【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況にあり、個人消費についても弱さが見られました。一方、当社の主な販売分野である半導体分野におきましては、メモリ*1需要が拡大しているなか、ロジック*2向けの需要も急拡大し、市場環境は過去最高水準にあります。FPD分野におきましては、中国向けのG6 OLED(有機EL)投資が急回復し、G10.5液晶パネル投資にも回復がみられました。
これらの市場環境のもと、半導体分野では、新たな顧客で量産が始まったほか、従来顧客においても新規品種で受注が拡大しました。FPD分野では、大型電子ビーム溶接(EBW)*3を使う受注の拡大が貢献し、概ね好調に推移いたしました。
費用面につきましては、期初の想定に対しては、労務費と減価償却費の比率は低くとどまるなど低減することができましたが、期末にかけては生産能力増強を急ピッチで進めたことで直近の見通しからは上振れしました。また、生産能力を超える受注が続いたことから外注費が増加したことと、生産リードタイムが長期化したことで一部の不採算製品に関連する受注損失引当金の増加も発生いたしました。さらに、新規顧客の要望を受けた試験が想定外に急増し研究開発費が増加いたしました。
これらの結果、当事業年度の業績は、売上高が5,369百万円(前年同期比22.4%増)、営業利益は1,207百万円(前年同期比34.7%増)、経常利益は1,200百万円(前年同期比43.9%増)、当期純利益は902百万円(前年同期比30.7%増)となりました。
なお、当社は精密部品事業のみの単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。
*1 メモリとは、記憶を保持する半導体素子です。
*2 ロジックとは、演算や論理処理を行う半導体素子です。
*3 電子ビーム溶接とは、真空中でプログラム通りに、高出力の電子ビームを使い溶接するものです。
②財政状態の状況
(資産)
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べて848百万円増加し、9,742百万円となりました。
流動資産は、前事業年度末に比べて443百万円増加し、4,813百万円となりました。これは主に売上高増加に伴う電子記録債権の増加(前事業年度末差283百万円増)、棚卸資産の増加(同159百万円増)等によるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べて404百万円増加し、4,929百万円となりました。これは主に機械及び装置の取得等による増加(同498百万円増)、建設仮勘定の減少(同94百万円減)等によるものであります。
(負債)
当事業年度の負債総額は、前事業年度末に比べて227百万円増加し、3,415百万円となりました。
流動負債は、前事業年度末に比べて268百万円増加し、1,452百万円となりました。これは主に未払金の増加(同185百万円増)、買掛金の増加(同133百万円増)、その他流動負債の減少(同182百万円減)等によるものであります。
固定負債は、前事業年度末に比べて41百万円減少し、1,963百万円となりました。これは主に長期借入金の返済等による減少(同47百万円減)、退職給付引当金の計上(同6百万円増)等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べて621百万円増加し、6,327百万円となりました。
これは主に当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものであり、総資産に占める自己資本比率の割合は64.9%となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,505百万円となり、前事業年度末と比較して35百万円減少しております。
主な要因は、営業活動によって獲得した1,062百万円のキャッシュ・フロー及び、有形固定資産の取得等を行った投資活動によって支出した809百万円のキャッシュ・フロー並びに長期借入金の返済等の財務活動により支出した291百万円のキャッシュ・フローによるものであります。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、1,062百万円(前年同期は1,190百万円の獲得)となりました。これは主に税引前当期純利益1,222百万円、減価償却費640百万円を計上したこと、売上債権の増加による資金の減少309百万円、法人税等の支払額364百万円、未払消費税の減少183百万円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、809百万円(前年同期は337百万円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出805百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、291百万円(前年同期は575百万円の使用)となりました。これは長期借入れによる収入400百万円、長期借入金の返済による支出409百万円、配当金の支払額281百万円等によるものであります。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
2017年
8月期
2018年
8月期
2019年
8月期
2020年
8月期
2021年
8月期
自己資本比率(%)
57.9
63.5
63.7
64.2
64.9
時価ベースの自己資本比率(%)
278.1
187.8
138.1
127.4
263.3
キャッシュ・フロー対有利子負債比率
2.5
2.8
2.5
2.0
2.2
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)
29.2
50.7
56.1
66.3
65.2
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式総数をベースに計算しております。
2.キャッシュ・フローは、営業活動キャッシュ・フローを利用しております。
3.有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
④生産、受注及び販売の実績
当社は、精密部品事業の単一セグメントであるため、セグメントの記載に代えて製品分野別に記載しております。
a.生産実績
当事業年度の生産実績を製品分野別に示すと、次のとおりであります。
製品分野別の名称
生産高(千円)
前年同期比(%)
半導体製造装置関連部品
4,232,048
132.4
FPD製造装置関連部品
841,777
78.8
その他
168,168
797.6
合計
5,241,993
122.3
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当事業年度の受注実績を製品分野別に示すと、次のとおりであります。
製品分野別の名称
受注高(千円)
前年同期比(%)
受注残高(千円)
前年同期比(%)
半導体製造装置関連部品
4,850,980
143.1
1,209,518
208.6
FPD製造装置関連部品
1,160,752
124.3
527,572
257.1
その他
229,729
1023.4
67,728
1098.3
合計
6,241,463
143.6
1,804,819
228.1
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当事業年度の販売実績を製品分野別に示すと、次のとおりであります。
製品分野別の名称
販売高(千円)
前年同期比(%)
半導体製造装置関連部品
4,221,291
131.8
FPD製造装置関連部品
838,357
78.5
その他
309,990
265.1
合計
5,369,639
122.4
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先
前事業年度
(自 2019年9月1日
至 2020年8月31日)
当事業年度
(自 2020年9月1日
至 2021年8月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
日本発条株式会社
1,347,614
30.7
2,024,934
37.7
東京エレクトロン宮城株式会社
1,260,932
28.7
1,394,737
26.0
東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ株式会社
636,481
14.5
-
-
東京エレクトロン九州株式会社
475,091
10.8
-
-
2.主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。
3.最近2事業年度の主な輸出先、輸出販売高及び割合は、次のとおりであります。
( )内は総販売実績に対する輸出高の割合であります。
輸出先
前事業年度
(自 2019年9月1日
至 2020年8月31日)
当事業年度
(自 2020年9月1日
至 2021年8月31日)
金額(千円)
割合(%)
金額(千円)
割合(%)
シンガポール
146,927
100.0
119,094
90.0
アメリカ
-
-
13,184
10.0
合計
146,927
(3.3%)
100.0
132,279
(2.5%)
100.0
4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりまして、経営者により、一定の会計基準の範囲内で、かつ合理的と考えられる見積りが行われている部分があり、資産・負債、収益・費用の金額に反映されております。これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
なお、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
また、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の感染拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当事業年度の経営成績等は、売上高が5,369百万円であり、前年同期比で22.4%増加しました。これは、半導体分野において市場環境が過去最高水準で、新たな顧客で量産が始まったほか、従来顧客においても新規品種で受注が拡大したことや、FPD分野において中国向けのG6 OLED(有機EL)投資やG10.5液晶パネル投資が回復し、EBW(電子ビーム溶接)に関連した受注の拡大が貢献したことが要因です。また、営業利益は1,207百万円で、前年同期比34.7%増加しました。これは、生産能力を超える受注が続いたことにより外注費の増加などありましたが、労務費や減価償却費の比率が低くとどまったことによるものです。これらの結果、当期純利益は902百万円となり、前年同期比で30.7%増加しました。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、今後の柔軟な設備投資や事業取得、あるいは急激な市況変動にそなえるため、一定水準の手元流動性を確保しておく方針を持っております。そのため、手元資金に余裕があっても設備投資の一部には金融機関からの借入を充てるなどの方策をとっております。また、設備投資に対しては償却期間に見合った長期借入金を充当し、日常発生する運転資金には自己資金及び短期借入金を充てる方針を持っております。