【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって世界的に経済活動が停滞し、急速に景気が悪化する状況となりました。わが国においても令和2年4月から5月まで緊急事態宣言が発出される等、社会・経済活動への大きな影響が生じました。宣言解除後からは各種政策効果なども相まって、徐々に経済活動は回復に向かう動きとなったものの、依然として新型コロナウイルス感染症の収束までの見通しは立っておらず、今後の感染症の動向や影響について予測が困難な状況が続いております。
不動産業界におきましては、建築コストの上昇や建設労働者不足、競争の激化など、事業環境の厳しさが強まっており、景気の悪化に伴う不動産相場や住宅需要への影響については予断を許さない状況となっております。
このような環境の中、当社グループでは、引き続きお客様のニーズに即した魅力的な住宅造りに邁進するとともに、事業拡大に向けた人材確保・育成を推進してまいりました。
戸建事業のうち主力の戸建分譲では、販売棟数の拡大と在庫状況の改善を目指し、分譲用地の仕入についてはより厳選して行ってまいりました。施工面では、継続的な協力業者の新規開拓、工程管理の強化や工事監督職の人員配置の見直しなどを実施し、これらの結果、前連結会計年度末に比べて仕掛在庫棟数の圧縮が大きく進展いたしました。一方、販売面では、住宅需要の弱さや緊急事態宣言期間における不動産仲介業者の営業自粛の影響などによって成約棟数が伸び悩む傾向がみられ、第2四半期連結累計期間までは販売棟数が前年同期を下回って推移し、完成在庫が増加する要因の一つとなっておりました。こうした状況に対して在庫状況の改善を目指し、滞留期間の長い完成在庫は販売価格の見直しなどにより積極的な販売促進を行ったことで第3四半期連結累計期間以降の成約棟数は増加傾向となった結果、当連結会計年度の販売棟数は1,491棟(うち、戸建住宅 1,384棟、土地分譲 107区画)(前連結会計年度比 5.4%増)と、前連結会計年度を上回る実績となりました。しかしながら、販売価格を住宅需要に即した価格への見直しを行ったために収益性は低下し、戸建分譲における売上総利益率は、前連結会計年度の16.6%に対し、当連結会計年度は13.3%と3.3ポイント低下いたしました。注文住宅の請負工事においては、消費増税後の住宅需要の落ち込みや建築コストの上昇に伴う収益性の低下などに対応するべく、営業力の強化と収益性の改善に取り組んでまいりましたが、連結子会社であるアオイ建設株式会社において大規模開発地での販売が一段落したこともあり、当連結会計年度における販売棟数は75棟(同 43.2%減)にとどまる実績となりました。
マンション事業では、当連結会計年度において賃貸用不動産1物件と賃貸用不動産の建築用地1物件の新規取得を行うなど、引き続き、賃貸による安定的な収益の確保と経営の強化を進めてまいりました。また、当連結会計年度におきましては、リノベーション販売用に区分所有単位でのマンションの仕入を進め、当連結会計年度には1戸の販売を行いました。
特建事業では、当連結会計年度において木造集合住宅1棟(同 50.0%減)の請負工事実績となりました。
これらの結果、当連結会計年度における経営成績は、売上高435億93百万円(同 1.1%増)、営業利益26億44百万円(同 29.7%減)、経常利益25億79百万円(同 29.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益16億70百万円(同 30.5%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(戸建事業)
戸建事業のうち主力の戸建分譲について、当連結会計年度における販売棟数は1,491棟(うち、戸建住宅 1,384棟、土地分譲 107区画)(前連結会計年度比 5.4%増)となり、売上高は412億53百万円(同 4.0%増)となりました。第2四半期連結累計期間までの販売棟数の伸び悩みや施工体制の改善などにより増加した完成在庫の削減に向けて積極的な販売促進を実施したこと並びに、アオイ建設株式会社の建売方式による戸建分譲の本格化が販売棟数の増加に寄与した一方、滞留期間の長い完成在庫については販売価格の見直し幅が拡大し、収益性は低下する状況となりました。請負工事におきましては、販売棟数は75棟(同 43.2%減)となり、売上高は15億39百万円(同 35.5%減)となりました。戸建事業に関するその他の売上高は2億9百万円(同 5.7%増)となりました。
これらの結果、戸建事業全体の売上高は430億2百万円(同 1.7%増)となり、セグメント利益は34億71百万円(同 24.6%減)となりました。
(その他)
その他の事業セグメントのうち、マンション事業について、賃貸収益による売上高は5億8百万円(前連結会計年度比 18.6%増)となりました。当連結会計年度においては賃貸用不動産1物件及び賃貸用不動産建築用地1物件の取得を行うなど、安定的な収益の確保と経営の強化を着実に進めております。マンション分譲については、前連結会計年度には新築分譲マンション10戸の販売を行いましたが、当連結会計年度にはリノベーションマンション1戸(同 90.0%減)の販売を行い、売上高は24百万円(同 92.1%減)となりました。特建事業では、当連結会計年度において木造集合住宅1棟(同 50.0%減)となり、売上高は53百万円(同 43.7%減)となりました。
これらにマンション事業に関するその他の売上高を加え、その他の事業セグメント全体の売上高は5億86百万円(同 29.9%減)となり、セグメント利益は1億30百万円(同 2.1%増)となりました。
b.財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は475億65百万円(前連結会計年度末比 5.6%減)となり、前連結会計年度末に比べて28億26百万円減少いたしました。その主な増減の要因は、現金及び預金の増加76億47百万円、たな卸資産の減少109億47百万円及び有形固定資産の増加5億99百万円であります。たな卸資産が減少した主な要因は、在庫状況の健全化に向けて、分譲用地仕入をより厳選して行うとともに、施工体制の強化などに取り組んだ成果として、仕掛在庫の圧縮が大きく進んだことによるものであります。有形固定資産の増加につきましては、主に賃貸用不動産の取得によるものであります。
負債合計は131億36百万円(同 23.3%減)となり、前連結会計年度末に比べて39億82百万円減少しております。その主な増減の要因は、支払手形・工事未払金の減少12億78百万円、短期有利子負債の減少33億8百万円及び長期有利子負債の増加4億98百万円であります。支払手形・工事未払金及び短期有利子負債の減少につきましては、主に仕掛中のたな卸資産の減少に伴うものであり、長期有利子負債の増加につきましては、賃貸用不動産に係る借入を行ったものであります。
また、純資産は344億28百万円(同 3.5%増)となり、前連結会計年度末に比べて11億56百万円増加いたしました。その主な増減の要因は、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益16億70百万円に対して配当金の支払5億97百万円を行ったこと等により、利益剰余金が10億73百万円増加したことであります。
これらの結果、自己資本比率は70.3%となり、前連結会計年度末に比べて6.1ポイント上昇いたしました。当社グループでは、今後も健全な財務体質の維持、向上に努めてまいります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、179億28百万円(前連結会計年度末比 74.4%増)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは118億69百万円の収入(前連結会計年度は18億2百万円の支出)となりました。主な収入の要因は、税金等調整前当期純利益25億29百万円及びたな卸資産の減少額110億12百万円であり、主な支出の要因は、仕入債務の減少額12億78百万円及び法人税等の支払額9億67百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは8億19百万円の支出(前連結会計年度比 27.7%減)となりました。主な支出の要因は、有形固定資産の取得による支出8億21百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは34億2百万円の支出(前連結会計年度は3億67百万円の収入)となりました。主な収入の要因は、長期借入れによる収入10億50百万円であり、主な支出の要因は、短期借入金の純減少額33億81百万円、長期借入金の返済による支出4億51百万円及び配当金の支払額5億97百万円であります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 令和元年11月1日
至 令和2年10月31日)
前年同期比(%)
件数
金額(千円)
1.戸建事業
(1)戸建分譲
1,481
41,882,826
△1.4
(2)請負工事
75
1,539,793
△35.5
戸建事業 計
1,556
43,422,619
△3.2
2.その他
(1)マンション分譲
2
34,260
△89.0
(2)特建事業
1
53,181
△43.7
その他 計
3
87,442
△78.4
合計
1,559
43,510,062
△3.9
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
3.件数欄については、戸建分譲は棟数又は区画数、請負工事は棟数又は契約数、マンション分譲は戸数、特建事業は棟数を表示しております。
b.受注実績
当社グループは主に見込み生産を行っており、請負工事等、一部には受注生産も行っておりますが、その多くが短期間で販売するものであるため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称
当連結会計年度
(自 令和元年11月1日
至 令和2年10月31日)
前年同期比(%)
件数
金額(千円)
1.戸建事業
(1)戸建分譲
1,491
41,253,278
+4.0
(2)請負工事
75
1,539,793
△35.5
(3)その他
-
209,172
+5.7
戸建事業 計
-
43,002,244
+1.7
2.その他
(1)マンション分譲
1
24,693
△92.1
(2)不動産賃貸
-
508,456
+18.6
(3)特建事業
1
53,181
△43.7
(4)その他
-
69
△97.6
その他 計
-
586,400
△29.9
セグメント計
-
43,588,644
+1.1
事業セグメントに帰属しない売上高
-
4,900
+12.6
合計
-
43,593,545
+1.1
(注)1.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
2.件数欄については、戸建分譲は棟数又は区画数、請負工事は棟数又は契約数、マンション分譲は戸数、特建事業は棟数を表示しております。
3.戸建分譲における地域別の販売実績は、次のとおりであります。なお、地域別の分類は、物件の属する地域によって分類しております。
地域
件数
金額(千円)
前年同期比(%)
埼玉県
56
1,834,334
+8.1
千葉県
52
1,421,941
△1.6
東京都
35
1,078,216
+3.6
神奈川県
90
2,826,543
+170.1
愛知県
222
6,241,022
△0.4
滋賀県
42
1,009,239
+7.1
京都府
82
2,089,989
△13.2
大阪府
318
9,344,166
△10.7
兵庫県
344
8,887,890
+12.5
奈良県
113
2,698,930
+1.2
広島県
69
1,963,127
+8.0
福岡県
68
1,857,874
△6.9
合計
1,491
41,253,278
+4.0
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」及び「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。これらの指標に関して、当連結会計年度における実績は、売上高経常利益率 5.9%(前連結会計年度は8.5%)、賃貸等不動産に関する資産、負債及び利益を除いた自己資本当期純利益率 5.7%(同 8.6%)、棚卸資産回転率 年2.1回転(同 年1.2回転)となっております。各利益率につきましては、土地購入費や建築コストなどが上昇傾向となっていることに加え、当連結会計年度においては滞留期間の長くなった完成在庫は販売価格の見直しなどにより積極的な販売促進を行ったことで平均販売単価が低下し、目標を下回る結果となりました。現状の住宅需要や顧客ニーズを適切に把握し、分譲用地の仕入をより厳選して行うとともに、建築コストについても適切な水準にコントロールしていくことで、収益性の改善に向けた対応を進めております。また、棚卸資産回転率につきまして、前連結会計年度には工期の長期化に伴う仕掛販売用不動産の増加が主な要因となって回転率が低下しておりましたが、当連結会計年度におきましては、施工体制の強化に取り組んだことで工期の改善が進んだことや、厳選した分譲用地仕入、在庫状況の健全化に向けた販売促進に注力したことで仕掛販売用不動産が大幅に減少した結果、棚卸資産回転率が改善しております。引き続き年3回転を目標として、工程管理の強化、業務効率の向上を図り、回転率を高めてまいる所存であります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきまして、当社グループの資金需要のうち主なものは、分譲用地の仕入資金及び収益物件の購入資金等であり、主に内部留保資金又は当座貸越契約を含む金融機関からの借入により調達しております。なお、当連結会計年度末における社債、借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は75億24百万円(前連結会計年度末比 27.2%減)となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は179億28百万円(同 74.4%増)となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。個々の重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。連結財務諸表の作成にあたっては会計上の見積りを行う必要があり、特に以下の事項については、経営者の会計上の見積りの判断が経営成績等に重要な影響を及ぼすと考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの見積額の総額が帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識や測定には慎重を期しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その前提となる条件や仮定に変更が生じて見積額が減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存しているため、その前提となる条件や仮定に変更が生じて見積額が減少した場合、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。
(棚卸資産の評価)
当社グループは、棚卸資産の評価について、正味売却価額の見積額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を正味売却価額まで減額し、当該減少額を評価損として計上しております。そのため、販売計画や市場環境の変化により、その前提となる条件や仮定に変更が生じて見積額が減少した場合、評価損が計上される可能性があります。