)
当第1四半期連結会計期間末における負債は、29,346百万円(前期末比1,370百万円増)となりました。流動負債は13,976百万円(前期末比1,224百万円増)、非流動負債は15,369百万円(前期末比146百万円増)となりました。流動負債の増加の主な要因は、賞与引当金の減少などその他の流動負債の減少364百万円があったものの、契約負債の増加1,663百万円があったことによるものです。非流動負債の増加の主な要因は、繰延税金負債の増加76百万円、リース負債の増加に伴うその他の金融負債64百万円の増加があったことによるものであります。
(資本)
当第1四半期連結会計期間末における資本は、35,864百万円(前期末比1,290百万円増)となりました。資本の増加の主な要因は、配当金の支払に伴う利益剰余金の減少748百万円があったものの、親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上に伴う利益剰余金1,837百万円の増加があったこと、その他の資本の構成要素186百万円の増加によるものであります。
(3)キャッシュ・フローの分析
当第1四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、12,106百万円(前期末比930百万円増)となりました。
当第1四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、2,342百万円(前年同期は1,861百万円の獲得)となりました。これは主に、法人所得税の支払額831百万円の計上があったものの、税引前四半期利益2,551百万円の計上、減価償却費及び償却費の計上386百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、582百万円(前年同期は179百万円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出341百万円、社内インフラサービスID基盤構築や基幹システム刷新に伴う改修などによる無形資産の取得による支出220百万円を計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、830百万円(前年同期は800百万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額745百万円を計上したことによるものであります。
(4)経営方針・経営戦略等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当社グループは、主に企業向けソフトウェア及びサービスの開発に係る研究開発を行っており、市場の拡大や技術の進歩により多様化、高度化し、広汎な範囲にわたる顧客ニーズに応える製品を研究、開発し、提供することを基本方針としております。当第1四半期連結累計期間における当社グループの研究開発活動の金額は、713百万円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況について重要な変更はありません。
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