【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第3四半期連結累計期間(2022年10月1日~2023年6月30日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類相当に移行したことに伴う個人消費の回復や、外国人によるインバウンド消費の増加に加え、企業の設備投資の拡大など、緩やかな回復基調となりました。堅調な企業業績を背景に日経平均株価もバブル後の最高値を更新するなど、株式市場は活況を呈した一方で、地政学的な不安定さや、円安及び資源高に起因するコストプッシュ型の物価高騰の影響もあり、先行きは依然として不透明な状況が続いております。
保険業界においては、ITや医療技術の進歩を背景として、引き続き保険商品の多様化と高度化が進むと同時に、真にお客さまの役に立つ情報の提供並びにコンサルティングの実施等、お客さま本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の実現が求められております。
このような状況下、当社グループは「人とテクノロジーを深化させ進化する会社」を標榜し、あらゆる保険ニーズに対応できる「保険業界のプラットフォーム」と、OMO(Online Merges with Offline.=オンラインとオフラインの融合)時代に相応しいエコシステム(ビジネス生態系)を構築すべく、日々新たな挑戦を行っております。
具体的には、自社開発のビデオ通話システム「Dynamic OMO」により、対面と非対面の垣根をなくし、オフラインと同等のオンライン保険相談を実現しております。当社のオンライン保険相談は、時間と場所の制約を取り払った面談方法としてその利便性をお客さまに高く評価いただき、コロナ禍の行動制限がなくなった今も面談方法の一つとして幅広くご利用いただいております。2022年7月には、大阪大学の石黒浩教授が代表を務めるスタートアップ企業「AVITA」と提携し、同社が開発したアバターを活用して、お客さまのご相談にアバターコンサルタントがお答えするサービスを開始いたしました。「Dynamic OMO」とアバターを組み合わせた新しい保険募集のあり方を実現した結果、オンライン保険相談におけるコンサルタント指名予約においてはアバターが最も支持されております。保険会社や保険代理店向けにアバターの販売も行っており、既に複数社でアバターを導入いただくなど、保険業界全体のDX化にも貢献しております。また2023年6月にはAVITA社が開発した、ChatGPT を用いた「AI アバター接客トレーニングサービス(β)」を導入し、AIによる社員教育を開始するなど、先進的な技術の活用にも取り組んでまいります。
お客さまにご来店いただくコンサルティングプラザでは、各拠点をリニューアルするとともに、より多くのお客さまに、より快適に保険相談いただけるよう、人員の増強も行っております。これらのコンサルティングプラザを有効活用し、さらなる保険代理店事業の拡大を目指します。
また、2022年9月期より、自動車保険をはじめとする損害保険分野についても取り組みを強化しており、確実に成果が出ております。損害保険分野でのマーケティングオートメーションにも注力しており、自動車保険の見積りでお客さまに最適なプランを、簡単便利に、スピーディーにご契約いただける仕組みを構築しております。
保険業界の共通プラットフォームシステム「Advance Create Cloud Platform」(以下「ACP」という。)の開発についても、引き続き推進してまいります。ACPは保険会社と乗合保険代理店、お客さまの情報を相互に連携し、保険商品の検討からお申し込み、保全手続きまでを一括して管理・運用できるシステムです。ACPの普及により、ペーパーレス化と事務負担の大幅な軽減が期待できます。ACPの主要機能である顧客管理システム「御用聞き」、申込共通プラットフォームシステム 「丁稚(DECHI)」、保険証券管理アプリ「folder」、ビデオ通話システム「Dynamic OMO」は、いずれも導入したお客さまからご好評をいただいており、さらなる機能拡充を進めております。特に「Dynamic OMO」については、保険会社や保険代理店をはじめ、クレジットカード会社など他業種のお客さまにも導入いただいております。これらのシステムの販売により、サブスクリプションモデルとしてのストック収入の確保及び協業事業の拡大を目指します。
さらに、当社はLINE、SMS等のテキストコミュニケーションツールの活用により、お客さまとのよりスムーズなコンタクトを実現しております。このようなノウハウを、保険会社や乗合保険代理店の顧客に対する保全業務を請け負うBPO事業にも活用し、業容の拡大、及び保険業界の課題であるCRMの継続・改善にも取り組んでいきたいと考えております。これらの施策を拡充するとともに、ガバナンス体制及びコンプライアンス体制の一層の充実や、情報セキュリティ体制の強化を継続し、保険業法や個人情報保護法等の関係法令に適応した保険募集管理体制の強化に全社的に取り組み、管理体制面において積極的に経営資源を投下してまいります。
第2四半期までは、円安による外貨建保険の解約が増加(売上戻入)に加え、新型コロナウイルス感染症の影響による再保険事業の収益悪化等の影響があり、売上は増加したものの営業利益では減益となりました。当第3四半期においては、売上の戻入が引き続き高水準で推移したことなどから、前年同期比減収減益という結果となりました。一方で、テキストコミュニケーションを活用したマーケティング手法を開発し、2023年5月、6月と安定的に当社の売上の先行指標でもあるアポイント数を増やすことができております。
その結果、2023年9月期の連結業績予想を下方修正いたしておりますが、売上の戻入等の不確実な要素を低減させた収益構造が実現しつつあることと、株主に対する安定配当を重視し、配当予想について変更はいたしておりません。引き続き、生命保険に限らず、多様な収益チャネルを確立することで、安定的な経営基盤の構築を目指してまいります。
以上により、当第3四半期連結累計期間の売上高は8,635百万円(前年同期比2.1%減)、営業損失は584百万円(前年同期は1,618百万円の利益)、経常損失は724百万円(前年同期は1,550百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失は669百万円(前年同期は1,007百万円の利益)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(保険代理店事業)
直営コンサルティングプラザでの販売実績が前年同期比堅調に推移した一方、外貨建保険をはじめとする既契約の解約及び失効等が増加し売上戻入が発生したこと、及び前期から実施しているコールセンター部門への投資によるコスト増が影響し減収減益となりました。
この結果、保険代理店事業におきましては、当第3四半期連結累計期間の売上高は6,698百万円(前年同期比5.6%減)、営業損失は1,089百万円(前年同期は1,046百万円の利益)となりました。
(ASP事業)
乗合保険代理店等へのACPの新規販売が堅調に推移し、増収増益となりました。
この結果、ASP事業におきましては、当第3四半期連結累計期間の売上高は187百万円(前年同期比22.0%増)、営業利益は70百万円(前年同期比76.9%増)となりました。
(メディア事業)
保険選びサイト「保険市場(ほけんいちば)」への広告出稿が堅調に推移し、増収増益となりました。
この結果、メディア事業におきましては、当第3四半期連結累計期間の売上高は2,105百万円(前年同期比55.0%増)、営業利益は454百万円(前年同期比43.5%増)となりました。
(メディアレップ事業)
保険選びサイト「保険市場(ほけんいちば)」の運営を通じて蓄積したWEBマーケティングのノウハウをベースに、保険専業の広告代理店としてさまざまなサービスの提供に努め、前期に引き続き新たな広告手法を積極的に開発投資した結果、増収減益となりました。
この結果、メディアレップ事業におきましては、当第3四半期連結累計期間の売上高は1,020百万円(前年同期比11.9%増)、営業利益は106百万円(前年同期比26.9%減)となりました。
(再保険事業)
売上高が引き続き堅調に推移した一方、新型コロナウイルス感染症の影響が残っていたことで再保険金の支払いが増加したことから、増収減益となりました。
この結果、再保険事業におきましては、当第3四半期連結累計期間の売上高は824百万円(前年同期比7.7%増)、営業損失は128百万円(前年同期は67百万円の利益)となりました。
①財政状態
(資産合計)
当第3四半期連結会計期間末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ723百万円減少し11,768百万円(前連結会計年度末は12,491百万円)となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,188百万円減少しましたが、これは主に、現金及び預金が1,205百万円減少したこと等によるものです。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ469百万円増加しましたが、これは主に、ソフトウエアの増加263百万円、繰延税金資産の増加280百万円等によるものです。
(負債合計)
当第3四半期連結会計期間末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ683百万円増加し6,028百万円(前連結会計年度末は5,345百万円)となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ1,028百万円増加しましたが、これは主に、短期借入金の増加900百万円等によるものです。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ345百万円減少しましたが、これは主に、社債の減少200百万円等によるものです。
(純資産合計)
純資産は前連結会計年度末に比べ1,406百万円減少しましたが、これは主に、親会社株主に帰属する四半期純損失669百万円、剰余金の配当による減少789百万円等によるものです。
②経営成績
(売上高)
当第3四半期連結累計期間の売上高は8,635百万円(前年同期比2.1%減)となりました。これは、保険代理店事業において、販売実績が堅調に推移し、メディア事業・メディアレップ事業において、保険専業の広告代理店としてさまざまなサービスの提供に努めた一方、保険代理店事業での既契約の解約及び失効等が増加したことによるものであります。
(売上原価、販売費及び一般管理費)
当第3四半期連結累計期間の売上原価は、2,870百万円(前年同期比50.7%増)となりました。主な増加要因としましては、保険代理店事業におけるマーケティングコストの増加によるものであります。
当第3四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、6,350百万円(前年同期比19.8%増)となりました。主な増加要因としましては、再保険事業における正味支払保険金、及び保険代理店事業における派遣費用の増加によるものであります。
(営業損益)
当第3四半期連結累計期間の営業損失は、584百万円(前年同期は1,618百万円の利益)となりました。主な減少要因としましては、保険代理店事業におけるマーケティングコストの増加による売上原価の増加、再保険事業における正味支払保険金、及び保険代理店事業における派遣費用の増加により販売費及び一般管理費が増加したことによるものであります。
(経常損益)
当第3四半期連結累計期間の経常損失は、724百万円(前年同期は1,550百万円の利益)となりました。主な減少要因としましては、売上原価及び販売費及び一般管理費が増加したことによるものであります。
(親会社株主に帰属する四半期純損益)
当第3四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純損失は、669百万円(前年同期は1,007百万円の利益)となりました。主な減少要因としましては、売上原価及び販売費及び一般管理費の増加によるものであります。
(2)経営方針・経営戦略等
当第3四半期連結累計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に、重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
該当事項はありません。
(5)経営成績に重要な影響を与える要因
当第3四半期連結累計期間において、経営成績に重要な影響を与える要因に変更はありません。
(6)資本の財源及び資金の流動性
当第3四半期連結累計期間において、資本の財源及び資金の流動性の重要な変更はありません。
(7)保険代理店事業に係る売上計上について
保険代理店事業の主たる収入は保険代理店手数料収入であります。当社は、保険契約の媒介及び代理行為に伴い、各保険会社との契約及び手数料規程に基づき保険代理店手数料を受領しております。
保険代理店手数料の受領形態は、保険商品の種類(生命保険・損害保険、契約期間(1年・複数年)、保険料支払方法(年払い・月払い)、その他)、保険会社毎の契約及び規程によりさまざまな形態があり、保険契約成立時に受領するもの(初回手数料)及び保険契約継続に応じて受領するもの(2回目以降手数料)等、これらについて一括又は分割並びにその受領割合等が異なるものが存在しております。
当社は、初回手数料については保険契約成立時に受領する手数料額を売上計上しているほか、2回目以降手数料の一部については、複数年にわたる期間を対象とする保険契約のうち保険会社より計算結果確認書面の受領が可能である等の条件の下、顧客との契約における履行義務が充足した額を収益として認識しております(一方で、将来発生する解約相当額を収益額の算定において控除しております)。
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