【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」に移行し、社会経済活動は正常化が進み景気は持ち直しの動きがみられました。また、海外のリスクマネーの流入により日経平均株価はバブル経済崩壊後の高値を更新する等、明るい兆しも見え始めました。一方、東欧や東アジアでの地政学リスクの高まりや、原材料やエネルギー価格の高騰に加え、世界的な金融引締め等を背景とした世界経済の減速が懸念されており、先行きは不透明な状況で推移しております。
当社グループを取り巻く経営環境について、アニメーション産業は、一般社団法人日本動画協会による「アニメ産業レポート2022サマリー」2023年1月発表によれば、コロナ禍に直撃された2020年は、2010年から2019年まで10年連続で伸び続けていたアニメ産業市場は前年比96.5%と減少しましたが、制作受注案件や企画数は増えており底堅い需要に支えられ、パンデミックが続く翌年2021年は、前年比113.3%の2兆7,422億円という大幅な増額となりました。また、海外市場においても前年に比べ740億円増加し1兆3,134億円(前年比106%)となり成長基調となっております。
出版産業は、全国出版協会・出版科学研究所による2023年1月25日付発表によれば、紙と電子を合算した2022年の出版市場は、前年比2.6%減の1兆6,305億円となりました。紙出版が引き続き前年比6.5%減となる一方で、これまで二桁成長を続けてきた電子出版は7.5%増にとどまり、紙の減少分をカバーできなかったという結果となりました。電子出版市場は5,013億円となり、その内訳は電子コミック4,479億円(8.9%増)、電子書籍446億円(0.7%減)、電子雑誌88億円(11.1%減)となり、電子出版市場における電子コミックの市場占有率は89.3%となっております。
このような情勢のもと当社グループは、テレビ・配信・ビデオ用アニメーション、劇場用アニメーション、その他にゲーム用、プロモーション用、実写等の制作を行う映像制作事業、コミック誌、書籍(コミックス、ノベルス、原作ガイドブックを含む)の企画・製造・販売及び電子コミックスの配信を行う出版事業、映像作品等へ出資することによる二次利用から生じる収益分配を主とする版権事業を中心に行い、前期に比べ減収増益となりました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は11,163,699千円(前期比6.0%減)、経常利益は999,736千円(前期比74.0%増)、映像マスター及びコンテンツ資産の減価償却費の一部について、税務上、前期に損金計上されないものが当期に損金計上されたため、法人税額が少なくなったことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は766,823千円(前期は5,751千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
各セグメントの業績は次のとおりであります。
(映像制作事業)
映像制作事業におきましては、テレビ・配信用アニメーション「天国大魔境」「SPY × FAMILY」「絆のアリル」「火狩りの王」「ULTRAMAN」Final Season、劇場用アニメーション「PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE」「蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE」「らくだい魔女 フウカと闇の魔女」、その他プロモーションビデオ・CМ・ゲーム・遊技機のアニメーションを納品しました。映像制作事業では、物価の高騰により人件費やCG制作費、外注費等が高騰し、制作期間の長期化により、一部の作品については受注損失引当金を計上する作品もありました。
以上により、当事業の売上高は6,106,968千円(前期比2.5%増)、営業利益は87,161千円(前期は402,799千円の営業損失)となりました。
(出版事業)
出版事業におきましては、コミック誌の定期刊行物は「月刊コミックガーデン」(12点)を刊行しました。書籍(コミックス、ノベルス、原作ガイドブックを含む)は「魔法使いの嫁」「転生貴族の異世界冒険録」「魔道具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~」の最新刊等、116点を刊行しました。書店向け出版売上はほぼ前年並みとなりましたが、電子書籍売上は従来のオリジナル作品に加え、市場のトレンドに合った作品(なろう系、異世界転生モノ、悪役令嬢モノ等)を適切なタイミングでコミカライズした結果、電子コミック市場全体を超える成長率(15%増)となりました。また、欧米を中心とした海外翻訳出版による収入が好調に推移し売上の増加に貢献しました。
以上により、当事業の売上高は2,903,457千円(前期比9.7%増)、営業利益は562,175千円(前期比3.8%増)となりました。
(版権事業)
版権事業におきましては、「SPY × FAMILY」「進撃の巨人」「銀河英雄伝説 Die Neue These」「攻殻機動隊」「ハイキュー!!」「アオアシ」等のシリーズタイトルを中心に、二次利用による収益分配を計上しました。
「SPY × FAMILY」につきましては、テレビ放送終了後も国内外でライセンスの売上が好調に推移しております。
前年同期は当社グループが大きな出資割合を持つ作品群のライセンス収入が、版権事業の収益に大きく影響を与えました。これらが落ち着いたことにより、前年同期と比較して減収減益となりました。
以上により、当事業の売上高は1,853,606千円(前期比36.8%減)、営業利益は476,785千円(前期比19.2%減)となりました。
(その他事業)
その他事業におきましては、雑誌のイラスト描きやキャラクターの商品販売等により、当事業の売上高は299,667千円(前期比11.0%減)、営業利益は5,933千円(前期は43,788千円の営業損失)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は6,118,291千円となり、前期と比べ823,046千円(前期比15.5%増)の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、1,818,782千円(前期は2,495,851千円の増加)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が999,007千円、減価償却費が889,619千円、前受金の増加が374,725千円、預り金の増加が281,001千円、一方、法人税等の支払額が767,750千円、受注損失引当金の減少が167,731千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、966,754千円(前期は1,443,332千円の減少)となりました。これは主に映像マスターや建物及び構築物等の有形固定資産の取得による支出が573,497千円、コンテンツ資産やソフトウェアの無形固定資産の取得による支出が384,158千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、33,255千円(前期は255,963千円の減少)となりました。これは主に配当金の支払額が23,985千円等によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 受注制作実績
当連結会計年度における映像制作事業の制作実績及び受注状況を映像制作事業の区分ごとに示すと、次のとおりであります。なお、出版事業及び版権事業は、受注制作ではないため、制作実績及び受注実績を記載しておりません。
映像制作実績
区分
制作高(千円)
前年同期比(%)
TV・配信・ビデオ用アニメ
4,272,633
7.4
劇場用アニメ
671,072
△15.1
その他のアニメ
751,248
△24.1
その他
38,246
△65.4
合 計
5,733,200
△2.3
(注)金額は、製造原価によっております。
受注実績
区分
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
TV・配信・ビデオ用アニメ
7,818,681
16.2
15,183,623
35.2
劇場用アニメ
1,540,000
258.8
1,870,000
37.5
その他のアニメ
693,348
△36.5
751,307
7.0
その他
14,400
△86.4
6,000
36.4
合 計
10,066,430
20.4
17,810,931
34.0
b. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
映像制作事業
6,106,968
2.5
出版事業
2,903,457
9.7
版権事業
1,853,606
△36.8
その他事業
299,667
△11.0
合 計
11,163,699
△6.0
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
前連結会計年度
(自 2021年6月1日
至 2022年5月31日)
当連結会計年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
相手先
金額 (千円)
割合 (%)
相手先
金額 (千円)
割合 (%)
Netflix Global,LLC
1,381,921
11.6
東宝㈱
1,188,409
10.6
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示並びに当該会計期間における収益・費用に影響を与える見積りを合理的に行わなければなりません。経営陣は見積りに影響を与える要因を把握し、把握した要因に関して適切な仮定設定、情報収集を行い、見積り金額を計算しております。実際の結果は、見積り特有の不確実性により、見積りと異なる場合があります。
なお、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
また、新型コロナウイルス感染症拡大による会計上の見積りへの影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 概況
概況につましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
b. セグメント別の状況(売上高、営業利益の分析)
セグメント別の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
c. 営業外収益(費用)
営業外収益は52,537千円(前期比4.2%減)となりました。
主な要因は受取手数料が16,880千円増加し、為替差益が25,226千円減少したことであります。
営業外費用は44,185千円(前期比18.0%減)となりました。
主な要因は賃貸収入原価24,116千円増加し、持分法による投資損失が31,111千円減少したことであります。
d. 特別利益
特別利益の計上はありませんでした。
e. 特別損失
特別損失は729千円(前期比97.4%減)となりました。
主な要因は固定資産除却損が729千円増加し、減損損失が28,386千円減少したことであります。
f. 税金等調整前当期純利益
以上の結果、税金等調整前当期純利益は999,007千円(前期82.9%増)となりました。
g. 法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額)
法人税、住民税及び事業税の負担額は法人税等調整額を含め235,916千円(前期比58.4%減)となりました。
h. 親会社株主に帰属する当期純利益
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は766,823千円(前期は5,751千円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
③ 当連結会計年度の財政状態の分析
a. 資産
資産合計は、12,542,181千円(前期比9.9%増)となりました。
流動資産につきましては、主に現金及び預金が823,047千円増加し、一方、受取手形、売掛金及び契約資産が104,072千円減少し、結果、9,872,599千円となりました。
固定資産につきましては、主にコンテンツ資産が370,682千円、建物及び構築物が128,415千円増加し、一方、映像マスターが413,590千円減少し、結果、2,669,581千円となりました。
b. 負債
負債合計は、6,336,525千円(前期比6.4%増)となりました。
流動負債につきましては、主に前受金が374,725千円、預り金が281,001千円、株式給付引当金が105,966千円増加し、一方、未払法人税等が361,628千円、受注損失引当金が167,731千円減少し、結果、5,818,907千円となりました。
固定負債につきましては、主に退職給付に係る負債が13,036千円増加し、一方、株式給付引当金が63,336千円減少し、結果、517,618千円となりました。
c. 純資産
純資産は、6,205,655千円(前期比13.7%増)となりました。
主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益及び剰余金の配当により、利益剰余金が742,707千円増加したことであります。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
⑥ 資本の財源及び資金の流動性
a. 資金需要
当社グループの運転資金需要の主なものは、映像制作事業並びに出版事業に係わる売上原価及び、労務費、業務委託費及び外注費が主な部分を占めております。また、版権事業における権利取得のための出資金があります。
設備資金といたしましては、編集機器、コンピュータ購入費やネットワーク費等があります。
b. 財務政策
運転資金につきましては、自己資金で対応することを原則としておりますが、自己資金で賄えない急な資金需要が発生する等の場合は、金利動向を踏まえ必要に応じ長期・短期借入金で調達しております。
設備資金及び作品への出資金につきましては、社債の発行、長期借入金により最適な調達を行っていく方針であり、調達時期、条件について最も有利な手段を選択するべく検討することとしております。
⑦ 経営者の問題認識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等及び3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
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