【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度における世界経済は、国、地域ごとで新型コロナウイルス感染状況やワクチン接種、経済対策の違いにより経済状況が大きく異なっておりますが、各国において経済活動や市場構造に変化が生じるなど、引き続き新型コロナウイルス感染症が大きな影響を与えております。米国においては、ワクチン接種の進展を背景に感染防止策が段階的に緩和され、雇用情勢及び消費者マインドが改善するなど、ポストコロナへの移行に伴う消費者行動の変化もみられるようになってきております。欧州においても、ワクチン接種の普及に伴い、経済の正常化を進めており、サービス消費による個人消費の回復や製造業の設備投資の増加がみられております。日本においては、度重なる緊急事態宣言による活動制限の影響により、宿泊、飲食サービスなどの非製造業で先行き不透明な状況がみられるものの、海外経済の回復に伴う生産用機械・電子部品などの輸出増加を背景に、製造業の生産活動は堅調に推移しております。このような経済環境の中、当連結会計年度の受注高は697億2千7百万円(前期比20.9%の増加)、売上高は607億5千4百万円(前期比13.6%の増加)となりました。受注残高は371億8千4百万円(前期比36.7%の増加)となりました。利益面におきましては、主に増収の影響により、営業利益は63億7千万円(前期比33.0%の増加)、経常利益は65億7千4百万円(前期比31.3%の増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は46億9千9百万円(前期比41.7%の増加)となり過去最高益を更新いたしました。
セグメントごとの業績は次のとおりであります。
<粉体関連事業>当事業は、粉砕・分級装置、混合・乾燥装置及び日本市場においての大気汚染防止装置、製品捕集用集塵装置、精密空調制御装置等の製造販売、複合ナノ粒子を中心とした新素材開発とその商品化並びに微粉体受託加工サービスを提供するホソカワミクロングループの主力分野であります。前連結会計年度に低調であった化学業界向けや受託加工事業に改善傾向がみられるようになってきたことに加え、世界的に環境意識の高まりが続いていることから、ポリエステルフィルムのリサイクル用の粉砕システムへの需要が増加いたしました。その他、電子材料向けや医薬品向け、メンテナンスサービス事業など各分野とも満遍なく受注がありました。これらの結果、当連結会計年度の受注高は489億2千2百万円(前期比9.9%の増加)、受注残高は253億2百万円(前期比18.3%の増加)となり、売上高は456億4千3百万円(前期比13.0%の増加)となりました。セグメント利益は59億9千2百万円(前期比32.3%の増加)となりました。
<プラスチック薄膜関連事業>当事業は、単層から多層の各種プラスチック高機能フィルム製造装置の開発・製造・販売を行っております。主力の米国向けはパッケージング用やラミネーション用に5~9層の多層フィルム製造装置を中心に、また、欧州ではリサイクルしやすいポリエチレンのみを使用する多層フィルム製造装置が堅調に推移いたしました。その他の地域では、中国、東南アジア、中南米向けなどの成約により、高水準の受注が続いております。これらの結果、当連結会計年度の受注高は208億5百万円(前期比58.5%の増加)、受注残高は118億8千1百万円(前期比104.9%の増加)となり、売上高は151億1千1百万円(前期比15.3%の増加)となりました。セグメント利益は16億6千5百万円(前期比4.2%の増加)となりました。
② 財政状態
(1) 資産の状況当連結会計年度の資産は、前連結会計年度に比べ、79億3千9百万円増加し、731億1千9百万円となりました。これは、主に現金及び預金が44億9千8百万円増加したこと、受取手形及び売掛金が30億1千万円増加したことによるものであります。
(2) 負債の状況当連結会計年度の負債は、前連結会計年度に比べ、25億7千4百万円増加し、271億8千万円となりました。これは、主に前受金が24億7千万円増加したこと、支払手形及び買掛金が16億6百万円増加したことによるものであります。
(3) 純資産の状況当連結会計年度の純資産は、前連結会計年度に比べ、53億6千4百万円増加し、459億3千9百万円となりました。これは、主に利益剰余金が38億8百万円増加したこと、為替換算調整勘定が14億2千2百万円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ、25億2百万円増加し、198億1千2百万円となりました。各キャッシュ・フローの概要は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動によるキャッシュ・フローは、60億8千7百万円の資金の増加(前連結会計年度比20億9千6百万円の増加)となりました。主に税金等調整前当期純利益の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動によるキャッシュ・フローは、26億1千3百万円の資金の減少(前連結会計年度比12億6千3百万円の増加)となりました。主に有形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動によるキャッシュ・フローは、16億8千7百万円の資金の減少(前連結会計年度比17億8千1百万円の減少)となりました。主に長期借入金の返済による支出及び配当金の支払額によるものであります。
(1) 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
生産高(百万円)
前年同期比(%)
粉体関連事業
28,683
14.7
プラスチック薄膜関連事業
10,915
18.8
合計
39,599
15.8
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
受注高(百万円)
前年同期比(%)
受注残高(百万円)
前年同期比(%)
粉体関連事業
48,922
9.9
25,302
18.3
プラスチック薄膜関連事業
20,805
58.5
11,881
104.9
合計
69,727
20.9
37,184
36.7
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
販売高(百万円)
前年同期比(%)
粉体関連事業
45,643
13.0
プラスチック薄膜関連事業
15,111
15.3
合計
60,754
13.6
(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、日本において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益及び費用の計上に際し、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれております。当社グループ経営陣は、過去の実績や状況に応じ、合理的と考えられる方法により見積り判断を行っておりますが、実際の結果は不確実性を含んでおり、見積りによる数値とは異なる場合があります。 なお、連結財務諸表作成にあたって用いた重要な会計方針及び会計上の見積りにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。 また、新型コロナウイルス感染症による影響は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 追加情報 (新型コロナウイルス感染拡大の影響に関する会計上の見積り) 」にて記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識及び・検討内容(1) 財政状態の分析 当連結会計年度末の財政状態につきましては「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態」に記載のとおりであります。
(2) 経営成績の分析 当連結会計年度が始まる2020年9月には、世界の新型コロナウイルス感染者は3,000万人を突破し、世界の死者数も100万人を突破(いずれも米・ジョンズ・ホプキンス大学集計)するなど、世界的に新型コロナウイルス感染が急速に再拡大している中でのスタートとなりました。このように先行き不透明な状況の中、本来ならスタートさせる予定であった次期中期3カ年中期経営計画の実施を見送り、単年度の緊急事態対応計画と位置づけ臨みました。 当社グループの業績先行指標となる受注面におきましては、引き続き一部の顧客において、発注に慎重になる動きもみられましたが、一方で、投資計画がある顧客は必要な案件を最小限の供給先に絞り込むような行動心理も見受けられ、例年にも増して大型案件の成約数が増加する結果となりました。他方、売上面におきましては、前連結会計年度と同様、各国・地域ともに移動制限や都市封鎖(ロックダウン)等の措置が取られた影響から、移動制限や自粛が続き、客先現場での作業(据付作業や試運転調整など)を行うことができない期間があったほか、一部納入部材の納期遅延、さらには世界的な港湾混雑やコンテナ不足により、海上輸送の混乱遅延が続きました。このため、売上検収の遅延が散見されました。このようなことから、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比べ、13.6%増の607億5千4百万円となりました。主要品目別の売上高の状況及び分析は以下のとおりであります。 コア事業と位置付ける粉体関連事業におきましては、コロナ禍の影響を受けて前連結会計年度に一時的に落ち込んだ化学工業向けや受託加工事業に回復傾向がみられるようになってきたことに加え、世界的な環境意識の高まりが継続していることから、ポリエステルフィルムのリサイクル用として粉砕機器の需要が増加いたしました。また、力を入れておりますメンテナンスサービス事業、カーボンニュートラルに向けて積極的な投資が続く電子部品・二次電池関連からも堅調な受注がありました。ミネラル関連向け前連結会計年度の大型受注の反動により低調でしたが、総じて各分野ともに堅調な受注環境にあり、受注高は489億2千2百万円(対前連結会計年度比9.9%増)となりました。売上面では、海上輸送を中心とした物流の混乱や一部部材の納品遅れや、輸出案件を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大による移動制限・自粛の影響を受け出荷先での現場作業が滞ったこともありましたが、前連結会計年度に比べ13.0%増の456億4千3百万円となりました。 もう一つの柱であるプラスチック薄膜関連事業におきましては、主力の米国向けは従来からのゴミ袋用生産装置が引き続き旺盛だったことに加え、巣篭り需要の増加に伴い通信販売のためのパッケージング用やシッピングフィルム用、ラミネーションフィルム用多層フィルム製造装置が好調に推移いたしました。また、欧州では、環境意識の更なる高まりに呼応し、リサイクルがより容易なポリエチレンのみを使用する多層フィルム製造装置の需要が高まってきております。そのほか、中国や東南アジア、中南米諸国など、日本を除く世界各地域から幅広い受注を獲得し、受注高は過去最高の208億5百万円(対前連結会計年度比58.5%増)となりました。しかしながら、期首の繰越受注残高が前連結会計年度と比べ低かったことや、受注時期と納期の関係、さらには粉体関連事業と同様、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響による物流混乱や一部部材の納入遅延などもあり、売上高は前連結会計年度と比べ、15.3%増の151億1千1百万円となりました。 売上総利益は、売上構成比率や内容の違い、一部部材の調達価格上昇などから、売上総利益率が前連結会計年度から0.7%ポイント低下しましたが、増収効果により、前連結会計年度と比べ11.4%増の215億6千4百万円となりました。営業利益は、新型コロナウイルス感染症の拡大による営業活動の自粛により販売費及び一般管理費の一部項目は減少したものの、対ユーロで円安が進んだことによる邦貨換算上の見掛けの増加に加え、前連結会計年度期中に買収した子会社がフルに寄与したことや引き続き化粧品・育毛剤事業で積極的な広告宣伝活動を行った影響などもあり、全体として販売費及び一般管理費が増加しましたが、売上総利益の増加により、前連結会計年度と比べ33.0%増の63億7千万円となりました。 経常利益も営業利益と同様、前連結会計年度と比べ31.3%増の65億7千4百万円となりました。 親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ41.7%増の46億9千9百万円となり、過去最高益を更新いたしました。
(3) キャッシュ・フローの分析 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては 「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報) 当社グループの運転資金需要は主に、製品の製造に使用する原材料や部品の調達等の製造費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用、継続的な新製品開発に向けた研究開発費用、さらには株主各位への配当金支払等であります。また、長期性の資金需要は、粉体関連機器及びプラスチック薄膜製造機器の製造に係る工作機械等の製造設備や顧客テストに供するテストセンター機器、DX推進などのデジタル化投資、受託加工装置の増強のための設備投資等であります。 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、現預金等の流動性資金は、月次連結売上高の2.0ヶ月以上を維持するよう努めておりますが、新型コロナウイルス感染症の拡大による不測の事態に備えるため、コミットメントラインを設定し、通常より厚めの流動性を確保するよう努めております。 資金の調達方針としては、短期運転資金については自己資金及び金融機関からの短期借入による調達を基本とし、設備投資や長期性資金につきましては、金融機関からの長期借入等による調達を基本としております。 当連結会計年度末における借入金の有利子負債の残高は14億5千4百万円、現金及び預金の残高は199億4千3百万円となっております。 なお、当連結会計年度末における当社グループの流動比率は218.8%と流動性は十分な水準にあります。
(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等) 既述のように、本来なら新たな第17次中期経営計画を2020年10月1日にスタートさせるところではありましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大の収束がみえない中、経済環境が予見不可能であることから、2021年9月期は単年度計画といたしました。新型コロナウイルス感染症の完全な収束はまだ見通せないものの、ワクチン接種も進み、withコロナの生活様式が定着し、社会・経済活動も落ち着きを取り戻してきたことから、2021年10月1日より新たな第17次中期3カ年経営計画をスタートさせました。この中期3ヶ年計画の最終年度となる2024年9月期には売上高670億円、営業利益67億円の達成を目指してまいります。