【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
文中の将来に関する事項は、当第1四半期連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
(1)財政状態及び経営成績の状況
当第1四半期連結累計期間(2023年1月1日~2023年3月31日)のわが国は、新型コロナ感染症リスクが低下する中、個人消費の回復傾向が期待されました。全国旅行支援という政策の後押し等もありましたが、物価高の影響は大きく、総務省発表の消費者物価(生鮮食品を除く)の2023年3月分は、前年同月比3.1%の上昇となりました。一方、2023年春闘(連合)における賃金上昇率はベア+2.33%であったため、実質賃金上昇率はマイナスとなりました。
こうした状況の中、当第1四半期連結累計期間における画像検査関連事業は、単体ベース売上高は、前年同期比で3割以上伸長し、持ち直しの傾向がみられました。
主軸であるラベル検査機が売上を、ボトル・容器検査機が受注を伸ばしました。特に、医薬品や食品市場におけるラベル検査機の需要の増大により、高速オフラインロールラベル検査機とともに、輪転ラベル印刷機に取り付けるインライン検査ユニットの販売が伸長しました。
ラベル印刷市場や検版市場で導入が進んでいる、自動欠陥分類と良不良自動判定を主目的としたAI(人工知能)システムは、オンプレミス版を「Sirius-AIS」(シリウスアイズ)として新たにリリース開始するとともに、クラウドサービス「UniARTS」(ユニアーツ)にも組み込みました。印刷検査業界初の「使える」AIシステムと評価いただいた本新技術が、印刷工場現場の目視検査を大幅に軽減し始めています。ディープラーニング(深層学習)AIとルールベースAIを組み合わせることで自動的に良不良判定をすることを目指しています。また、生産現場における課題をお客様と共有し解決していく手法である「品質スクラム」で不良が起こる原因分析を行い、不良を出さない印刷加工生産ラインの仕組み作りを行うなどの技術支援サービスを、サブスクリプションにより提供しています。さらに、欠陥分析とAI学習アルゴリズム、AI推論率を高めるためのノウハウなどを蓄積してきた当社AIコンサルタントが、工場現場がかかえる各種課題をAI技術で解決する体制を構築しています。
株式会社サトー(東京都港区・代表取締役社長 笹原美徳)と共同開発してきたラベルプリンター用設定レス印字品質検査システム「SALI」(サリー)が、2023年2月20日に株式会社サトーからリリースされました。株式会社サトーが販売するラベルプリンター(CL4NX-J Plus)用の標準検査機として弊社画像検査機が搭載されています。
これまで当社は、顧客の個別ニーズに応える特注検査技術の開発を得意とし、一品一葉のカスタム商品を提供することができる画像検査機メーカとして印刷品質検査市場から高い評価をいただいてきました。この特注検査機製造技術力に加え、今回のSALI開発で培った標準検査機製造技術力を活かし、多くのお客様が持つ共通ニーズに適合する標準商品を量産し、幅広く販売していくことを基本方針に据えました。
2017年後半に開発着手し、2019年に販売開始した大判検版機「S-Scan LNC」(リンク)がその標準商品の先駆けであったと考えておりますが、この商品は常時在庫を用意し、顧客希望納期にタイムリーに応えることで、ヒット商品として拡販に成功しました。
このLNCとSALIに続く標準商品として、小型簡易検査機「Smaco」(スマコ)、プリンタ連動検査機「S-Lab Combi」(コンビ)、新型コンベア検査機「S-Con Smart」をスマートシリーズとしてラインアップし、量産化に着手しています。また、ボトル・容器検査機では、円筒と楕円筒形状容器の印刷品質を1台で検査できる検査機を「S-Bottle-Dual」(デュアル)として標準化しましたが、当第1四半期に複数社から具体的引き合いが来ています。さらに、グラビアフィルム印刷用シリンダー版を10μm/画素の超高精度で検査する「GRACE-V2」(グレイスV2)も、大手グラビア印刷メーカ複数社から具体的引き合いが来ており、S-Bottle-Dualとともに今年度中の受注・売上を目指しています。
ウェブサービスの企画・開発・運営を行う株式会社ウェブインパクトは、受託開発が好調でした。これまでの官公庁向けシステムの運用、受託開発などの他、国立大学法人向けの受託開発や、地公体向け受託開発も上乗せされ、グループ業績に大きく貢献しました。
DXクラウドサービスをサブスクリプションで提供する株式会社UniARTSは、印刷工場現場の製品品質向上を目的としたクラウドソフトウエア「UniARTS」を開発してきました。会社設立準備に入った2021年時点では、顧客のセキュリティーポリシー上、クラウド利用が認められていないケースが見受けられましたが、サスティナブルに対する考え方の変化とクラウド活用を推進する世界の潮流も相俟って、クラウド利用を積極的に活用する企業が増加しています。また、サブスクリプションにも理解を示す企業が増え、UniARTSビジネスを後押ししています。
海外市場では、ASEAN諸国市場、中国市場ともに、新型コロナウイルス感染症の影響が続き、売上低迷が長期化してきました。
タイ、ベトナムを含むASEAN市場においては、営業活動は再開したものの、未だ新型コロナの影響が残り、当第1四半期連結累計期間は厳しい結果となりました。この長期低迷状況を抜け成長軌道に乗せるために人員体制の変革が必要と判断し、ASEAN事業のリーダー(タイ、ベトナムのトップ)として若手技術者を抜擢しました。
また、海外営業経験があり、かつ画像検査技術に知見を持つ営業担当者の採用活動を強化しています。
2023年3月末、NAVITAS VIETNAM CO.,LTD.の特殊印刷機(ホットスタンプ機ならびにパッド印刷機)関連事業をツジカワ株式会社(大阪府大阪市阿倍野区・代表取締役社長辻川豊)へ移管いたしました。この結果、当社グループは、全ての特殊印刷機関連事業から撤退いたしました。これに伴い、NAVITAS VIETNAM CO.,LTD.の社名を変更し、SiriusVision(VIETNAM)Co.,LTD.となりました。なお、この事業移管が今後のグループ業績に与える影響は軽微です。
中国では、長期間続いたゼロコロナ政策による営業活動への制約が大きかったものの、2023年1月末の春節以降、経済活動の活発化が見られます。当社の印刷品質検査ソフトを標準採用している中国検査機メーカYuzen社から当第1四半期連結累計期間に、一括発注を受けました。さらに、中国の大手化粧品メーカが、弊社ボトル・チューブ印刷検査機を標準採用することを決め、実導入に向けた詳細検査仕様を詰めているところです。
上述のとおり、来期に向けた業績回復と、来期以降の持続的成長のための新技術・新製品の研究開発、ソフトウエア新製品開発及び新市場開拓のために積極的に投資を続けてまいりました。その結果、当第1四半期連結累計期間の研究開発費投資額は、54百万円を計上いたしました。
また、新技術・新製品の研究者・開発者の積極的増員とともに、国内営業体制の再編と海外営業担当の増員など、来期に向けた人員体制の構築のために積極的に投資を継続しています。
以上の結果、当第1四半期連結累計期間の経営成績につきましては、売上高は4億37百万円(前年同期比12.7%増)となりました。また、利益面におきましては、営業損失は35百万円(前年同期は1億67百万円の損失)、経常損失は17百万円(前年同期は1億55百万円の損失)となり、親会社株主に帰属する四半期純損失は38百万円(前年同期は1億65百万円の損失)となりました。
財政状態について、当第1四半期連結会計期間末における総資産は、前連結会計年度末と比較して1億49百万円減少し、29億63百万円となりました。これは主として、ソフトウエア仮勘定が40百万円増加したものの、現金及び預金が1億44百万円減少し、また受取手形及び売掛金が33百万円減少したことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末と比較して76百万円減少し、3億91百万円となりました。これは主として支払手形及び買掛金が60百万円減少し、賞与引当金が21百万円減少したことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末と比較して73百万円減少し、25億72百万円となりました。これは主として、為替換算調整勘定が5百万円増加したものの、利益剰余金が85百万円減少したことによるものであります。
これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して1.6ポイント増加し、85.2%となりました。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当第1四半期連結累計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
(3)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
前事業年度の有価証券報告書に記載した「第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。
(4)研究開発活動
当第1四半期連結累計期間の研究開発費の総額は29百万円であります。
なお、当第1四半期連結累計期間において当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。