【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
なお、第1四半期連結会計期間より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等を適用しており、当第3四半期連結累計期間に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっております。詳細は、「第4 経理の状況 1 四半期連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
(1)業績の状況
当第3四半期連結累計期間(2022年2月1日~2022年10月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による行動制限が緩和され、経済活動が徐々に正常化に向かうなか、景気は緩やかな回復傾向がみられるものの、新型コロナウイルス感染の再拡大、更に原油・原材料価格の高騰、円安の進行、ウクライナ情勢の長期化など、依然として先行き不透明な状況にあります。
このような状況のなか、当社グループではコロナによる行動変容(ウィズ コロナ・アフター コロナ)、人生100年時代(学び方・働き方の変化)、SDGsの取組、5G・DXなどの進展を意識しながら、「学びとともに生きる社会への取り組み」「地域創生への貢献」「新しい書店収益モデルの創造」を主要戦略テーマに生活者の知的文化的生活に貢献する新たな付加価値の創造に取組んでおります。
当第3四半期連結累計期間の業績につきましては、文教市場販売事業で教育・研究施設、図書館などの設計・施工において大型案件の完工が減少したこと、大学市場及び公共図書館向け書籍等の販売が減少したこと、店舗・ネット販売事業でまん延防止等重点措置が解除された以降も来店者数はコロナ前の水準には戻っていないなか感染拡大が繰り返されていること、また「収益認識会計基準」等を適用した影響により、売上高は1,225億43百万円(前年同期1,317億38百万円)、営業利益は19億12百万円(前年同期比36.5%減)、経常利益は18億27百万円(前年同期比34.5%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は10億37百万円(前年同期比40.3%減)と減収減益となりました。
なお、「収益認識会計基準」等を適用した影響により売上高は62億72百万円減少しておりますが、営業利益、経常利益及び税金等調整前四半期純利益に与える影響は軽微であります。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
[文教市場販売事業]
当事業は以下の事業を行っております。
1.図書館(公共図書館・学校図書館・大学図書館)に対する図書館用書籍の販売、汎用書誌データベース「TRC MARC」の作成・販売及び図書装備(バーコードラベルやICタグ等の貼付等)や選書・検索ツール等の提供
2.大学などの教育研究機関や研究者に対する学術研究及び教育に関する輸入洋書を含む出版物(書籍・雑誌・電子ジャーナル、電子情報データベースほか)や英文校正・翻訳サービスをはじめとする研究者支援ソリューションの提供
3.教育・研究施設、図書館などの設計・施工と大学経営コンサルティングをはじめとする各種ソリューションの提供
4.大学内売店の運営や学生に対する教科書・テキストの販売等
当第3四半期連結累計期間の業績につきましては、教育・研究施設、図書館などの設計・施工において大型案件の完工が減少したこと、大学市場及び公共図書館向け書籍等販売が減少したこと、また「収益認識会計基準」等を適用した影響から、売上高は378億39百万円(前年同期439億97百万円)、営業利益は23億19百万円(前年同期比15.9%減)と減収減益となりました。
なお、「収益認識会計基準」等を適用した影響により売上高は43億36百万円減少しております。
[店舗・ネット販売事業]
当事業は、主に全国都市部を中心とした店舗網において和書・洋書などの書籍をメインに、文具・雑貨・洋品まで多岐にわたる商品の販売を行っております。
店舗の状況といたしましては、2022年3月に約360坪の売場に専門書からコミック、雑誌までフルジャンルの書籍を取り揃えた「丸善 豊田T-FACE店」を開店し、「ジュンク堂書店 松山店」を移転し「ジュンク堂書店 松山三越店」として新たにオープン、6月に2021年10月に東京丸の内にオープンしました「絵本の世界を楽しむことができる空間」をコンセプトとした「EHONS TOKYO」に継ぐ2番目の店舗として大阪市北区に「EHONS UMEDA」を開店、9月に競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグのスポンサー契約を締結し「M.LEAGUE OFFICIAL SHOP」を東京(丸善日本橋店内)と大阪(MARUZEN&ジュンク堂梅田店内)にオープンした結果、2022年10月末時点の店舗数は109店舗となっております。(うち1店舗は海外店(台湾)、15店舗は「MARUZEN」「ジュンク堂書店」の店舗名ではありません。)
当第3四半期連結累計期間の業績につきましては、知育系雑貨の拡大や小規模文具売場の書籍単独店への導入、オフィシャルショップの開店などに取組みましたが、来店客数がコロナ前の水準には戻っていない状況下で感染が再拡大したこと、また「収益認識会計基準」等を適用した影響等により、売上高は486億7百万円(前年同期516億77百万円)と減収となり、利益面につきましても2億34百万円の営業損失(前年同期2億27百万円の営業利益)となりました。
なお、「収益認識会計基準」等を適用した影響により売上高は17億93百万円減少しております。
[図書館サポート事業]
当事業は、図書館の業務効率化・利用者へのサービス向上の観点から、カウンター業務・目録作成・蔵書点検などの業務の請負、地方自治法における指定管理者制度による図書館運営業務、PFI(Private Finance Initiative)による図書館運営業務及び人材派遣を行っております。
当第3四半期連結累計期間の業績につきましては、図書館受託館数は期初1,697館から87館増加し、2022年10月末時点では1,784館(公共図書館578館、大学図書館235館、学校図書館他971館)となり堅調に推移しました。
その結果、当事業の売上高は251億14百万円(前年同期237億20百万円)と増収となりましたが、人件費及び水道光熱費等のコストが増加したことにより営業利益は17億62百万円(前年同期比4.8%減)と減益となりました。
なお、当セグメントにおける「収益認識会計基準」等を適用したことによる影響はありません。
[出版事業]
当事業は、『理科年表』をはじめとする理工系分野を中心とした専門書・事典・便覧・大学テキストに加え、絵本・童話などの児童書、図書館向け書籍の刊行を行っております。また医療・看護・芸術・経営など多岐にわたる分野のDVDについても発売を行っております。
当第3四半期連結累計期間につきましては、専門分野として『天文学者とめぐる宮沢賢治の宇宙 イーハトーブから見上げた夜空』『環境省レッドリスト 日本の絶滅危惧生物図鑑』『極論で語る腎臓内科 第2版』『数理社会学事典』『ゾンビスクラムサバイバルガイド 健全なスクラムへの道』、児童書として『ほねほねザウルス26 さがせ!まのうみの大かいりゅう』『ルルとララのティラミス』『しずくちゃん39 きょうふのクルーズ船』『おねえちゃんって、ときどきなきむし!?』など、合計新刊142点(前年154点)を刊行いたしました。
当第3四半期連結累計期間の業績につきましては、専門書分野の新刊刊行の遅れの影響で売上高は30億53百万円(前年同期31億9百万円)と減収となりました。一方利益面は、児童書分野が順調であったことに加え、原価及び販管費の削減により営業利益は1億94百万円(前年同期比33.9%増)と増益になりました。
なお、「収益認識会計基準」等を適用した影響により売上高は19百万円増加しております。
[その他]
当事業は、書店やその他小売店舗を中心に企画・設計デザインから建設工事・内装工事・店舗什器・看板・ディスプレーなどのトータルプランニング(店舗内装業)に関わる事業、図書館用図書の入出荷業務、Apple製品やパソコンの修理・アップグレード設定等の事業(株式会社図書館流通センターの子会社であるグローバルソリューションサービス株式会社による)、総合保育サービス(株式会社図書館流通センターの子会社である株式会社明日香による)を行っております。
当第3四半期連結累計期間の業績につきましては、総合保育サービス事業は順調に推移し、店舗内装業は前期に比べ回復傾向にあります。しかしパソコンの修理・アップグレード設定等事業において半導体不足のなか一部の部品に供給遅延が生じていること、行動制限緩和後も客足が戻っていないこと、また「収益認識会計基準」等を適用した影響等から、売上高79億27百万円(前年同期92億33百万円)、営業利益1億63百万円(前年同期比36.4%減)と減収減益となりました。
なお、「収益認識会計基準」等を適用した影響により売上高は1億62百万円減少しております。
(2)財政状態の分析
① 資産
流動資産は、前連結会計年度末に比べて57億34百万円減少し、854億91百万円となりました。これは、受取手形及び売掛金が20億51百万円、その他が54億16百万円減少したこと等によります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて51百万円減少し、370億61百万円となりました。これは、有形固定資産が4億3百万円減少したこと等によります。
繰延資産は、前連結会計年度末に比べて11百万円減少し、5百万円となりました。これは、社債発行費が11百万円減少したことによります。
この結果、総資産は前連結会計年度末に比べて57億98百万円減少し、1,225億58百万円となりました。
② 負債
流動負債は、前連結会計年度末に比べて63億61百万円減少し、528億90百万円となりました。これは、短期借入金が81億円減少し、その他が12億69百万円増加したこと等によります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べて5億56百万円減少し、250億19百万円となりました。これは、長期借入金が20億47百万円増加し、社債が25億円減少したこと等によります。
この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べて69億17百万円減少し、779億9百万円となりました。
③ 純資産
純資産合計は、前連結会計年度末と比べて11億19百万円増加し、446億49百万円となりました。これは、利益剰余金が8億83百万円増加したこと等によります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第3四半期連結累計期間における、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、次のとおりであります。
新型コロナウイルス感染症拡大は、生活者の行動様式に大きな変容をもたらし、これはこれからの個人の働き方や生き方、そして未来の社会像に大きな変化をもたらしていくものと考えられます。この状況下において当社では、これまで取り組んできたデジタルコンテンツを含む書籍を介した知とのより良い接点の創出、安全安心で快適な読書環境の提供を通じ、生活者の知的文化的生活に貢献する新たな付加価値を創造するための取り組みを、グループ各社のシナジーを活用しさらに強化促進していくことが最大の課題と認識しています。
これらの課題認識のもとで事業別の戦略として、文教市場販売事業では、文部科学省が提唱するGIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想にも対応し、ICTを活用した教育の質的向上に資する書籍検索システムの開発をはじめ、公共図書館向け電子雑誌閲覧サービス、電子化された各種データベース商品、電子教材の開発に注力しております。また、技術革新への対応や働き方改革により求められる社会人の学び直し(リカレント教育)の機会創出のため、教育・研修のコンテンツ開発や教育情報提供に関する事業開発にも取り組んでおります。
店舗・ネット販売事業は、新型コロナウイルス感染症拡大により、生活者の行動範囲の変化や、購買ルートの多様化など、さらに大きく市場環境が変化しております。これに対し当社では、出店エリアの見直しによるスクラップ&ビルド、文具・雑貨売場の拡大、物販・飲食・サービスの複合業態の開発、さらには書籍と親和性の高い新規商材・新規業態の開発に注力しております。また、第5世代移動通信システム(5G)の普及に伴い、ニーズの拡大が見込まれる著者の講演会やセミナーなど、書店ならではのコンテンツのオンライン配信など、コロナ禍を経て定着しつつある生活者の新しい行動様式に対応した施策を推進してまいります。
図書館サポート事業では、「ウィズ コロナ」の社会において、さらに安全安心な図書館業務運営への取り組みが重要となります。また、地域ごとの特色ある図書館サービスや、図書館と他の公共施設との複合的なサービス提供へのニーズも高まっております。これら、求められる新たなサービスへの対応や、図書館業務に精通した専門性を持続的に向上させるため、優秀な人材の確保・育成、エリアごとの拠点強化に一層注力してまいります。
出版事業においては、これまで培った優良なコンテンツを活用し、海外向けコンテンツ発信、オンライン授業等で需要が高まる教育用映像配信事業、電子コンテンツ化に注力します。また、既存出版領域においては、児童書では図書館、教育機関向けタイトルの一層の充実、専門書ではオンデマンド印刷(POD)を活用した少部数での重版などで、安定した収益基盤の確保に努めます。
また、主要事業領域に新たな価値創造を行うべく、その他事業の領域では、図書館を中心とした地域活性化のためのコンサルティング事業、図書館業務受託との連携効果の高い保育士派遣・保育所業務受託事業、PC・スマートフォン・タブレットの修理やネットワークサポート事業、書店を中心とした小売・サービス向け内装デザイン・設計・施工事業など、様々な事業が、当社の主要事業領域と連携し、引き続きグループ各事業の付加価値を高めてまいります。
当社グループでは5GやDXなどの急速な情報技術革新が進む時代においても、これらの事業領域で更なる成長を遂げるため、当社のこれまで培ったノウハウにデジタル技術を活用した新規事業構築の検討を進めており、2024年1月期の事業化を目指し、その事業開発に着手しております。