【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第1四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間(2022年10月1日~2022年12月31日)の世界経済は、総じて成長ペースが鈍化しました。欧米経済減速の背景には、高インフレと金融引き締めがあります。欧米のインフレ率は、依然として10%近い高い伸びとなっており、米国FRB(連邦準備制度理事会)と欧州ECB(欧州中央銀行)は高インフレ抑制に向けて利上げを継続しました。中国経済は、2022年12月以降に新型コロナウイルスに関する規制(ゼロコロナ政策)が緩和されましたが、感染の急拡大が経済活動の下振れ要因となっています。
わが国経済は、物価高と新型コロナウイルス感染拡大が進行する中でも経済活動の持ち直しが進みました。物価は、資源高と円安を主因に、消費者物価が前年比+4%弱と、約41年ぶりの高い伸びとなりました。消費は、物価高に下押しされていますが、雇用・所得環境の底堅さや経済活動の再開を受けて増加傾向を維持しています。輸出は、欧米向けを中心に財輸出が底堅く推移したほか、訪日外客数の持ち直しがサービス輸出を押し上げ、総じて増加基調となりました。企業は、コロナ禍のもとで先送りしてきた投資の実施や、DX・GX(*1)関連の投資強化を背景に、設備投資に対する姿勢を積極化しています。こうした企業の投資姿勢は当社の主にエネルギー、情報通信の事業にプラスに寄与すると見込まれます。
このような社会情勢・事業環境を踏まえつつ、当社は経営理念「豊かで持続可能な未来の共創を使命として、世界と共に、あるべき未来を問い続け、社会課題を解決し、社会の変革を先駆ける」を掲げ、事業に取り組んでいます。
当連結会計年度は「中期経営計画2023」(中計2023)の最終年(3年目)です。中計2023の財務目標は前連結会計年度に前倒して達成しましたが、過去2年間の成果と課題を踏まえ、さらなる成長に向け取り組んでいます。具体的には、当社グループの基盤事業であるリサーチ・コンサルティング事業・金融ソリューション事業の価値提供力に磨きを掛けるとともに、シンクタンクとしての政策提言機能の強化、成長領域であるDX事業、ストック型事業、海外事業などへの先行投資を進めています。また、人財、都市・モビリティ、エネルギー、ヘルスケア、情報通信、循環、食農、レジリエンスなどの分野で、研究・提言から社会実装に至るバリューチェーン(価値創造プロセス:VCP(*2))を一貫して手掛けるVCP経営を展開、新たな事業の柱や収益源の獲得に注力しています。
国内では新型コロナウイルス感染の第8波に直面しておりますが、前述のとおり国内企業においてはウィズコロナ・ポストコロナの「新常態」への流れの中で投資を積極化する動きもみられ、当社グループにとっての事業機会ともなっています。当社では、「新常態」を見据えたオフィス改革による生産性の向上並びに経費抑制などは前連結会計年度に概ね対応を完了いたしました。以上から、新型コロナウイルス感染第8波による当社グループの当第1四半期連結累計期間の業績に対する大きな影響はありませんでした。
成長事業の牽引役と位置づけたDX事業では、民間、公共、金融の3つの重点テーマを設定して展開を図っています。また、当社及び子会社の中核を担っている三菱総研DCSとの連携を一層強化し、営業・コンサルティング活動面でも双方の組織を結び付け、一体的に取り組んでいます。引き続き、民間向けには、DXコンサルティングとクラウド移行を組み合わせた支援や、ビッグデータ分析を採り入れたデジタルマーケティング、公共向けには行政DXの推進、金融向けには事業領域や顧客層拡大などを積極的に展開しています。
こうした結果、当社グループの当第1四半期連結累計期間における業績は、売上高は27,459百万円(前年同期比8.3%増)、営業利益は2,358百万円(同28.6%増)、経常利益は2,677百万円(同19.4%増)となりました。前年同期に投資有価証券売却益を計上していたこと等により、親会社株主に帰属する四半期純利益は1,261百万円(同37.8%減)となりました。
(*1)GX :グリーン・トランスフォーメーションの略。化石燃料中心の経済・社会、産業構造を再生可能エネルギー中心に移行させ、経済社会システム全体を変革すること。
(*2)VCP:価値創造プロセス(Value Creation Process)の略。社会課題を起点に、その解決と未来社会の実現をゴールとして、お客様や社会への提供価値の向上と持続的成長を目指す、当社グループの価値連鎖の展開過程を意味する。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(シンクタンク・コンサルティングサービス)
当第1四半期連結累計期間は、官公庁の実証事業や民間企業のシステム・IT関連業務等が売上に貢献し、売上高(外部売上高)は8,846百万円(前年同期比2.1%減)となりました。当連結会計年度は将来の成長のための先行投資(人財)を積極的に進めておりコストが増加しましたが、前年同期における不採算案件の解消による利益改善要因があり、経常利益は938百万円(同4.4%増)と前年同期並みの水準となりました。
(ITサービス)
当第1四半期連結累計期間は、金融・カード分野の拡大などに伴い売上案件が伸長し、売上高(外部売上高)は18,613百万円(前年同期比14.0%増)、経常利益は1,734百万円(同29.8%増)となりました。
(2)財政状態の状況
当第1四半期連結会計期間末の総資産は、前連結会計年度末と比べて5,034百万円減少し、109,618百万円(前年度末比4.4%減)となりました。内訳としては、流動資産が67,940百万円(同8.1%減)、固定資産が41,678百万円(同2.3%増)となりました。流動資産の主な減少要因としましては、季節変動により受取手形、売掛金及び契約資産が4,175百万円増加したものの、現金及び預金が10,309百万円減少したことによるものであります。固定資産の増加は、建設仮勘定の計上等によるものであります。
負債は、未払法人税等及び賞与引当金の減少等により前連結会計年度末と比べて5,237百万円減少し、38,262百万円(同12.0%減)となりました。
純資産は、資本剰余金及びその他有価証券評価差額金の増加等により前連結会計年度末と比べて203百万円増加し、71,355百万円(同0.3%増)となりました。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間における研究開発費は350百万円であります。なお、当第1四半期連結累計期間において、研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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