【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の分析
当社グループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というビジョンを掲げており、社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果として、より良い社会を実現することを目指しております。
当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「帳票・文書管理ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しております。
当第3四半期連結累計期間(2022年3月1日~11月30日)における我が国の経済環境は、円安と資源高を背景とした製造コストの上昇、また、海外での急激な金融引き締めによる景気減速リスクが高まる中、個人消費や設備投資が持ち直しつつあり、ウィズコロナの下、緩やかな景気回復基調となっております。
このような状況の下、当社グループが属する企業向けIT市場は、コロナ禍の影響による非接触型の活動やサービスの拡大及び企業の生産性の向上や競争力強化のためのデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資の強化により、クラウドサービスを中心に拡大しております。2022年1月に改正電子帳簿保存法の施行、2023年10月にはインボイス制度の導入等企業活動のデジタル化に関して政策的な後押しがあり、さらにこれらに加えて企業向けIT市場自体が企業システムのクラウド化やサブスクリプションモデルの浸透といった外部環境の影響を受けにくい産業構造へ変化しており、2022年は前年比4.4%増と堅調に成長することが見込まれております(注1)。
特にクラウド市場は、パブリッククラウドの拡大に加え、DXやクラウドマイグレーションといった企業自身のクラウドシステムへの投資がより一層進展する影響により、2022年は前年比29.2%と大幅に成長することが見込まれております(注2)。
(注)1 インターナショナルデーターコーポレイションジャパン株式会社「国内IT市場 産業分野別/従業員規模別/年商規模別予測アップデート、2022年~2026年(JPJ49207722)」TABLE2 国内IT市場 産業分野別 支出額予測、2020年~2026年、企業分野小計
2 インターナショナルデーターコーポレイションジャパン株式会社「国内クラウド市場予測、2022年~2026年(JPJ47872322)」TABLE 1 国内クラウド市場配備モデル別売上額予測、2021年~2026年
このような状況の下、当社グループは、企業のDXを推し進めるソリューションの強化を行っており、クラウドサービスを中心に機能強化や新サービスのリリースを行いました。自社だけではなく、様々な企業とのエコシステムを構築することによって、ソリューションの価値を高めてまいります。
2022年9月
クラウド帳票サービス「SVF Cloud for SmartHR」の提供を開始。社内で使用している既存のPDFファイルや紙の帳票の固定文字や罫線を一括で取り込み、使い慣れた帳票レイアウトのままクラウド上に移行することができ、帳票運用に関わる業務効率化を実現。
2022年9月
「invoiceAgent 文書管理」とコンテンツクラウド「Box」の連携を強化した「invoiceAgent Adapter for Box」の提供を開始。メタデータの自動反映による文書の検索性向上やinvoiceAgentの文書をBoxに自動出力等Box上の文書活用を推進。
2022年10月
データ分析基盤「Dr.Sum」電子帳簿保存法対応モデルの提供を開始。電子帳簿保存法対応を目的とした帳簿・書類・電子取引の電子データの保存に用途を限定したモデルでデータ保存のためのデータベースエンジンとデータ検索・閲覧のためのWebユーザーインターフェイスを利用可能。
2022年10月
BIダッシュボード「MotionBoard」と「Google Cloud」のManufacturing Data Engineを連携した製造業向けソリューションの提供を開始。様々なデータをGoogle Cloudの分析基盤に集約、生産現場のデータと工場経営のKPIの関連付けを行い、MotionBoardによって視覚化することで、データをもとに迅速な現場アクションと経営判断を支援。
2022年10月
電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」と業務プロセスのデジタル化・フルオートメーション化を実現するシステム共通基盤「intra-mart」が連携し、「invoiceAgent Adapter for intra-mart」の提供を開始。
2022年10月
データ分析基盤「Dr.Sum Cloud」とセルフサービスBI「ThoughtSpot」が連携。本連携により、外部システム連携やデータセット作成・抽出といったデータベース専用のスキルが不要となり、技術者の開発工数を削減。また、ThoughtSpotによりDr.Sum Cloudで高速処理された大量のライブデータを分析し、加えてAI機能により関連するインサイトを自動で提供可能。
2022年10月
Peppolサービスプロバイダーとしてデジタル庁より認定。当社サービス単独でPeppol対応が可能となり、顧客が利用中の業務システムがPeppol非対応の場合においても、Peppolフォーマットへの変換、送受信が可能。
また、当社グループでは、製造・物流・ヘルスケア・小売・外食・金融・公共等業界ごとのDX企画部門を組織しており、それぞれの分野での最適なソリューションの提供による顧客のDXを推進する活動を行っております。そして、これらの組織がDX推進に関する業界ごとの課題解決のノウハウを蓄積しており、それらをクラウドサービス化し、より広範な顧客に提供することを目的に活動しております。
上記のような取り組みにより、今後もクラウドを中心としたビジネスを成長の柱に企業のDXを推し進めてまいります。
当第3四半期連結累計期間(2022年3月1日~11月30日)における売上収益は17,019百万円(前年同期比14.7%増)、営業費用(その他の営業収益を控除後)は、DX関連ソリューション開発に伴う外注費、人員の採用による人件費や採用費、販売促進費の増加などで11,786百万円(前年同期比15.8%増)、営業利益は5,233百万円(前年同期比12.3%増)、税引前四半期利益は5,160百万円(前年同期比12.5%増)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は3,907百万円(前年同期比15.6%増)となりました。
また、当社グループは、通常の営業活動の結果を示していると考えられない非経常的な費用項目の影響を除外することで、投資家が当社グループの業績評価を行い、当社グループの企業価値についての純粋な成長を把握する上で有用な情報を提供することを目的として、上記のIFRSにより規定された財務指標以外に、以下の調整後EBITDA及び調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益を重要な経営指標と位置付けております。
[調整後EBITDA及び調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益の調整表]
(単位:百万円)
決算期
2022年2月期
第3四半期
2023年2月期
第3四半期
増減
増減率
営業利益
4,658
5,233
575
12.3%
減価償却費及び償却費
(注1)
950
916
△ 34
△3.6%
EBITDA(注2)
5,609
6,149
540
9.6%
(調整額)
上場関連費用
20
-
△20
△100%
調整後EBITDA(注3)
5,630
6,149
519
9.2%
(単位:百万円)
決算期
2022年2月期
第3四半期
2023年2月期
第3四半期
増減
増減率
親会社の所有者に帰属する四半期利益
3,381
3,907
526
15.6%
(調整額)
上場関連費用
20
-
△20
△100%
調整項目の税効果調整
(注4)
△5
-
5
△100%
調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益(注5)
3,396
3,907
510
15.0%
(注)1.IFRS第16号の適用により、オフィスの賃借契約に係る使用権を使用権資産として認識しており、当該資産に係る減価償却費も併せて計上しておりますが、EBITDA算出におきましては、「減価償却費及び償却費」からは当該使用権資産に係る減価償却費を除いております。
2.EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費
3.調整後EBITDA=EBITDA+一過性の費用
4.調整項目の税効果調整は実効税率を用いて算出しております。
5.調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益=親会社の所有者に帰属する四半期利益+一過性の費用-調整項目の税効果調整
EBITDA及び調整後EBITDAは、営業利益の増加により、それぞれ6,149百万円(前年同期比9.6%増)、6,149百万円(前年同期比9.2%増)と大きく増加しました。調整後親会社の所有者に帰属する四半期利益も、親会社の所有者に帰属する四半期利益の増加により、3,907百万円(前年同期比15.0%増)と大きく増加しました。
当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「帳票・文書管理ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しております。
・ソリューション区分別売上収益
(単位:百万円)
ソリューション区分
2022年2月期
第3四半期
2023年2月期
第3四半期
増減
増減率
帳票・文書管理
ソリューション
SVF
8,490
9,964
1,473
17.4%
invoiceAgent
(注)
667
857
190
28.5%
その他
92
95
2
2.5%
小計
9,250
10,916
1,665
18.0%
データエンパワーメントソリューション
Dr.Sum
2,050
2,272
222
10.8%
MotionBoard
2,191
2,311
120
5.5%
その他
1,343
1,518
175
13.1%
小計
5,585
6,103
517
9.3%
合計
14,836
17,019
2,183
14.7%
(注)2022年6月1日より、「SPA」の名称が「invoiceAgent」へ変更になったことに伴い、各種表記を変更しております。
(帳票・文書管理ソリューション)
当ソリューションは、企業の基幹業務に必須である請求書や納品書等の帳票類を設計・運用を行うソフトウェア及びサービスである「SVF」及び企業間取引の電子化を実現する「invoiceAgent」が主な構成要素となっております。
「SVF」は、DXに関する投資が大企業を中心に活発化し、基幹システムへの投資が増加したことから、基幹システムとともに導入されることが多いソフトウェア版「SVF」の引き合いも増加し、ライセンス/サービスは前年同期比35.6%増と前年を大きく上回り、あわせて保守も堅調に推移しました。クラウドサービスについては、クラウド市場の拡大に伴い好調に推移し、前年同期比34.5%増と前年を大きく上回りました。この結果、売上収益は9,964百万円(前年同期比17.4%増)となりました。
「invoiceAgent」は、企業のペーパーレス化や電子帳簿保存法のニーズが追い風となり、大きく成長しました。企業の業務システムのクラウド化が大きく進展していることにより、「invoiceAgent」においても、クラウドサービスを選択する割合が増加しており、クラウドサービスは前年同期比137.5%増と前年を大きく上回りました。一方、ライセンス/サービスは、顧客のクラウド志向が強まっている影響で前年同期比21.4%減と前年を下回りました。保守は引き続き堅調に推移し、前年同期比39.1%増と前年を大きく上回りました。この結果、売上収益は857百万円(前年同期比28.5%増)となりました。
この結果、当ソリューションの売上収益は10,916百万円(前年同期比18.0%増)となりました。
(データエンパワーメントソリューション)
当ソリューションは、企業が保有するデータを統合・処理・分析・可視化する事により、業務の効率化や生産性の向上を実現するソフトウェア及びサービスである「Dr.Sum」「MotionBoard」が主な構成要素となっております。
「Dr.Sum」は、コロナ禍で縮小していた中堅中小企業の投資が回復したことからライセンス/サービスが前年同期比9.3%増、保守も前年同期比4.5%増と堅調に推移、クラウドサービスも売上規模は小さいながらも順調に導入が進み、前年同期比204.1%増と成長に寄与しました。この結果、売上収益は2,272百万円(前年同期比10.8%増)となりました。
「MotionBoard」は、ライセンス/サービスは前年並みとなったものの、保守はカスタマーサクセス強化の効果で継続率が高い状態を維持しており、前年同期比14.8%増と前年を大きく上回りました。クラウドサービスについては、契約社数が順調に増加したことに加え、大規模案件の受注もあり、大型案件剥落の影響をカバーし、前年同期比2.0%増と前年を上回りました。この結果、売上収益は2,311百万円(前年同期比5.5%増)となりました。
この結果、当ソリューションの売上収益は6,103百万円(前年同期比9.3%増)となりました。
また、当社グループが提供するソフトウェア及びサービスについては、ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引と、ソフトウェアの保守サポート契約、サブスクリプション契約やクラウドサービスの利用契約のような継続的な契約を前提とした取引により構成されています。継続的な契約を前提とした取引は、導入企業が増加するにつれて年々売上収益が積みあがるリカーリングビジネスと呼ばれる収益モデルであり、これらのビジネスから得られる収益(リカーリングレベニュー)は、当社グループの収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。
・契約区分別売上収益
(単位:百万円)
契約区分
2022年2月期
第3四半期
2023年2月期
第3四半期
増減
増減率
ライセンス/サービス
5,804
7,141
1,337
23.0%
リカーリング
保守
6,714
7,060
346
5.2%
クラウド
1,909
2,291
382
20.0%
サブスクリプション
408
526
117
28.8%
小計
9,032
9,878
846
9.4%
合計
14,836
17,019
2,183
14.7%
(注)より詳細な情報につきましては、当社IRサイト(https://ir.wingarc.com/)財務情報ページ「決算説明会資料」内の最新の「FACT BOOK」をご参照下さい。
(2)財政状態の分析
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における資産は、61,579百万円(前期末比2,659百万円増)となりました。流動資産は13,278百万円(前期末比2,338百万円増)、非流動資産は48,300百万円(前期末比321百万円増)となりました。流動資産の増加の主な要因は、現金及び現金同等物1,955百万円の増加や営業債権及びその他の債権234百万円の増加によるものです。非流動資産の増加の主な要因は、顧客関係・技術関連資産の償却などに伴うその他の無形資産367百万円の減少があったものの、投資有価証券などその他の金融資産の増加400百万円や本社オフィス契約更新に伴う使用権資産など有形固定資産の増加229百万円によるものであります。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における負債は、28,059百万円(前期末比240百万円減)となりました。流動負債は11,727百万円(前期末比324百万円増)、非流動負債は16,331百万円(前期末比565百万円減)となりました。流動負債の増加の主な要因は、未払法人所得税の減少441百円があったものの、契約負債の増加781百万円があったことによるものです。非流動負債の減少の主な要因は、本社オフィス契約更新に伴うリース負債の増加によるその他の金融負債320百万円の増加があったものの、長期借入金の減少982百万円があったことによるものであります。
(資本)
当第3四半期連結会計期間末における資本は、33,520百万円(前期末比2,900百万円増)となりました。資本の増加の主な要因は、配当金の支払に伴う利益剰余金の減少1,479百万円があったものの、親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上に伴う利益剰余金3,907百万円の増加があったことによるものであります。
(3)キャッシュ・フローの分析
当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、10,972百万円(前期末比1,955百万円増)となりました。
当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、5,019百万円(前年同期は4,046百万円の獲得)となりました。これは主に、法人所得税の支払額1,788百万円の計上があったものの、税引前四半期利益5,160百万円の計上、減価償却費及び償却費の計上1,120百万円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、435百万円(前年同期は408百万円の使用)となりました。これは主に、業務用パソコンや社内インフラ整備用サーバー機器の取得に伴う有形固定資産の取得による支出69百万円、社内インフラサービスID基盤構築や次期基幹システム設計などに伴う無形資産の取得による支出332百万円を計上したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、2,685百万円(前年同期は1,033百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1,000百万円、配当金の支払額1,469百万円を計上したことによるものであります。
(4)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(6)研究開発活動
当社グループは、主に企業向けソフトウェア及びサービスの開発に係る研究開発を行っており、市場の拡大や技術の進歩により多様化、高度化し、広汎な範囲にわたる顧客ニーズに応える製品を研究、開発し、提供することを基本方針としております。当第3四半期連結累計期間における当社グループの研究開発活動の金額は、1,950百万円であります。
なお、当第3四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況について重要な変更はありません。
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