【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第1四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間においては、中国におけるロックダウンの突然の解除とそれによる感染の爆発的な拡大、世界的なインフレ率の高まり、資本市場の動揺などの様々な難題が続く中、株式会社ジーエヌアイグループ(以下「当社」)およびその関連会社(以下合わせて「当社グループ」)の主力事業、中国におけるアイスーリュイを中心とする医薬品事業および米国における医療機器(生体材料)事業は、前年同期比増の売上収益を達成し、円安の影響もあり、堅調な業績を残すことができました。その反面、インフレーションによる原材料の高騰、中国における営業・マーケティング活動への投資・臨床開発活動の更なる進展に伴う研究開発費の増加により、前年同期比で営業減益となりました。更に、米国子会社の資金調達に関わる金融費用の増加により利益が圧迫される状況が続いておりますが、日・米・中の3地域で十分な手元流動性を確保しており、今後の成長に向けて、健全な財務体質を確保しております。
当社グループ主要子会社である北京コンチネント薬業有限公司(以下「北京コンチネント」)は、2022年末から2023年初頭における中国での新型コロナウイルス感染拡大の影響から逃れることはできませんでしたが、それでも第1四半期の売上収益は現地通貨ベースでも前年同期を上回り、主力のアイスーリュイの販売は引き続き堅調に推移しております。次期製品の有力な候補であるF351の中国における臨床試験は、現地での新型コロナウイルス感染蔓延の影響により当初の予定より約3カ月の遅れが出ておりますが、足元では感染状況も落ち着き、当初の予定に追いつくため、臨床試験実施先の追加などの対策を進めております。
2022年12月に開示しました、米国Nasdaq市場上場のCatalyst Biosciences,Inc.(以下「CBIO」)に関しては、最初の取引であるF351の中国以外の権利を譲渡する取引1は完了いたしました。現在は、当社グループが保有する北京コンチネント株式をCBIOに現物出資し、その対価としてCBIO株式を当社グループが受領する取引2に向け、CBIOが株主総会の準備などを進めております。(この取引の詳細については、2022年12月27日の適時開示と2022年12月30日及び2023年1月18日開示のQ&Aをご参照ください)
米国で生体材料事業に携わるBerkeley Advanced Biomaterials LLC(以下「BAB」)も、現地通貨ベースでの第1四半期売上収益は前年同期とほぼ同等であり、堅調に推移しております。2022年11月に出資した中国における関連会社OsDerma Medical Inc.(以下「OsDerma」)も、アジアでの事業拡大に向けて準備を進めております。また、2022年12月に出資した子会社マイクレン・ヘルスケア株式会社も順調に事業を推進しております。
米国および中国を中心に研究開発に特化している子会社Cullgen Inc.(以下「Cullgen」)は、独自の標的タンパク質分解誘導技術プラットフォームuSMITE™を活用した創薬に引き続き邁進しております。Cullgenの中国法人は、同社最初のTRK分解剤を使用した抗がん剤候補の中国における臨床試験の被験者登録に向けて、準備を進めております。同時に、他の複数のプログラムについても、臨床試験申請を目指して開発を進めております。
①セグメント別の経営成績
医薬品事業
医薬品事業セグメントの売上収益とセグメント利益は、それぞれ3,606,336千円(前年同期比6.0%増)、149,207千円(前年同期比33.3%減)となりました。北京コンチネントの主力製品であるアイスーリュイの中国市場での売上収益は引き続き堅調に推移しましたが、主に中国での営業体制やマーケティング活動の強化や米国での研究開発費の増加により、セグメント利益は減少しました。
医療機器事業
医療機器事業セグメントの売上収益とセグメント利益は、それぞれ599,799千円(前年同期比12.8%増)、248,390千円(前年同期比2.7%減)となりました。
②販売費及び一般管理費並びに研究開発費
(単位:千円)
前第1四半期連結累計期間
当第1四半期連結累計期間
差額
販売費及び一般管理費
△2,458,324
△2,646,363
△188,039
人件費
△964,787
△965,876
△1,089
研究開発費
△468,870
△635,649
△166,778
当第1四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、2,646,363千円(前年同期比7.6%増)となりました。この販売費及び一般管理費の増加は、主に医薬品事業セグメントの人件費および営業体制やマーケティング活動関連費用の増加によるものです。
当第1四半期連結累計期間の研究開発費は、635,649千円(前年同期比35.6%増)となりました。主に医薬品事業セグメントにおける研究開発費の増加によるものです。
③金融収益及び金融費用
(単位:千円)
前第1四半期連結累計期間
当第1四半期連結累計期間
差額
金融収益
54,672
49,329
△5,343
金融費用
△186,173
△239,599
△53,426
金融収益
当第1四半期連結累計期間の金融収益は、49,329千円(前年同期比9.8%減)となりました。この金融収益の減少は、主に為替差益の減少によるものです。
金融費用
当第1四半期連結累計期間の金融費用は、239,599千円(前年同期比28.7%増)となりました。この金融費用の増加は、主にCullgenの資金調達に関する現金支出を伴わない利息費用の増加によるものです。
(2)財政状態に関する分析
連結財政状態
(単位:千円)
前連結会計年度
当第1四半期連結会計期間
差額
資産合計
33,906,981
34,070,943
163,961
負債合計
14,096,013
14,284,812
188,798
資本合計
19,810,968
19,786,131
△24,837
資産合計
当第1四半期連結会計期間における資産合計は、34,070,943千円(前連結会計年度末比0.5%増)となりました。
負債合計
当第1四半期連結会計期間における負債合計は、14,284,812千円(前連結会計年度末比1.3%増)となりました。この負債の増加は、主にCullgenの資金調達に関する現金支出を伴わない利息費用の追加計上によるものです。
資本合計
当第1四半期連結会計期間における資本合計は、19,786,131千円(前連結会計年度末比0.1%減)となりました。
連結キャッシュ・フロー
(単位:千円)
前第1四半期連結累計期間
当第1四半期連結累計期間
差額
営業活動によるキャッシュ・フロー
425,628
709,959
284,330
投資活動によるキャッシュ・フロー
△298,202
△1,239,778
△941,575
財務活動によるキャッシュ・フロー
△331,129
△51,798
279,331
営業活動によるキャッシュ・フロー
当第1四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、709,959千円の収入(前年同期は、425,628千円の収入)となりました。主な収入は、中国における営業債権及びその他の債権の回収によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
当第1四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、1,239,778千円の支出(前年同期は、298,202千円の支出)となりました。主な支出は、中国における長期性預金の取得及び工場拡張に係る有形固定資産の取得によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
当第1四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、51,798千円の支出(前年同期は、331,129千円の支出)となりました。主な支出は、中国におけるリース負債の返済によるものです。
(3)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更はありません。また新たに生じた課題はありません。
(4)研究開発活動
〔研究活動〕
当社グループの創薬活動はCullgenを中心に、革新的な新規開発候補化合物(NCE)の開発を目指しています。Cullgenは、がん、痛み、及び自己免疫疾患の適応症に対する酵素及び非酵素タンパク質の両方を標的とした複数の新規分解剤を含む創薬パイプラインの拡充のための研究開発を進めております。
〔開発活動〕
■アイスーリュイ〔中国語:艾思瑞®、英語:ETUARY®(一般名:ピルフェニドン)〕-北京コンチネント
糖尿病腎症(DKD)
アイスーリュイの適応を糖尿病腎症に拡大する臨床試験は、第Ⅰ相を完了しておりますが、次フェーズ臨床試験の規制上の方向性を決めるため、クラス2会議(臨床試験に関する技術的な会議)の申請を中国のCDE(Center for Drug Evaluation、医薬品評価センター)に提出し、今後の進め方を協議しております。
結合組織疾患を伴う間質性肺疾患(SSc-ILDおよびDM-ILD)
アイスーリュイの適応を全身性硬化症(強皮症、SSc-ILD)と皮膚筋炎(DM-ILD)の2つに拡大するため、第Ⅲ相の臨床試験を継続しておりますが、現時点ではじん肺への適応拡大や、F351やF573の臨床試験を優先しております。
じん肺治療薬(Pneumoconiosis, PD)
アイスーリュイの適応をじん肺に拡大する臨床試験は、2022年6月から第Ⅲ相に入っております。2022年末から2023年初頭の中国における新型コロナウイルス蔓延の影響が多少ありましたが、現時点では被験者の登録も再開しております。
■F351(肝線維症等治療薬)-北京コンチネント
F351(一般名:ヒドロニドン)は肝線維症向け治療薬候補として、北京コンチネントの医薬品ポートフォリオにおける重要な創薬候補化合物であり、他の世界の主要医薬品市場へ臨床開発活動を拡大する戦略の重要な部分を占めております。F351は、アイスーリュイの誘導体である新規化合物であり、内臓の線維化に重要な役割を果たす肝星細胞の増殖及び、TGF-β伝達経路を阻害します。
F351は、中国のCDEとの協議を経て、2021年3月にNMPAより肝線維症の画期的治療薬の指定を受けました。これにより、F351についてのCDEとの協議が優先的、かつその協議結果を生かした臨床試験を進めることが可能となっております。その後、2021年7月29日に中国において第Ⅲ相臨床試験の許可申請が承認され、2022年1月に第Ⅲ相臨床試験を開始いたしました。F351の臨床試験も、2022年末から2023年初頭の中国における新型コロナウイルス蔓延の影響がありましたが、現時点では被験者の登録も再開しており、更に、当初の予定に追いつくため、臨床試験サイトの追加などの対策を進めております。
なお、F351の権利は、中国においては北京コンチネントが保持しておりますが、日本、豪州、カナダ、米国及び欧州各国を含む中国以外におけるF351の権利は、CBIOに譲渡いたしました(この取引の詳細については、2022年12月27日の適時開示と2022年12月30日及び2023年1月18日開示のQ&Aをご参照ください)。
北京コンチネントは、中国におけるF351の製造、開発、販売の権利を保有しており、F351の中国以外のそれらの権利は、2022年12月26日にCBIOに売却されました。CBIOは、2023年後半に米国で非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬として第Ⅱ相臨床試験開始申請(IND)を行う予定です。NASHは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の重症型であり、肝臓の炎症と線維化を特徴とし、肝硬変、肝不全、肝細胞がん(HCC)、死へと進行することがあります。現在、NASHの治療薬として日米欧で承認された製品はありません。CBIOは、出血を伴わないNASHの進行した肝線維化を有する成人被験者を対象に、ヒドロニドン・カプセルを1日360mg(1日3回120mg(TID)投与)、24週間経口投与した場合の安全性、忍容性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)を評価する無作為、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験の第Ⅱa相、概念実証(Proof of Concept: PoC)の臨床開発を開始することを計画しています。提案されている第Ⅱa相試験の主な目的は、本剤が奏功した場合のより包括的な第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験の基礎として、NASH線維症の被験者におけるヒドロニドンのPoC結果を早期に得ることです。本試験では、少人数の被験者(合計60名)を対象に、ヒドロニドンまたはプラセボを2:1の割合で投与する予定です。本試験では、薬物服用によるNASH線維化の評価に関連する一連の非侵襲的な生化学および画像バイオマーカーのベースラインからの変化、およびヒドロニドンの抗線維化作用の機序を評価する予定です。本試験では、採血を行い、初期集団のPKおよびPK/PD関係を評価し、NASH線維症を対象とした今後の臨床試験におけるヒドロニドン開発の参考にする予定です。さらに、本試験では、疾患特有の患者報告アウトカム(PROs: Patient-reported outcomes)として、実績のある慢性肝疾患アンケート(CLDQ: Chronic Liver Disease Questionnaire)のNASH版を導入し、NASHによる線維化が進行した被験者の生活の質(QOL: Quality of Life)に対するヒドロニドン治療の影響について、患者報告データを収集する予定です。
■F573(急性肝不全(ALF)・慢性肝不全急性時(ACLF)治療薬)-北京コンチネント
F573はアイスーリュイ及びF351に次ぐ3番目の創薬候補化合物として、カスパーゼを阻害する可能性を持つ強いジペプチド化合物であり、急性肝不全(ALF)や慢性肝不全の急性憎悪(ACLF)に関連して発生するアポトーシスや炎症反応に重要な化合物です。
F573に関しましては、当社から2023年3月28日に開示いたしましたとおり、第Ⅱ相臨床試験を開始いたしました。
■CG001419(TRK分解薬)- Cullgen
当社から2022年8月9日に「連結子会社CullgenのTRK分解剤に関するIND申請承認のお知らせ」で開示いたしましたとおり、Cullgenは中国のNMPAから固形がん治療用途でのトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)分解剤開発候補化合物であるCG001419のIND承認を取得いたしました。CG001419は、非小細胞肺がんや乳がん、膵臓がん等を含む多くの固形がんで見出される神経栄養性チロシン受容体キナーゼ(NTRK)融合遺伝子にコードされるTRKタンパク質異常の進行がんの治療に使用が期待される、ファースト・イン・クラスの選択的かつ経口剤となり得る標的タンパク質分解誘導作用を持つ開発候補化合物です。
2022年末から2023年初頭にかけての中国における新型コロナウイルス流行を受け、臨床試験の開始が想定より遅れておりますが、Cullgenは、中国の医師や病院と緊密に協力しながら中国での第Ⅰ相臨床試験の準備を進めており、2023年4月26日に、中国人類遺伝資源局(HGRAC)による承認を取得いたしました。また、米国FDA(食品医薬品局)との米国での臨床試験前の協議は継続しております。
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