【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
Ⅰ 経営成績
当第2四半期連結累計期間(以下、当第2四半期)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の影響が和らぐ中、経済活動の正常化に向けた動きが見られるものの、資源価格の高騰等による物価上昇や、世界的な金融不安などが景気回復の重しとなり、依然として先行きの不透明感が漂っています。こうした状況の中、日本政府は国民や中小企業を支援する金融・財政政策や成長戦略の推進を通じて、経済の回復に取り組んでいます。
当社グループは、このような社会環境や政府の取り組みに迅速に対応したシステムの開発やサービスの提供を継続し、顧客ならびに地域・社会に貢献すべく事業を展開してまいりました。
会計事務所事業部門では、顧客である税理士および公認会計士(以下、TKC会員)が、中小企業の伴走型の支援者として、税務・会計・保証・経営助言の業務に取り組むための支援を実施しています。
地方公共団体事業部門では、住民基本台帳法の一部改正等に顧客市区町村が円滑に対応するための支援を展開しました。
これらの活動の結果、当第2四半期における株式会社TKCとその連結子会社等6社を含む連結グループの経営成績は、売上高が36,050百万円(前期比6.8%増)、営業利益は8,735百万円(同6.2%増)、経常利益は8,858百万円(同5.1%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は6,134百万円(同5.5%増)となりました。
当第2四半期における事業部門別の売上高の推移は以下のとおりです。
1.第2四半期業績の推移
(1)会計事務所事業部門の売上高の推移
会計事務所事業部門における売上高は23,710百万円(前期比4.1%増)、営業利益は6,233百万円(同3.5%減)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
①コンピューター・サービス売上高は、前期比2.8%増となりました。これは会計事務所の業務を統合的に管理できる「税理士事務所オフィス・マネジメント・システム(OMSクラウド)」を新たに採用する事務所が増加したことによります。
②ソフトウエア売上高は、前期比3.6%増となりました。これは、令和5年10月から開始される改正消費税法(以下、インボイス制度)への対応が求められている中で、会計・販売管理機能を標準搭載した「FXクラウド」を新規に利用開始する関与先企業が増加したことによります。なお、TKCでは、インボイス制度に完全対応した会計・販売管理システムを令和5年6月から提供する予定です。
③コンサルティング・サービス売上高は、前期比4.6%増となりました。これは中堅企業向けの会計システム「FX4クラウド」の販売が堅調に推移し、立ち上げ支援サービスが増加したことによります。
④ハードウエア売上高は、前期比12.6%増となりました。これは、令和4年度の「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)」において、ハードウエアの購入費用も補助の対象となったこと、および令和6年1月以降、電子帳簿保存法の電子取引データに関する宥恕措置が終了されることに伴い、「FXクラウド」に標準搭載している証憑保存機能の利用を目的として、スキャナーを新規に購入する関与先企業が増加したことなどによります。
⑤サプライ用品売上高は、前期比5.1%減となりました。これは、リモート業務やデジタル化を支援する事務機器の販売は好調だったものの、関与先企業の自計化の進展に伴いペーパーレス化が進んだため、紙の会計用品や印刷関連の消耗品の需要が減少したことによります。
⑥なお、営業利益が前期と比較して減少したのは、対面での営業や大規模なイベント活動を再開したこと、利益率の低いハードウエア売上高が増加したことなどによります。
(2)地方公共団体事業部門の売上高の推移
地方公共団体事業部門における売上高は10,921百万円(前期比17.3%増)、営業利益は2,562百万円(同47.2%増)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
①コンピューター・サービス売上高は、前期比0.5%増となりました。これは、前期に受託した衆議院選挙に伴う入場券作成業務が当期はなかったものの、新たに「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金」支給に係る申請書等作成業務および令和4年の秋から開始された新型コロナワクチンに係る接種券作成業務を受託したことなどによります。
②ソフトウエア売上高は、前期比3.0%増となりました。これは、住民基本台帳法の改正によって令和5年2月6日から開始された「マイナポータルを通じたオンラインによる転出届・来庁予定の連絡(転出・転入手続きのワンストップ化)」に伴う一時的なシステム改修の売上高が増加したことなどによります。
③コンサルティング・サービス売上高は、前期比280.2%増となりました。これは、「転出・転入手続きのワンストップ化」に伴うシステム導入支援に加え、地方税法の改正によって令和5年4月1日から開始された「地方税統一QRコードを活用した地方税の納付」に伴うシステム導入支援、軽自動車保有関係手続のワンストップサービス(軽自動車OSS)および軽自動車税納付確認システム(軽JNKS)と当社顧客市区町村の基幹系システムとの連携サービスの導入支援などを実施したことによります。
④ハードウエア売上高は、前期比34.2%増となりました。これは、基幹系システムの機器更改に伴うハードウエアやネットワーク強靭化事業の機器更改に伴うネットワーク機器の導入などによります。
⑤なお、営業利益が前期と比較して増加したのは、新たに稼働となるシステムの導入支援が集中し、コンサルティング・サービス売上高が増加したことなどによります。
(3)印刷事業部門(子会社:株式会社TLP)の売上高の推移
印刷事業部門における売上高は1,418百万円(前期比15.6%減)、営業損失は72百万円(前期は営業利益28百万円)となりました。売上高の主な内訳は以下のとおりです。
①データ・プリント・サービス(DPS)関連商品の売上高は、前期比24.6%減となりました。これは令和3年10月の衆議院議員選挙入場券の印刷業務が当期はなかったこと、民間企業から受注しているダイレクトメールのうち、大型案件が顧客事情により中止された影響によります。
②ビジネスフォーム関連の売上高は、前期比7.5%増となりました。これは、前期において新規獲得した顧客企業からの伝票印刷業務の受注が増加したことによります。
③商業美術印刷(カタログ、書籍等)関連の売上高は、前期比1.5%増となりました。これは、インボイス制度を解説する書籍等や顧客企業の周年記念事業における印刷業務を受注したことによります。
2.全社に関わる重要な事項
(1)当社子会社の吸収合併(簡易合併)
当社の子会社であるTKC金融保証株式会社は、昭和52年の設立以降、TKC全国会会員の関与先企業を対象に金融保証、直貸、リースをはじめとする金融関連商品の開発・提供等を行ってまいりました。しかし、同社設立時と比較して、今日の中小企業を取り巻く金融支援の環境は大きく変化しており、同社を設立した目的は達成したと判断するに至りました。そのため、令和5年4月1日を期日としてTKC金融保証株式会社を株式会社TKCに吸収合併(簡易合併)しました。
(2)「インボイス・マネジャー2022」によるペポルインボイスの送受信を開始
当社が開発・提供するクラウド型システム「インボイス・マネジャー2022」を利用し、国際標準仕様である「Peppol(ペポル)」をベースにしたペポルインボイス(デジタルインボイス)の送受信実験を30社超と開始しました。令和5年10月から開始されるインボイス制度を見据えて、当社の請求業務にペポルインボイスを活用することで、ペポルインボイスに係るノウハウを蓄積し、今後ユーザー企業に提供することで、請求業務のデジタル化と経理業務の省力化を支援する予定です。
(3)システムに搭載する機能において特許を取得
「海外ビジネスモニター(OBMonitor)」の内部監査支援機能(取引日・入力日乖離分析)において特許を取得しました(令和5年3月24日取得/特許第7250992号)
(4)TKCカスタマーサポートサービス株式会社(TCSS)がHDI「三つ星」を2年連続で獲得
当社が100%出資するコールセンターサービス専門子会社のTCSSは、その電話応対についてHDI-Japanによる格付けベンチマーク「クオリティ格付け」の最高評価にあたる「三つ星」を令和5年3月8日に獲得しました。これによりTCSSは令和4年に引き続き、2年連続で最高評価を獲得いたしました。
3.会計事務所事業部門の営業活動と経営成績
会計事務所事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第1項:会計事務所の職域防衛と運命打開のため受託する計算センターの経営)に基づき、当社の顧客である税理士および公認会計士1万1,400名(令和5年3月末日現在)が組織するTKC全国会との密接な連携の下で事業を展開しています。
(1)「黒字決算」と「適正申告」の実現に向けた活動
TKC全国会が掲げる運動方針とその目標達成に向けた営業活動の実施
①TKC全国会の運動方針
TKC全国会は、令和4年より向こう3年間の運動方針として「未来に挑戦するTKC会計人──巡回監査を断行し、企業の黒字決算と適正申告を支援しよう!」を掲げられています。また、その実現に向けて、次の3つの目標を掲げています。
1)優良な電子帳簿を圧倒的に拡大する
「TKC方式の自計化」の推進
2)租税正義の守護者となる
「TKC方式の書面添付」の推進
3)黒字化を支援し、優良企業を育成する
「巡回監査」と「経営助言」の推進
TKC全国会は、巡回監査の実践とコンプライアンスを遵守しながら、企業の黒字化に貢献すると宣誓されています。当社は、これらの3つの目標達成を支援するためTKC方式の自計化推進を軸とした営業活動を展開します。
②優良企業の育成に向けた取り組み
TKCグループでは、中小企業が目指すべき指標として以下の6つの条件を定めました。
・TKC方式の自計化の実践
・書面添付の実践
・中小会計要領への準拠
・限界利益額の2期連続増加
・自己資本比率が30%以上
・税引前当期純利益がプラス
25万社超の決算書データを収録した「TKC経営指標(BAST)」では、この条件を充足した企業を「BAST優良企業」と定義しています。
TKC会員の指導のもとコンプライアンスを遵守しながら、高付加価値経営に取り組む企業の増加を支援することにより、「TKC会員は優良企業を育成する伴走者である」ことを広く社会に訴えてまいります。
③「365日変動損益計算書」の活用促進
TKCの自計化システム(FXシリーズ)には、月次決算を支援する機能や経営者の意思決定を支援する「365日変動損益計算書」を搭載しています。「365日変動損益計算書」は、通常の損益計算書と異なり、変動費と固定費を区分して業績を確認できるため、「FXシリーズ」を利用している企業経営者は、限界利益(粗利)を意識して経営に取り組めるようになります。当社では、この「365日変動損益計算書」を経営者にとって手放せないツールにしていただくための啓蒙活動を展開しています。令和5年1月には、月次決算の徹底と「365日変動損益計算書」の活用により会社を成長させたドキュメンタリー番組「ドキュメント戦略経営者」をBS11で放映しました。また、令和5年3月には「365日変動損益計算書」「業績評価マトリックス」を解説する下敷きを100万枚製作し、会員事務所ならびにその関与先企業に配布しました。
④TKC方式の自計化の推進(「FXシリーズ」の推進)
コロナ禍において実行された実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済開始や物価、資源価格の高騰などにより、いま中小企業は厳しい経営環境におかれています。そのため、当社は「FXシリーズ」に搭載している「経営戦略レベル」の機能(365日変動損益計算書、業績評価マトリックス、予算登録等)の活用を支援しました。また、経営者がこれらの機能を有効に活用するには、適時・正確な会計取引の入力と月次決算体制の構築が必要となります。そのため、「日常業務レベル」の機能として、インターネットバンキングから取引明細を受信して仕訳に変換する「銀行信販データ受信機能」の活用や、「戦略給与情報システム(PX2)」との給与仕訳の連携などを支援しています。
こうした活動の結果、令和5年3月末日現在で「FXシリーズ」の導入件数は30万件を超えています。当社は、「FXシリーズ」の導入を通じて中小企業の月次決算体制を構築し、「黒字決算と適正申告」の実現を支援してまいります。
⑤電子帳簿保存法への完全対応支援
令和4年1月1日から施行された改正電子帳簿保存法により、国税関係帳簿の電磁的記録である「電子帳簿」は、1)過去の仕訳データの加除訂正履歴(トレーサビリティ)を残している「優良な電子帳簿」(改正電子帳簿保存法の施行規則第2条および第5条の要件を満たす電子帳簿)と、2)帳簿の加除訂正履歴を残さない会計ソフトで作成した「その他の電子帳簿」(改正電子帳簿保存法の施行規則第2条の要件だけを満たす電子帳簿)に区別されることになりました。これは「帳簿の証拠力」の消滅にもつながる法改正であり、帳簿を改ざんできる会計ソフトの利用を認めたことになります。当社はこの問題に対処するため、「優良な電子帳簿」を作成する「FXシリーズ」の利用促進を全国的に展開しています。
また、改正電子帳簿保存法により電子取引データの電子保存の義務化への対応も求められています。引き続き全ての事業者が電子取引に対応できるよう「FXシリーズ」の証憑保存機能の活用も支援してまいります。
⑥インボイス制度への完全対応支援
令和5年10月1日からスタートするインボイス制度への対応支援を会計事務所が関与先企業に対してスムーズに行えるよう、当社では研修の整備や説明資料の提供等を進めています。
「FXシリーズ」には、「取引先マスター」の取引先名と国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトと照らし合わせて「事業者登録番号」を登録・更新できる機能を搭載しています。この機能により、取引単位で適格請求書発行事業者との取引に該当するかどうかを自動判定できるため、FXシリーズ利用企業は正確な消費税計算を行うことができます。
また、令和4年8月19日に当社は、日本におけるPeppol(Pan European Public Procurement Online(以下、ペポル))の管理局(Japan Peppol Authority)であるデジタル庁、およびペポルの管理団体である 「Open Peppol」(本部:ベルギー)から、国内初のペポルサービスプロバイダーに認定されました。TKCの自計化システムは、このインフラを活用し、ペポルに準拠したデジタルインボイスの発行と受取を標準的に行えるよう機能強化します。
⑦「TKCモニタリング情報サービス」の推進
「TKCモニタリング情報サービス」は、TKC会員事務所が毎月の巡回監査と月次決算を実施した上で作成した月次試算表、年度決算書、税務申告書などを、関与先企業の経営者からの依頼に基づいて金融機関に開示するための無償のクラウドサービスです。
当社は「TKCモニタリング情報サービス」の推進と同時に、金融機関に対して中小企業の決算書の信頼性は以下の3帳表で確認できることを訴求しました。
1)TKC会員が実践する「税理士法第33条の2に基づく添付書面」
2)会社法第432条が定める帳簿の適時性および決算書と申告書の連動性を株式会社TKCが過去3年にわたって証明する「記帳適時性証明書」
3)日本税理士会連合会、全国信用保証協会連合会が制定した「中小会計要領チェックリスト」
こうした活動の結果、「TKCモニタリング情報サービス」は令和5年3月末日現在、全国全ての地方銀行(62行)を含む482金融機関に採用されており、その企業利用件数が32万件を超えています。
当サービスは、財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による透明性の確保に資するものとして、中小企業の経営支援に取り組んでいる金融機関と信用保証協会から高く評価されています。中小企業を伴走型で支援する金融機関とTKC会員の架け橋となることが期待されています。
⑧会員導入(TKC全国会への入会促進)
TKC全国会は、2022年から2024年までの3年間で新規に入会する会員事務所を1,000件超とする目標を掲げています。当社はその達成に向けて、TKC全国会ニューメンバーズ・サービス委員会との連携を強化した取り組みを展開しています。併せて、新たにTKC全国会に入会した事務所について「税理士事務所オフィス・マネジメント・システム(OMSクラウド)」をはじめとしたTKCシステムを有効に活用いただくためのサポート体制も強化しています。
(2)「適時・正確な記帳に基づく信頼性の高い決算書の作成を支援する」ための活動
①「中小会計要領」の普及支援活動
TKC全国会では、中小企業が準拠すべき会計基準として、平成24年2月に制定された「中小企業の会計に関する基本要領」(以下、中小会計要領)を推奨しています。
中小会計要領は、1)自社の経営状況の把握に役立つ会計、2)利害関係者(金融機関等)への情報提供に資する会計、3)会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠した会計、4)中小企業に過重な負担を課さない会計――の考えに沿って制定されています。
当社は、その普及・活用に向けたTKC全国会の運動を支援するため、教材などの整備と他の中小企業支援団体との連携に継続して取り組んでいます。
②「記帳適時性証明書」の発行
当社では、TKC会員が当社の会計システムを利用する際に当社データセンターに自動的に保存される処理履歴データと過去の時系列データを活用し、金融機関などが客観的にTKC会員事務所の業務水準を判定する資料となる「記帳適時性証明書」を無償で発行しています。このサービスは、TKC会員が作成する決算書と税務申告書の信頼性を高め、関与先企業の円滑な資金調達に貢献することを目的として開発されたものです。これは過去データの遡及的な加除・訂正を禁止している当社の「データセンター利用方式による財務会計処理」の特長を生かしたものであり、TKC会員が毎月、関与先企業に出向いて正しい会計記帳を指導(月次巡回監査)しながら、月次決算、確定決算ならびに電子申告に至るまでの全ての業務プロセスを一気通貫で適時に完了したことを当社が第三者として証明するものです。
(3)大企業市場への展開
当社は、TKCシステムの活用により上場企業を中心とする大企業の税務・会計業務のコンプライアンス向上と合理化に貢献するとともに、これらの企業およびその関係会社をTKC会員の関与先企業とするための活動を積極的に展開しています。
①インボイス制度への対応
令和5年10月からインボイス制度が開始されるため、当社ではデジタルインボイスに対応したシステム開発とその普及に向けた取り組みを進めています。令和4年12月には、「Open Peppol(オープンペポル/本部:ベルギー)」が運営するPeppolネットワークを通してデジタルインボイスを送受信できる「インボイス・マネジャー2022」の提供を開始しております。また、当社のインボイス制度への対応の一環として、当社が顧客に発行する請求書(売上インボイス)をペポルインボイスに変更する予定です。これに先立ち、令和5年1月初旬からTKCシステムを利用しているユーザー企業30社に対して、「インボイス・マネジャー2022」によるペポルインボイスの送受信実験を開始しました。売上インボイスの件数(=請求書の枚数)に換算すると、累計100件を超えるデータの送受信となり、利用企業30社からは「業務のデジタル化や請求書発送に関わる費用の削減に繋がる」といったペポルインボイスと「インボイス・マネジャー2022」に対する高い評価を得ています。
なお、令和5年1月以降「TKCデジタルインボイス対応システム紹介セミナー」を隔週で開催しており、3カ月で400名を超える申し込みを得ています。当社は今後もペポルインボイス普及に積極的に取り組んでまいります。
②大企業市場でのシェア拡大とTKC会員の関与先拡大支援
当社では、これまで培ったノウハウを生かして、法人税・地方税の電子申告やグループ通算制度への対応支援に取り組んだ結果、令和5年3月末日現在で約2万700社あるといわれる資本金1億円超の企業(いわゆる電子申告の義務化対象企業)の約40%において「法人電子申告システム(ASP1000R)」「連結納税システム(eConsoliTax)」「グループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)」をご利用頂くに至りました。また、「TKC連結グループソリューション」の利用企業グループ数は、令和5年3月末日現在で約5,020企業グループとなりました。
これにより、日本の上場企業の売上高トップ100社のうち93社が当社のシステムを利用しています。このような活動の結果、日本の上場企業における市場シェアは42%となりました。今後もさらなる市場シェアの拡大を図ります。
(4)法律情報データベースの市場拡大
①「TKCローライブラリー」の利用拡大
当社は、リーガルリサーチのスタンダードサービスとして、「TKCローライブラリー」の付加価値を高めるため、判例・法令・文献等の基本サービスと法律専門誌等の記事収録や関連する付加情報の拡充に取り組んでいます。また、これらのコンテンツをセットにした「法律事務所向け」「企業法務部門向け」パックサービスの普及活動を展開しています。さらに、令和4年11月から顧客にお勧めする収録記事等をメールマガジンで定期配信し、直接当サービスへアクセスできる仕組みを構築することで、効果的な利用を促すサポートを開始しました。こうした活動の結果、資料室や図書館などを利用した紙ベースのリサーチから、オンラインリサーチへの移行が進んでおり、当パックサービスの採用数が増加しました。TKCローライブラリーは、法令・判例・文献情報、主要法律専門誌および専門書籍を閲覧できる総合的な法律関連情報を網羅した唯一のリーガルリサーチサービスとして評価され、順調に契約数を伸ばしています。
当期においては、TKC会員事務所をはじめ大学・法科大学院、官公庁、法律事務所、特許事務所、企業法務部、海外の機関・大学などへの提案活動を実施した結果、ユーザー数は5万8,000IDを突破し、令和5年3月末日現在で2万5,000超の諸機関で利用されています。
②アカデミック市場における展開
多くの大学・法科大学院は、オンラインによる教材やリサーチができる学習環境のDXを推進しています。当社が提供する「TKC教育研究支援システム」「TKCローライブラリー」は、いつでもどこでもオンラインで利用できること、他社をしのぐ多様なコンテンツを収録していること、さらにレポート提出、オンライン演習、テスト機能等を搭載し、授業と自学自習を支援する仕組みとなっていることなどから、教員、学生からも高く評価されています。その結果、授業および学習を支えるオンラインシステム基盤として大学の学習環境整備に貢献しています。
③司法試験受験生の学習支援
司法試験受験を目指す法科大学院生、修了生、予備試験合格者に対し、司法試験問題演習システムによる学習環境の提供とTKC全国統一模試の実施により司法試験への対応を支援しています。令和5年司法試験からは、7月中旬への実施時期の変更や一定の基準を満たした法科大学院生の在学時受験が可能になるなど、試験制度が変更になります。これを受け、TKC全国統一模試には、出願者の7割に迫る2,500名を超える受験者が集まり、6年連続で業界1位の実績を誇っています。
4.地方公共団体事業部門の営業活動と経営成績
地方公共団体事業部門は、会社定款に定める事業目的(第2条第2項:「地方公共団体の行政効率向上のため受託する計算センターの経営」)に基づき、行政効率の向上による住民福祉の増進を支援することを目的として、専門特化した情報サービスを展開しています。
当社は、地方公共団体に対して「TKC行政クラウドサービス」を提供しています。これは「TASKクラウドサービス」と「TASKアウトソーシングサービス」の2つで構成されるクラウドサービスです。「TASKクラウドサービス」は、住民基本台帳や税務情報などを管理する「基幹系関連サービス」、財務会計(公会計)や給与計算などの「内部情報系関連サービス」、行政手続きのオンライン申請などの「行政サービス・デジタル化支援サービス」で構成しており、令和5年3月末日現在で1,140団体を超える地方公共団体(都道府県、市区町村等)に採用いただいています。
(1)基幹系関連サービスの開発・提供
「TASKクラウドサービス」は、当社データセンターを運用拠点とした単一バージョンのパッケージシステムでありながら、複数団体による共同利用を前提に設計しています。また、サービス利用料金はサブスクリプション方式を採用しており、この利用料金の範囲内で年1回の定期バージョンアップを実施しています。そして「TASKアウトソーシングサービス」は、納税通知書や選挙入場券などの大量一括出力処理を支援するサービスであり、当期は「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金」支給に係る申請書等作成業務を迅速に行い、顧客市区町村の給付金支給業務などを積極的に支援しました。こうした点が評価され、「基幹系関連サービス」は令和5年3月末日現在で約170団体に採用されています。
(2)行政サービス(各種手続き)のデジタル化・オンライン化の支援
当社は、窓口業務のデジタル化「3ない窓口(行かない・待たない・書かない)」の実現を支援する「行政サービス・デジタル化支援サービス」を提供しています。当期は「TASKクラウドスマート申請システム」「TASKクラウドかんたん窓口システム」「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」の大幅な機能強化を行いました。その結果、令和5年3月末日現在、「TASKクラウドスマート申請システム」は大阪市や横浜市など政令指定都市を含む40団体以上に、「TASKクラウドかんたん窓口システム」は60団体以上に、「TASKクラウドマイナンバーカード交付予約・管理システム」は150団体以上に採用されています。
(3)地方税税務手続きのデジタル化の支援
地方税共同機構の認定委託先事業者として、同機構が運営するeLTAX(地方税ポータルシステム)審査システムなどの標準システムをクラウド方式で提供するとともに、当社独自の機能として各市区町村の税務システムとの「データ連携サービス」を開発・提供しています。
本サービスの推進にあたっては、アライアンス契約を締結した約50社のパートナー企業と共に提案活動を展開しています。その結果、「TASKクラウド地方税電子申告支援サービス」は、令和5年3月末日現在で全都道府県・市区町村の4割以上に当たる約790団体に採用されています。
当期においては、令和5年4月から開始された地方税の共通納税システムにおける税目拡大に伴う「地方税統一QRコードを活用した地方税の納付」に関するシステム導入支援作業にパートナー企業と共に取り組みました。
(4)地方公会計制度に完全準拠した財務会計システムの開発・提供
当社では、総務省が策定した統一的な基準に基づく財務書類作成機能と「日々仕訳方式」に対応した「TASKクラウド公会計システム」と、その関連システムとして「TASKクラウド固定資産管理システム」、「TASKクラウド連結財務書類作成システム」を提供しています。
当期においては、<財政状況の見える化による持続可能な財政運営>および<電子決裁や電子請求書連携などによる内部事務のDX推進>を支援する機能を拡充した次世代版公会計システムを提案した結果、「TASKクラウド公会計システム」は令和5年3月末日現在で300団体以上に採用されています。
なお、令和5年10月から開始されるインボイス制度は、地方公共団体においても対応が求められるため、会計事務所事業部門とノウハウを共有し、システムへの機能実装および市区町村等への説明対応を進めています。
(5)次世代製品の研究・開発
令和4年10月7日に「地方公共団体情報システム標準化基本方針」が閣議決定され、市区町村は、令和7年度末までに基幹業務システム(20業務)をガバメントクラウド上に構築された標準化基準を満たすアプリケーション(標準仕様準拠システム)に移行することが求められています。
当社では、地方公共団体を取り巻く環境変化に対応するため、顧客市区町村向けの「自治体DX推進セミナー」を開催し、地方公共団体情報システム標準化に関する最新情報の収集・発信などを通じて顧客サポートの強化に努めています。また、当社が協力開発事業者(アプリケーション開発事業者)として参画するガバメントクラウド先行事業において、令和4年10月31日に埼玉県美里町の基幹業務システムが稼働を開始しました。続いて川島町も12月に稼働を開始しています。これは全国初のガバメントクラウド上での稼働事例であり、当社は先行事業で得た知見を生かし、国が定めた目標期限(令和7年度末)までに全てのお客さまの標準仕様準拠システムへの移行完遂を目指します。
なお、令和4年9月2日に総務省より発表された「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画(第2.0版)」に記載の〈行政サービスのデジタル化〉を支援するため、先進団体との実証事業などを通じて、次世代ソリューションの調査・研究、開発にも継続して取り組んでいます。
5.印刷事業部門の営業活動と経営成績
当社グループの印刷事業部門は、データ・プリント・サービス(以下、DPS)事業、ビジネスフォーム印刷事業および商業美術印刷事業を基軸に事業を展開しています。
DPS分野では、市区町村からワクチン接種事業におけるワクチン接種券、価格高騰緊急支援給付金関連通知業務等を受注したものの、令和3年10月の衆議院議員選挙入場券の印刷業務が当期はなかったこと、民間企業から受注しているダイレクトメール(以下、DM)のうち、大型案件が顧客事情により中止になったことなどにより、売上高は前年に比べて減少しました。一方で、DMにQRコードを印字し、そのQRコードに埋め込んだURLにアクセスした顧客数をカウントすることでDMの効果を測定できる「効果測定サービス」など、商品の付加価値向上に向けた新たな取り組みを開始しています。
ビジネスフォーム印刷分野では、ペーパーレス化の進展によりビジネス帳票・伝票類の使用量が減少傾向にあるものの、前期において新規獲得した顧客企業からの伝票印刷業務の受注により、売上高は前年に比べて増加しました。
商業美術印刷分野(カタログ、書籍等)では、令和5年10月から開始されるインボイス制度を解説する書籍等および顧客企業の周年記念事業における印刷業務を受注したことにより、売上高は前年に比べて増加しました。
なお、印刷事業部門の株式会社TLPでは、令和4年10月3日付けでFSC®森林認証(CoC認証・FSC-C182216)を取得しました。環境配慮を志向するお客さまが増えていることを背景に、FSC認証紙の取り扱いは順調に増加しています。また、クリアファイルに代わる環境配慮製品として紙製ファイルの製造・販売を開始しています。これら環境配慮製品の開発・製造への取り組みにより環境配慮を志向するお客さまのニーズに対応しています。
また、前年と比較し、紙を中心とした原材料費等は20%増加しており、加えて、電気料金の高騰等により、生産コスト全体が上昇しています。この生産コスト上昇にともない、企業努力で吸収できない部分については、製品価格に転嫁すべくお客さまとの交渉を継続しています。
Ⅱ 財政状態
当第2四半期連結会計期間末における資産・負債および純資産の状況は次の通りです。
1.資産の部について
当第2四半期連結会計期間末における資産合計は、111,179百万円となり、前連結会計年度末109,225百万円と比較して1,953百万円増加しました。
(1)流動資産
当第2四半期連結会計期間末における流動資産は、41,896百万円となり、前連結会計年度末40,715百万円と比較して1,180百万円増加しました。 その主な理由は、現金及び預金が557百万円減少したものの、受取手形、売掛金及び契約資産に含まれる売掛金が2,051百万円増加したことによります。
(2)固定資産
当第2四半期連結会計期間末における固定資産は、69,283百万円となり、前連結会計年度末68,510百万円と比較して、773百万円増加しました。 その主な理由は、その他に含まれる長期繰延税金資産が729百万円減少したものの、長期預金が1,000百万円、投資有価証券が859百万円増加したことによります。
2.負債の部について
当第2四半期連結会計期間末における負債合計は、19,262百万円となり、前連結会計年度末21,899百万円と比較して2,636百万円減少しました。
(1)流動負債
当第2四半期連結会計期間末における流動負債は、15,098百万円となり、前連結会計年度末17,679百万円と比較して、2,580百万円減少しました。 その主な理由は、賞与引当金が1,656百万円、未払法人税等が684百万円減少したことによります。
(2)固定負債
当第2四半期連結会計期間末における固定負債は、4,163百万円となり、前連結会計年度末4,219百万円と比較して、56百万円減少しました。 その主な理由は、長期借入金が35百万円、退職給付に係る負債が24百万円減少したことによります。
3.純資産の部について
当第2四半期連結会計期間末における純資産合計は、91,916百万円となり、前連結会計年度末87,325百万円と比較して4,590百万円増加しました。 その主な理由は、利益剰余金が3,924百万円、その他有価証券評価差額金が593万円増加したことによります。
なお、当第2四半期連結会計期間末における自己資本比率は、82.7%となり、前連結会計年度末80.0%と比較して2.7ポイント増加しました。
Ⅲ キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ557百万円減少し、26,063百万円になりました。 当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの概況とその主な理由は次のとおりです。
(1)営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローについては、4,314百万円増加(前年同四半期比771百万円収入減)しました。これは、税金等調整前四半期純利益8,849百万円の計上、売上債権2,019百万円の増加、および法人税等の支払2,925百万円などによるものです。
(2)投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローについては、2,547百万円減少(前年同四半期比682百万円支出減)しました。これは、定期預金の預入2,700百万円の支出、定期預金の払戻1,700百万円の収入、および無形固定資産の取得1,219百万円の支出などによるものです。
(3)財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローについては、2,324百万円減少(前年同四半期比894百万円支出減)しました。これは、令和4年9月期期末配当2,209百万円(1株当たり配当42円)の支払いなどによるものです。
Ⅳ 事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
Ⅴ 研究開発活動
当第2四半期連結累計期間における当社グループの研究開発費はありません。
なお、当第2四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
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