【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 2023年度~2025年度中期経営計画「Realize 25」に関する認識および分析・検討内容
経営指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中期経営計画「Realize 25」の概要」に記載しております。
(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析
① 概況
当期における当社グループの経営環境は、製造業全般における生産の高度化・自動化を目的とした設備投資が継続的に行われました。特にグローバルなEV(電気自動車)化の加速により設備投資が伸長し、リチウムイオン電池関連の需要も拡大しました。また、米国などでオイル・ガス関連の需要が大幅に増加した一方、上期に好調だった半導体市場ではメモリ価格の下落によって在庫調整が発生するなど、期末にかけて設備投資が抑制されました。中国ではコロナ禍により経済活動が停滞し、設備投資が伸び悩みました。
このような環境において当社グループの業績は、半導体など長期化する部品の供給不足や中国のロックダウンによって生産制約の影響を受けましたが、下期からは部品の需給逼迫の緩和によって生産が回復し、好調な受注を売上につなげることで増収となりました。利益面については、原材料・物流費の高騰影響やインフレ対応に伴う間接費の増加などがあった一方、製品の価格転嫁による採算性の改善や為替の円安影響に加え、退職年金制度の変更や遊休不動産の売却などに伴うその他の収益もあり、営業利益は前年同期比で増加しました。
これらの結果、売上収益・営業利益・親会社の所有者に帰属する当期利益は、いずれも過去最高を更新しました。
なお、当期における当社グループの地域別の経営環境は以下のとおりです。
日 本: 需要は総じて堅調に推移しましたが、期末にかけて半導体市場ではメモリ価格の下落によって在庫調整が進みました。
米 国: 自動車やオイル・ガス関連などの設備投資が期を通じて拡大し、一般産業においても自動化投資が継続するなど、需要は好調に推移しました。
欧 州: 自動車や木工機械などを中心に、生産設備の自動化に向けた積極的な投資が継続するなど、需要は底堅く推移しました。
中 国: EV化の加速を背景に、自動車やリチウムイオン電池など一部の市場で需要は好調に推移しました。その一方、コロナ禍におけるロックダウンやゼロコロナ政策終了に伴う感染拡大などにより経済活動が停滞し、期末にかけて一般産業を中心に設備投資は伸び悩みました。
中国除くアジア:韓国・台湾などで半導体市場の需要が期末にかけて減少したものの、自動車やリチウムイオン電池関連などの設備投資は総じて高い水準で推移しました。
この結果、当期の経営成績は以下のとおりです。
2022年2月期
2023年2月期
前年同期比
売上収益
4,790億82百万円
5,559億55百万円
+16.0%
営業利益
528億60百万円
683億 1百万円
+29.2%
親会社の所有者に帰属する
当期利益
383億54百万円
517億83百万円
+35.0%
米ドル平均レート
111.49円
134.12円
+22.63円
ユーロ平均レート
130.44円
139.84円
+9.40円
中国人民元平均レート
17.33円
19.68円
+2.35円
韓国ウォン平均レート
0.096円
0.103円
+0.007円
② セグメント別の状況
当社グループでは、事業内容を4つのセグメントに分けています。
当期の各セグメントの経営成績は以下のとおりです。
モーションコントロール
売上収益
2,521億26百万円
(前年同期比
+10.9% )
営業損益
361億93百万円
(前年同期比
△5.2% )
モーションコントロールセグメントは、ACサーボモータ・コントローラ事業とインバータ事業で構成されています。
売上収益は前年同期比で増加しましたが、利益面においては中国におけるゼロコロナ政策の影響や、グローバルでの原材料費や物流費の高騰影響などにより減益となりました。
〔ACサーボモータ・コントローラ事業〕
米国・日本などで上期を中心に半導体・電子部品向けの需要が好調に推移した一方、中国においては、コロナ禍による経済活動の停滞影響を受け、一般産業を中心に設備投資は低迷しました。
〔インバータ事業〕
米国においてオイル・ガス関連の需要が大幅に増加したほか、グローバルで脱炭素化(カーボンニュートラル)を意識した省エネ化投資が加速しました。また、生産面においては上期に中国のロックダウン影響を受け遅れが生じていましたが、期末にかけて部品不足が改善するなど生産を挽回したことから、事業全体の売上収益は大幅に伸長しました。
ロボット
売上収益
2,238億29百万円
(前年同期比
+25.3% )
営業損益
261億26百万円
(前年同期比
+51.5% )
ロボットセグメントの主要市場である自動車においてグローバルでEV化が加速し、リチウムイオン電池関連の設備投資を拡大する動きが継続しました。また、日欧米など多くの地域では、人件費高騰・労働力不足を背景に、物流・食品・農機をはじめとする一般産業分野において、生産の高度化・自動化を目的とした投資が行われました。
このような市場全体の需要拡大を的確に捉え、部品の内製化などによる生産の効率化を進めた結果、売上収益・営業利益はともに前年同期比で大幅に増加しました。
システムエンジニアリング
売上収益
511億11百万円
(前年同期比
△2.2% )
営業損益
25億74百万円
(前年同期比
+21.0% )
鉄鋼プラントや上下水道用電気システム関連の売上が伸び悩んだ一方、太陽光発電用パワーコンディショナの販売は伸長しました。この結果、セグメント全体の売上収益は前年同期比で減少しましたが、利益面においては効率的な事業運営や経費抑制の徹底により、増益となりました。
その他
売上収益
288億88百万円
(前年同期比
+38.3% )
営業損益
17億87百万円
(前年同期比 +365.3% )
その他セグメントは、物流サービス事業などで構成されています。
営業利益は不動産の売却益などにより増加しました。
(3) 経営者による財政状態およびキャッシュ・フローの状況の分析
① 資本の財源および資金の流動性にかかる情報
(a) 資産、負債および資本(B/S)構造に関する基本的な考え方
(ア) 流動資産(手元現預金)
キャッシュがグローバルで分散し余剰にならないようにコントロールしながら、手元現預金は月商1ヵ月程度の水準を維持する方針です。
(イ) 非流動資産
将来の利益源になる投資を積極的に行う方針です。
(ウ) 資本構成
安全性を考慮しながら一定のネットD/Eレシオの範囲内で、レバレッジを効かせた経営を行います。現金水準が高すぎるのは、経営の規律の観点から好ましくないと考えており、資本効率(ROE)を意識しながら株主還元もその適正化の方法の1つとして検討します。また、親会社所有者帰属持分比率が50%を上回る場合は安定的な経営ができていると判断しております。50%を下回る場合はより内部留保を増やす方針です。
(b) キャッシュアロケーションに関する基本的な考え方
当社は、営業活動により生み出したキャッシュを①投資、②株主還元、③従業員配分の3方向に効果的に投入することで、持続的な成長を実現することを基本方針としております。
(ア) 投資
中期経営計画「Realize 25」では、2023年度~2025年度の累計で1,500億円の投資計画を立てております。成長投資を積極的かつ継続的に行うことで、さらなる生産性向上や競争力強化を図り、中長期的な成長を目指します。
(イ) 株主還元
当期利益に対し30%+αの配当性向を想定した経営を実践しております。キャッシュが想定以上に創出された場合は、追加の還元策も検討します。
(ウ) 従業員配分
企業の価値創造の主体が従業員であることを鑑み、以前から利益還元を図ってきました。2022年度は中長期インセンティブ制度を従業員に拡大しました。経営への参画意識の向上をねらいとし、中期経営計画の達成度合いに応じて管理者以上には株式報酬を、従業員には持株会奨励を兼ねた現金報酬を支給し、企業価値向上への意識を高める制度としております。賞与については営業利益率が10%を超えた場合に上限なく増加し、一方で営業利益率が下がった場合にはその分減少させるという利益への連動性を高めた制度としております。従業員の意欲的なチャレンジが将来の会社の成長やリターンにもつながるという観点から、モチベーション向上を図っております。
② 資産、負債および資本(B/S)の状況
(a) 資産 6,531億32百万円(前期末比 940億94百万円増加)
棚卸資産や営業債権等の増加により、流動資産が前期末に比べ685億36百万円増加しました。また、有形固定資産やその他の非流動資産等の増加により、非流動資産が前期末に比べ255億58百万円増加しました。
(b) 負債 2,980億57百万円(前期末比 371億19百万円増加)
営業債務等が減少したものの、短期借入金やその他の流動負債等の増加により、流動負債が前期末に比べ395億32百万円増加しました。一方、長期借入金等の減少により、非流動負債が前期末に比べ24億13百万円減少しました。
(c) 資本 3,550億75百万円(前期末比 569億74百万円増加)
利益剰余金やその他の資本の構成要素等が増加しました。
③ キャッシュ・フロー(C/F)の状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は422億74百万円(前期末比 128億77百万円減少)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。
(a) 営業活動によるキャッシュ・フロー
税引前当期利益や減価償却費の計上等による収入があったものの、棚卸資産や営業債権の増加および営業債務の減少等により、22億9百万円の支出(前年同期比 514億43百万円の収入減)となりました。
(b) 投資活動によるキャッシュ・フロー
有形固定資産および無形資産の取得等による支出により、196億94百万円の支出(前年同期比 44億70百万円の支出減)となりました。
(c) 財務活動によるキャッシュ・フロー
配当金の支払および長期借入金の返済等により支出が増加したものの、短期借入金の増加および長期借入により、71億97百万円の収入(前年同期比 296億72百万円の収入増)となりました。
※営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合算したフリー・キャッシュ・フローは219億4百万円の支出となりました。
(4) 生産、受注および販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲にわたりかつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため、生産および受注の実績については、「(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析」におけるセグメントの経営成績に関連づけて記載しております。
また、販売の実績については、「(2) 経営者による経営成績(P/L)の分析」におけるセグメントの経営成績に関連づけて、連結の数字を示しております。
(5) 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
IFRSに準拠した連結財務諸表の作成にあたり、期末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示および報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いており、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針の要約 4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しております。