【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況当連結会計年度における当社グループを取り巻く外部環境は、経済活動の正常化が進み、景気停滞から緩やかに回復しているものの、エネルギーや諸資材価格の上昇、物価高による消費マインドの低下により、先行き不透明な状況が続いております。このような環境のもと、当社グループは、長期ビジョン「VISION2030」の実現に向け中期経営計画(2022年5月期~2024年5月期)を策定し、『収益面での健全経営を確立し、安定的に成長する企業グループへ』を基本方針として諸施策の展開を進めております。 中期経営計画では、『収益面での健全経営を確立する』という点では、国際事業の黒字化に向けた施策を着実に遂行しております。長期的に目指す姿の取り組みとして、『サステナブルで豊かな暮らしに貢献』という点では、「サステナビリティビジョン2050」の一環として、2022年8月に国立大学法人富山大学と共同で、アルミリサイクル及び押出加工の革新研究を行うための共同研究講座を先進軽金属材料国際研究機構に設置いたしました。さらに、『多角化した経営』という点では、植物工場の「建設」から「栽培・サポート」までワンストップサービスを提供する植物工場システム「agri-cube ID」を開発し、大型植物工場に納入しております。今後は、企業様の新規事業創出提案、遊休不動産活用提案、自治体・農業生産法人の新たな農業事業創出提案等のご提案を行い、2026年度には年間5棟の植物工場「agri-cube ID」の導入を目指します。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高3,703億85百万円(前連結会計年度比8.8%増)となりました。営業利益26億69百万円(前連結会計年度比29.4%減)、経常利益34億19百万円(前連結会計年度比18.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益16億30百万円(前連結会計年度比312.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
建材事業では、収益力の向上に努めるとともに、商品力と販売力の強化を進めてまいりました。 ビル建材では、集合住宅において省エネ補助金事業によるリフォーム需要への対応として、高断熱性能を備えたビル改修専用のアルミ樹脂複合サッシ「Grows(グラウス)-R」を強化するとともに、高層建築市場の活発化や台風の大型化に伴い高い耐風圧機能を実現し優良住宅部品認定を取得した「FINEMASTER(ファインマスター)HB」を発売するなど市場競争力の向上に注力してまいりました。また、冬でも室温低下を抑え、換気しながら高断熱を実現する超高層マンション対応「DI窓(ダイナミックインシュレーション技術を用いた窓システム)」と風騒音対策型外装ルーバー「タワースクリーン TSRシリーズ」が2022年度グッドデザイン賞を受賞しております。 住宅建材では、家族の気配と自然の光や風を感じる心地よい暮らしを提案したアルミインテリア建材「AMiS(アミス)室内窓」を追加、床材「Sフロア」の体系強化やインテリア建材「LiVERNO(リヴェルノ)」をリニューアルし、多様化するインテリアニーズへ対応いたしました。また、リフォーム商品ノバリスシリーズのバリエーションを拡充し、「ノバリス 玄関引戸」を発売し、期待されているリフォーム分野への強化を行いました。 エクステリア建材では、高度経済成長期に整備された公共建築物などの老朽化対応として、安全性や予防保全に優れた公共向け間仕切りメッシュフェンス「STメッシュ」の発売や歩行者自転車用柵「ピュアライン」のバリエーション拡充の他、物流の2024年問題を背景とした非対面・非接触での荷物の受け取りが可能な宅配ボックス「フレムスLight S型」、照明をカーポートやガーデンルームなどエクステリア商品に組み込んだセット提案型商品「MIRaRIA(ミラリア)」を発売いたしました。また、2050年カーボンニュートラル実現に向け取り組みが広がる中で、カーポートのノウハウを生かした太陽光発電への取り組みとして、カーポート型太陽光パネル架台「エネジアース」の開発やカースペース、アプローチ、庭空間などトータルにコーディネートし、住宅と外構の統一感や自由な空間創造ができる「X.style(クロス.スタイル)」の市場投入に注力いたしました。
以上の結果、建材事業においては、新設住宅着工戸数は減少しているものの、政府の補助金制度創設によるリフォーム需要の増加と価格改定の効果により、売上高1,871億41百万円(前連結会計年度比2.7%増)となりました。利益については、持家着工数の低迷による販売数量の減少と想定以上のエネルギーや諸資材価格の上昇により、セグメント損失1億18百万円(前連結会計年度はセグメント利益25億15百万円)となりました。
マテリアル事業では、物価上昇による景気減速の中、更なる物量と利益確保に向け、営業、技術、製造が一体となり、輸送分野や一般機械分野などの将来に繋がる案件の獲得や加工品案件の取り組みを進めてまいりました。また、カーボンニュートラルの実現に向けた対応として、リサイクル性の高いアルミニウム・マグネシウムの可能性追求による用途拡大・技術構築を進めております。
以上の結果、アルミ地金市況に連動する売上の増加などにより、売上高585億50百万円(前連結会計年度比9.7%増)となりました。利益については、エネルギーや諸資材価格の上昇影響はあったものの、収益改善施策の実施により、セグメント利益32億11百万円(前連結会計年度比22.8%増)となりました。
商業施設事業では、慢性的な人手不足に伴う店舗の省力・省人化及び環境配慮や光熱費高騰に伴う省エネニーズなどへの対応として、店舗用什器とサイン・看板などをはじめとした商材の展開を強化してまいりました。その中で、ブラケットを交換するだけで既存の棚板がスライド棚になり、店舗の陳列作業の効率化や棚板入替に伴う廃棄物の低減が実現できる「スライドチェンジャー」を発売いたしました。
以上の結果、小売業を中心に店舗の新規出店や改装の需要を取り込んだことなどにより、売上高416億31百万円(前連結会計年度比2.2%増)となりました。利益については、価格改定を進めておりますが、諸資材価格の上昇や為替影響などにより、セグメント利益6億3百万円(前連結会計年度比64.9%減)となりました。
国際事業では、欧州・タイ・中国にある海外拠点において、自動車分野を中心にアルミニウムの鋳造・押出・加工を行い、高付加価値製品に注力してまいりました。また、欧州では収益化達成に向けて改革に取り組んでまいりました。
以上の結果、為替影響、アルミ地金市況の連動や欧州、タイの自動車分野が堅調に推移したことなどにより、売上高828億57百万円(前連結会計年度比32.3%増)となりました。利益については、エネルギー価格等の上昇影響はあったものの、欧州子会社でのコスト改善施策や価格転嫁を進めたことにより、セグメント損失8億33百万円(前連結会計年度より23億14百万円の改善)となりました。
② 財政状態の状況財政状態の状況については、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ35億28百万円増加の204億55百万円(前連結会計年度比20.8%増)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(単位:百万円)
前連結会計年度(自 2021年6月1日 至 2022年5月31日)
当連結会計年度(自 2022年6月1日 至 2023年5月31日)
増減
営業活動によるキャッシュ・フロー
2,405
△171
△2,576
投資活動によるキャッシュ・フロー
△7,586
△7,269
317
財務活動によるキャッシュ・フロー
274
10,554
10,279
現金及び現金同等物の増減額(△は減少)
△5,443
3,528
8,972
現金及び現金同等物の期首残高
22,369
16,926
△5,443
現金及び現金同等物の期末残高
16,926
20,455
3,528
フリー・キャッシュ・フロー
△5,181
△7,440
△2,259
(注)フリー・キャッシュ・フローは、「営業活動によるキャッシュ・フロー」と「投資活動によるキャッシュ・フロー」の合計であります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果、使用した資金は、1億71百万円(前連結会計年度は24億5百万円の収入)となりました。これは、減価償却費82億10百万円の計上があった一方で、仕入債務の減少額41億43百万円、棚卸資産の増加額33億38百万円があったことなどによるものであります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果、使用した資金は、前連結会計年度に比べ3億17百万円減少の72億69百万円(前連結会計年度比4.2%減)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出76億12百万円があったことなどによるものであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果、得られた資金は、前連結会計年度に比べ102億79百万円増加の105億54百万円(前連結会計年度は2億74百万円の収入)となりました。これは、長期借入金の返済による支出186億2百万円があった一方で、長期借入れによる収入188億63百万円、短期借入金の純増加額115億10百万円があったことなどによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
建材事業
86,919
110.0
マテリアル事業
50,489
105.3
商業施設事業
9,143
102.5
国際事業
78,908
129.4
その他
3
11.0
合計
225,464
114.5
(注) 金額は製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.仕入実績当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
建材事業
65,523
107.2
マテリアル事業
289
103.4
商業施設事業
21,579
105.7
国際事業
276
135.5
その他
20
1.8
合計
87,688
105.5
(注) 金額は、実際仕入金額によっております。
c.受注状況当連結会計年度における建材事業の受注状況を示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前期比(%)
受注残高(百万円)
前期比(%)
建材事業(ビル工事物件)
56,188
105.5
41,790
97.7
d.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
金額(百万円)
前期比(%)
建材事業
187,141
102.7
マテリアル事業
58,550
109.7
商業施設事業
41,631
102.2
国際事業
82,857
132.3
その他
204
12.9
合計
370,385
108.8
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.概要当連結会計年度の売上高は、3,703億85百万円(前連結会計年度比8.8%増)と増収となりましたが、営業利益は26億69百万円(前連結会計年度比29.4%減)、経常利益は34億19百万円(前連結会計年度比18.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は16億30百万円(前連結会計年度比312.2%増)となりました。
b.営業利益営業利益のセグメント毎の分析については、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
c.営業外損益と経常利益経常利益は、34億19百万円となりました。これは、為替差益6億40百万円などを営業外収益に計上したことによります。
d.特別損益と税金等調整前当期純利益税金等調整前当期純利益は、31億4百万円となりました。
e.親会社株主に帰属する当期純利益税金費用(法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計額)は、13億51百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は1億21百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は16億30百万円となりました。
f.資産当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ144億61百万円増加し、2,829億32百万円となりました。増減の主な内訳は以下のとおりであります。流動資産有価証券が14億81百万円減少したものの、商品及び製品等の棚卸資産が44億39百万円、現金及び預金が39億57百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が21億42百万円、それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ95億70百万円増加の1,512億68百万円となりました。固定資産無形固定資産が4億61百万円減少したものの、退職給付に係る資産が39億62百万円、有形固定資産が14億61百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ48億91百万円増加の1,316億64百万円となりました。
g.負債当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ73億99百万円増加し、1,902億65百万円となりました。増減の主な内訳は以下のとおりであります。流動負債支払手形及び買掛金が40億76百万円減少したものの、短期借入金が116億57百万円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ61億81百万円増加の1,280億8百万円となりました。固定負債退職給付に係る負債が16億18百万円減少したものの、長期借入金が15億62百万円、リース債務が6億55百万円、繰延税金負債が4億93百万円、それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ12億17百万円増加の622億56百万円となりました。
h.純資産当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ70億62百万円増加し、926億67百万円となりました。これは、退職給付に係る調整累計額が49億0百万円、利益剰余金が11億36百万円、為替換算調整勘定が10億18百万円、それぞれ増加したことが主な要因であります。なお、自己資本比率は31.6%(前連結会計年度末は30.8%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資金需要当社グループの資金需要のうち主なものは、生産能力増強、生産効率向上のための設備投資及び新商品開発投資等の長期資金需要と、製品製造のための原材料等購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。今後も、財務基盤の安定を図りつつ、国際事業の改革完遂、変化する国内市場への対応、更には領域拡大に向けた投資など長期的な視点の資金需要に対応する方針であります。
c.資金調達当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性の向上と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針として、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行などの金融機関からの借入、資本市場における社債の発行等により、必要資金を調達しております。当社は、運転資金は基本的に内部資金からの充当及び短期借入による調達を基本としており、設備投資やその他の投資資金の調達については、金融機関からの長期借入及び100億円の社債発行登録枠内での社債の発行等を基本としております。また、流動性に関しては、財務柔軟性を確保するため、金融機関との借入限度額200億円のコミットメントラインの契約や、機動的に活用できる債権の流動化枠を確保することで調達手段の多様化を図り、現金及び現金同等物の残高が適正になるように努めております。
その結果、当連結会計年度末における借入金は、前連結会計年度末に比べ122億47百万円増加の825億51百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は204億55百万円となりました。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件や仮定の変化により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)当社グループの将来戦略 ②中期経営計画とその進捗 <経営指標>」に記載のとおりであります。