【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当社グループに関する財政状態、経営成績の状況の分析・検討内容は、原則として四半期連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
(1)業績の状況
当第2四半期連結累計期間(2023年3月1日~2023年8月31日)における我が国経済は、5月に新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の位置づけが「5類感染症」に移行されるなど、正常化が一段と進むなか、個人消費については、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加しております。さらに、訪日外国人数は、航空便の増便・復便や円安を背景に段階的な回復が続いており、インバウンド需要の拡大も国内景気を押し上げています。
一方、足元では、物価上昇に賃金の伸びが追い付かない実質賃金のマイナスが続いており、生活防衛意識の高まりなど、今後の個人消費は予断を許さない状況にあります。
こうしたなか、髙島屋グループ(以下、当社)において、2023年度は、回復段階から、さらに持続的な成長と飛躍に向けた経営の土台づくりを果たすための極めて重要な一年と捉えております。
グループ総合戦略「まちづくり」の下、経営課題である「百貨店の営業力強化」、「人的資本経営の推進」、「グループ会社の業界競争力獲得」、「グループESG戦略の深化」を引き続き推進し、グループ全体で髙島屋ブランドの価値に磨きをかけてまいります。
百貨店業におきましては、昨年来取り組んでいるコスト構造改革は、本年全店レベルに拡大し、利益を創出できる体制づくりは一定の成果を得ております。また、アフターコロナの消費動向変化を踏まえ、目利きができる人材の育成、お客様のニーズに即応する話題性と品質を両立する品揃え、コロナ禍では実施できなかった高鮮度な催事やプロモーションの企画開発など、営業力強化に向けた取り組みも同時に推進しております。さらに、デジタルツールを活用しながら業務効率化を推進し、販売のための時間を生み出すとともに、商品、企画のストーリーを「語る・伝える力」を高め、販売力の質的向上に一層取り組むなど、人を中心とした経営を進めることで、本質的な営業力強化を実現してまいります。
商業開発業では、千葉県流山おおたかの森地区における行政と一体となった地域活性化に向けた
取り組みに加え、当社初となるPPP(※1)事業へ参画してまいります。また、10月17日開業予定の「京都髙島屋S.C.」や既存商業施設のリニューアルを通じ、地域に根ざした魅力的なSCを実現することで新たなお客様層を開拓してまいります。一方、国内外において、賃貸住宅やオフィスなど、非商業分野のシェアを高めることで事業ポートフォリオの安定化を図ってまいります。
金融業では、収益の柱であるカード事業について、会員基盤の強化が最重要課題であり、新規会員獲得とカードの魅力向上に取り組んでおります。8月には、法人事業領域の開拓に向け、ビジネスオーナー・個人事業主向けのビジネスカードを新たに発行し、新規会員の募集を開始しております。さらに、金融商品を取り扱うライフパートナー事業では、専門人材の育成とともに、当社の優良な顧客基盤や立地を生かした顧客接点の拡大により、着実な利益創出につなげてまいります。
その他のグループ会社、事業におきましても、それぞれが専門性を高め、強みや独自性を発揮、業界競争力を獲得しながら、更なる収益力の強化につなげていく取り組みを推進してまいります。
ESG経営におきましては、顧客接点の広さ、お取引先の多さ、地域密着性など、多種多様なステークホルダーとの接点を持つ当社の強みを発揮できる取り組みを推進しております。不要となった衣料品を回収・再生・販売する、当社の循環型ビジネス「Depart de Loop(デパートデループ)」においては、昨年回収したデニムを再生した商品の販売を実現するとともに、回収の対象を新たに化粧品やその容器にも広げるなど、取り組みを拡大いたしました。また、脱炭素化推進に向けては、当社敷地外で発電した再生エネルギーを、事業者から直接提供を受けるオフサイトPPA(※2)において、日本初となる短期契約のスキームを導入、4月より横浜店へ省エネ電力供給をスタートいたしました。今後も他店舗への導入を進めてまいります。さらに、「物流の2024年問題」(※3)への対応として、これまで開店時間に合わせていた納品時間を全店で開店後に見直すことでドライバーの負担軽減につなげる取り組みを業界で先行して開始しております。引き続き、社会課題の解決に主体的に取り組んでまいります。
(※1)PPP(Public Private Partnership)
公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して行うことにより、民間の
創意工夫等を活用し、財政資金の効率的使用や行政の効率化等を図るもの。
(※2)PPA
「Power Purchase Agreement」電力購入契約のこと。
(※3)物流の2024年問題
2018年6月改正の「働き方改革関連法」に基づき、自動車の運転業務の時間外労働につ
いて、2024年4月より、年960時間(休日労働含まず)の上限規制が適用される。併せ
て、トラックドライバーの拘束時間を定めた「改善基準告示」(貨物自動車運送事業法
に基づく行政処分の対象)により、拘束時間等が強化されることに伴う諸問題。
当第2四半期連結累計期間の連結業績につきましては、連結営業収益は221,175百万円(前年同期比5.8%増)、連結営業利益は20,810百万円(前年同期比62.4%増)、連結経常利益は22,181百万円(前年同期比52.0%増)となり、親会社株主に帰属する四半期純利益は14,962百万円(前年同期比10.6%増)となりました。
事業のセグメント別業績は、次のとおりであります。
<百貨店業>
百貨店業での営業収益は160,941百万円(前年同期比5.1%増)、営業利益は12,049百万円(前年同期比85.1%増)となりました。
国内百貨店におきましては、増収増益となりました。
社会経済活動の活性化に伴い入店客数が増加、インバウンドを除く国内顧客売上高は、婦人服、紳士服、化粧品など、ファッション関連商品を中心に堅調に推移いたしました。インバウンド売上高においても、ラグジュアリーブランドをはじめとする高額品が好調であり、円安による客単価の上昇も売上高を押し上げております。また、各店で開催した「大北海道展」などの物産展や京都店、日本橋店で開催した「御即位5年・御成婚30年記念特別展 新しい時代とともに ―天皇皇后両陛下の歩み」、夏季休暇に合わせた関連イベントは、多くのお客様にご来場いただきました。
さらに、新たな取り組みとしては、株式会社ジュンとのコラボレーション業態であるライフスタイルショップ「モア サロン エ ロぺ(moi salon et ropé)」を大阪店、横浜店にオープンいたしました。引き続き、品揃えの拡充や販売力の強化を推進し、お客様のニーズにお応えしてまいります。
商品利益率についても、ファッション関連商品の売上高伸長などにより改善基調にあります。今後もコスト構造改革の継続とともに、利益拡大を推進してまいります。
海外(2023年1月~6月)におきましても、増収増益となりました。
シンガポール髙島屋は、前年のコロナ影響の反動に加え、内需の堅調な推移やインバウンドの回復もあり、売上高が大きく伸長いたしました。また、ホーチミン髙島屋でも売上高が回復、2社については、増収増益となりました。サイアム髙島屋については、入店客数の増加に伴い売上高が回復し増収となり、赤字幅が縮小しております。一方、上海高島屋は、前年のコロナ影響による休業(67日間)反動もあり大きく増収となりましたが、休業に伴うコロナ関連費用の特別損失への振替反動も同じく大きく、減益となりました。
<商業開発業>
商業開発業での営業収益は25,127百万円(前年同期比10.3%増)、営業利益は6,559百万円(前年同期比48.3%増)となりました。
国内におきましては、商業施設の売上増加や賃料収入の回復もあり、増収増益となりました。
東神開発株式会社は、3月に千葉県流山市と「地域活性化に関する包括連携協定」を締結し、街づくり、子育て、災害対応などにおけるさらなる相互連携と地域活性化を行政と一体となって推進しております。「流山おおたかの森S・C」では、街の魅力を一層高めるべく、5月につくばエクスプレス「流山おおたかの森駅」高架下の空間を活用した商業施設「TXグランドアベニュー おおたかの森」を全面リニューアルオープン、6月には近隣住民の交流の場・機会を提供する新たな地域コミュニティ拠点として「おおたかの森LOOP」を発足いたしました。
また、10月17日開業予定の「京都髙島屋S.C.」の専門店ゾーン「T8(ティーエイト)」では、出店する51店舗が決定いたしました。「京都で一番の待ち合わせ場所」というコンセプトのもと、多くの「人・コト・モノ」が“出会う”場としてリアル店舗ならではの体験価値を提供してまいります。
新たな事業としては、東京都足立区と「六町駅前区有地活用事業」に関する基本協定書を7月に締結し、当社初となるPPP事業へ参画いたします。本事業は、つくばエクスプレス六町駅前の区有地において、公募型プロポーザル(※4)により選定された東神開発株式会社が複合商業施設と駐輪場の整備及び運営を行います。本事業を機に今後も行政と連携したPPP事業を拡大してまいります。
海外(2023年1月~6月)におきましても、トーシンディベロップメントシンガポールPTE.LTD.が運営する「シンガポール髙島屋S.C.」が、百貨店同様入店客数が増加したことなどから、増収増益となりました。また、ベトナムでは、学校運営事業の「スターレイク・プロジェクトA計画」や住宅・オフィス・商業開発事業の「ランカスター・ルミネールプロジェクト」を着実に推進し、現地での事業基盤の拡大を進めております。
(※4)公募型プロポーザル
行政等による民間事業者の選定方式の一つ。公募に基づき民間事業者が提案を行い、コンセプト・事業計画・地域貢献等の総合評価により優先交渉権者を決定する方式。
<金融業>
金融業での営業収益は8,608百万円(前年同期比1.3%増)、営業利益は2,255百万円(前年同期比0.8%減)となりました。
カード取扱高が伸長したことにより増収となりましたが、市場領域開拓、事業基盤拡大に向けた先行投資の影響もあり、わずかに減益となりました。
カード事業におきましては、百貨店や専門店への入店客数が回復するなか、新規会員の獲得強化を継続して進めるとともに、旅行・飲食需要の拡大などを捉えた外部加盟店での利用促進を図ってまいりました。さらに、8月からはビジネスオーナー・個人事業主に向けたビジネスカード「タカシマヤカード《ビジネスプラチナ》アメリカン・エクスプレス®」を新たに発行し、新規会員の募集を開始いたしました。今後も百貨店とのシナジー発揮による顧客満足度の向上をめざしてまいります。
ライフパートナー事業におきましては、日本橋店、横浜店、大阪店の3拠点のファイナンシャルカウンターに加え、京都店に事前予約型ファイナンシャルデスク(サテライト)、日本橋店に保険相談ブースを新たに設置いたしました。人生100年時代のライフプラン提案や投資信託・相続対策など百貨店顧客向けのリアルセミナーを継続して開催し、顧客接点を拡大したことにより、新規顧客は着実に増加しております。
「髙島屋ネオバンク」の「スゴ積み」(※5)においては、7月より積み立ての満期を迎えられたお客様の決済利用が開始となりました。タカシマヤ友の会の会員と比べ50歳以下、また、男性のお客様が多く、平均積立額も高いといった特性に合わせたアプローチを推進し、会員数の拡大、継続率アップ及び、決済の利用促進につなげてまいります。
(※5)スゴ積み
「髙島屋のスゴイ積立」のことで、髙島屋ネオバンクアプリに搭載された機能の一つ。
毎月一定額を12ヵ月積み立てると1ヵ月分のボーナスをプラスした「お買物残高」がアプリにチャージされ、髙島屋のお買物にお使いいただけるサービスのこと。
<建装業>
建装業での営業収益は13,304百万円(前年同期比47.3%増)、営業利益は130百万円(前年同期は営業損失308百万円)となりました。
髙島屋スペースクリエイツ株式会社におきましては、ホテルなどの大型物件やラグジュアリーブランドを中心とした商業施設の受注が増加し、増収、黒字転換となりました。引き続き、営業力とデザイン力を駆使した先行提案営業を強化し、安定的な収益基盤を構築してまいります。
<その他の事業>
クロスメディア事業等その他の事業での営業収益は13,192百万円(前年同期比15.1%減)、営業利益は382百万円(前年同期比7.6%増)となりました。
百貨店の店頭売上高回復の影響により、クロスメディア事業におきましては、減収となった一方、卸売業のタカシマヤトランスコスモスインターナショナルコマースPTE.LTD.及び株式会社グッドリブが増益となったことから、その他の事業全体におきましては、減収増益となりました。
(2)財政状態に関する説明
当第2四半期連結会計期間末の総資産は、1,201,750百万円と前連結会計年度末に比べ23,548百万円増加しました。これは、受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことが主な要因です。負債については、743,796百万円と前連結会計年度末に比べ2,077百万円の増加となりました。これは、支払手形及び買掛金が増加したことが主な要因です。純資産については、457,953百万円と前連結会計年度末に比べ21,471百万円増加しました。これは、利益剰余金及び為替換算調整勘定の増加が主な要因です。
(3)キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、21,061百万円の収入となり、前年同期が5,420百万円の収入であったことに比べ15,641百万円の収入の増加となりました。主な要因は、税金等調整前四半期純利益が6,796百万円増加したことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、15,517百万円の支出となり、前年同期が6,697百万円の支出であったことに比べ8,820百万円の支出の増加(収入の減少)となりました。主な要因は、有形及び無形固定資産の取得による支出が3,282百万円増加したこと、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入が3,261百万円減少したことなどによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、10,994百万円の支出となり、前年同期が5,262百万円の支出であったことに比べ5,732百万円の支出の増加(収入の減少)となりました。主な要因は、長期借入れによる収入が12,000百万円減少したことなどによるものです。
これらに換算差額を加えた結果、当第2四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,496百万円減少し、87,134百万円となりました。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社の事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(5)研究開発活動
該当事項はありません。