【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度のわが国経済は、緩やかに回復しています。ただし、世界的な金融引き締め等が続く中で、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっています。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
個人消費は、持ち直しております。外食、旅行などのサービス消費が個人消費の回復を牽引しており、行動制限の撤廃でコロナ前以来となる各種催事の復活が相次ぎ、人出が回復しております。消費者マインドを示す消費者態度指数(5月)は、前月比0.6ポイント上昇し、3カ月連続で前月水準を上回る推移となっております。設備投資についても、持ち直しております。「法人企業統計季報」(含むソフトウェア)では1~3月期が前期比2.3%増加し、4四半期連続の増加となりました。輸出については底堅い動きとなっています。アジア、アメリカ及びEU向けの輸出は、おおむね横ばいとなっています。一方で、その他の地域向けの輸出はこのところ持ち直しの動きがみられます。
当社が属する不動産業界においては、底堅い動きとなっております。先行指標となる新設住宅着工戸数は、2023年4月が季節調整済年率換算値で771,000戸となりました。4月は前月比12.1%減となりましたが、3月は前月比2.0%増で前月を上回る水準が続く等、底堅い動きとなっております。また、首都圏マンションの初月契約率については、5月が74.3%となり、好不況の分かれ目とされる70%を4カ月連続で上回っております。
このような状況の中、当社は、賃貸開発事業及びバリューアップ事業における新規物件の取得や保有物件の売却及び分譲開発事業の個別分譲販売を進めてまいりました。
この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末と比較して2,236百万円増加し、30,950百万円となりました。
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末と比較して762百万円増加し、22,183百万円となりました。
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末と比較して1,473百万円増加し、8,766百万円となりました。
b.経営成績
当事業年度の経営成績は、売上高20,015百万円(前年同期比13.1%増)、営業利益2,557百万円(同20.2%増)、経常利益2,098百万円(同24.1%増)、当期純利益1,562百万円(同37.6%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
分譲開発事業は、成約上の完売物件があったものの、2023年10月の引渡し予定のため、売上高はありませんでした(前年同期は427百万円)。セグメント損失は、3百万円(前年同期はセグメント利益17百万円)となりました。
賃貸開発事業は、売上高13,202百万円(同14.5%増)、セグメント利益2,903百万円(同17.9%増)となりました。
バリューアップ事業は、売上高6,813百万円(同19.1%増)、セグメント利益950百万円(同35.8%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動により174百万円増加いたしました。また、投資活動において63百万円増加し、財務活動においても553百万円増加いたしました。この結果、資金は前事業年度末に比べて797百万円の増加となり、当事業年度末残高は5,229百万円(前事業年度末比18.0%増)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比(%)
金額(百万円)
分譲開発事業
-
-
賃貸開発事業
13,202
114.5
バリューアップ事業
6,813
119.1
その他
-
-
合 計
20,015
113.1
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自 2021年6月1日
至 2022年5月31日)
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
いちごオーナーズ㈱
1,836
10.4
-
-
b.契約実績
当事業年度の契約実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
前年同期比(%)
金額(百万円)
分譲開発事業
1,079
35.5
賃貸開発事業
10,108
56.8
バリューアップ事業
5,338
85.3
合 計
16,526
61.0
c.契約残高
当事業年度末における契約残高をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当事業年度末
(2023年5月31日)
前年同期比(%)
金額(百万円)
分譲開発事業
3,747
140.5
賃貸開発事業
8,212
72.1
バリューアップ事業
875
39.6
合 計
12,835
78.9
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行っております。当該見積りにつきましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に関して適切な仮定の設定、情報収集を行い、見積り金額を計算しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果とは異なる場合があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積り及び判断については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1)財政状態
(流動資産)
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末と比較して2,020百万円増加し、30,319百万円(前年同期比7.1%増)となりました。これは主に、保有物件の売却を積極的に進めた一方で業績の原資となる仕入れを推進したことから、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて1,126百万円増加したことによるものであります。また、物件売却を推進したことにより、現金及び預金が725百万円増加したことも寄与しております。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産は、前事業年度末と比較して216百万円増加し、630百万円(前年同期比52.1%増)となりました。これは主に、繰延税金資産が210百万円増加したことによるものであります。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末と比較して1,268百万円増加し、14,476百万円(前年同期比9.6%増)となりました。これは主に、新規物件の取得を推進したことにより、短期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が1,164百万円増加したことによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債は、前事業年度末と比較して506百万円減少し、7,707百万円(前年同期比6.2%減)となりました。これは主に、物件売却を進めたことにより、長期借入金が513百万円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末と比較して1,473百万円増加し、8,766百万円(前年同期比20.2%増)となりました。これは主に、当期純利益の計上等により繰越利益剰余金が1,493百万円増加したことによるものであります。
2)経営成績
(売上高、売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上高は、前事業年度と比較して2,325百万円増加し、20,015百万円(前年同期比13.1%増)となりました。
分譲開発事業の売上高は、前事業年度と比較して427百万円減少しました。成約上の完売物件があったものの、2023年10月の引渡し予定のため、売上高はありませんでした(前年同期は427百万円)。
賃貸開発事業の売上高は、前事業年度と比較して1,668百万円増加し、13,202百万円(同14.5%増)となりました。
バリューアップ事業の売上高は、前事業年度と比較して1,092百万円増加し、6,813百万円(同19.1%増)となりました。
売上原価については、売上高が増加したため、前事業年度と比較して1,604百万円増加し、15,713百万円(同11.4%増)となりました。
売上総利益については、想定以上の金額で売却することができたプロジェクトが存在したため、前事業年度と比較して721百万円増加し、4,302百万円(同20.1%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、前事業年度と比較して290百万円増加し、1,744百万円(前年同期比20.0%増)となりました。主な要因は、売上高の増加に伴い、販売費用や人件費が増加したことによるものであります。
この結果、営業利益は、前事業年度と比較して430百万円増加し、2,557百万円(同20.2%増)となりました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、前事業年度と比較して0百万円減少し、52百万円(前年同期比0.8%減)となりました。主な要因としては、受取補償金が6百万円増加したことに加えて、その他で4百万円増加したものの、為替差益が7百万円減少し、受取配当金が4百万円減少したことによるものであります。営業外費用は、前事業年度と比較して23百万円増加し、511百万円(前年同期比4.7%増)となりました。主な要因としては、新規物件の取得を推進したことにより、支払利息が15百万円増加し、融資手数料も7百万円増加したことによるものであります。
この結果、経常利益は、前事業年度と比較して407百万円増加し、2,098百万円(同24.1%増)となりました。
(特別損益、当期純利益)
特別利益は、前事業年度と比較して1百万円増加し、2百万円(前年同期比127.9%増)となりました。主な要因としては、固定資産売却益を1百万円計上したことによるものであります。
当期純利益は、税引前当期純利益が前事業年度と比較して407百万円増加し、法人税等合計が227百万円増加したものの、一方で法人税等調整額が247百万円増加したため、前事業年度と比較して427百万円の増加となり、1,562百万円(同37.6%増)となりました。
3)キャッシュ・フロー
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動により174百万円増加しました。また、投資活動において63百万円増加し、財務活動においても553百万円増加しました。この結果、資金は前事業年度末に比べて797百万円の増加となり、当事業年度末残高は5,229百万円(前事業年度末比18.0%増)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、174百万円(前年同期は2,718百万円の支出)となりました。主な要因は、税引前当期純利益として2,100百万円を獲得したものの、棚卸資産が1,125百万円増加したことに加えて、法人税等の支払いが547百万円、利息の支払いが402百万円発生したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により獲得した資金は、63百万円(前年同期は93百万円の獲得)となりました。主な要因は、定期預金の預入により45百万円の支出が発生したものの、定期預金の払戻により118百万円を獲得したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、553百万円(前年同期は3,376百万円の獲得)となりました。主な要因は、物件の売却に伴い、長期借入金及び短期借入金を返済したことにより、14,959百万円の支出が発生したものの、物件の取得に伴い、長期借入金及び短期借入金として新たに融資契約を締結したことにより、15,612百万円を獲得したことによるものであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因についての分析
当社の経営に影響を与える大きな要因としては、3.事業等のリスクに記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性
当社の資金需要の主なものは、運転資金需要と販売用不動産の取得及び建築費に必要な資金等であります。運転資金については、内部資金を充当し、必要に応じて金融機関より短期借入金で調達を行っております。また、販売用不動産の取得及び建築費等については、金融機関より短期借入金及び長期借入金で調達を行っております。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当事業年度末における自己資本比率は、前事業年度末と比べて2.9ポイント上昇し、28.0%となりました。
なお、当社は自己資本比率を重要な経営指標として位置づけており、早期に30%以上の水準まで向上させていく方針です。
収益の原資となる販売用不動産の取得については、厳選した上での取得に努めることで総資産の過度な増加を抑制すると共に、着実な利益確保により安定的に自己資本を高めてゆく所存です。
e.セグメント毎の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(分譲開発事業)
当事業年度の販売物件は、ガレリア ドゥエル神田岩本町(東京都千代田区)のみとなっております。同プロジェクトは、すべての物件の売買契約を2022年8月までに締結しております。しかしながら、物件の引渡が2023年10月頃を予定しており、当社では物件の引渡時に売上高を計上していることから、当事業年度の売上高はありませんでした(前年同期は427百万円)。一方、売却済の物件に係る追加工事費用が発生したことから、セグメント損失が3百万円(前年同期はセグメント利益17百万円)となりました。セグメント資産については、主に前払費用を計上したことから、前事業年度と比較して39百万円増加し、2,023百万円(同2.0%増)となりました。
(単位:百万円)
2023年5月期
2022年5月期
増減率
売上高
-
427
-
セグメント利益又は損失(△)
△3
17
-
セグメント資産
2,023
1,984
2.0%
(注)当事業年度は売上高がなく、セグメント損失を計上していることから、売上高及びセグメント利益又は損失それぞれの増減率を表示しておりません。
(賃貸開発事業)
当事業年度は、販売物件数は15棟と前事業年度と同数であったものの、物件の規模が若干大きくなった結果、売上高は前年同期比1,668百万円増加し、13,202百万円(前年同期比14.5%増)となりました。セグメント利益については、売上高が増加したことにより、前年同期比441百万円増加し、2,903百万円(同17.9%増)となりました。セグメント資産については、保有物件の売却を積極的に推進した一方で、エリアや駅からの距離等を勘案の上、厳選をしつつ新規物件の取得を進めたことから、前事業年度と比較して3,862百万円増加し、19,785百万円(同24.3%増)となりました。
(単位:百万円)
2023年5月期
2022年5月期
増減率
売上高
13,202
11,533
14.5%
セグメント利益
2,903
2,461
17.9%
セグメント資産
19,785
15,922
24.3%
(バリューアップ事業)
当事業年度の売上高は、販売物件数が11棟から15棟へ増加したため、前年同期比1,092百万円増加し、6,813百万円(前年同期比19.1%増)となりました。セグメント利益については、売上高が増加したことに加えて収益性も向上したことから前年同期比250百万円増加し、950百万円(同35.8%増)となりました。セグメント資産については、保有物件の売却活動を積極的に推進したことから、前事業年度と比較して2,487百万円減少し、2,760百万円(同47.4%減)となりました。
(単位:百万円)
2023年5月期
2022年5月期
増減率
売上高
6,813
5,720
19.1%
セグメント利益
950
699
35.8%
セグメント資産
2,760
5,248
△47.4%