【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当社グループは著作物を公正利用のもと、出来るだけ広く頒布し著作者に収益を還元するという「著作物の健全なる創造サイクルの実現」をミッション、「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」をビジョンに掲げ、日本における文化の発展及び豊かな社会づくりに貢献するため、積極的な業容の拡大と企業価値の向上に取り組んでおります。
日本国著作権法第一章 総則の第一条に謳われる『著作物は文化の発展に寄与』、『著作物の利用と保護の調和』を第一義に、デジタル化された数多くの著作物をより多くの人に届け、その利用における適正な対価を著作者に還元し、また新たな著作物が創造されるよう“著作物の健全なる創造サイクル”の一翼を担うことを目的に事業を行っております。
① 経営成績
当社グループの当第1四半期連結累計期間における経営環境は、2023年5月8日より新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」から「5類感染症」に移行したことで、都心部や観光地における人出が増えるとともに、企業においても一部ではテレワークが定着しつつも、出社制限を撤廃して出社回帰を促す傾向がみられました。また、一部電子書店ではこのような状況を踏まえて、5月の大型連休期間中におけるキャンペーン施策の変更等がなされ、前年対比成長率が鈍化する電子書店が多くなりました。こうした経営環境の中、前年度において電子書籍流通事業での主要取引先であったLINE Digital Frontier株式会社が運営する「LINEマンガ」向けのバックエンド業務が株式会社イーブックイニシアティブジャパンへ移管されたことによる減収影響を受けました。
その結果、当第1四半期連結累計期間の売上高は22,632百万円(前年同期比13.8%減)、営業利益は485百万円(前年同期比21.6%減)、経常利益は441百万円(前年同期比27.9%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は232百万円(前年同期比25.6%減)となりました。
当第1四半期連結累計期間のセグメント別の経営成績は次のとおりであります。
(電子書籍流通事業)
電子書籍流通事業については、引き続き「コミックシーモア」「Amazon Kindle」などの電子書店への電子書籍の取次や電子書籍配信ソリューションの提供を行いました。2023年2月末時点で、取引先としての出版社は2,200社以上、電子書店は150店以上、取扱稼働コンテンツ数は200万点以上、出版社や電子書店とのキャンペーンは1.6万件以上展開しており、当社グループは国内最大の電子書籍取次事業者として出版業界の発展に貢献しております。
また、2022年4月に公表した新たな中期経営計画で掲げた目標の実現に向けて、業務効率化や次世代基幹システムの構築といったオペレーショナルエクセレンスを追求し、流通カロリーを一層抑制するための諸活動に引き続き取り組んでおります。
当第1四半期連結累計期間においては、新型コロナウイルス感染症の収束により屋内でのエンタテインメントへの需要が回復する一方、いわゆる「巣ごもり消費」の一巡により電子書籍市場の成長率が巡航速度に回帰しつつあることを受け、一部電子書店においてキャンペーン施策の見直しがなされるなど、前年対比で成長率が鈍化する電子書店が多くなりました。また、主要取引先であったLINEマンガの取引移管の影響を受けているため、減収傾向が続く結果となりました。一方、LINEマンガを除く電子書店向け売上高は前年同期比プラスを維持しており、堅調に推移いたしました。引き続き電子書籍市場の成長への寄与と、当社の流通シェアを高めるべく、各書店のキャンペーン施策の再強化の支援や、商流切替の提案等、各出版社・各書店との更なる関係深耕を図っております。
その結果、売上高は20,780百万円(前年同期比16.0%減)、セグメント利益は1,213百万円(前年同期比10.5%減)となりました。
(戦略投資事業)
戦略投資事業については、特に株式会社トーハンとの連携の深化を通じたFanTop事業の拡大と、縦スクロールコミック事業を含むIP・ソリューション事業の成長に向けた施策に注力いたしました。
2021年10月より開始したNFTデジタル特典付き出版物においては、企画協力数70社超、タイトル数は100点に迫り、着実に企画数を増加させるとともに、FanTopアプリのUI/UX機能の拡充により、NFTデジタルコンテンツとして取り扱う商材の拡充を図っております。具体的には、動画コンテンツの画面キャプチャや画面録画を防止するDRM機能を実装したことで動画コンテンツを保護することができ、紙の本にNFTデジタルコンテンツとして音楽や映像を付帯することが可能となりました。また、専用ビューア機能を搭載したことで文字ものの取扱いも可能となり、2023年6月創刊の株式会社早川書房の新レーベル「ハヤカワ新書」の5作品に対して紙書籍と同内容をNFT電子書籍として付帯し、紙の書籍を介した新しい読書体験を提供しはじめました。一点物のアート等を取り扱う他のNFTプラットフォームとは異なり、デジタルコンテンツに特化したビジネスモデルを構築することで、FanTopの会員増加・事業拡大を推し進めるとともに、トーハンとの連携においては、引き続き紙・電子、フィジカル・デジタルの垣根を越えたDXを推進することで出版業界の活性化・業界変革に寄与していくことを目指しております。
IP・ソリューション事業については、当社グループが有する原作創出機能を最大限に生かし、コンテンツ市場の拡大に向け事業を推進しております。新型コロナウイルスの感染拡大を契機として世界のコンテンツ市場が急拡大するなか、映像作品や新たな形式の電子コミックである縦スクロールコミックなど、さまざまなコンテンツにおける原作不足が市場の課題として浮き彫りになりました。この課題に対応するため、当社グループにおいては、小説投稿サイトを運営する株式会社エブリスタ、コミックや実用書の出版を手掛ける株式会社日本文芸社をはじめとして、グループ全体で原作創出・発掘のための新たな施策や取り組みを実施しています。また、電子書籍市場の更なる成長の牽引役となりつつある縦スクロールコミックにおいては、今後増加していくであろう制作需要を見越して、引き続き国内外の有力制作スタジオとの連携等を進めることで、プロダクト制作能力の向上や、既存機能の高度化を図っております。
今後も収益拡大や成長促進に向けた積極的な投資を行うことで、第二の収益軸の創出に向けた取り組みを進めてまいります。
その結果、売上高は1,851百万円(前年同期比20.1%増)、セグメント損失は331百万円(前年同期はセグメント損失411百万円)となりました。
② 財政状態
当第1四半期連結会計期間末における資産合計は、現金及び預金が703百万円減少したほか、受取手形、売掛金及び契約資産が208百万円、のれん及びソフトウエア等の無形固定資産が172百万円それぞれ減少したこと等により、前期末と比べ945百万円減少し、49,936百万円となりました。
負債合計は、未払法人税等が158百万円増加した一方、支払手形及び買掛金が557百万円減少したことに加え、長期借入金が325百万円減少したこと等により、前期末と比べ668百万円減少し、33,440百万円となりました。
純資産合計は、利益剰余金が232百万円増加した一方、自己株式の消却により資本剰余金が499百万円減少したこと等により、前期末と比べ277百万円減少し、16,495百万円となりました。
(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(3)経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等
当第1四半期連結累計期間において、当社グループの経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等について重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間における研究開発費は軽微であるため、記載を省略しております。
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