【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末と比べ205,143千円増加し、1,704,790千円となりました。主な要因は、ハイエンド層向けのクラウドコマースプラットフォームの開発に伴いソフトウエアが473,335千円増加したこと、ソフトウエア仮勘定が165,860千円減少したこと、現金及び預金が74,108千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末と比べ94,725千円増加し、585,983千円となりました。主な要因は、運転資金の借り入れにより短期借入金が100,000千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末と比べ110,418千円増加し、1,118,806千円となりました。主な要因は、新株の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ42,016千円増加したこと、当期純利益22,091千円を計上したこと等によるものであります。この結果、自己資本比率は65.4%(前事業年度末は67.2%)となりました。
②経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、雇用や所得環境が改善される中で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が継続することが期待されています。ただし、世界的な金融引き締め等が継続する中で、海外景気の下振れが国内の景気を下押しするリスクとなっているとともに、物価上昇や金融資本市場の変動等の影響には十分注意する必要があります。
当社が関わる国内電子商取引市場は、経済産業省が2022年8月に公表した「令和3年度電子商取引に関する市場調査」によるとBtoB、BtoC共にEC化率が増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き発展しています。一方で、業界におけるエンジニアの数が不足しており、当社におきましてもエンジニアの確保が重要な経営課題となっております。また、各ECサービスにおいては、一層の機能の充実や利便性の拡充、セキュリティ面での安全性強化が求められております。当社は多くのお客様に「ebisumart」をより便利により安心して利用頂くために、品質向上及び機能の改善・強化に注力するとともに、「ebisumart」の信頼性をより高めるため、情報セキュリティマネジメントシステムISO/IEC27001の認証取得やクレジットカード業界における国際セキュリティ基準であるPCI-DSSへの準拠も継続してまいりました。また、流通総額が大きいハイエンド層向けの新しいクラウドコマースプラットフォームの開発も進めてまいりました。
このような状況の中、システム保守売上については、既存店舗の流通総額およびPV数が堅調に推移し、当初計画通りに推移した一方で、システム受託開発売上につきましては、昨年から落ち込んでいた受注に持ち直しの動きは見られるものの、当期中の売上回復には至らず、当初計画よりも下回って推移いたしました。また、受注状況の改善を図るべく、リード獲得のためのマーケティング活動に注力した結果、広告宣伝費や営業活動費用が当初計画より大きく増加いたしました。
この結果、売上高2,487,178千円(前年同期比8.9%増)、営業利益は53,336千円(前年同期比46.4%増)、経常利益は46,949千円(前年同期比36.7%増)、当期純利益は22,091千円(前年同期比9.9%増)となりました。
なお、当社はクラウドコマースプラットフォーム構築事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末と比べ74,108千円減少し、301,933千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは130,013千円の収入(前事業年度は85,112千円の支出)となりました。これは主に税引前当期純利益37,811千円を計上したこと、減価償却額を84,153千円計上したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは392,449千円の支出(前事業年度は276,706千円の支出)となりました。これは主にサービス充実を目的とした無形固定資産(自社利用ソフトウェア)の取得による支出378,714千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは188,327千円の収入(前事業年度は51,308千円の収入)となりました。これは主に短期借入金が100,000千円増加したこと、新株の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ42,016千円増加したことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当事業年度における生産実績は、次のとおりであります。
売上の計上区分
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
システム受託開発
470,532
100.2
(注)1.システム運用保守及びその他に関しましては、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
2.金額は製造原価によっております。
b.受注実績
当事業年度における受注実績は、次のとおりであります。
売上の計上区分
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
システム受託開発
910,725
91.1
286,467
102.5
(注)1.システム運用保守及びその他に関しましては、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
2.受注高の増加理由は開発人員の増加により受注可能額が増加したためであります。
c.販売実績
当事業年度における販売実績を売上の計上区分別に示すと、次のとおりであります。
売上の計上区分
当事業年度
(自 2022年6月1日
至 2023年5月31日)
金額(千円)
前年同期比(%)
システム受託開発
システム運用保守
その他
903,991
1,521,066
62,120
103.7
112.2
112.2
合計
2,487,178
108.9
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しておりますが、見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a.繰延税金資産について
当社は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得に関する予測は、過去の実績等に基づいており、経営環境の変化や税制の変更等によって、課税所得の見積りの変更が必要となる場合には、繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。
b.ソフトウエアの会計処理について
当社は、将来の収益獲得または費用削減の効果につながるソフトウエアを開発する場合に、その開発にかかるコストをソフトウエアとして無形固定資産に計上する場合があります。
その場合、見込収益獲得期間または費用削減期間に基づく定額法(5年)により減価償却を実施しております。ただし、当該ソフトウエアの陳腐化や有効性の低下等により、見込んでいた効果が得られないことが明らかになった場合には、費用または損失を計上する可能性があります。
c.受注損失引当金について
当社は、システム受託開発案件のソフトウエアに関して、開発原価総額が受注契約金額を超える可能性が高く、かつその金額を合理的に見積ることができる場合には、その超過すると見込まれる額のうち、当該開発案件に関して既に計上された損益の金額を控除した残額を、損失が見込まれた期の損失として計上し、受注損失引当金を計上しております。
d.履行義務の充足に係る進捗度の見積りによる収益認識
当社は、システム受託開発売上について、開発期間がごく短いものを除き、履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しております。なお、履行義務の進捗度の見積りの方法は、社内で実施したカスタマイズ作業については、見積総工数に対する実際工数の割合、またアウトソースパートナーへ委託したカスタマイズ作業については、開発を委託した機能のうち、完成した機能の割合により算出しています。
システム受託開発の履行義務の充足に係る進捗度の見積りについては、当初予見ができなかった事象の発生等により、当初見積りに変動が生じる場合があることから、翌事業年度の財務諸表において認識する収益に影響を及ぼす可能性があります。
②経営成績の分析
a.売上高
当事業年度の売上高は、前事業年度に比べ203,985千円増加し、2,487,178千円(前年同期比8.9%増)となりました。これは主に電子商取引の需要増に伴う取引増加により、システム保守売上が1,521,066千円(前年同期比12.2%増)となったことによるものであります。
b.売上原価、売上総利益
当事業年度における売上原価は事業規模拡大に伴い、前事業年度に比べ46,847千円増加し、152,379千円(前年同期比3.2%増)となりました。これは主に人員増による人件費が増加したこと等によるものであります。この結果、売上総利益は前年同期比に比べ157,137千円増加し、963,385千円(前年同期比19.5%増)となりました。
c.販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度における販売費及び一般管理費は、従業員数増加に伴う人件費、マーケティング活動強化に伴う広告宣伝費、営業活動強化によるプリセールス費(エンジニアの営業同行、見積り業務等)の増加等により前事業年度に比べ140,222千円増加し、910,049千円(前年同期比18.2%増)となりました。
この結果、営業利益は前事業年度に比べ16,915千円増加し、53,336千円(前年同期比46.4%増)となりました。
d.営業外損益、経常利益
当事業年度における営業外収益は、前事業年度に比べ1,145千円増加し、1,750千円(前年同期比189.2%増)となりました。
当事業年度における営業外費用は、前事業年度に比べ5,460千円増加し、8,136千円(前年同期比204.0%増)となりました。
この結果、営業外損益は6,386千円の損失となり、経常利益は46,949千円(前年同期比36.7%増)となりました。
e.特別損益、当期純利益
当事業年度において特別利益の計上はなく、特別損失として投資有価証券評価損9,138千円を計上しました。この結果、税引前当期純利益は37,811千円(前年同期比24.6%増)となりました。また、法人税等15,719千円を計上した結果、当期純利益は22,091千円(前年同期比9.9%増)となりました。
③財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ①財政状態の状況」をご参照ください。
④キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制の強化、優秀な人材の確保、市場のニーズにあったサービスの展開等により、当社の経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
⑥資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金需要のうち主なものには、人件費、支払手数料、広告宣伝費等があります。運転資金は、主として内部資金及び借入により調達しております。
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は301,933千円であり、当社の事業を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。
⑦経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、システム受託開発の受注金額及びシステム運用保守のARPU(顧客単価)を重要な経営指標と位置付けております。システム受託開発の受注金額の多寡は、後のシステム運用保守につながる重要な要素であり、システム運用保守のARPU(顧客単価)は「ebisumart」の顧客規模を計る重要な指標として認識しております。当事業年度においては、受注金額が910,725千円と一時的に受注が不足し減少となりましたが、月間平均ARPUが336千円と継続して増加した結果、売上高も堅調に推移いたしました。また、クラウドコマースプラットフォーム「ebisumart」の価値を計る指標としてGMV(流通総額)を参考としており、当事業年度末で148,131,480千円と増加しております。当該目標の達成状況に関して一定の評価をしておりますが、今後も株主価値向上のための経営施策を実施してまいります。
区分
システム受託開発の
受注金額
システム運用保守の
月間平均ARPU(千円)
GMV(千円)
(1店舗あたりGMV)
2019年5月期
545,936
222
86,429,496
(265,121)
2020年5月期
739,800
250
110,180,238
(305,631)
2021年5月期
932,483
261
127,700,886
(332,554)
2022年5月期
999,830
292
137,030,875
(354,084)
2023年5月期
910,725
336
148,131,480
(391,882)
(注)1.1店舗当たりGMVは、各期のGMV÷期中平均店舗数で算出しております。
2.月間平均ARPUは、システム運用保守売上高÷期中平均店舗数÷12で算出しております。
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